風雅和歌集 (Fūga wakashū) — 風雅和歌集卷第二 春歌中 作者複数 (Various) 14th Century Fūga wakashū 風雅和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1347 ふうがわかしゅう Fūga wakashū 風雅和歌集 ふうがわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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風雅和歌集 Fūga wakashū
作者複数 Various
風雅和歌集卷第二
春歌中
81
院御歌
百首の御歌の中に
みどり濃き霞の志たの山の端にうすき柳の色ぞこもれる
82
權大納言公蔭
題志らず
春雨にめぐむ柳の淺みどりかつ見るうちも色ぞ添ひ行く
83
伏見院御歌
五十首の御歌の中に、柳を
いつはとも心に時は分かなくに遠の柳のはるになるいろ
84
前大納言爲世
文保三年後宇多院に奉りける百首の歌の中に
ひと方に吹きつる風や弱るらむなびきも果てぬ青柳の糸
85
西園寺前内大臣女
柳を詠み侍りける
霞み渡る岡の柳の一もとに長閑にすさぶはるのゆふかぜ
86
儀子内親王
吹くとなき風に柳はなびき立ちて遠近かすむ夕ぐれの春
87
權大納言公宗母
百首の歌奉りし時
はつかなる柳の糸の淺みどり亂れぬほどの春かぜぞ吹く
88
土御門院御歌
名所柳を
舟つなぐかぜも緑になりにけり六田の淀の玉のをやなぎ
99
前大納言爲家
春の歌の中に
廣澤のいけの堤の柳かげみどりもふかくはるさめぞ降る
90
法印定圓
芳野川岩浪はらふふし柳はやくぞはるのいろは見えける
91
永福門院内侍
春はまづなびく柳の姿より風も長閑けく見ゆるなりけり
92
權大納言公宗
雨そゝぐ柳が末は長閑にてをちのかすみの色ぞくれゆく
93
前中納言定家
古集の一句を題にて歌詠み侍りけるに、黄梢新柳出城墻といふ事を
此里のむかひの村の垣根より夕日をそむる玉のをやなぎ
94
中務
柳を詠める
繰り返し年經て見れど青柳の糸は舊りせぬみどりなり けり
95
大江嘉言
岸の上の柳は痛く老いにけり幾世の春をすぐしきぬらむ
96
人丸
百敷の大宮人のかざしたる志だり柳は見れどあかぬかも
97
讀人志らず
梅のはな咲きたる園の青柳は鬘にすべくなりにけらしも
98
貫之
よる人もなき青柳の糸なれば吹きくる風にかつ亂れつゝ
99
藤原爲基朝臣
春の歌の中に
淺みどり柳の糸の打ちはへて今日も志き/\春雨ぞ降る
100
徽安門院一條
昨日今日世は長閑にて降る雨に柳が枝ぞ志だりまされる
101
前大納言爲兼
春雨を
春の色を催ほす雨の降るなべに枯野の草も下めぐむなり
102
土御門院御歌
淺みどり初志ほ染むる春雨に野なる草木ぞ色まさりける
103
權大納言公蔭
かき暮れてふりだにまされつく%\と雫寂しき軒の春雨
104
從三位親子
見るまゝに軒の雫はまされども音には立てぬ庭のはる雨
105
皇太后宮大夫俊成
住吉の社に奉りける百首の歌の中に、同じ心を
春雨は軒のいと水つく%\と心ぼそくて日をもふるかな
106
前中納言定家
題志らず
春雨に木の葉亂れし村時雨それもまぎるゝ方はありけり
107
前大納言爲兼
さびしさは花よいつかの詠めして霞にくるゝ春雨のそら
108
從二位兼行
詠めやる山はかすみて夕暮の軒端の空にそゝぐはるさめ
109
藤原教兼朝臣
霞み暮るゝ空ものどけき春雨に遠き入相の聲そさびしき
110
徽安門院
晴れゆくか雲と霞のひま見えて雨吹きはらふはるの夕風
111
後伏見院御歌
春の御歌の中に
春風は柳の糸を吹きみだし庭よりはるゝゆふぐれのあめ
112
前大納言爲兼
題を探りて歌詠み侍りけるに、河上春月といふ事を
打ち渡す宇治の渡りの夜深きに川音澄みて月ぞかすめる
113
前大納言實明女
百首の歌奉りし時、春の歌
風になびく柳の影もそことなく霞更け行く春の夜のつき
114
永福門院
題志らず
何となく庭の梢は霞み更けているかた晴るゝ山の端の月
115
同院内侍
閨までも花の香深き春の夜の窓にかすめる入り方のつき
116
俊惠法師
きゞすを詠める
狩人の朝踏む小野の草若みかくろへ兼ねて雉子鳴くなり
117
人麿
題志らず
朝霧に志のゝに濡れて呼子鳥み船の山をなきわたる見ゆ
118
前大納言尊氏
喚子鳥を
人もなき深山の奥の呼子鳥いく聲鳴かばたれかこたへむ
119
太上天皇
百首の歌の中に
つばくらめ簾の外に數多見えて春日のどけみ人影もせず
120
儀子内親王
題志らず
春日影世は長閑にてそれとなく囀りかはす鳥のこゑ%\
121
後二條院御歌
春の御歌の中に
雲雀あがる山の裾野の夕暮にわかばの志ばふ春風ぞ吹く
122
永福門院
何となき草の花咲く野邊の春雲にひばりの聲も長閑けき
123
前大僧正慈鎭
春深き野邊の霞の下風に吹かれてあがるゆふひばりかな
124
前大納言爲家
千首の歌詠み侍りけるに
歸る雁羽根打ちかはす志ら雲の道行きぶりは櫻なりけり
125
從二位家隆
春の歌とて詠める
歸る雁秋來し數は知らねども寐ざめの空に聲ぞすくなき
126
藤原爲秀朝臣
歸雁を
別るらむ名殘ならでも春の雁哀なるべきあけぼのゝこゑ
127
永福門院内侍
入り方の月は霞のそこに更けてかへり後るゝ雁の一つら
128
康資王母
雁がねの花の折しも歸るらむ尋ねてだにも人はをしむに
129
皇太后宮大夫俊成
春日の社に奉りける百首の歌の中に、同じ心を
何となく思ひぞおくる歸る雁言づてやらむ人はなけれど
130
西行法師
題志らず
春になる櫻の枝は何となく花なけれどもなつかしきかな
131
俊頼朝臣
いまだ咲かざる花といふ事を
めぐむより氣色こと なる花なれば兼ねても枝の懷かしき哉
132
鴨長明
花を思ふ心を詠める
思ひやる心やかねて詠むらむまだ見ぬ花の面かげに立つ
133
前關白右大臣母
咲かぬ間の待ち遠にのみ覺ゆるは花に心の急ぐなるらし
134
朔平門院
春の歌の中に
咲き咲かぬ梢の花もおしなべてひとつ薫りにかすむ夕暮
135
永福門院右衛門督
花の歌とて
見るまゝに軒端の花は咲き添ひて春雨かすむ遠の夕ぐれ
136
前大納言爲兼
伏見院西園寺に御幸ありて花の歌人々に詠ませ給ひける時
宿からや春の心も急ぐらむ外にまだ見ぬはつざくらかな
137
讀人志らず
題志らず
打ちなびき春は來ぬらし山際の遠き梢の咲き行く見れば
138
人麿
見渡せば春日の野邊に霞立ち開くる花はさくらばなかも
139
鶯の木づたふ梅の移ろへばさくらの花のときかたまけぬ
140
中納言家持
櫻を
春雨にあらそひかねて我宿の櫻のはなは咲きそめにけり
141
後鳥羽院下野
寳治の百首の歌の中に、見花
山櫻またれ/\て咲きしより花に向はぬときの間もなし
142
民部卿爲定
春の歌に
三吉野の芳野の櫻咲きしより一日も雲のたゝぬ日ぞなき
143
光明峰寺入道前攝政左大臣
住捨てし志賀の花園しかすがに咲く櫻あれば春は來に鳬
144
從二位家隆
行く末の花かゝれとて吉野山誰れ白雲のたねをまきけむ
145
後京極攝政前太政大臣
後鳥羽院に五十首の歌召されける時、深山花
かへり見る山は遙かに重なりて麓の花も八重のしらくも
146
前中納言匡房
題志らず
白雲のやへたつ峯と見えつるは高間の山の花ざかりかも
147
貫之
延喜十四年、女一宮の屏風の歌
山のかひたなびき渡る白雲は遠きさくらの見ゆるなり けり
148
前中納言定家
春の歌とて
いつも見し松の色かは泊瀬山さくらに洩るゝ春の一しほ
149
後西園寺入道前太政大臣
文保三年後宇多院に奉りける百首の歌の中に
山遠きかすみのにほひ雲の色花の外までかをるはるかな
150
權大納言公宗女
春の歌の中に
花薫る高嶺の雲の一むらは猶あけのこるしのゝめのそら
151
前參議雅有
花咲かぬ宿の梢もなかりけり都のはるはいまさかりかも
152
左兵衛督直義
花を
花見にと春はむれつゝ玉鉾の道行く人の多くも有るかな
153
貫之
延喜十六年、齋院の屏風に、人の花のもとに立ちて見たる所
山櫻よそに見るとてすがの根の永き春日をたち暮しつる
154
天慶四年、右大將の屏風に、山里に人の花見たる所
まだ知らぬ所までかく來て見れば櫻ばかりの花なかり鳬
155
從二位行家
寳治の百首の歌の中に、見花
櫻花あかぬ心のあやにくに見ても猶こそ見まくほしけれ
156
藤原爲秀朝臣
花の歌の中に
咲き滿ちて散るべくも非ぬ花盛薫るばかりの風は厭はず
157
永福門院右衛門督
伏見院花の頃折々に御幸有りて御覽ぜられけるに嵯峨にて詠み侍りける
眺め殘す花の梢もあらし山風よりさきにたづねつるかな
158
前中納言爲相
春の歌とて
御吉野の大宮所たづね見む古きかざしのはなやのこると
159
中務
櫻を詠める
いそのかみ故郷に咲く花なれば昔ながらに 匂ひけるかな
160
貫之
承平五年内裏の御屏風に馬に乘りたる人の故郷と覺しき所に櫻の花見たる所
故郷に咲ける物から櫻花色はすこしもあせずぞありける
161
皇太后宮大夫俊成
大炊御門右大臣未だ納言に侍りける時三條の家の櫻盛りになりける頃人々歌詠み侍りけるに
君がすむ宿の梢の花ざかり氣色ことなるくもぞ立ちける
其の後いくばくの年も隔てず、近衛太皇太后宮、立后侍りけるとなむ。
162
前大納言爲氏
寳治の百首の歌に、翫花
櫻花いざや手ごとに手折りもて共に千歳の春にかざゝむ
163
普光園入道前關白左大臣
花下日暮と云へる心を
すがの根の永き日影を足びき の山の櫻にあかでくれぬる
164
藤原家經朝臣
永承五年賀陽院の歌合に、櫻を
さても猶あかずやあると山櫻花を常磐に見るよしもがな
165
西行法師
題志らず
同じくば月のをり咲け山櫻はな見る春の絶え間あらせじ
166
太上天皇
百首の歌に
薫り匂ひ長閑けき色を花にもて春にかなへる櫻なりけり
167
前左大臣
春の歌とて
長閑なる鶯の音に聞きそめて花にぞ春のさかりをば見る
168
法橋顯昭
誰にかも今日をさかりとつげやらむ一人見まうき山櫻哉
169
祝部成茂
年ごと に詠めぬ春はなけれどもあかぬは花の色や添ふらむ
170
壽成門院
今朝はなほ咲き添ふ庭の花盛移ろはぬ間を訪ふ人もがな
171
白川院御歌
寛治七年三月十日法勝寺の花御覽じけるついでに常行堂のまへにて、人々鞠つかうまつりけるに、京極前關白太政大臣鞠を奉るとて、尋ねと聞くに、誘はれぬと奏し侍りける御返し
山深く尋ねにはこでさくら花なにし心をあくがらすらむ
172
小侍從
高倉院の御時、内裏より女房數多誘なひて、上達部殿上人花見侍りけるに、右京大夫、折ふし風の氣ありてとて伴ひ侍らざりければ、花の枝に付けて遣しける
さそはれぬ心の程はつらけれど一人見るべき花の色かは
173
建禮門院右京大夫
返し
風を厭ふ花のあたりは如何とてよそながらこそ思遣りつれ
174
源道濟
題志らず
駒とめて見るにもあかず櫻花折りてかざゝむ心ゆくまで
175
前大納言爲家
旅人のゆきゝの岡は名のみして花に留まる春の木のもと
176
前參議爲實
あすか井の春の心は知らねども宿りしぬべき花の蔭かな
177
淨妙寺關白前右大臣
糸櫻の盛りに法勝寺を過ぐとて
立ち寄らで過ぎぬと思へど糸櫻心にかゝる春の木のもと
178
從二位爲子
花の歌あまた詠み侍りける中に
見ぬ方の木末いかにと此里の花にあかでも老をこそ思へ
179
藤原爲基朝臣
尋ね行く道も櫻を三吉野の花のさかりのおくぞゆかしき
180
大納言公重
百首の歌奉りし時
越えやらであかずこそ見れ春の日の長柄の山の花の下道
181
後伏見院御歌
遠村花と云ふ事を
櫻咲くとほぢの村の夕ぐれに花折りかざし人かへるなり
182
前大納言爲世
文保三年後宇多院に奉りける百首の歌の中に
暮れぬとて立ちこそ歸れ櫻狩なほ行くさきに花を殘して
183
伏見院御歌
花の御歌の中に
枝もなく咲き重なれる花の色に梢も重きはるのあけぼの
184
從二位兼行
盛りとは昨日も見えし花の色のなほ咲きかをる木々の曙
185
從三位親子
花なれやまだ明けやらぬ東雲の遠のかすみの奥深きいろ
186
從一位教良女
伏見院人々に花の歌數多よませさせ給ひけるに
山の端の月は殘れるしのゝめに麓の花のいろぞあけゆく
187
後伏見院御歌
春のあしたと云ふ事を
花の上にさすや朝日のかげ晴れて囀る鳥の聲も長閑けき
188
進子内親王
開け添ふ梢の花に露見えておとせぬ雨のそゝぐあさあけ
189
永福門院
夕花を
花の上に志ばし移ろふ夕附日入るともなしに影きえに鳬
190
從三位親子
伏見院の御時五十番歌合に、春夕を
つく%\とかすみて曇る春の日の花靜なるやどの夕ぐれ
191
前大納言家雅
同じ歌合に、春風を
吹くとなき霞の志たの春風に花の香深きやどのゆふぐれ
192
花山院御歌
題志らず
足引の山に入り日の時しもぞあまたの花は照り増りける
193
伏見院御歌
花の上の暮れ行く空に響きゝて聲に色あるいりあひの鐘
194
徽安門院
そことなき霞の色にくれなりて近き梢のはなもわかれず
195
進子内親王
山うすき霞の空はやゝ暮れて花の軒端ににほふつきかげ
196
從二位爲子
前大納言爲兼の家に歌合し侍りけるに、春夜を
花白き梢の上はのどかにてかすみのうちに月ぞふけぬる
197
前大納言忠良
千五百番歌合に
峯しらむ梢の空に影落ちてはなのゆき間にありあけの月
198
後鳥羽院御歌
春の御歌の中に
あたら夜のなごりを花に契りおきて櫻分け入る有明の月