千載和歌集

Senzai wakashū

作者複数 Various

千載和歌集卷第十
賀歌

605

院御製

みこにおはしましける時鳥羽殿に渡らせ給へりける頃八條院内親王と申しける時かの御かたにて竹遐年友といへる心を講ぜられけるによませ給うける

幾千世とかぎらざりける呉竹や君が齡のたぐひなるらむ
606

後三條内大臣

うゑて見る籬の竹の節ごとにこもれる千よは君ぞ數へむ
607

皇太后宮大夫俊成

わが友に君がみかきの呉竹は千よに幾よの影をそふらむ
608

大宮前太政大臣

祝の心をよみ侍りける

君が代は天のかご山出づる日のてらむ限は盡じとぞ思ふ
609

源俊頼朝臣

堀川院の御時立春の朝に今日の心つかうまつるべきよし侍りければ奏し侍りける

君がためみたらし川を若水にむすぶや千代の始なるらむ
610

堀川院御製

同じ御時后の宮にて花契遐年といへる心を上のをのこどもつかうまつりけるによませ給うける

千年まで折りて見るべき櫻花梢はるかにさきそめにけり
611

大納言忠教

鳥羽院位おりさせ給うての頃庭花年久といへる心をかれこれつかうまつりけるによみ侍りける

ほり植ゑし若木の梅にさく花は年も限らぬ匂ひなりけり
612

權中納言俊忠

堀川院の御時鳥羽殿に行幸の日池上藤といへる心をよみ侍りける

千とせすむ池の汀の八重櫻かげさへそこに重ねてぞ見る
613

源俊頼朝臣

白川院鳥羽殿におはしましける時松契遐年といふ心をよめる

神代より久しかれとや動きなき岩ねに松の種を蒔きけむ
614

京極の前のおほきおほいまうち君の高陽院の家の歌合に祝の心をよみ侍りける

落瀧つやそ宇治川のはやき瀬に岩こす波は千代の數かも
615

京極前太政大臣

二條太皇太后宮賀茂のいつきと申しける時本院にて松枝映水といへる心をよみ侍りける

千早振いつきの宮のありす川松とともにぞ影はすむべき
616

二條太皇太后宮肥後

堀川院の御時百首の歌奉りける時子日の心をよめる

行末をまつぞひさしき君がへむ千代の始の子日と思へば
617

藤原基俊

祝の心をよめる

奥山のやつをの椿君が世にいくたび蔭をかへむとすらむ
618

法性寺入道前太政大臣

保延二年法金剛院に行幸ありて菊契多秋といへる心をよみ侍りける

君が代を長月にしも白菊の咲くや千歳の志るしなるらむ
619

花薗左大臣

八重菊の匂に志るし君が世はちとせの秋を重ぬべしとは
620

八條前太政大臣

千早振神代のことも人ならばとはましものを白菊のはな
621

崇徳院御製

百首の歌めしける時祝の心をよませ給うける

吹く風も木々の枝をばならさねど山は久しき聲ぞきこゆる
622

左のおほいまうち君

二條院の御時大内におはしまして始めて花有喜色といへる心をよませ給ひけるによみ侍りける

千世ふべき始の春としりがほにけしきことなる初櫻かな
623

二條院御製

うへのをのこども百首の歌奉りける時祝の心をよませ給うける

白雲にはねうちつけてとぶ鶴の遙に千世の思ほゆるかな
624

式子内親王

百首の歌よみ給ひける時の祝の歌

うごきなきなほ萬世ぞ頼むべきはこやの山のみねの松風
625

皇太后宮大夫俊成

攝政、右大臣に侍りける時百首の歌よませ給ひけるに祝の歌五首が中によみ侍りける

百千たび浦島が子は歸るともはこやの山は常磐なるべし
626

大炊御門右大臣

二條院の御時おほ炊の御門高倉の内裏に侍りけるに同じ西の町の家にて初めて詩歌講じ侍りけるに鶴契遐年といへる心をよみ侍りける

幾千世と限らぬたづの聲すなり雲ゐの近き宿の志るしに
627

入道前關白太政大臣

閑院の家にてはじめて對松爭齡といへる心をよみ侍りける

千年ふる尾上の小松移し植ゑて萬代までの友とこそ見め
628

源通能朝臣

萬代もすむべき宿にうゑつれば松こそ君が影をたのまめ
629

右のおほいまうち君

高倉院の御時内裏にまゐり侍りけるにうへの御笛に萬歳樂ふかせ給ひけるをはじめて承りて又の日女房の中に申し侍りける

笛のねの萬代までと聞えしを山もこたふる心地せしかな
630

修理大夫顯季

入道右大臣はじめて中院の家に住み侍りける時祝の心をよめる

群れてゐるたづのけしきに著き哉千年すむべき宿の池水
631

賀茂成助

橘俊綱の朝臣の伏見の家にかつらをほりうゑさせ給ひけるによめる

瑞垣の桂をうつす宿なればつき見むことぞ久しかるべき
632

藤原孝善

俊綱の朝臣さぬきの守にまかりける時祝の心をよめる

君が代に較べていはゞ松山の松の葉數はすくなかりけり
633

善滋爲政朝臣

後一條院の御時長和五年大甞會主基方の御屏風に備中國長田山の麓に琴ひき遊びしたる所をよめる

千世とのみ同じことをぞ調ぶなる長田の山のみねの松風
634

前中納言匡房

白川院の御時承保元年大嘗會主基方の稻春歌神田の郷をよめる

千早振神田の里のいねなれば月日とともに久しかるべし
635

宮内卿永範

院の御時の久壽二年大甞會悠紀方の風俗歌近江國わか松の森をよめる

すべらぎの末さかゆべき印には木高くぞなる若松のもり
636

參議俊綱

平治元年大甞會悠紀方の風俗歌近江國千坂の森をよめる

君か代の數にはしかじ限なき千坂の浦のまさごなりとも
637

刑部卿範兼

同じ御時大甞會主基方の稻春歌丹波國雲田村をよめる

天地の極めも知らぬ御代なれば雲田の村の稻をこそつけ
638

宮内卿永範

高倉院の御時仁安三年大甞會悠紀方の御屏風の歌

霜ふれどさかえこそませ君が世に逢坂山のせきのすぎ村
639

藤原季經朝臣

今上の御時元暦元年大甞會悠紀方の風俗歌、三神の山をよめる

ときはなるみ神の山の杉村や八百萬代のしるしなるらむ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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