昔男津の国むはらのこほりあしやの里にしるよしありていきてすみけりむかしのうたに
とよめるはこの里をよめるなりこゝをなんあし屋のなたとはいひけり此男なま宮つかへしけれはそれをたよりゑふのすけともあつまりきにけりこの男のあにもゑふのかみなりけりその家の海のほとりにあそひありきていさこの山のうへにありといふぬのひきのたき見にのほらんといひてのほりてみるにそのたき物よりことなりたかさ廿丈はかりひろさ五丈余はかりある石のおもてにしろきゝぬにいしをつゝみたらんやうになん有けるさる滝のかみにわらふたはかりにてさし出たるいしありその石のうへにはしりかゝる水せうかうしはかりのおほきさにてこほれおつそこなる人にうたよますこのゑふのかみまつよむ
つきにあるしよむ
とよめりけれはかたへの人わらふにや有けむこの歌をよみてやみけりかへりくるみちとをくてうせにし宮内卿もとよしか家のまへすくるに日くれぬやとりのかたを見やれはあまのいさりする火おほくみるにこのあるしのおとこよむ
とよみてみなかへりきぬそのよみなみの風ふきてなこりのなみいとたかしつとめてその家のめのこともいてゝうきみるの浪によせられたるをひろひていゑにもとてきぬ女かたよりそのみるをたかつきにもりてかしはおほひて出したりそのかしはにかくかけり
ゐなかの人の歌にてはあまれりやたらすや