庭へ廻ると、廊下の隅に吊るした
「!」
思わず一歩退いて、胸を
「陽ちゃんたら」
やっと聞える位の声であった。
「びっくりしたじゃないの。ああ、本当に誰かと思った、いやなひと!」
椅子の上から座布団を下し、縁側に並べた。
「どんな? 工合」
「ゆうべは閉口しちゃった、御飯の時」
「ほーら! いってたの、うちでも岡本さんと。今ごろ陽ちゃんきっとまいっていてよって。少しいい気味だ、うちへ来ない
「今晩から来てよ、あの婆さんなかなか要領がいい。いざとなったら何にもしてくれる気がないらしい」
ふき子は、
「岡本さん」
と、大きな声で呼んだ。
「はい」
「陽ちゃんがいらしたから紅茶入れて頂戴」
「はい」
「ああでしょ? だから私時々堪まらなくなっちゃうの、一日まるっきり口を利かないで御飯をたべることがよくあるのよ」
ふき子はお
「弱いんじゃない?」
「さあ……女中と喧嘩して私帰らしていただきますなんていうの」
岡本が、蒼白い平らな顔に髪を引束ねた姿で紅茶を運んで来た。彼女は、今日特別陰気で、唇をも動かさず口の中で、
「いらっしゃいまし」
と挨拶した。
「岡本さんも一緒に召し上れよ」
「はあ、私あちらでいただきますから」
陽子の部屋に比べると、海岸に近いだけふき子の家は明るく、
段々、陽子は自分の間借りの家でよりふき子のところで時間を潰すことが多くなった。風呂に入りに来たまま泊り、翌日夜になって、翻訳のしかけがある机の前に戻る。そんな日もあった。そこだけ椅子のあるふき子の居間で暮すのだが、彼等は何とまとまった話がある訳でもなかった。ふき子が緑色の籐椅子の中で余念なく細かい手芸をする、間に、
「この辺花なんか育たないのね、山から土を持って来たけれどやっぱり駄目だってよ」
などと話した。
「あ、一寸そこにアール・エ・デコラシオンがあるでしょう? これ、そんなかからとったのよ」
白リネンの小布を持ち上げて、縫かけの









