Author: Izumi, Kyoka
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About the original source:
Title: Hana no mei zuihitsu 10: Jugatsu no hana
Author: Kyoka Izumi
Publisher: Tokyo : Sakuhinsha , 1999
Publication Note: The copy-text is based on Kyoka zenshu dai niju nana kan (Tokyo: Iwanami Shoten, 1942).
――これは、そゞろな秋のおもひでである。青葉の雨を聞きながら――
露を其のまゝの
其年も初秋の初夜過ぎて、白井氏が玉川べりの実家へ出向いた帰りだと云って、――夕立が地雨に成つて、しと/\と降る中を、まだ寝ぬ門を訪れて、
慣れても、真新しい風情の中に、其の釣鐘草の交つたのが、わけて珍らしかつたのである。
萩も芙蓉も、此の住居には頷かれるが、縁日の鉢植を移したり、植木屋の手に掛けたものとは思はれない。
「あれは
と聞くと、お照さん――鏑木夫人――が、
「春ね、皆で玉川へ遊びに行きました時、――まだ何にも生えて居ない土を、一かけ持つて来たんですよ。」
即ち名所の土の
さら/\と風に露が散る。
また遣水の音がした。
金をかけて、茶座敷を営むより、此の思ひつき至つて妙、
……其の後、つくし、餅草摘みに、私たち玉川へ行つた時、真似して、土を、麹一枚ばかりと、折詰を包んだ風呂敷を一度ふるつては見たものの、土手にも畦にも河原にも、すく/\と皆気味の悪い小さな穴がある。――釣鐘草の咲く時分に、振袖の
「何を振廻はして居るんだな、早く水を入れて遣らないかい。」
でん/\太鼓を貰へたやうに、馬鹿が、嬉しがつて居る家内のあとへ、私は縁側へついて出た。
「これですもの、どつさりあつて……枝も葉もほごしてからでないと、何ですかね、蝶々が入つて寝て居さうで……いきなり桶へ突込んでは気の毒ですから。」
へん、柄にない。
フヽンと
秋は、これよりも深かつた。――露の
……其時、おや、小さな
手広い花屋は、近まはり近在を
若い衆が
こんな事はいくらもある。
「
げに人柄こそは思はるれ。……お嬢さん、奥方たち、婦人の
が、秋日の縁側に、ふはりと懸り、
いき
その真黄な大きな目からは、玉のやうな涙がぽろ/\と
……その菓子の袋を添へて、駄賃を少々。特に、もとの山へ戻すやうに、と云つて、花屋の店へ返したが。――まつたく、木の葉草の花の精が顕はれたやうであつた。
こゝに於て、蝶の
「あゝ、ちら/\。」
手にほごす葉を散つて、小さな白いものが飛んだ。障子をふつと