万葉集 (Man'yōshū) — 雜歌 作者複数 (Various) 759 Man'yōshū 万葉集 Various 作者複数 Nara Period 上代 8th century 8世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 759 まんようしゅう Man'yōshū 万葉集 まんようしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
Titles ›
万葉集 › 雜歌 Furigana ふりがな Vertical 縦書き
雜歌 1664 [題詞]泊瀬朝倉宮御宇大泊瀬幼武天<皇>御製歌一首
[原文]暮去者 小椋山尓 臥鹿之 今夜者不鳴 寐家良霜
[訓読]夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐ねにけらしも
[仮名],ゆふされば,をぐらのやまに,ふすしかの,こよひはなかず,いねにけらしも
[校異]歌 [西] 謌 / 皇天皇 → 皇 [藍][壬][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,作者:雄略天皇,舒明天皇,斉明天皇,作者異伝,重出,地名,動物 1665 [題詞]崗本宮御宇天皇幸紀伊國時歌二首
[訓読]妹がため我れ玉拾ふ沖辺なる玉寄せ持ち来沖つ白波
[仮名],いもがため,われたまひりふ,おきへなる,たまよせもちこ,おきつしらなみ
[KW],雑歌,作者:斉明天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名 1666 [題詞](崗本宮御宇天皇幸紀伊國時歌二首)
[原文]朝霧尓 沾尓之衣 不干而 一哉君之 山道将越
[訓読]朝霧に濡れにし衣干さずしてひとりか君が山道越ゆらむ
[仮名],あさぎりに,ぬれにしころも,ほさずして,ひとりかきみが,やまぢこゆらむ
[KW],雑歌,作者:斉明天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,留守 1667 [題詞]大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首
[原文]為妹 我玉求 於伎邊有 白玉依来 於伎都白浪
[訓読]妹がため我れ玉求む沖辺なる白玉寄せ来沖つ白波
[仮名],いもがため,あれたまもとむ,おきへなる,しらたまよせこ,おきつしらなみ
[左注]右一首上見既畢 但歌辞小換 年代相違 因以累戴 [校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,重出,地名,大宝1年10月,年紀 1668 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[訓読]白崎は幸くあり待て大船に真梶しじ貫きまたかへり見む
[仮名],しらさきは,さきくありまて,おほぶねに,まかぢしじぬき,またかへりみむ
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀 1669 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]三名部乃浦 塩莫満 鹿嶋在 釣為海人乎 見變来六
[訓読]南部の浦潮な満ちそね鹿島なる釣りする海人を見て帰り来む
[仮名],みなべのうら,しほなみちそね,かしまなる,つりするあまを,みてかへりこむ
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀 1670 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]朝開 滂出而我者 湯羅前 釣為海人乎 見<反>将来
[訓読]朝開き漕ぎ出て我れは由良の崎釣りする海人を見て帰り来む
[仮名],あさびらき,こぎでてわれは,ゆらのさき,つりするあまを,みてかへりこむ
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,土地讃美,地名,大宝1年10月,年紀 1671 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]湯羅乃前 塩乾尓祁良志 白神之 礒浦箕乎 敢而滂動
[訓読]由良の崎潮干にけらし白神の礒の浦廻をあへて漕ぐなり
[仮名],ゆらのさき,しほひにけらし,しらかみの,いそのうらみを,あへてこぐなり
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1672 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]黒牛方 塩干乃浦乎 紅 玉裾須蘇延 徃者誰妻
[訓読]黒牛潟潮干の浦を紅の玉裳裾引き行くは誰が妻
[仮名],くろうしがた,しほひのうらを,くれなゐの,たまもすそびき,ゆくはたがつま
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,恋情,大宝1年10月,年紀 1673 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]風莫乃 濱之白浪 徒 於斯依久流 見人無 [一云 於斯依来藻]
[訓読]風莫の浜の白波いたづらにここに寄せ来る見る人なしに [一云 ここに寄せ来も]
[仮名],かざなしの,はまのしらなみ,いたづらに,ここによせくる,みるひとなしに,[ここによせくも]
[左注]右一首山上<臣>憶良類聚歌林曰 長忌寸意吉麻呂應詔作此歌 [校異]莫 (塙) 草 / 臣 [西(上書訂正)][藍][壬][紀] / 歌林 [西] 謌林 [西(訂正)] 歌林 / 此歌 [西] 此謌 [西(訂正)] 此歌 [KW],雑歌,長意吉麻呂,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀,異伝,推敲 1674 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]我背兒我 使将来歟跡 出立之 此松原乎 今日香過南
[訓読]我が背子が使来むかと出立のこの松原を今日か過ぎなむ
[仮名],わがせこが,つかひこむかと,いでたちの,このまつばらを,けふかすぎなむ
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1675 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]藤白之 三坂乎越跡 白栲之 我衣乎者 所沾香裳
[訓読]藤白の御坂を越ゆと白栲の我が衣手は濡れにけるかも
[仮名],ふぢしろの,みさかをこゆと,しろたへの,わがころもでは,ぬれにけるかも
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1676 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]勢能山尓 黄葉常敷 神岳之 山黄葉者 今日散濫
[訓読]背の山に黄葉常敷く神岳の山の黄葉は今日か散るらむ
[仮名],せのやまに,もみちつねしく,かむをかの,やまのもみちは,けふかちるらむ
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,望郷,地名,大宝1年10月,年紀 1677 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]山跡庭 聞徃歟 大我野之 竹葉苅敷 廬為有跡者
[訓読]大和には聞こえも行くか大我野の竹葉刈り敷き廬りせりとは
[仮名],やまとには,きこえもゆくか,おほがのの,たかはかりしき,いほりせりとは
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1678 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]木國之 昔弓雄之 響矢用 鹿取靡 坂上尓曽安留
[訓読]紀の国の昔弓雄の鳴り矢もち鹿取り靡けし坂の上にぞある
[仮名],きのくにの,むかしさつをの,なりやもち,かとりなびけし,さかのうへにぞある
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1679 [題詞](大寳元年辛丑冬十月太上天皇大行天皇幸紀伊國時歌十三首)
[原文]城國尓 不止将徃来 妻社 妻依来西尼 妻常言長柄 [一云 嬬賜尓毛 嬬云長<良>]
[訓読]紀の国にやまず通はむ妻の杜妻寄しこせに妻といひながら [一云 妻賜はにも妻といひながら]
[仮名],きのくにに,やまずかよはむ,つまのもり,つまよしこせに,つまといひながら,[つまたまはにも,つまといひながら]
[KW],雑歌,持統天皇,文武天皇,行幸,羈旅,紀州,和歌山,地名,大宝1年10月,年紀 1680 [題詞]後人歌二首
[原文]朝裳吉 木方徃君我 信土山 越濫今日曽 雨莫零根
[訓読]あさもよし紀へ行く君が真土山越ゆらむ今日ぞ雨な降りそね
[仮名],あさもよし,きへゆくきみが,まつちやま,こゆらむけふぞ,あめなふりそね
1681 [題詞](後人歌二首)
[原文]後居而 吾戀居者 白雲 棚引山乎 今日香越濫
[訓読]後れ居て我が恋ひ居れば白雲のたなびく山を今日か越ゆらむ
[仮名],おくれゐて,あがこひをれば,しらくもの,たなびくやまを,けふかこゆらむ
1682 [題詞]獻忍壁皇子歌一首 [詠仙人形]
[原文]常之<倍>尓 夏冬徃哉 裘 扇不放 山住人
[仮名],とこしへに,なつふゆゆけや,かはごろも,あふぎはなたぬ,やまにすむひと
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 陪 → 倍 [藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,詠物,忍壁皇子,非略体 1683 [題詞]獻舎人皇子歌二首
[訓読]妹が手を取りて引き攀ぢふさ手折り我がかざすべく花咲けるかも
[仮名],いもがてを,とりてひきよぢ,ふさたをり,わがかざすべく,はなさけるかも
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,舎人皇子,非略体 1684 [題詞](獻舎人皇子歌二首)
[原文]春山者 散過去鞆 三和山者 未含 君持勝尓
[訓読]春山は散り過ぎぬとも三輪山はいまだふふめり君待ちかてに
[仮名],はるやまは,ちりすぎぬとも,みわやまは,いまだふふめり,きみまちかてに
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,献呈歌,舎人皇子,奈良,桜井,非略体,地名 1685 [題詞]泉河邊間人宿祢作歌二首
[訓読]川の瀬のたぎつを見れば玉藻かも散り乱れたる川の常かも
[仮名],かはのせの,たぎつをみれば,たまもかも,ちりみだれたる,かはのつねかも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 玉藻 [類][古](塙) 玉 [KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:間人宿祢,木津川,京都,羈旅,非略体,地名 1686 [題詞](泉河邊間人宿祢作歌二首)
[訓読]彦星のかざしの玉は妻恋ひに乱れにけらしこの川の瀬に
[仮名],ひこほしの,かざしのたまは,つまごひに,みだれにけらし,このかはのせに
[KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,七夕,作者:間人宿祢,木津川,京都,羈旅,非略体 1687 [題詞]鷺坂作歌一首
[訓読]白鳥の鷺坂山の松蔭に宿りて行かな夜も更けゆくを
[仮名],しらとりの,さぎさかやまの,まつかげに,やどりてゆかな,よもふけゆくを
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1688 [題詞]名木河作歌二首
[原文]ぬ干 人母在八方 沾衣乎 家者夜良奈 羈印
[訓読]あぶり干す人もあれやも濡れ衣を家には遣らな旅のしるしに
[仮名],あぶりほす,ひともあれやも,ぬれぎぬを,いへにはやらな,たびのしるしに
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1689 [題詞](名木河作歌二首)
[原文]在衣邊 著而榜尼 杏人 濱過者 戀布在奈利
[訓読]あり衣辺につきて漕がさね杏人の浜を過ぐれば恋しくありなり
[仮名],ありそへに,つきてこがに,からひとの,はまをすぐれば,こほしくありなり
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1690 [題詞]高島作歌二首
[原文]高嶋之 阿渡川波者 驟鞆 吾者家思 宿加奈之弥
[訓読]高島の阿渡川波は騒けども我れは家思ふ宿り悲しみ
[仮名],たかしまの,あどかはなみは,さわけども,われはいへおもふ,やどりかなしみ
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,滋賀県,羈旅,非略体,望郷,地名 1691 [題詞](高島作歌二首)
[訓読]旅なれば夜中をさして照る月の高島山に隠らく惜しも
[仮名],たびにあれば,よなかをさして,てるつきの,たかしまやまに,かくらくをしも
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,滋賀県,羈旅,非略体,地名 1692 [題詞]紀伊國作歌二首
[訓読]我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷き独りかも寝む
[仮名],あがこふる,いもはあはさず,たまのうらに,ころもかたしき,ひとりかもねむ
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,和歌山,羈旅,非略体,地名,望郷 1693 [題詞](紀伊國作歌二首)
[訓読]玉櫛笥明けまく惜しきあたら夜を衣手離れて独りかも寝む
[仮名],たまくしげ,あけまくをしき,あたらよを,ころもでかれて,ひとりかもねむ
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,和歌山,羈旅,非略体,望郷 1694 [題詞]鷺坂作歌一首
[原文]細比礼乃 鷺坂山 白管自 吾尓尼保波<尼> 妹尓示
[訓読]栲領巾の鷺坂山の白つつじ我れににほはに妹に示さむ
[仮名],たくひれの,さぎさかやまの,しらつつじ,われににほはに,いもにしめさむ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 弖 → 尼 [藍][類][紀] [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,植物 1695 [題詞]泉河作歌一首
[原文]妹門 入出見川乃 床奈馬尓 三雪遣 未冬鴨
[訓読]妹が門入り泉川の常滑にみ雪残れりいまだ冬かも
[仮名],いもがかど,いりいづみがはの,とこなめに,みゆきのこれり,いまだふゆかも
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,木津川,京都,羈旅,非略体,地名 1696 [題詞]名木河作歌三首
[原文]衣手乃 名木之川邊乎 春雨 吾立沾等 家念良武可
[訓読]衣手の名木の川辺を春雨に我れ立ち濡ると家思ふらむか
[仮名],ころもでの,なきのかはへを,はるさめに,われたちぬると,いへおもふらむか
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1697 [題詞](名木河作歌三首)
[原文]家人 使在之 春雨乃 与久列杼吾<等>乎 沾念者
[訓読]家人の使ひにあらし春雨の避くれど我れを濡らさく思へば
[仮名],いへびとの,つかひにあらし,はるさめの,よくれどわれを,ぬらさくおもへば
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体 1698 [題詞](名木河作歌三首)
[原文]ぬ干 人母在八方 家人 春雨須良乎 間使尓為
[訓読]あぶり干す人もあれやも家人の春雨すらを真使ひにする
[仮名],あぶりほす,ひともあれやも,いへびとの,はるさめすらを,まつかひにする
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体 1699 [題詞]宇治河作歌二首
[原文]巨椋乃 入江響奈理 射目人乃 伏見何田井尓 鴈渡良之
[訓読]巨椋の入江響むなり射目人の伏見が田居に雁渡るらし
[仮名],おほくらの,いりえとよむなり,いめひとの,ふしみがたゐに,かりわたるらし
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名,動物 1700 [題詞](宇治河作歌二首)
[訓読]秋風に山吹の瀬の鳴るなへに天雲翔る雁に逢へるかも
[仮名],あきかぜに,やまぶきのせの,なるなへに,あまくもかける,かりにあへるかも
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1701 [題詞]獻弓削皇子歌三首
[原文]佐宵中等 夜者深去良斯 鴈音 所聞空 月渡見
[訓読]さ夜中と夜は更けぬらし雁が音の聞こゆる空を月渡る見ゆ
[仮名],さよなかと,よはふけぬらし,かりがねの,きこゆるそらを,つきわたるみゆ
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物 1702 [題詞](獻弓削皇子歌三首)
[訓読]妹があたり繁き雁が音夕霧に来鳴きて過ぎぬすべなきまでに
[仮名],いもがあたり,しげきかりがね,ゆふぎりに,きなきてすぎぬ,すべなきまでに
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物 1703 [題詞](獻弓削皇子歌三首)
[訓読]雲隠り雁鳴く時は秋山の黄葉片待つ時は過ぐれど
[仮名],くもがくり,かりなくときは,あきやまの,もみちかたまつ,ときはすぐれど
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,献呈歌,非略体,動物,植物,季節 1704 [題詞]獻舎人皇子歌二首
[訓読]ふさ手折り多武の山霧繁みかも細川の瀬に波の騒ける
[仮名],ふさたをり,たむのやまきり,しげみかも,ほそかはのせに,なみのさわける
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,飛鳥,非略体,地名 1705 [題詞](獻舎人皇子歌二首)
[原文]冬木成 春部戀而 殖木 實成時 片待吾等叙
[訓読]冬こもり春へを恋ひて植ゑし木の実になる時を片待つ我れぞ
[仮名],ふゆこもり,はるへをこひて,うゑしきの,みになるときを,かたまつわれぞ
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,献呈歌,非略体,季節 1706 [題詞]舎人皇子御歌一首
[訓読]ぬばたまの夜霧は立ちぬ衣手を高屋の上にたなびくまでに
[仮名],ぬばたまの,よぎりはたちぬ,ころもでを,たかやのうへに,たなびくまでに
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,舎人皇子,桜井,飛鳥,非略体,地名 1707 [題詞]鷺坂作歌一首
[原文]山代 久世乃鷺坂 自神代 春者張乍 秋者散来
[訓読]山背の久世の鷺坂神代より春は張りつつ秋は散りけり
[仮名],やましろの,くぜのさぎさか,かむよより,はるははりつつ,あきはちりけり
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,京都,羈旅,非略体,地名 1708 [題詞]泉河邊作歌一首
[原文]春草 馬咋山自 越来奈流 鴈使者 宿過奈利
[訓読]春草を馬咋山ゆ越え来なる雁の使は宿り過ぐなり
[仮名],はるくさを,うまくひやまゆ,こえくなる,かりのつかひは,やどりすぐなり
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,木津川,京都,羈旅,非略体,動物 1709 [題詞]獻弓削皇子歌一首
[原文]御食向 南淵山之 巌者 落波太列可 削遺有
[訓読]御食向ふ南淵山の巌には降りしはだれか消え残りたる
[仮名],みけむかふ,みなぶちやまの,いはほには,ふりしはだれか,きえのこりたる
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂歌集,弓削皇子,飛鳥,献呈歌,非略体,地名,季節 1710 [題詞]
[原文]吾妹兒之 赤裳<O>塗而 殖之田乎 苅将蔵 倉無之濱
[訓読]我妹子が赤裳ひづちて植ゑし田を刈りて収めむ倉無の浜
[仮名],わぎもこが,あかもひづちて,うゑしたを,かりてをさめむ,くらなしのはま
[KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,福岡県,中津市,地名 1711 [題詞]
[原文]百<轉> 八十之嶋廻乎 榜雖来 粟小嶋者 雖見不足可聞
[訓読]百伝ふ八十の島廻を漕ぎ来れど粟の小島は見れど飽かぬかも
[仮名],ももづたふ,やそのしまみを,こぎくれど,あはのこしまは,みれどあかぬかも
[校異]轉之 → 轉 [藍][類][古][紀] / 者 [類][古][紀] 志 [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,羈旅,淡路,粟島,土地讃美,地名 1712 [題詞]登筑波山詠月一首
[原文]天原 雲無夕尓 烏玉乃 宵度月乃 入巻ね毛
[訓読]天の原雲なき宵にぬばたまの夜渡る月の入らまく惜しも
[仮名],あまのはら,くもなきよひに,ぬばたまの,よわたるつきの,いらまくをしも
1713 [題詞]幸芳野離宮時歌二首
[原文]瀧上乃 三船山従 秋津邊 来鳴度者 誰喚兒鳥
[訓読]滝の上の三船の山ゆ秋津辺に来鳴き渡るは誰れ呼子鳥
[仮名],たきのうへの,みふねのやまゆ,あきづへに,きなきわたるは,たれよぶこどり
1714 [題詞](幸芳野離宮時歌二首)
[原文]落多藝知 流水之 磐觸 与杼賣類与杼尓 月影所見
[訓読]落ちたぎち流るる水の岩に触れ淀める淀に月の影見ゆ
[仮名],おちたぎち,ながるるみづの,いはにふれ,よどめるよどに,つきのかげみゆ
1715 [題詞]槐本歌一首
[原文]樂<浪>之 平山風之 海吹者 釣為海人之 袂變所見
[訓読]楽浪の比良山風の海吹けば釣りする海人の袖返る見ゆ
[仮名],ささなみの,ひらやまかぜの,うみふけば,つりするあまの,そでかへるみゆ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 波 → 浪 [藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,滋賀県,琵琶湖,羈旅,地名,叙景 1716 [題詞]山上歌一首
[原文]白那弥<乃> 濱松之木乃 手酬草 幾世左右二箇 年薄經濫
[訓読]白波の浜松の木の手向けくさ幾代までにか年は経ぬらむ
[仮名],しらなみの,はままつのきの,たむけくさ,いくよまでにか,としはへぬらむ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 之 → 乃 [藍][壬][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,作者:山上憶良,川島皇子,異伝,重出,和歌山,羈旅,地名 1717 [題詞]春日歌一首
[原文]三川之 淵瀬物不落 左提刺尓 衣手<潮> 干兒波無尓
[訓読]三川の淵瀬もおちず小網さすに衣手濡れぬ干す子はなしに
[仮名],みつかはの,ふちせもおちず,さでさすに,ころもでぬれぬ,ほすこはなしに
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 湖 → 潮 [類][古][紀] [KW],雑歌,作者:春日蔵首老,滋賀県,愛知,羈旅 1718 [題詞]高市歌一首
[原文]足利思<代> 榜行舟薄 高嶋之 足速之水門尓 極尓<監>鴨
[訓読]率ひて漕ぎ去にし舟は高島の安曇の港に泊てにけむかも
[仮名],あどもひて,こぎいにしふねは,たかしまの,あどのみなとに,はてにけむかも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 伐 → 代 [濫][壬][類][紀] / 濫 → 監 [類][古][紀] [KW],雑歌,作者:高市黒人,琵琶湖,滋賀県,羈旅,地名 1719 [題詞]春日蔵歌一首
[原文]照月遠 雲莫隠 嶋陰尓 吾船将極 留不知毛
[訓読]照る月を雲な隠しそ島蔭に我が舟泊てむ泊り知らずも
[仮名],てるつきを,くもなかくしそ,しまかげに,わがふねはてむ,とまりしらずも
[左注]右一首或本云 小辨作也 或記姓氏無記名字 或称名号不称姓氏 然依古記 便以次載 凡如此類下皆放焉 [校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 辨 [藍][紀][温](塙) 弁 / 放 [文][細][温] 效 [KW],雑歌,作者:春日蔵首老,小辨,異伝,羈旅 1720 [題詞]元仁歌三首
[原文]馬屯而 打集越来 今日見鶴 芳野之川乎 何時将顧
[訓読]馬並めてうち群れ越え来今日見つる吉野の川をいつかへり見む
[仮名],うまなめて,うちむれこえき,けふみつる,よしののかはを,いつかへりみむ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 今日 [壬][類](塙) 今 [KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,羈旅,非略体,地名 1721 [題詞](元仁歌三首)
[原文]辛苦 晩去日鴨 吉野川 清河原乎 雖見不飽君
[訓読]苦しくも暮れゆく日かも吉野川清き川原を見れど飽かなくに
[仮名],くるしくも,くれゆくひかも,よしのがは,きよきかはらを,みれどあかなくに
[KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名 1722 [題詞](元仁歌三首)
[原文]吉野川 河浪高見 多寸能浦乎 不視歟成嘗 戀布<真>國
[訓読]吉野川川波高み滝の浦を見ずかなりなむ恋しけまくに
[仮名],よしのがは,かはなみたかみ,たきのうらを,みずかなりなむ,こほしけまくに
[KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:元仁,吉野,羈旅,土地讃美,非略体,地名 1723 [題詞]絹歌一首
[原文]河蝦鳴 六田乃河之 川楊乃 根毛居侶雖見 不飽<河>鴨
[訓読]かわづ鳴く六田の川の川柳のねもころ見れど飽かぬ川かも
[仮名],かはづなく,むつたのかはの,かはやぎの,ねもころみれど,あかぬかはかも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 君 → 河 [壬][類][古][紀] [KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:絹,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名,動物 1724 [題詞]嶋足歌一首
[原文]欲見 来之久毛知久 吉野川 音清左 見二友敷
[訓読]見まく欲り来しくもしるく吉野川音のさやけさ見るにともしく
[仮名],みまくほり,こしくもしるく,よしのがは,おとのさやけさ,みるにともしく
[KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:嶋足,吉野,土地讃美,羈旅,非略体,地名 1725 [題詞]麻呂歌一首
[訓読]いにしへの賢しき人の遊びけむ吉野の川原見れど飽かぬかも
[仮名],いにしへの,さかしきひとの,あそびけむ,よしののかはら,みれどあかぬかも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,柿本人麻呂歌集,作者:麻呂,吉野,羈旅,土地讃美,非略体,地名 1726 [題詞]丹比真人歌一首
[原文]難波方 塩干尓出<而> 玉藻苅 海未通<女>等 汝名告左祢
[訓読]難波潟潮干に出でて玉藻刈る海人娘子ども汝が名告らさね
[仮名],なにはがた,しほひにいでて,たまもかる,あまをとめども,ながなのらさね
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 而 [壬][類][古][紀] / <> → 女 [代匠記精撰本] [KW],雑歌,作者:丹比真人,大阪,羈旅,妻問い,地名 1727 [題詞]和歌一首
[原文]朝入為流 人跡乎見座 草枕 客去人尓 妾<名>者不<教>
[訓読]あさりする人とを見ませ草枕旅行く人に我が名は告らじ
[仮名],あさりする,ひととをみませ,くさまくら,たびゆくひとに,わがなはのらじ
[校異]歌 [西] 謌 / <> → 名 [万葉集新考] / 敷 → 教 [万葉集略解] 1728 [題詞]石川卿歌一首
[原文]名草目而 今夜者寐南 従明日波 戀鴨行武 従此間別者
[訓読]慰めて今夜は寝なむ明日よりは恋ひかも行かむこゆ別れなば
[仮名],なぐさめて,こよひはねなむ,あすよりは,こひかもゆかむ,こゆわかれなば
[KW],雑歌,作者:石川年足,石川宮麻呂,羈旅,恋情 1729 [題詞]宇合卿歌三首
[原文]暁之 夢所見乍 梶嶋乃 石<超>浪乃 敷弖志所念
[訓読]暁の夢に見えつつ梶島の礒越す波のしきてし思ほゆ
[仮名],あかときの,いめにみえつつ,かぢしまの,いそこすなみの,しきてしおもほゆ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 越 → 超 [藍][類][紀] [KW],雑歌,作者:藤原宇合,羈旅,望郷,九州,京都,地名 1730 [題詞](宇合卿歌三首)
[原文]山品之 石田乃小野之 母蘇原 見乍哉公之 山道越良武
[訓読]山科の石田の小野のははそ原見つつか君が山道越ゆらむ
[仮名],やましなの,いはたのをのの,ははそはら,みつつかきみが,やまぢこゆらむ
[KW],雑歌,作者:藤原宇合,京都,留守,羈旅,地名 1731 [題詞](宇合卿歌三首)
[原文]山科乃 石田社尓 布<麻>越者 蓋吾妹尓 直相鴨
[訓読]山科の石田の杜に幣置かばけだし我妹に直に逢はむかも
[仮名],やましなの,いはたのもりに,ぬさおかば,けだしわぎもに,ただにあはむかも
[KW],雑歌,作者:藤原宇合,京都,羈旅,望郷,手向け,地名 1732 [題詞]碁師歌二首
[原文]<祖>母山 霞棚引 左夜深而 吾舟将泊 等万里不知母
[訓読]大葉山霞たなびきさ夜更けて我が舟泊てむ泊り知らずも
[仮名],おほばやま,かすみたなびき,さよふけて,わがふねはてむ,とまりしらずも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 祖 [万葉集略解] [KW],雑歌,作者:碁師,滋賀県,琵琶湖,重出,羈旅,寂寥,地名 1733 [題詞](碁師歌二首)
[原文]思乍 雖来々不勝而 水尾埼 真長乃浦乎 又顧津
[訓読]思ひつつ来れど来かねて三尾の崎真長の浦をまたかへり見つ
[仮名],おもひつつ,くれどきかねて,みをのさき,まながのうらを,またかへりみつ
[KW],雑歌,作者:碁師,滋賀県,琵琶湖,羈旅,地名 1734 [題詞]少辨歌一首
[原文]高嶋之 足利湖乎 滂過而 塩津菅浦 今<香>将滂
[訓読]高島の安曇の港を漕ぎ過ぎて塩津菅浦今か漕ぐらむ
[仮名],たかしまの,あどのみなとを,こぎすぎて,しほつすがうら,いまかこぐらむ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 辨 [藍][類] 弁 / 者 → 香 [藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:少辨,滋賀県,琵琶湖,羈旅,道行き,地名 1735 [題詞]伊保麻呂歌一首
[原文]吾疊 三重乃河原之 礒裏尓 如是鴨跡 鳴河蝦可物
[訓読]我が畳三重の川原の礒の裏にかくしもがもと鳴くかはづかも
[仮名],わがたたみ,みへのかはらの,いそのうらに,かくしもがもと,なくかはづかも
[KW],雑歌,作者:伊保麻呂,三重県,内部川,羈旅,地名 1736 [題詞]式部大倭芳野作歌一首
[原文]山高見 白木綿花尓 落多藝津 夏身之川門 雖見不飽香開
[訓読]山高み白木綿花に落ちたぎつ夏身の川門見れど飽かぬかも
[仮名],やまたかみ,しらゆふばなに,おちたぎつ,なつみのかはと,みれどあかぬかも
[KW],雑歌,作者:式部大倭,吉野,土地讃美,羈旅,地名 1737 [題詞]兵部川原歌一首
[原文]大瀧乎 過而夏箕尓 傍為而 浄川瀬 見何明沙
[訓読]大滝を過ぎて夏身に近づきて清き川瀬を見るがさやけさ
[仮名],おほたきを,すぎてなつみに,ちかづきて,きよきかはせを,みるがさやけさ
[KW],雑歌,作者:兵部川原,吉野,土地讃美,羈旅,地名 1738 [題詞]詠上総末珠名娘子一首[并短歌]
[原文]水長鳥 安房尓継有 梓弓 末乃珠名者 胸別之 廣吾妹 腰細之 須軽娘子之 其姿之 端正尓 如花 咲而立者 玉桙乃 道<徃>人者 己行 道者不去而 不召尓 門至奴 指並 隣之君者 <預> 己妻離而 不乞尓 鎰左倍奉 人<皆乃> 如是迷有者 容艶 縁而曽妹者 多波礼弖有家留
[訓読]しなが鳥 安房に継ぎたる 梓弓 周淮の珠名は 胸別けの 広き我妹 腰細の すがる娘子の その顔の きらきらしきに 花のごと 笑みて立てれば 玉桙の 道行く人は おのが行く 道は行かずて 呼ばなくに 門に至りぬ さし並ぶ 隣の君は あらかじめ 己妻離れて 乞はなくに 鍵さへ奉る 人皆の かく惑へれば たちしなひ 寄りてぞ妹は たはれてありける
[仮名],しながとり,あはにつぎたる,あづさゆみ,すゑのたまなは,むなわけの,ひろきわぎも,こしぼその,すがるをとめの,そのなりの,きらきらしきに,はなのごと,ゑみてたてれば,たまほこの,みちゆくひとは,おのがゆく,みちはゆかずて,よばなくに,かどにいたりぬ,さしならぶ,となりのきみは,あらかじめ,おのづまかれて,こはなくに,かぎさへまつる,ひとみなの,かくまとへれば,たちしなひ,よりてぞいもは,たはれてありける
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 行 → 徃 [藍][類][紀] / 豫 → 預 [藍][壬][類][紀] / 乃皆 → 皆乃 [藍][類][温] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,千葉,美女伝説,枕詞,地名 1739 [題詞](詠上総末珠名娘子一首[并短歌])反歌
[原文]金門尓之 人乃来立者 夜中母 身者田菜不知 出曽相来
[訓読]金門にし人の来立てば夜中にも身はたな知らず出でてぞ逢ひける
[仮名],かなとにし,ひとのきたてば,よなかにも,みはたなしらず,いでてぞあひける
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,千葉,美女伝説,地名 1740 [題詞]詠水江浦嶋子一首[并短歌]
[原文]春日之 霞時尓 墨吉之 岸尓出居而 釣船之 得<乎>良布見者 <古>之 事曽所念 水江之 浦嶋兒之 堅魚釣 鯛釣矜 及七日 家尓毛不来而 海界乎 過而榜行尓 海若 神之女尓 邂尓 伊許藝T 相誂良比 言成之賀婆 加吉結 常代尓至 海若 神之宮乃 内隔之 細有殿尓 携 二人入居而 耆不為 死不為而 永世尓 有家留物乎 世間之 愚人<乃> 吾妹兒尓 告而語久 須臾者 家歸而 父母尓 事毛告良比 如明日 吾者来南登 言家礼婆 妹之答久 常世邊 復變来而 如今 将相跡奈良婆 此篋 開勿勤常 曽己良久尓 堅目師事乎 墨吉尓 還来而 家見跡 <宅>毛見金手 里見跡 里毛見金手 恠常 所許尓念久 従家出而 三歳之間尓 <垣>毛無 家滅目八跡 此筥乎 開而見手歯 <如>本 家者将有登 玉篋 小披尓 白雲之 自箱出而 常世邊 棚引去者 立走 S袖振 反側 足受利四管 頓 情消失奴 若有之 皮毛皺奴 黒有之 髪毛白斑奴 <由>奈由奈波 氣左倍絶而 後遂 壽死祁流 水江之 浦嶋子之 家地見
[訓読]春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦島の子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の 我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと 言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て 今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと そこらくに 堅めし言を 住吉に 帰り来りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に 垣もなく 家失せめやと この箱を 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若くありし 肌も皺みぬ 黒くありし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける 水江の 浦島の子が 家ところ見ゆ
[仮名],はるのひの,かすめるときに,すみのえの,きしにいでゐて,つりぶねの,とをらふみれば,いにしへの,ことぞおもほゆる,みづのえの,うらしまのこが,かつをつり,たひつりほこり,なぬかまで,いへにもこずて,うなさかを,すぎてこぎゆくに,わたつみの,かみのをとめに,たまさかに,いこぎむかひ,あひとぶらひ,ことなりしかば,かきむすび,とこよにいたり,わたつみの,かみのみやの,うちのへの,たへなるとのに,たづさはり,ふたりいりゐて,おいもせず,しにもせずして,ながきよに,ありけるものを,よのなかの,おろかひとの,わぎもこに,のりてかたらく,しましくは,いへにかへりて,ちちははに,こともかたらひ,あすのごと,われはきなむと,いひければ,いもがいへらく,とこよへに,またかへりきて,いまのごと,あはむとならば,このくしげ,ひらくなゆめと,そこらくに,かためしことを,すみのえに,かへりきたりて,いへみれど,いへもみかねて,さとみれど,さともみかねて,あやしみと,そこにおもはく,いへゆいでて,みとせのあひだに,かきもなく,いへうせめやと,このはこを,ひらきてみてば,もとのごと,いへはあらむと,たまくしげ,すこしひらくに,しらくもの,はこよりいでて,とこよへに,たなびきぬれば,たちはしり,さけびそでふり,こいまろび,あしずりしつつ,たちまちに,こころけうせぬ,わかくありし,はだもしわみぬ,くろくありし,かみもしらけぬ,ゆなゆなは,いきさへたえて,のちつひに,いのちしにける,みづのえの,うらしまのこが,いへところみゆ
[校異]歌 [西] 謌 / 手 → 乎 [西(訂正右書)][壬][細][温][矢] / 吉 → 古 [西(訂正右書)][藍][壬][類] / 之 → 乃 [藍][壬][類] / 宅 [西(上書訂正)][藍][壬][類] / 墻 → 垣 [藍][類][紀]/ 如来 → 如 [藍][類] / 反 [藍][類](塙) 返 / <> → 由 [西(右書)][藍][類][紀] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,浦島伝説,若狭,地名,枕詞 1741 [題詞](詠水江浦嶋子一首[并短歌])反歌
[原文]常世邊 可住物乎 劔刀 己之<行>柄 於曽也是君
[訓読]常世辺に住むべきものを剣大刀汝が心からおそやこの君
[仮名],とこよへに,すむべきものを,つるぎたち,ながこころから,おそやこのきみ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 心 → 行 [藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,浦島伝説,若狭,地名 1742 [題詞]見河内大橋獨去娘子歌一首[并短歌]
[原文]級照 片足羽河之 左丹塗 大橋之上従 紅 赤裳<數>十引 山藍用 <揩>衣服而 直獨 伊渡為兒者 若草乃 夫香有良武 橿實之 獨歟将宿 問巻乃 欲我妹之 家乃不知久
[訓読]しな照る 片足羽川の さ丹塗りの 大橋の上ゆ 紅の 赤裳裾引き 山藍もち 摺れる衣着て ただ独り い渡らす子は 若草の 夫かあるらむ 橿の実の 独りか寝らむ 問はまくの 欲しき我妹が 家の知らなく
[仮名],しなでる,かたしはがはの,さにぬりの,おほはしのうへゆ,くれなゐの,あかもすそびき,やまあゐもち,すれるきぬきて,ただひとり,いわたらすこは,わかくさの,つまかあるらむ,かしのみの,ひとりかぬらむ,とはまくの,ほしきわぎもが,いへのしらなく
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 摺 →揩 [紀] / <> → 數 [西(右書)][藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,大阪,美女,孤独,枕詞,地名 1743 [題詞](見河内大橋獨去娘子歌一首[并短歌])反歌
[原文]大橋之 頭尓家有者 心悲久 獨去兒尓 屋戸借申尾
[訓読]大橋の頭に家あらばま悲しく独り行く子に宿貸さましを
[仮名],おほはしの,つめにいへあらば,まかなしく,ひとりゆくこに,やどかさましを
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,大阪,美女,孤独,地名 1744 [題詞]見武蔵小埼沼鴨作歌一首
[原文]前玉之 小埼乃沼尓 鴨曽翼霧 己尾尓 零置流霜乎 掃等尓有斯
[訓読]埼玉の小埼の沼に鴨ぞ羽霧るおのが尾に降り置ける霜を掃ふとにあらし
[仮名],さきたまの,をさきのぬまに,かもぞはねきる,おのがをに,ふりおけるしもを,はらふとにあらし
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,埼玉,旋頭歌,地名 1745 [題詞]那賀郡曝井歌一首
[原文]三栗乃 中尓向有 曝井之 不絶将通 従所尓妻毛我
[訓読]三栗の那賀に向へる曝井の絶えず通はむそこに妻もが
[仮名],みつぐりの,なかにむかへる,さらしゐの,たえずかよはむ,そこにつまもが
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,埼玉,羈旅,土地讃美,枕詞,地名 1746 [題詞]手綱濱歌一首
[原文]遠妻四 高尓有世婆 不知十方 手綱乃濱能 尋来名益
[訓読]遠妻し多賀にありせば知らずとも手綱の浜の尋ね来なまし
[仮名],とほづまし,たかにありせば,しらずとも,たづなのはまの,たづねきなまし
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城県,望郷,土地讃美,地名 1747 [題詞]春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌]
[原文]白雲之 龍田山之 瀧上之 小鞍嶺尓 開乎為流 櫻花者 山高 風之不息者 春雨之 継而零者 最末枝者 落過去祁利 下枝尓 遺有花者 須臾者 落莫乱 草枕 客去君之 及還来
[訓読]白雲の 龍田の山の 瀧の上の 小椋の嶺に 咲きををる 桜の花は 山高み 風しやまねば 春雨の 継ぎてし降れば ほつ枝は 散り過ぎにけり 下枝に 残れる花は しましくは 散りな乱ひそ 草枕 旅行く君が 帰り来るまで
[仮名],しらくもの,たつたのやまの,たきのうへの,をぐらのみねに,さきををる,さくらのはなは,やまたかみ,かぜしやまねば,はるさめの,つぎてしふれば,ほつえは,ちりすぎにけり,しづえに,のこれるはなは,しましくは,ちりなまがひそ,くさまくら,たびゆくきみが,かへりくるまで
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌 [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,地名,枕詞,植物 1748 [題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])反歌
[原文]吾去者 七日<者>不過 龍田彦 勤此花乎 風尓莫落
[訓読]我が行きは七日は過ぎじ龍田彦ゆめこの花を風にな散らし
[仮名],わがゆきは,なぬかはすぎじ,たつたひこ,ゆめこのはなを,かぜになちらし
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / <> → 者 [藍][壬][類][紀] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,地名,植物 1749 [題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])
[原文]白雲乃 立田山乎 夕晩尓 打越去者 瀧上之 櫻花者 開有者 落過祁里 含有者 可開継 許知<期>智乃 花之盛尓 雖不見<在> 君之三行者 今西應有
[訓読]白雲の 龍田の山を 夕暮れに うち越え行けば 瀧の上の 桜の花は 咲きたるは 散り過ぎにけり ふふめるは 咲き継ぎぬべし こちごちの 花の盛りに 見さずとも 君がみ行きは 今にしあるべし
[仮名],しらくもの,たつたのやまを,ゆふぐれに,うちこえゆけば,たきのうへの,さくらのはなは,さきたるは,ちりすぎにけり,ふふめるは,さきつぎぬべし,こちごちの,はなのさかりに,めさずとも,きみがみゆきは,いまにしあるべし
[校異]斯 → 期 [藍][類][紀] / 左右 → 在 [新訓万葉集] (塙) 左右 [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,地名,枕詞,植物 1750 [題詞](春三月諸卿大夫等下難波時歌二首[并短歌])反歌
[原文]暇有者 魚津柴比渡 向峯之 櫻花毛 折末思物緒
[訓読]暇あらばなづさひ渡り向つ峰の桜の花も折らましものを
[仮名],いとまあらば,なづさひわたり,むかつをの,さくらのはなも,をらましものを
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,奈良,餞別,天平6年3月,年紀,難波,大阪,風神,鎮花,植物 1751 [題詞]難波經宿明日還来之時歌一首[并短歌]
[原文]嶋山乎 射徃廻流 河副乃 丘邊道従 昨日己曽 吾<超>来壮鹿 一夜耳 宿有之柄二 <峯>上之 櫻花者 瀧之瀬従 落堕而流 君之将見 其日左右庭 山下之 風莫吹登 打越而 名二負有社尓 風祭為奈
[訓読]島山を い行き廻れる 川沿ひの 岡辺の道ゆ 昨日こそ 我が越え来しか 一夜のみ 寝たりしからに 峰の上の 桜の花は 瀧の瀬ゆ 散らひて流る 君が見む その日までには 山おろしの 風な吹きそと うち越えて 名に負へる杜に 風祭せな
[仮名],しまやまを,いゆきめぐれる,かはそひの,をかへのみちゆ,きのふこそ,わがこえこしか,ひとよのみ,ねたりしからに,をのうへの,さくらのはなは,たきのせゆ,ちらひてながる,きみがみむ,そのひまでには,やまおろしの,かぜなふきそと,うちこえて,なにおへるもりに,かざまつりせな
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 越 → 超 [藍][紀] / 岑 → 峯 [藍][紀][矢][京] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,龍田,大阪,天平6年3月,年紀,風祭り,風神,地名,植物 1752 [題詞](難波經宿明日還来之時歌一首[并短歌])反歌
[原文]射行相乃 <坂>之踏本尓 開乎為流 櫻花乎 令見兒毛欲得
[訓読]い行き逢ひの坂のふもとに咲きををる桜の花を見せむ子もがも
[仮名],いゆきあひの,さかのふもとに,さきををる,さくらのはなを,みせむこもがも
[校異]歌 [西] 謌 / 坂上 → 坂 [藍][類][紀] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,龍田,大阪,天平6年3月,年紀,鎮花,地名,植物 1753 [題詞]検税使大伴卿登筑波山時歌一首[并短歌]
[原文]衣手 常陸國 二並 筑波乃山乎 欲見 君来座登 熱尓 汗可伎奈氣 木根取 嘯鳴登 <峯>上乎 <公>尓令見者 男神毛 許賜 女神毛 千羽日給而 時登無 雲居雨零 筑波嶺乎 清照 言借石 國之真保良乎 委曲尓 示賜者 歡登 紐之緒解而 家如 解而曽遊 打靡 春見麻之従者 夏草之 茂者雖在 今日之樂者
[訓読]衣手 常陸の国の 二並ぶ 筑波の山を 見まく欲り 君来ませりと 暑けくに 汗かき嘆げ 木の根取り うそぶき登り 峰の上を 君に見すれば 男神も 許したまひ 女神も ちはひたまひて 時となく 雲居雨降る 筑波嶺を さやに照らして いふかりし 国のまほらを つばらかに 示したまへば 嬉しみと 紐の緒解きて 家のごと 解けてぞ遊ぶ うち靡く 春見ましゆは 夏草の 茂くはあれど 今日の楽しさ
[仮名],ころもで,ひたちのくにの,ふたならぶ,つくはのやまを,みまくほり,きみきませりと,あつけくに,あせかきなげ,このねとり,うそぶきのぼり,をのうへを,きみにみすれば,をかみも,ゆるしたまひ,めかみも,ちはひたまひて,ときとなく,くもゐあめふる,つくはねを,さやにてらして,いふかりし,くにのまほらを,つばらかに,しめしたまへば,うれしみと,ひものをときて,いへのごと,とけてぞあそぶ,うちなびく,はるみましゆは,なつくさの,しげくはあれど,けふのたのしさ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 岑 → 峯 [藍][類][紀][矢] / 君 → 公 [藍][類][紀][温] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,国見,歌垣,大伴旅人,道足,地名,枕詞 1754 [題詞](検税使大伴卿登筑波山時歌一首[并短歌])反歌
[原文]今日尓 何如将及 筑波嶺 昔人之 将来其日毛
[訓読]今日の日にいかにかしかむ筑波嶺に昔の人の来けむその日も
[仮名],けふのひに,いかにかしかむ,つくはねに,むかしのひとの,きけむそのひも
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,国見,歌垣,大伴旅人,道足,地名 1755 [題詞]詠霍公鳥一首[并短歌]
[原文]鴬之 生卵乃中尓 霍公鳥 獨所生而 己父尓 似而者不鳴 己母尓 似而者不鳴 宇能花乃 開有野邊従 飛翻 来鳴令響 橘之 花乎居令散 終日 雖喧聞吉 幣者将為 遐莫去 吾屋戸之 花橘尓 住度鳥
[訓読]鴬の 卵の中に 霍公鳥 独り生れて 己が父に 似ては鳴かず 己が母に 似ては鳴かず 卯の花の 咲きたる野辺ゆ 飛び翔り 来鳴き響もし 橘の 花を居散らし ひねもすに 鳴けど聞きよし 賄はせむ 遠くな行きそ 我が宿の 花橘に 住みわたれ鳥
[仮名],うぐひすの,かひごのなかに,ほととぎす,ひとりうまれて,ながちちに,にてはなかず,ながははに,にてはなかず,うのはなの,さきたるのへゆ,とびかけり,きなきとよもし,たちばなの,はなをゐちらし,ひねもすに,なけどききよし,まひはせむ,とほくなゆきそ,わがやどの,はなたちばなに,すみわたれとり
1756 [題詞](詠霍公鳥一首[并短歌])反歌
[原文]掻霧之 雨零夜乎 霍公鳥 鳴而去成 A怜其鳥
[訓読]かき霧らし雨の降る夜を霍公鳥鳴きて行くなりあはれその鳥
[仮名],かききらし,あめのふるよを,ほととぎす,なきてゆくなり,あはれそのとり
1757 [題詞]登筑波山歌一首[并短歌]
[原文]草枕 客之憂乎 名草漏 事毛有<哉>跡 筑波嶺尓 登而見者 尾花落 師付之田井尓 鴈泣毛 寒来喧奴 新治乃 鳥羽能淡海毛 秋風尓 白浪立奴 筑波嶺乃 吉久乎見者 長氣尓 念積来之 憂者息沼
[訓読]草枕 旅の憂へを 慰もる こともありやと 筑波嶺に 登りて見れば 尾花散る 師付の田居に 雁がねも 寒く来鳴きぬ 新治の 鳥羽の淡海も 秋風に 白波立ちぬ 筑波嶺の よけくを見れば 長き日に 思ひ積み来し 憂へはやみぬ
[仮名],くさまくら,たびのうれへを,なぐさもる,こともありやと,つくはねに,のぼりてみれば,をばなちる,しつくのたゐに,かりがねも,さむくきなきぬ,にひばりの,とばのあふみも,あきかぜに,しらなみたちぬ,つくはねの,よけくをみれば,ながきけに,おもひつみこし,うれへはやみぬ
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 武 → 哉 [藍][類] [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,山讃美,旅愁,東国,関東,枕詞,地名 1758 [題詞](登筑波山歌一首[并短歌])反歌
[原文]筑波嶺乃 須蘇廻乃田井尓 秋田苅 妹許将遺 黄葉手折奈
[訓読]筑波嶺の裾廻の田居に秋田刈る妹がり遣らむ黄葉手折らな
[仮名],つくはねの,すそみのたゐに,あきたかる,いもがりやらむ,もみちたをらな
[KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,旅愁,東国,関東,地名,植物 1759 [題詞]登筑波嶺為の歌會日作歌一首[并短歌]
[原文]鷲住 筑波乃山之 裳羽服津乃 其津乃上尓 率而 未通女<壮>士之 徃集 加賀布の歌尓 他妻尓 吾毛交牟 吾妻尓 他毛言問 此山乎 牛掃神之 従来 不禁行事叙 今日耳者 目串毛勿見 事毛咎莫 [の歌者東俗語曰賀我比]
[訓読]鷲の住む 筑波の山の 裳羽服津の その津の上に 率ひて 娘子壮士の 行き集ひ かがふかがひに 人妻に 我も交らむ 我が妻に 人も言問へ この山を うしはく神の 昔より 禁めぬわざぞ 今日のみは めぐしもな見そ 事もとがむな [の歌は、東の俗語に賀我比と曰ふ]
[仮名],わしのすむ,つくはのやまの,もはきつの,そのつのうへに,あどもひて,をとめをとこの,ゆきつどひ,かがふかがひに,ひとづまに,われもまじらむ,わがつまに,ひともこととへ,このやまを,うしはくかみの,むかしより,いさめぬわざぞ,けふのみは,めぐしもなみそ,こともとがむな
[校異]歌 [西] 謌 / 作歌 [西] 作謌 [西(訂正)] 作歌 / 短歌 [西] 短哥 [西(訂正)] 短歌 / 牡 → 壮 [元][藍][類] / 歌 [西] 謌 / 歌 [西] 謌 [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,歌垣,東国,関東,地名 1760 [題詞](登筑波嶺為の歌會日作歌一首[并短歌])反歌
[原文]男神尓 雲立登 斯具礼零 沾通友 吾将反哉
[訓読]男神に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我れ帰らめや
[仮名],をかみに,くもたちのぼり,しぐれふり,ぬれとほるとも,われかへらめや
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌集 [西] 謌集 [西(訂正)] 歌集 [KW],雑歌,作者:高橋虫麻呂歌集,茨城,歌垣,東国,関東 1761 [題詞]詠鳴<鹿>一首[并短歌]
[原文]三諸之 神邊山尓 立向 三垣乃山尓 秋芽子之 妻巻六跡 朝月夜 明巻鴦視 足日木乃 山響令動 喚立鳴毛
[訓読]三諸の 神奈備山に たち向ふ 御垣の山に 秋萩の 妻をまかむと 朝月夜 明けまく惜しみ あしひきの 山彦響め 呼びたて鳴くも
[仮名],みもろの,かむなびやまに,たちむかふ,みかきのやまに,あきはぎの,つまをまかむと,あさづくよ,あけまくをしみ,あしひきの,やまびことよめ,よびたてなくも
[校異]鹿謌 → 鹿 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 哥 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,異伝,飛鳥,秋,地名,植物,動物 1762 [題詞](詠鳴<鹿>一首[并短歌])反歌
[原文]明日之夕 不相有八方 足日木<乃> 山彦令動 呼立哭毛
[訓読]明日の宵逢はざらめやもあしひきの山彦響め呼びたて鳴くも
[仮名],あすのよひ,あはざらめやも,あしひきの,やまびことよめ,よびたてなくも
[校異]歌 [西] 謌 / 之 → 乃 [元][藍][類][紀] / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 [KW],雑歌,作者:柿本人麻呂,異伝,飛鳥,秋,動物 1763 [題詞]沙弥女王歌一首
[原文]倉橋之 山乎高歟 夜牢尓 出来月之 片待難
[訓読]倉橋の山を高みか夜隠りに出で来る月の片待ちかたき
[仮名],くらはしの,やまをたかみか,よごもりに,いでくるつきの,かたまちかたき
[左注]右一首間人宿祢大浦歌中既見 但末一句相換 亦作歌兩主不敢正指 因以累載 [校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 作歌 [西] 作謌 [西(訂正)] 作歌 [KW],雑歌,作者:沙弥女王,間人大浦,異伝,飛鳥,地名 1764 [題詞]七夕歌一首[并短歌]
[原文]久堅乃 天漢尓 上瀬尓 珠橋渡之 下湍尓 船浮居 雨零而 風不吹登毛 風吹而 雨不落等物 裳不令濕 不息来益常 <玉>橋渡須
[訓読]久方の 天の川原に 上つ瀬に 玉橋渡し 下つ瀬に 舟浮け据ゑ 雨降りて 風吹かずとも 風吹きて 雨降らずとも 裳濡らさず やまず来ませと 玉橋渡す
[仮名],ひさかたの,あまのかはらに,かみつせに,たまはしわたし,しもつせに,ふねうけすゑ,あめふりて,かぜふかずとも,かぜふきて,あめふらずとも,もぬらさず,やまずきませと,たまはしわたす
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 短歌 [西] 短謌 [西(訂正)] 短歌 / 王 → 玉 1765 [題詞](七夕歌一首[并短歌])反歌
[原文]天漢 霧立渡 且今日<々々々> 吾待君之 船出為等霜
[訓読]天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し舟出すらしも
[仮名],あまのがは,きりたちわたる,けふけふと,わがまつきみし,ふなですらしも
[校異]歌 [西] 謌 [西(訂正)] 歌 / 且今日 → 々々々 [元][藍] / 歌 [西] 謌