續拾遺和歌集

Shoku Shūi wakashū

作者複数 Various

續拾遺和歌集卷第六
冬歌

379

後鳥羽院御製

初冬の心を

冬の來て紅葉吹きおろす三室山あらしの末に秋ぞ殘れる
380

院辨内侍

冬のくる神なび山の村時雨ふらばともにと散る木葉かな
381

正三位知家

道助法親王の家の五十首の歌に、朝時雨

冬きぬとけさは岩田の柞原音にたてゝも降るしぐれかな
382

土御門内大臣

千五百番歌合に

時雨ともなにしかわかむ神無月いつもしのだの杜の雫は
383

小侍從

音づれて猶過ぎぬるかいづくにも心をとめぬ初時雨かな
384

春宮大夫實兼

百首の歌奉りし時

吹きまよふ風に任せて山の端にしぐるゝ雲は跡も定めず
385

侍從雅有

題志らず

明くる夜の外山吹越す木がらしに時雨てつたふ峯の浮雲
386

如願法師

前大納言爲家の家の百首の歌に

今日も又暮れぬと思へば足曳の山かき曇りふるしぐれ哉
387

前關白左大臣一條

冬の歌の中に

晴れくもりおなじ空なる浮雲の重なる方は猶しぐれつゝ
388

順徳院御製

山風に時雨やとほくなりぬらむ雲にたまらぬ有あけの月
389

菅原在匡朝臣

染めのこす木葉もあらば神無月猶も時雨の色は見てまし
390

寂蓮法師

神無月しぐるゝ儘に晴れ行くや梢にたへぬ木葉なるらむ
391

平政村朝臣

とまるべき物とも見えぬ木葉哉時雨にそへて嵐吹くなり
392

左近中將家教

嵐吹く木葉に音をさきだてゝしぐれもやらぬ村雲のそら
393

太上天皇

百首の歌めされしついでに

神無月曇らでふるや槇の屋の時雨にたぐふ木葉なるらむ
394

藤原爲世朝臣

村雲のうきてそら行く山風に木葉殘らずふるしぐれかな
395

中務卿宗高親王

落葉

村雲の跡なき方もしぐるゝは風をたよりの木葉なりけり
396

式乾門院御匣

木枯しの風に亂るゝ紅葉ばや雲のよそなる時雨なるらむ
397

從三位忠兼

立田山秋はかぎりの色とみし木葉は冬のしぐれなりけり
398

前大納言爲氏

弘長元年百首の歌奉りし時、おなじこゝろを

紅葉ばの秋の名殘のかたみだにわれとのこさぬ木枯の風
399

太上天皇

人々題をさぐりて歌つかうまつりしついでに、落葉浮水といへる心を

大井川ゐぜきに秋の色とめてくれなゐくゝる瀬々の岩波
400

源具親朝臣

名所の歌奉りけるに

紅葉ばのふりにし世より大井河絶えぬ御幸の跡をみる哉
401

土御門院御製

題志らず

橋姫のたもとや色に出でぬらむ木葉流るゝうぢの網代木
402

後京極攝政前太政大臣

古里のはらはぬ庭に跡とぢて木のはや霜の下に朽ちなむ
403

平政長

見し秋の露をば霜におきかへて花のあとなき庭の冬ぐさ
404

前右兵衛督爲教女

色みえぬ枯野の草のあとまでも露の名殘とむすぶはつ霜
405

前大納言資季

百首の歌奉りし時

今よりは草葉におきし白露もこほれる霜と結びかへつゝ
406

前中納言定家

惟明親王の家の十五首の歌に

神無月くれやすき日の色なれば霜の下葉に風もたまらず
407

順徳院御製

題志らず

み室山秋の時雨に染めかへて霜がれのこる木々の下ぐさ
408

前關白左大臣一條

さらぬだに枯行く宿の冬草にあかずも結ぶ夜はの霜かな
409

土御門院御製

人めより軈てかれにし我宿の淺茅が霜ぞむすぼゝれ行く
410

讀人志らず

霜ふかき庭のあさぢの志をればに朝風さむし岡のへの里
411

小侍從

霜枯の淺茅色づく冬野には尾ばなぞ秋のかたみなりける
412

後京極攝政前太政大臣

秋の色のはては枯野となりぬれど月は霜こそ光なりけれ
413

常盤井入道前太政大臣

建保四年内裏の百番歌合に

紅葉せしよもの山べはあれはてゝ月より外の秋ぞ殘らぬ
414

權大納言長雅

冬月を

さゆる夜も淀まぬ水のはやせ河こほるは月の光なりけり
415

藤原基綱

篠のはのさやぐ霜夜の山風に空さへこほるありあけの月
416

冷泉太政大臣

寳治百首の歌奉りし時、豐明節會

山藍のをみのころもで月さえて雲居の庭に出づるもろ人
417

後嵯峨院御製

百首よませ給うけるに

少女子が袖志ろたへに霜ぞおく豐の明も夜や更けぬらむ
418

土御門院御製

題志らず

松さむきみつの濱べのさ夜千鳥干潟の霜に跡やつけつる
419

京極院内侍

夕千鳥といへる心を

夕さればくだけて物や思ふらむ岩こす波に千鳥鳴くなり
420

後京極攝政前太政大臣

冬の歌の中に

照月の影にまかせてさ夜千鳥かたぶく方に浦づたふなり
421

權律師公猷

夜を寒み須磨の入江に立つ千鳥空さへこほる月に鳴く也
422

俊惠法師

汐風に與謝の浦松音さえて千鳥とわたる明けぬこの夜は
423

寂蓮法師

さゆる夜のうきねの鴨のこも枕氷やかねて結び置くらむ
424

宜秋門院丹後

かたしきの霜夜の袖におもふかなつらゝの床の鴛の獨寐
425

西園寺入道前太政大臣

山がはの紅葉のうへの薄氷木の間もりくる月かとぞ見る
426

前大納言忠良

千五百番歌合に

冴えゆけば谷の下水音絶えてひとりこほらぬ峰の松かぜ
427

平宣時

題志らず

さゞ波や志がのからさき氷る夜は松より外の浦風もなし
428

大江頼重

岩まもる波の志がらみ懸けとめて流れもやらず氷る山河
429

正三位知家

洞院攝政の家の百首の歌に、氷を

せきあまる波の音さへ淀むなり今朝は氷のゐでの志がらみ
430

冷泉太政大臣

建長四年三首の歌に、河氷

風わたる宇治の河波さゆる夜に氷をかくるせゞの網代木
431

權中納言具房

霰をよみ侍りける

さえくれて霰ふる夜のさゝ枕夢をのこさぬ風のおとかな
432

權僧正實伊

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

霰ふる三輪の檜原の山風にかざしの玉のかつみだれつゝ
433

參議雅經

建保五年四月庚申に、冬夕といへるこゝろを

霰ふる正木のかづらくるゝ日の外山に移る影ぞみじかき
434

從三位爲繼

冬の歌の中に

明けわたる峯のうき雲たえ%\に山風さむみ霰ふるらし
435

前大納言爲氏

弘長元年百首の歌奉りし時、雪

さゆる夜の嵐の風に降り初めて明くる雲間につもる白雪
436

前大僧正慈鎭

名所の歌奉りける時

しがの浦や志ばし時雨の雲ながら雪になりゆく山颪の風
437

參議雅經

建保五年内裏の歌合に、冬河風

この比は時雨も雪もふるさとに衣かけほすさほの河かぜ
438

順徳院御製

百首の歌よませ給うけるに

山川の氷も薄き水の面にむら/\つもる今朝のはつゆき
439

前大僧正慈鎭

題志らず

今朝は又かさねて冬をみつる哉枯野の上にふれるしら雪
440

正三位知家

承久元年内裏の歌合に、杜間雪

秋の色をはらふとみつる木枯の杜の梢はゆきもたまらず
441

九條左大臣

雪の朝右衛門督忠基がもとに遣しける

今朝は猶雪にぞ人はまたれけるとはぬ習を思ひしれども
442

常磐井入道前太政大臣

洞院攝政の家の百首の歌に、雪を

今日だにも道踏分けぬ白雪のあすさへ降らば人も待れじ
443

光俊朝臣

冬の歌の中に

自づからとふにつらさの跡をだにみて恨みばや庭の白雪
444

藻壁門院少將

跡惜むたがならはしの山路とて積れる雪を問ふ人のなき
445

藤原教雅朝臣

跡はみなもとよりたえし山里の木の葉の上をうづむ白雪
446

左近中將公衡

西行法師すゝめ侍りける百首の歌に

三輪の山夜のまの雪に埋れて下葉ぞ杉の志るしなりける
447

前大納言爲家

雪の歌とてよみ侍りける

矢田の野のあさぢが原も埋れぬいくへあらちの峯の白雪
448

道洪法師

つもれども氷らぬ程は吹きたてゝ風にあまぎる峯の白雪
449

寂蓮法師

守覺法親王の家の五十首の歌に

山風の音さへうとくなりにけり松をへだつる嶺のしら雪
450

藤原隆博朝臣

文永十年七月内裏の七首の歌奉りし時

まつとせし風のつてさへ絶果てゝ因幡の山につもる白雪
451

賀茂氏久

かんだち雪の朝忍びて御幸ありける後によみ侍りける

神山の松も友とぞ思ふらむふりずば今日の御幸みましや
452

從二位行家

弘長元年百首の歌奉りける時、雪を

高圓のをのへの雪に跡たえてふりにし宮は人もかよはず
453

從二位頼氏

寳治百首の歌奉りける時、積雪の心を

眞柴かる道や絶えなむ山賤のいやしきふれる夜はの白雪
454

信實朝臣

建保五年内裏の歌合に、冬海雪

田子の蜑の宿まで埋む富士のねの雪も一つに冬はきに鳬
455

平政村朝臣

冬の歌の中に

伊勢島や浦の干潟に降る雪の積りもあへず汐やみつらむ
456

法性寺入道前關白太政大臣

雪中遠情といふ事を

かきくらし降る白雪に鹽竈のうらの煙も絶えや志ぬらむ
457

後嵯峨院御製

白河殿の七百首の歌に、濱邊雪

八百日ゆく濱の眞砂地はる%\と限もみえずつもる白雪
458

正親町院右京大夫

題志らず

ふる雪にいくのゝ道の末まではいかゞふみ見む天の橋立
459

周防内侍

だいばん所の壷に雪の山つくられて侍りける朝よみ侍りける

あだにのみ積りし雪のいかにして雲居に懸る山となり劔
460

院少將内侍

寳治百首の歌奉りける時、積雪

九重といふ計にやかさぬらむ御垣のうちの夜はのしら雪
461

前中納言定家

正治百首の歌に

詠めやる衣手さむく降る雪にゆふやみ志らぬ山の端の月
462

前大納言隆房

中將に侍りける時雪の夜月あかゝりけるに内より女房あまたともなひて法勝寺にまかり侍りけるついでに源師光いざなひて夜もすがら遊びて朝に遣しける

逢はでこそ昔の人は歸りけれ雪と月とをともに見しかな
463

從三位通氏

大納言通方八幡宮にて歌合し侍りけるに、冬冴月

山の端はそれとも見えず埋れて雪にかたぶく有明のつき
464

如願法師

後鳥羽院に冬月の五首の歌奉りけるに

いたづらに今年も暮れぬとのへもる袖の氷に月を重ねて
465

後花山院入道前太政大臣

弘長元年十二月内裏の三首の歌に、河氷

年月はさても淀まぬ飛鳥川ゆくせの浪のなにこほるらむ
466

法院覺寛

人々に七十首の歌よませ侍りける時

冬の空日影みじかき頃なればいとゞ程なく暮るゝ年かな
467

覺助法親王

百首の歌奉りし時

つもりゆく月日の程を思ふにもこし方をしき年の暮かな
468

祝部成仲

題志らず

暮行くを惜む心の深ければわが身に年はとまるなりけり
469

皇太后宮大夫俊成

年の暮によみ侍りける

行く年を惜めば身には止るかと思入れてや今日を過ぎまし
470

基俊

いづくにも惜み明さぬ人はあらじこよひ計の年と思へば
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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