後撰和歌集 (Gosen wakashū) — 後撰和歌集卷第六 秋歌中 作者複数 (Various) 951 Gosen wakashū 後撰和歌集 Various 作者複数 Heian Period 中古 10th century 10世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 951 ごせんわかしゅう Gosen wakashū 後撰和歌集 ごせんわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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後撰和歌集 Gosen wakashū
作者複数 Various
後撰和歌集卷第六
秋歌中
271
紀貫之
延喜の御時に秋の歌めしありければ奉りける
秋霧の立ちぬる時はくらぶ山覺つかなくぞ見え渡りける
272
花見にと出でにし物を秋の野の霧に迷ひて今日は暮しつ
273
讀人志らず
寛平の御時きさいの宮の歌合に
浦ちかくたつ秋霧の藻汐やく煙とのみぞ見えわたりける
274
藤原興風
おなじ御時の女郎花合に
折からに我が名は立ちぬ女郎花いざ同じくば花々に見む
275
讀人志らず
秋の野の霧におかるゝ女郎花はらふ人無み濡つゝやふる
276
女郎花はなの心のあだなれば秋にのみこそあひ渡りけれ
277
近衛更衣
母のぶくにて里に侍りけるに先帝の御文給へりける御返事に
五月雨にぬれにし袖にいとゞしく露置添ふる秋の侘しさ
278
延喜御製
御かへし
大方も秋はわびしき時なれど露けかるらむ袖をしぞ思ふ
279
法皇御製寛平
亭子院の御前の花のいと面白く朝露のおけるをめして見せさせた
まひて
白露のかはるも何か惜からむありての後もやゝうき物を
280
伊勢
御かへし
植立てゝ君が志めゆふ花なれば玉と見えてや露もおく覽
281
右大臣九條
大輔が後凉殿に侍りけるに藤壷より女郎花を折りてつかはしける
をりてみる袖さへぬるゝ女郎花露けき物と今や志るらむ
283
右大臣
又
起明かす露のよな/\へにければまだきぬる共思はざり鳬
284
大輔
かへし
今ははや打ち解けぬべき白露の心おく迄よをやへにける
285
讀人しらず
あひしりて侍りける女のあだ名立ちて侍りければ久しくとぶらは
ざりけり。八月ばかりに女の許よりなどかいとつれなきといひおこせて侍りければ
白露の上はつれなくおきゐつゝ萩の下葉の色をこそみれ
286
伊勢
かへし
心なき身は草葉にもあらなくに秋くる風に疑がはるらむ
287
讀人しらず
男のもとに遣はしける
人はいさことぞともなき眺にぞ我れは露けき秋も知らるゝ
288
中宮宣旨
人のもとに尾花のいと高きを遣はしたりければ返事に忍草をくは
へて
花薄ほに出づることもなき宿は昔しのぶの草をこそ見れ
289
伊勢
かへし
宿もせにうゑなべつゝぞ我はみる招く尾花に人や止ると
290
讀人しらず
題しらず
秋の夜を徒にのみおきあかす露は我身の上にぞありける
292
右大臣
露ならぬ我身と思へど秋の夜を斯こそ明せ起居ながらに
293
讀人志らず
秋の頃ほひある所に女どもの數多すの内に侍りけるに男の、歌の
もとをいひ入れて侍りければすゑはうちより
294
左大臣
八月中の十日ばかりに雨のそぼ降りける日女郎花ほりに藤原のも
ろたゞを野べにいだして遲く歸りければつかはしける
暮れはてば月もまつべし女郎花雨やめてとは思はざらなむ
295
讀人志らず
題志らず
秋の田の刈穗の庵の匂ふ迄さける秋萩見れど飽かぬかも
296
秋の夜を眠ろまずのみ明す身は夢路とだにも頼まざり鳬
297
萩の花を折りて人につかはすとて
時雨ふりふりなば人に見せもあへず散りなば惜みをれる秋萩
298
貫之
秋の歌とて
ゆき歸り折りて釵さむ朝な/\鹿立ちならす野べの秋萩
299
宗ゆき 朝臣
我が宿の庭の秋萩ちりぬめりのちみむ人や悔しと思はむ
300
讀人しらず
白露のおかまくをしき秋萩を折りてはさらに我や釵さむ
301
貫之
年の積りにける事をかれこれ申しけるついでに
秋萩の色づく秋を徒らにあまたかぞへて老いぞしにける
302
天智天皇御製
題しらず
秋の田の刈穗の庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつゝ
304
秋萩の枝もとをゝになりゆくは白露重くおけばなりけり
305
我宿の尾ばなが上の白露をけたずて玉にぬくものにもが
306
貫之
延喜の御時歌めしければ
さを鹿の立馴らすを野の秋萩における白露我もけぬべし
307
秋の野の草は絲とも見えなくにおく白露を玉とぬくらむ
308
文屋朝康
白露に風のふきしく秋の野は貫ぬきとめぬ玉ぞちりける
309
忠岑
秋の野に置く白露をけさ見れば玉やしけると驚かれつゝ
310
讀人志らず
題しらず
おくからに千草の色になる物を白露とのみ人のいふらむ
311
白玉の秋の木の葉に宿れるとみゆるは露のはかるなり鳬
312
秋の野に置く白露のきえざらば玉にぬきても懸て見てまし
313
から衣袖くつるまで置く露は我身を秋の野とやみるらむ
314
大空に我が袖一つあらなくに悲しく露やわきておくらむ
315
朝毎に置く露袖にうけためてよのうきときの涙にぞかる
316
貫之
秋の歌とてよめる
秋の野の草もわけぬを我袖の物思ふなべに露けかるらむ
317
深養父
幾夜經て後か忘れむちりぬべき野べの秋萩みがく月夜を
318
讀人志らず
秋の夜の月の影こそ木のまよりおちば衣と身に映りけれ
319
袖にうつる月の光は秋毎に今宵かはらぬかげとみえつる
320
秋の夜の月にかさなる雲はれて光さやかに見る由もがな
321
小野美材
秋の池の月の上こぐ舟なればかつらの枝に棹やさはらむ
322
深養父
秋の海にうつれる月を立ちかへり浪は洗へど色も變らず
323
讀人志らず
惟貞のみこの家の歌合に
あきの夜の月のひかりは清けれど人の心のくまは照さず
324
秋の月常にかくてる物ならば闇にふる身は交らざらまし
325
藤原雅正
八月十五夜
いつとても月みぬ秋はなきものをわきて今宵の珍しき哉
326
讀人志らず
月かげはおなじ光の秋の夜をわきて見ゆるは心なりけり
327
紀淑望朝臣
月を見て
空とほみ秋やよくらむひさかたの月の桂の色もかはらぬ
328
貫之
衣手は寒くもあらねど月影をたまらぬ秋の雪とこそ見れ
329
讀人しらず
天の川柵かけてとゞめなむあかずながるゝ月やよどむと
330
あき風に浪やたつらむ天の川わたる瀬もなく月の流るゝ
331
あきくれば思ふ心ぞ亂れつゝまづ紅葉とちりまさりけり
332
深養父
きえかへり物思ふあきの衣こそ涙の川のもみぢなりけれ
333
讀人志らず
吹く風にふかき頼みの空しくばあきの心を淺しと思はむ
334
是貞のみこの家の歌合の歌
秋の夜は人を靜めて徒然とかきなす琴の音にぞなきぬる
335
藤原清正
露をよめる
貫止むる秋しなければ白露の千草における玉もかひなし
336
八月十五夜
あき風にいとゞふけゆく月影を立ちなかくしそ天の川霧
337
貫之
延喜の御時秋の歌めしありければ奉りける
女郎花匂へる秋の武藏野はつねよりも猶むつまじきかな
338
兼覽王
人につかはしける
秋霧のはるゝは嬉し女郎花立ちよる人やあらむと思へば
340
女郎花ひる見てましをあきの夜の月の光は雲がくれつゝ
341
女郎花はなの盛りにあき風のふく夕ぐれをたれに語らむ
343
名にしおへば志ひて頼まむ女郎花花の心のあきはうく共
344
躬恒
棚機に似たるものかな女郎花秋よりほかにあふ時もなし
345
讀人志らず
秋の野に夜もやねなむ女郎花花の名をのみ思ひかけつゝ
346
女郎花色にもあるかなまつ蟲を共に宿して誰をまつらむ
347
前栽にをみなへし侍りける所にて
女郎花匂ふ盛りを見る時ぞわが老いらくは悔しかりける
348
三條右大臣
すまひのかへりあるじの暮れつかた女郎花を折りて敦慶の親王の
かざしにさすとて
女郎花花の名ならぬ物ならば何かは君がかざしにもせむ
年ごろ家のむすめにせをそこ通はし侍りけるを女のためにか
る%\しなどいひてゆるさぬあひだになむ侍りける。
349
枇杷左大臣
法皇伊勢が家の女郎花をめしければ奉るをきゝて
女郎花をりけむ枝の節ごとに過ぎにし君を思ひ出やせし
350
伊勢
かへし
女郎花をりも折らずも古を更にかくべきものならなくに