正朔吟
いふき山の御燈に古年の光をのこしかも川の水音にやゝ春を告たり
鶏は羽にはつねをうつの宮柱宰鳥
神馬しつかに春の白たへ露鳩
谷水の泡たつかたは根芹にて素玉
萬歳の袖に汲メとやはつ霞露長
表をうらに裏を裡白嶺月
殿原は繼尾の鷹の細工して條風
朔日を小槌の小口玉のはる江雨
先たはらから寶ふね書素玉
海苔買てしら魚買てこと買て露鳩
名月の根分の芋を雜煮かな嶺月
大黒舞の氣にも子の年宰鳥
二のかはり宗十良か状見せて江雨
玉川や若水配る朝ほらけ素玉
箱根を越すと活る双六條風
春の味犬もむしろに舌出して露長
明星の影に聲あり年男露鳩
目見へもきらひ世盛の春江雨
野路の梅むめをかきりの道付て嶺月
朝湯から春の匂ひやきそ始條風
寶引綱もみる喰の紅露長
のとかさは又鐵槌の柄かぬけて宰鳥
東君
大紋の袖もさはらす君かはる湖艸
華鰹とても雜煮は吉野椀富長
先へ逢ふ四方屋敷のかさり蠅官梅
東都を思ふ
萬歳や染井をかけて三河島半窓
俵子や田つくりよりの名なるへし露岳
横雲に注連も免さし峯の松八橘
聖節
船長の聲の走りや初日和古藤
老人のけさの身持そ御代の春露筍
元日や霞か關の人通り露澗
目には山耳に鶯華のはる雉扇
青帝
懸相文御所もとくゐと成に鳧魯

元日や昔もかゝる松の門露圭
おとなしき人の歩みや御代の春露谷
門松や羽衣かゝる氣色有嶺杖
いさましきものゝかしらや大餝嶺吟
元日や屋敷々々の門構桃船改 過星
叔氣
山のみを爪紅ひの初日かな秀二
間拍子も順に程よし福壽艸白羽
明行や時計の側の福壽草秀山
吹そめや其一ふしの竹の鶴寸流
履端
小山ほと越て亦候門の松八十翁 元秀
歳末 坐順昆交
本船や棚の上から厄はらひ江雨
大年や見附ケ/\は其通り魯

寢に這入一間を年の匂ひ哉雉扇
十呂盤にかはる鼓や年忘白羽
世中や師走まきれの小祝言條風
行々て大津泊りや年一夜東曉
としの尾や王子の里の灯の露長
年の内に空もしつかや若みとり露筍
煤はきや木陰へたのむ華見笠素玉
福はらに結ふや年の赤いはし露澗
年の豆何か迯行鞍馬道秀二
隣にはまた人聲や除夜の鐘露圭
雪の友笠にその輪のとし忘古藤
煤はきを根にふくみてや寒見舞元秀
藥子も預りもの歟年の暮寸流
餅ついて梢に華を咲せけり嶺秋
福は内と蒔たる豆を茶うけ哉嶺

飯時のくるふも御代の師走かな嶺月
納戸への細道付ケよ餅むしろ露谷
兎や角と亥は子に積る年の雪露鳩
背中から春の近つく樵夫かな過星
水引も穗に出けりな衣くはり宰鳥
春興
梅かゝや能瓶持て酒一斗結城 雁宕
青柳にうたれて眠る牛の面花麥
鶯も來たり井けたは杉丸太もゝ彦
しら梅や御室を出る兒法師田洪
うくひすや樵夫か宿の食烟高原
鶯や猿も眠たく老けりな丈羽
迯水に羽をこく雉子の光哉下館 大濟
船引の尻を/\と胡蝶かな高我
武藏野や杉菜を出る旭影呉言
麥洗ふ流の末のむめ椿十城
梅さくや膳所の家中の迎駕風篁
同
梅かゝや畫具のはける御所車關宿さか井 阿誰
砂川や土を見付てつく/\し文樓
一株のみとり流すな若菜川巴井
梅さくや宿は昔のけはひ坂岱呂
蒲公や塘の下の茶の匂ひ楚由
何ものゝ梅こほしけむ炭たはら喜雀
同
梅かゝや隣の娘嫁せし後佐久山 潭北
梅さくや大佛は日のうつくまり松井田 千之
むめかゝや烏帽子着始る男ふり潭考
同
草の戸の艸履にとまる胡蝶哉露長
きのふけふに解ケてや梅の二三輪條風
無太良と名のるものなし夜梅江雨
いそかれて誰も羽たゝく薺かな嶺月
殘雪一株つゝや麥はたけ素玉
傘持や子の日の松の置合せ魯

二三里は曲らぬ道や土筆過星
梅かゝや塀のあなたは雲のうへ越水
垣間見の鼻をはちくや園の梅秀二
若艸につなかれけりな放れ馬秀山
かはらけを干スやかけろふ一ツつゝ露鳩
軸
古庭に鶯啼きぬ日もすから蕪村
追加
のとかさの跡へ流るゝ小舟かな東都 可客
夜ル明る寒はあやなし梅の花雲帳
鼻よせて心見らるゝむめの華連馬
鞠沓に思ひよせたり若菜摘燕山
音樂を地へは落さぬ柳かな故一
追附
うくひすの身に預らぬ光かな祇丞
梅酒のたしなき比やんめの花筆端
七草を打おさめたる空手かな其川
目の下につはき見らるゝ胡蝶かな蝸名
四十のはるを迎へて
七種やはしめて老の寢覺より存義



