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Aya no Tsuzumi
Zeami

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University of Virginia Library.
Charlottesville, Va.

ZeaAyan

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1997

Japanese Text Initiative

Produced by the Japanese Text Initiative at the University of Virginia and the University of Pittsburgh.
About the print version
Aya no Tsuzumi
Yokyoku hyoshaku, volume 7
Zeami
Editor Tateki Owada


Hakubunkan
Tokyo
1907-1908
Print copy consulted: OCLC # 15420640

Prepared for the University of Virginia Library Electronic Text Center.

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綾 鼓

世阿彌



皇居の御庭掃の老人。女御に思を懸け申したれども成らぬを歎きて。遂に身を投 げ。亡靈となりて恨みに出づる事を作る。衣の綾に作れる鼓を誠の鼓と思ひ。打てども 鳴らぬ事あるによりて綾鼓と名づく。


ワキ
官人
シテ
御庭掃の翁

ワキ
前に同じ。
シテ
翁の亡靈
ツレ
女御

地は

筑前

季は




Waley


ワキ詞
筑前國木 皇 居臣下にて。さても此所とて名池候ふに。御遊御座候 。ここに御庭掃老人候ふ が。女御御姿 見參らせ。しづなきとな りて此事 ばれ。には上下かぬ習ひ なれば。不便さるる 彼池 桂木け。 老人たせられ。彼鼓聲皇居 えば。其時女御御姿給はんとの御事 にて候ふに。彼老人召してかせばやと





ワキ詞
如何老人なくもばれ。不便さるる 桂木 かれたるを。老人參 りて候へ 彼鼓聲皇居え ば。今一度女御御姿をまみえさせ給はんとの御事なり。りて 候へ





シテ詞
つて。さらばりて候ふべし。





ワキ
此方候へ此鼓にてあるぞいで候へ





シテ
にや 月宮こそ。てる 桂木なれ。しき池邊に。かかる聲出でば。それこそねなれ と。べの聲添へて。又打添ふ日並





地次第
ぞとく。後の暮ぞと頼め置く。打たうよ。





シテ一聲
「さなきだに夜鶴に。






思ひ添ふるはかなさよ。





シテ
るも白波の。




Waley



とてらざ らん。





シテサシ
くなるをばかで。いに添へた る戀慕






もそぼちつつ。からなるのしづくの。色添へて。ぶの亂戀





シテ
れん と思ふ心こそ。






れぬよ りは思ひなれ。





クセ
るに は。人間萬事塞翁なれや。隙行 日數移るなる。年去れども。くべき道芝の。りをば。問はましあぢきなや。などされば是程に。 らばさのみに迷ふらん。





シテ
けと てや東雲の。





りを ます時守 の。つやしげ く。たばの。面影若 しや御衣の。と はらずして。衣手力添 えて。てどもえぬは。しも老耳やらんと。けどもけど も。波窓 。いづれもはす れども。せぬ此鼓 の。しの太 鼓や。なにとてでぬぞ。





ロンギ地
思ひ ちもるると。も。でぬをつらん。





シテ
でも せぬ。雨夜ちかぬる。らすべき。らばこそ。




Waley



の。昨日今日 とは思へども。





シテ
めし にだに。






えぬ 思ひ明暮 の。





シテ
らず。






えず。こは鳴神も。思ふをば れぬとこそきしをなどされば。かほどになかるらんと。み人をかこち。かくては め。けらん池水 に。げてせにけり。げてせにけり。(中       入)




Waley


ワキ詞
如何彼老人鼓 らぬみ。しくなりて。かやうの執心りに ろしう候へ ば。そと御出つて御覽ぜ られ候へ





女御
如何人々聞くかさて。あのが。たるは 如何に。あらおもしろのや。あ ら面白や。





ワキ
不思議やな 女御御姿 。さもなく給ふは。 如何なるにてあるやらん。





女御
なきこそ なれ。か。らぬをてといひし事は。我現 なきめなれと。





ワキ
夕波さわぐ に。





女御
猶打添ふる。





ワキ
ありて。





後ジテ
池水藻屑となりし






又立執心み。




Waley


シテ
みともきとも。いへば中々おろかなる。






一念嗔恚邪婬み。まれじやまれじや。雲水の。魔境ぞなる。





シテ
小山田苗代水えすとも。言ひさじとこそ思 ひしに。などしもさればなく。らぬ聲立てよとは。くし てよとや。 心盡くしのの。






にかけ たる





シテ
ちて見給へ






てや てやと攻鼓。よせ拍子とうとう。給へ給へと て。しもとをれば。らでしやしやと。叫びまします女御御聲 。あらさてりやさてこりや。






冥途のぜ つき阿防羅刹 冥途のぜつき阿防羅刹の。呵責もかくやらんと。く。 火車責 めといふとも。にはま さらじろしや。さてとなるべき因果 ぞや。





シテ
因果れ きせんはのあたり。






「れきせんはのあたり。られたり白波の。桂木 に。けしもわか ず。心盡きて。池水げて。藻屑みし の。もなく 死靈となつて。女御つ て。しもともちたたく。東頭は。風渡 雨落ちて。紅蓮大紅蓮となつて。もよ だつに。鯉魚惡蛇と なつて。まことは冥途鬼といふとも。かくやと思ひ白波 の。あらめしや女御やとて。にぞ りにける。