Author: Yosano, Akiko
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About the original source:
Title: Yosano Akiko hyoronshu
Author: Akiko Yosano
Publisher: Tokyo : Iwanami Shoten , 1985
Publication Note: The copy-text is based on Wakaki tomo e (Tokyo: Hakusuisha, 1918).
日本人の上に今や一つの大問題が起っております。近頃の新聞を読む人の誰も気が附く通り、それは
これに対して我々婦人はどういう意見を持つでしょうか。習慣として、我国の婦人はとかくこういう大問題を眼中に置きません。女は家庭に終始する者として、公の事は男子の意見に任せていました。けれども今は、男女の別なく人として十全に生きるために、一切を知り、一切を享楽する敏感が必要であると共に、一切を正確に認識して、それの価値を批判する理性が必要である時代となりました。人は個人として、国民として、世界の人類として、生存しかつ発展するために、平等に思索し、平等に意見を述べ、平等に行動するの自由を持つようになりました。婦人なるが故にわざとこういう問題に目を閉じているようなことがあれば、それは国民としての権利を行使する義務を
私はこの問題について自分だけの感想を述べようと思います。
先ず私の戦争観を述べます。「兵は凶器なり」という支那の
それなら、性急に軍備の即時撤廃を望むかというと、私はそれの行われがたいことを予見します。内政のためでなくて、今日のように国際のために設けられた軍備は、
私は遺憾ながら或程度の軍備保存はやむをえないことだと思います。国内の秩序を
さて我国は何のために出兵するのでしょうか。秘密主義の軍閥政府は出兵についてまだ今日まで一言も口外しませんから、私たちは外国電報と在野の出兵論者の議論とに由って想像する外ありませんが、政府に出兵の意志の十分にあることは、干渉好きの政府が出兵論者の極端な議論を抑制しない上に、議会において出兵の無用を少しも明言しないので解ります。
英仏が我国に出兵を強要して、露西亜の反過激派を救援し、少くも
今一つの出兵理由は、
しかし私たち国民は決してこのような「積極的自衛策」の口実に
西比利亜出兵は恐らく独軍と接戦することはないでしょうから、殺人行為を繁くするには到らないでしょうが、無意義な出兵のために、露人を初め米国から(後には英仏からも)日本の領土的野心を
以上は紙数の制限のために甚だ簡略な説明になりましたが、この理由から私は出兵に対してあくまでも反対しようと思っております。(一九一八年三月)
(『横浜貿易新報』一九一八年三月一七日)