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Kumasaka
Zenchiku

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ZenKuma

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1997

Japanese Text Initiative

Produced by the Japanese Text Initiative at the University of Virginia and the University of Pittsburgh.
About the print version
Kumasaka
Yokyoku hyoshaku, volume 5
Zenchiku
Editor Tateki Owada


Hakubunkan
Tokyo
1907-1908
Print copy consulted: OCLC # 15420640

Prepared for the University of Virginia Library Electronic Text Center.


Revisions to the electronic version
September 1997 corrector Catherine Tousignant, Electronic Text Center
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熊坂

禪竹



熊坂長範といふ強盗ありて。都より奥州に通ふ金商人。三條吉次の旅宿 を襲ひ。其荷を 奪はんと攻め入りしが。思ひもよらず源家の御曹司牛若丸に防れが。こ こにて討ちたる る物語を。其亡靈出でて旅僧に語る事を作る。かの「烏帽子折は熊坂の 現在を冩し。こ の「熊坂は烏帽子折後段の過去を語る 相比べ讀みて味ふべし。この熊 坂以下盜賊の 名。義經記には。出羽の由利の太郎を大將とし。越後 藤澤入道。信濃 のさんの權頭の 子息太郎。遠江の蒲 餘一。駿河の興津の十郎。上野の豐岡の源八以下。 宗徒のもの廿 五人。その勢七十人。とあり。


ワキ
都の僧
シテ
赤坂の僧

ワキ
前に同じ。
シテ
熊坂長範

地は

美濃

季は





ワキ次第
 「しと は言ひつる の。憂しとは言ひて捨つる身の。 行方いつとかむら ん。






 「都方よりでたるにていまだ東國 候ふ に。只今 思ひ立東國修行





道行
 「山 越えて。 近江路なれや の。近江路なれや湖の。粟津る。瀬田 長橋うちぎて。 野路篠原 をこめて。朝立露深き。こそ青野ながら。づく赤坂 の。日影 かな。里も 暮れ行く日影かな。





シテ詞
  「なふなふあれ なる御僧すべき





ワキ詞
 「こなたのにて候ふ何事 にて候ふぞ。





シテ
 「今 日はさる 命 日にて 候ふ弔 ひ賜は候へ





ワキ
 「それこそ出家 みなれ。さりながら して回向申すべき。





シテ
「たとひ其名さずとも。あれにえたる一木の。此方 萱原こそ。唯 今申古墳なれ。往復ならねばすな り。





ワキ
 「あらとも なや。らで回向如何ならん。





シテ
 「よしそれとてもしからず。法界衆生平等利益






ワキ
 「出離生死 を。





シテ
 「れよと の。






 「御 弔ひけば。 御弔ひを身に受けば。たとひ其名 のらずとも。ばは。それこそ有難や。回 向草木國土まで。 らさじなれば きて其。にと あてなくとも。さてこそ回向なれ。まで は如何あるべき。





シテ詞
 「さらば此方 御入候へ 愚僧庵室 候ふ一夜 かして御 通候ひ





ワキ詞
 「さらばかう參 らうずるにて如何持佛堂 めをめうずると候ふに。 安置給ふ べき繪像木像もなく。一壁には大長刀手杖にあ らざる其外兵具をひつしと かれて 候ふは。したる御事 にて候ふぞ。





シテ
 「さん候此僧 初發心 にて候ふ が。御覽候ふあたりは。埀井青墓赤坂とて。其里々 けれども。間々すがら。 青野草高く。青墓小安 しげれば。ともいはずには。山賊夜盜 のぬすら。高荷里通ひの。下女や はしたのまでも。ぎとられぶ。さやうの時此僧 も。長刀 ひつさげつつ。ここをば愚僧 せよと。ばはりかくればには 一度 はさもな きもあり。さやう の時此所の。便りにもなるぞ かしと。喜びあへるべしと。思ふばかり のなり。なんぼうあさましき捨者 所存候ふぞ。





クセ
 「ししようなき手 柄






 「あはぬ 腕立。さ こそをかしとすらめ。さりなが らも。彌陀 利劍愛染 は。方便をはげ。多門横たへ て。惡魔降伏 し。災難 拂へ給へり。





シテ
 「されば愛著慈悲 心は。






 「達 多五逆にすぐれ方便 殺生は。菩 薩六度れりとか。これをかれを き。是非知らぬ行くへ迷ふ るもぞや。さればとはなり。とせざれと。られたり。かやうの物語 さばけなまし。お みあれや御僧達もまどろまんさらばと。眠藏 るよとえつる が。 せて庵室も。むらとなりて松陰に。 かしたる 不思議さよ。夜を明かしたる不思 議さよ。(中 入)





ワキ
一夜ふす。 男鹿も。男鹿の角の 束の間も。られん秋風の。松の 下臥よもすがら。聲佛 事をやなしぬらん。聲佛事をやなしぬらん。





後ジテ
東南風立つて西北しづかならず。夕闇 夜風烈しき山 陰に。






 「梢木 にやさわぐらん。





シテ
 「有 明頃かい つしかに。でても朧夜なるべし。 めよと前後 下知し。弓手 馬手つて。奪ひ 惡逆娑婆 執心。これ御覽ぜよ あさましや。





ワキ詞
 「熊坂長範にてましますか。其 時有樣御物語候へ





シテ
 「さても三條吉次信高とて。黄金 商なふ商人 あつて。毎年數多めて。高荷つてる。あつぱれ らばや と。與力人數 誰々ぞ。





ワキ
 「さて國々よ りまりし。りてもりしぞ。





シテ
 「河 内覺紹






 「磨針 太郎兄弟 は。表討には びなし。





ワキ
 「さて又都其内に。にもりしぞ。





シテ
 「三條衞門壬生小猿





ワキ
 「ともし の上手分切には。





シテ
 「是等はよも さじ。





ワキ
「さて北國 には越前の。





シテ
 「淺生松若三國九郎





ワキ
 「加賀には熊坂 の。





シテ
 「此長範として。究竟 手柄痴者 ら。七十人 與力して。





ワキ
 「吉次がとほる すがら。にもにも宿 泊に。目付けてす。





シテ
 「此赤坂宿く。こ ここそ究竟なれ。引場 四方道多し。ればより遊君すゑ。數百の あそびをうつす。





ワキ
 「けば 吉次兄弟前後 らずしたりしに。





シテ
 「十六七小男の。内人れた るが。障子透間物合 の。そよともするをにか けて。





ワキ
 「しも さでありけるを。





シテ
 「牛若殿と はにもら ず。





ワキ
 「きぬる盜人等





シテ
 「機嫌はよ きぞ。





ワキ
 「はや。




シテ
 「れと。






 「いふこそしけれ。いふこそ程も久しけ れ。皆我先にと松明を。 は。や うやく神も。 くべ きやうぞなき。れども 牛若子るるけしきなく。 小太刀いて合ひ 獅子奮迅虎亂入飛鳥 き。戰へばこらへず。 十三人せられ。其外手負 太刀て。具足はれ はふはふ逃げて。ばかりをるもあり。 熊坂いふやう此者 どもをに。つは如何さま鬼神か。 人間にてはよもあらじ。のありてこ そ。あら枝葉かんとて。長刀杖につき。 うしろめたく もきけるが。





シテ
 「熊坂思ふやう






 「熊 坂思ふやう 。ものものし其冠者が。 切るといふともさぞるらん。熊坂秘術振ふならば。如何な る天魔鬼神なりとも。につかんで微塵になし。 たれたるものどもの。いで供養ぜんと て。よりつてし。長刀引きそばめ。 折妻戸小楯つて。彼小男をね らひけり。牛若子御覽じて。太刀抜 きそばめ物あひを。てて給ふ熊坂長刀かまへ。にかかるをちけるが。 いらつて熊坂左足み。 鐡壁れ と長刀 を。はつしとつて 弓手せば。かさずこむ長刀 に。ひらりとれば 刄向になし。しさつてけば馬 手すを。おつ直してちゃうれば。にて ぶをほどくに。つて 拂へびあがつて。 ままえず せ て。ここやかしことぬるに。思 ひもよら ぬうしろより。具足透間をちゃう れば。こは如何にあの冠者に。らるる 腹立さ よと。いへども天命の。めぞ無念なる。






 「打 物わざに て叶ふまじ。打物わざにて叶ふま じ。手取にせんとて長刀投 て。大手 をひろげて。ここの面廊か しこのりに。つかけ らんとすれども。 陽炎稲妻水かや。 姿れども られ ず。





シテ
次第々々 重手負ひ ぬ。






 「次 第々々重手負ひ ぬ。きこころ。きて。





シテ
 「此松の。






 「露霜と。えし物語 世助 けたび給へと。ゆ ふつけも告 る。白々赤 坂の。松陰れけり。松陰に こそはれけれ。