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Kagekiyo
Zeami

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Charlottesville, Va.

ZeaKage

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1997

Japanese Text Initiative

Produced by the Japanese Text Initiative at the University of Virginia and the University of Pittsburgh.
About the print version
Kagekiyo
Yokyoku hyoshaku, volume 3
Zeami
Editor Tateki Owada


Hakubunkan
Tokyo
1907-1908
Print copy consulted: OCLC # 15420640

Prepared for the University of Virginia Library Electronic Text Center.


Revisions to the electronic version
September 1997 corrector Catherine Tousignant, Electronic Text Center
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景清

世阿彌



さしも平家の忠臣として。屋島の合戦に功名をあらはしたる惡七兵衞景清は。平家 亡び源氏の代となりて後も。苦心して頼朝をねらひたる事度々なりしが。事成らず。遂 に捕はれて日向の宮崎に流され。老衰してあさましき有様なりし處に。息女人丸の訪ひ 來るといふ物語を。あはれに作りたる謠なり。


ヒメ
息女人丸
トモ
従者
シテ
惡七兵衞景清
ワキ
里人

地は

日向

季は





ヒメ、トモ次第
 「えぬ便なれば。消えぬ便も風なれば。いかになりぬらん。





ヒメ
 「鎌倉龜に。人丸にて。さても我父惡七兵衞景清 は。平家 味方たるにより。源氏まれ。日向國宮崎とかやにされて。年月給ふなる。い まだ習はすがら。うき旅のならひ。 またゆゑとづよく。





二人下歌
 「思寢かたしく。枕露をそへて。いとかな。





上歌
 「相模ちいでて。相 模の國を立ちいでて。誰にゆくへ遠江。げに旅舟の。三河にわたす八橋 の。雲井いつかさて。假寢れてん。假寢の夢に馴れて見ん。





トモ詞
 「やうやう御急 候ふほどに。早日向國 宮崎とかやに御着きにて。ここにて父御御行方御尋ねあら うずるにて





シテ
 「松門獨ぢて年月り。みづから清光 ざれば。るをも辨へ ず。暗々たる庵室り。衣寒暖與へざれば。はぎょう衰へたり。






 「とてもを。 くとならばにこそ。背くとならば墨にこそ。むべきのあさましや。やつれはてたる有樣を。だにしとを。こそありてみの。憂きをとぶらふよしもなし。憂きをとぶらふよしもなし。





ヒメ
 「ふしぎやななるふりて。誰住むべくもえざるに。めづらかにゆるは。もし乞食のありかかと。軒端くみえたるぞや。






シテ詞 「きぬと にはさやかにえねども。音信いづちとも。





ヒメ
らぬ 迷ひのはかなさを。しばしらふ宿もなし。





シテ詞
シテ詞 「げに三界なしただ一空のみ。とかさして事問はんいづちとか答ふべき。





トモ詞
「いかに此藁屋 物問 はう





シテ
「そも以何な るものぞ。





トモ
 「され 行方りてある。





シテ詞
され にとりても。名字 をば候ふぞ。





トモ
平家侍惡七兵衞景清





シテ
「げにさやうの人 をばびては候へども。より盲目なれば な し。さもあさましき御有様うけたまはり。そぞろ にあはれをすなり。くはしき事をばよそにて 御尋候へ





トモ
「さてはあ たりにては御座なげにより御出であつて され 候へ





シテ詞
「ふしぎやな只 今をいかなるぞとじて候へば。この盲目 なるもののにて候 ふはいかに。我一年尾張國熱田にて遊女相馴一人 子をまうく女子なればつ べきぞと思ひ鎌 倉龜に預 けおきしが。れぬ親子しみ。 つ て言葉をかはす