群書類従卷第三百七

物語部一

伊勢物語朱雀院塗籠御本

【二十五】

昔男かたいなかにすみけりおとこ宮つかへしにとてわかれおしみてゆきにけるまゝにみとせこさりけれはまちわたりけるにいとねんころにいひける人にこよひあはんとちきりたりけるにこの男きたりけりこの戸あけたまへとたゝきけれはあけてなんうたをよみていたしたりける

あら玉の年のみとせを待わひてたゝ今宵社新枕すれ

といひいたしたりけれはおとこ

梓弓まゆみ槻弓としをへて我せしかことうるはしみせよ

といひていなんとすれはうらみて女

あつさ弓ひけとひかねと昔より心はきみによりにしものを

といひけれと男かへりにけり女いとかなしうてしりにたちてをひけれとえをひつかてし水のある所にふしにけりそこなる岩にをよひのちしてかきつけゝり

あひ思はてかれぬる人をとゝめかね我身はいまそきえはてぬめる

とかきていたつらになりにけり

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Last Modified:Thursday, February 13, 2025
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