續千載和歌集

Shoku Senzai wakashū

作者複数 Various

續千載和歌集卷第七
雜躰

709

法皇御製

顯密の教法の心をよませ給ひける長歌

くもりなき こゝろは空に てらせども 我とへだつる うきぐもを 風のたよりに さそひ來て いつを始めと くらきより くらき道にも まよふらむ これを救はむ ためとてぞ 三世の佛は 出でにける 説きおく法は さま%\に なゝの宗まで わかるれど こゝろ一つを たねとして まことの道にぞ たづね入る 然はあれども これはみな 志かの園生の かぜのおと 吹初めしより わしのみね 八年のあきを むかへても 闇をてらせる ひかりにて 霧をいとはぬ つきならず 鶴のはやしの けぶりより 八つのもゝ年 すぎてこそ まことの法は ひろめむと ときけることは すゑつひに 三のくに%\ つたへ來て わが大和にぞ とゞまれる あまねく照す おほひるめ 本のくにとて まきばしら 造りもなさぬ ことわりの かく顯はれて やまどりの おのれと長く ひさしくぞ 國をまもらむ かためにて 代々を重ねて たえせねば えぶの身乍ら 此のまゝに 悟りのくらゐ うごきなく 世を治むべき 志るしとて 清きなぎさの 伊勢の海に ひろへる玉を みかきもり 潮のみちひも 手にまかせ 吹く風降る雨 時しあらば 民のかまども にぎはひて 萬づ代經べき あしはらの 瑞穗のくにぞ ゆたかなるべき
710

反歌

代々たえず法のしるしを傳へきて普くてらす日の本の國
711

讀人志らず

郭公の長うた

たにちかく 家はをれども こだかくて 里はあれども ほとゝぎす 未だきなかず なくこゑを 聞まくほしと あしたには 門にいでたち ゆふべには 谷をみわたし こふれども 一こゑだにも いまだきなかず
712

反歌

藤なみのさかりは過ぎぬあし引の山郭公などか來なかぬ
713

題志らず

みつもろの かみなび山に いほえさし 繁くおひたる とがの木の 彌つぎ/\に たまかづら たゆることなく ありつゝも やまに通はむ あすかのや 古きみやこは やまたかみ 河とほじろし はるの日は 山しみがほし あきの夜は 河しさやけし あさぐもに たづは亂れて ゆふぎりに 蛙さはなく みるごとに ねにのみなかる むかしおもへば
714

反歌

飛鳥河かは淀さらず立つ霧の思過ぐべき戀にあらなくに
715

讀人志らず

やましろの くにの宮古は はるされば花さきみだる あきされば もみぢ葉匂ひ おびにせる いづみの河の かみつせに うち橋わたし よどせには うき橋わたし かりがよひ 仕へまつらむ よろづ世までに
716

花園左大臣家小大進

久安の百首の歌奉りける長歌

きみが代は 行く末まつに はなさきて とかへり色を みづがきの 久しかるべき 志るしには ときはの山に なみたてる 志ら玉つばき やちかへり 葉がへする迄 みどりなる さか木の枝の たちさかえ 志きみが原を つみはやし 祈るいのりの 驗あれば 願ふねがひも みつしほに のぶる命は ながはまの 眞砂を千世の ありかずに とれ共たえず おほ井がは 萬づ代を經て すむかめの よはひ讓ると むれたりし 葦まのたづの さしながら ともは雲居に 立ちのぼり われは澤べに ひとりゐて 鳴く聲そらに きこえねば 積るうれへも おほかれど こゝろの内に うち志のび おもひ嘆きて すぐるまに 斯るおほせの かしこさを わが身の春に いはひつゝ 代々をふれ共 いろかへぬ 竹のみどりの すゑの世を みかきの内に 移しうゑて 匂ふときくの はなゝらば 霜をいたゞく おいの身も 時にあひたる こゝちこそせめ
717

讀人志らず

旋頭歌

題志らず

白雪のふりしく冬はすぎにけらしも春霞たなびく野べに

うぐひす鳴くも

718

泊瀬のや弓槻が下に我が隱したる妻茜さし照れる月夜に

ひと見けむかも

719

人麿

池のべのをつきが下に笹なかりそ其れをだに君が形見に

見つゝ志のばむ

720

藤原隆信朝臣出家して侍りける頃もろともに年の老いぬる事をわびて昔今の事など申して、せめての心ざしに歌に一句をそふるよし申しつかはして侍りける

みどり子と思ひし人も老いぬとて背く世をみる悲しさは

ゆめかうつゝか

721

隆信朝臣

返し

ありてなき夢も現も誰れにかくとはれまし君が見る世に

そむかざりせば

722

入道前太政大臣

折句歌

伏見院みこのみやと申し侍りける時わづらふ事ありて久しく參らざりけるに御製を給はせたりける御返事に、戀しさは誰もさぞといふ事を句のかみ志もにおきて

これも又一枝殘れ志をれてもさける久しさ花のかたみぞ
723

前大納言爲氏

龜山院の御時、こ屏風、すゞり箱を、折句くつ冠におきてよめと仰せごとありければつかうまつりける

こま渡す一瀬もみえずやへこほりうは波なきは深き水底
724

ふぢばかま、女郎花といふことをよみ侍りける

冬枯を千草押しなみはてはみな風に雪さへ又つもるらし
725

後法性寺入道前關白太政大臣

隆信朝臣まうでこむと申しける日を忘れてもや有らむとて、いひし日をたがふなよといふことをくつかうぶりにおきてよみてつかはしける

いかに又獨あかすか忍ぶてふ人はつらしな思ひこりねよ
726

曾禰好忠

物名

きのえ

二葉にてわが引植ゑし松のきの枝さす春に逢ひにける哉
727

かのえ

花の香の枝にし止る物ならば暮るゝ春をも惜まざらまし
728

伊勢大輔

庚申の夜思ふゆかりの人に

何事も捨つる身なれど世は中のえさるまじきは君故と知れ
729

津守國助

梅、さくら

鶯は花の志るべをもとむめり咲くらむ方の風もふかなむ
730

隆信朝臣

李のはな

世をすつと爭でいふらむけふあすも物は何故思ふ我身ぞ
731

皇太后宮大夫俊成

正治の百首の歌奉りける時、たくみ鳥

難波人あしのわか葉やほさでたく緑にかすむゆふ烟かな
732

入道前太政大臣

にはたゝき

小夜衣返すかひなき身にはたゞ君を恨みて袖ぞぬれぬる
733

左大臣

やをとめ

疎らなる閨をとめてはもりくれど宿る程なき夏の夜の月
734

前中納言定家

さし櫛、ひかげ

神山に幾世へぬらむ榊葉の久しく志めをゆひかけてけり
735

前大納言爲氏

かはら硯

露ながら色もかはらずすり衣千草の花のみやぎ野のはら
736

入道前太政大臣

すきをしき

忘れずよ霜の志たなる花ずゝきをしき形見の秋の面かげ
737

太政大臣

こしがたな

古よいかに過ぎこし方なれば忍べど歸るみちなかるらむ
738

津守國助

みす、たゝみ

逢ふことにかへむ命を省みず唯身を捨てゝこふるはかなさ
739

俊頼朝臣

木賊、椋の葉

程もなくとく寒く野はなりにけり虫の聲々弱り行くまで
740

山本入道前太政大臣

筑波山

押並べて四方の草木の色づくはやまず時雨の降ればなり鳬
741

祐子内親王家紀伊

誹諧歌

睦月七日をかしき文ども人々の許にみゆる、身にはさもなければ

春たつと聞くにつけても春日野の若菜をなどか人の忘るゝ
742

大貳三位

題志らず

袂だに匂はざりせば梅の花ひきかくしても折るべき物を
743

從三位頼政

柳埀門前といへるこゝろを

青柳の打垂髮を見せむとやいづべき門にまちたてるらむ
744

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

空はまだあまげになれや春の夜の月も霞の袖がさをきて
745

大僧正行尊

二月の頃俊惠法師わづらふ事侍りければつかはしける

君が爲風をぞいとふこの春は花ゆゑとのみ何おもひけむ
746

信實朝臣

題志らず

招くとてさのみも人の止まらば尾花がもとや所なからむ
747

大貳三位

亂れたる名をのみぞ立つ苅萱のおく白露をぬれ衣にして
748

讀人志らず

我が如く機織る虫も音をやなく人のつらさを經緯にして
749

辨乳母

山の端をいづるのみこそさやけゝれ海なる月の暗げなる哉
750

前大納言爲世

嘉元の百首の歌奉りし時

よる/\は砧の音をさそひ來て風ぞ枕にころもうちける
751

正三位知家

題志らず

賤の女がきなれ衣の秋あはせ早くもいそぐつちの音かな
752

康資王母

泊瀬にまうでゝさほ山の紅葉の散りたるを見て

佐保山の嵐ぞやがてぬがせける紅葉の錦身にはきたれど
753

俊頼朝臣

物申しける人の母に申すべき事ありてまかりて尋ねけるにたび/\、なしと申してあはざりければ

箒木はおもてぶせやと思へばや近づく儘に隱れ行くらむ
754

正三位知家

題志らず

ふりかくる額の髮の片みだれとくと頼むる今日の暮かな
755

從三位頼政

返迎車戀といふことを

載せてやる我が心さへとゞめ置きて妬くも返すむな車哉
756

衣笠内大臣

題志らず

益荒雄が夢の編笠打ちたれて目をも合せず人ぞなりゆく
757

和泉式部

雁の子を人のおこせて侍りければよみ侍りける

いくへづゝ幾つ重ねて頼まゝしかりのこの世の人の心は
758

前大納言爲家

題志らず

かち人の野分にあへる深簔の毛を吹くよこそ苦しかるらめ
759

光俊朝臣

世を捨てゝ人にもみえず知られねば我こそ今は隱簔なれ
760

俊惠法師

道因法師日吉の社の歌合によき歌をよみてまけにけりと聞きていひつかはしける

君が歌飾磨の市と見しか共かちのなきこそ怪しかりけれ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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