風雅和歌集 (Fūga wakashū) — 風雅和歌集卷第三 春歌下 作者複数 (Various) 14th Century Fūga wakashū 風雅和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1347 ふうがわかしゅう Fūga wakashū 風雅和歌集 ふうがわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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風雅和歌集 Fūga wakashū
作者複数 Various
風雅和歌集卷第三
春歌下
199
後嵯峨院御歌
西園寺に御幸ありて、翫花といふ題を講ぜられけるに
萬代の春日を今日になせりとも猶あかなくに花や散る覽
200
崇徳院御製
花の御歌の中に
年經れどかへらぬ色は春ごとに花に染めてし心なりけり
201
後光明照院前關白左大臣
花を尋ねて伴ひ侍りける人に次の日遣しける
今日も猶散らで心に殘りけりなれし昨日の花のおもかげ
202
從二位隆博
花の歌に
あぢきなくあだなる花の匂ひゆゑ浮世の春に染む心かな
203
修理大夫顯季
三月に閏ありける年よめる
常よりも長閑けく匂へ櫻花はるくはゝれる年の志るしに
204
前大僧正慈鎭
千五百番歌合に
春の心長閑けしとても何かせむ絶えて櫻のなき世なり せば
205
後西園寺入道前太政大臣
惜花と云ふ事を
老が身は後の春とも頼まねば花もわが世も惜まざらめや
206
伏見院御歌
持明院に移住ませ給て花の木共數多植添へられて三歳計の後花咲きたるを御覽じて
植渡す我が世の花もはるは經ぬまして舊木の昔をぞ思ふ
207
權中納言定頼
雨の中に花を思ふと云ふ事をよみ侍りける
雨のうちに散りもこそすれ花櫻折りて簪さむ袖はぬる共
208
俊惠法師
源師光の家にて人々歌よみ侍りけるに、花を
折らずとて散らでもはてじ櫻花この一枝は家づとにせむ
209
平忠盛朝臣
山家花をよめる
尋ね來る花もちりなば山里は最ど人めや枯れむとすらむ
210
藤原元眞
屏風の繪に旅人道行くに櫻の花の散る所
行きてだにいかでとく見む我宿の櫻は今日の風に殘らじ
211
中納言家持
題志らず
立田山見つゝ越えこし櫻花ちりか過ぎなむ我が歸るとき
212
二條院參河内侍
花の歌の中に
見る人の惜む心やまさるとて花をば風の散らすなりけり
213
藻壁門院但馬
寳治の百首の歌の中に、落花
雲まよふ風に天ぎる雪かとてはらへば袖に花の香ぞする
214
前中納言定家
後京極攝政左大將に侍りける時家に六百番歌合し侍りけるに、志賀山越をよめる
袖の雪空吹く風もひとつにて花ににほへる志賀の山ごえ
215
式子内親王
正治二年後鳥羽院に奉りける百首の歌の中に
今朝見れば宿の梢に風過て知られぬ雪のいくへともなく
216
皇太后宮大夫俊成女
千五百番歌合に
高砂の松のみどりも紛ふまで尾のへの風に花ぞちりける
217
前中納言爲相女
春の歌の中に
足柄の山のあらしの跡とめて花の雪ふむたけの志たみち
218
前大納言爲兼
落花をよめる
一志きり吹亂しつる風はやみて誘はぬ花も長閑にぞちる
219
入道二品親王法守
春風のやゝ吹きよわる梢より散り後れたる花ぞのどけき
220
顯親門院
院位におはしましける時、南殿の花の頃入らせ給ふべかりけるを、さはる事ありて程經侍りけるに、花の散りがたに奉られける
恨みばや頼めし程の日數をもまたで移ろふ花のこゝろを
221
院御歌
御返し
あだなれと咲き散る程はある物をとはれぬ花や猶恨む覽
222
伏見院御歌
花の頃北山に御幸あるべかりけるを、とゞまらせ給ひて次の日遣はさせ給ひける
頼めこし昨日の櫻ふりぬともとはゞやあすの雪の木の本
223
後西園寺入道前太政大臣
御返し
花の雪明日をも待たず頼め置きし其言の葉の跡もなければ
224
從二位爲子
落花をよみ侍りける
梢よりよこぎる花を吹きたてゝ山本わたる春のゆふかぜ
225
徽安門院
吹きわたる春の嵐の一はらひあまぎる花にかすむ山もと
226
正三位知家
長らへむ物とも志らで老が世に今年も花の散るを見る覽
227
後鳥羽院御歌
春の御歌の中に
我が身世に布留の山邊の山櫻移りにけりな詠めせしまに
228
大納言經信
宇治にて、山家見花と云ふ心を
白雲の八重たつ山のさくら花散り來る時や花と見ゆらむ
229
入道二品親王尊圓
百首の歌奉りしに
櫻花うつろふ色は雪とのみふるの山風吹かずもあらなむ
230
從二位宣子
落花を
いかにせむ花も嵐もうき世哉誘ふもつらし散るも恨めし
231
鎌倉右大臣
春ふかみ嵐の山の櫻ばな咲くと見し間に散りにけるかな
232
左京大夫顯輔
散る花を惜むばかりや世の中の人の心のかはらざるらむ
233
安嘉門院高倉
寳治の百首の歌に惜花といふ事を
一すぢに風も恨みじ惜めどもうつろふ色は花のこゝろを
234
前參議教長
題志らず
散らざりしもとの心は忘られてふまゝく惜しき花の庭哉
235
前中納言定家
百首の歌に
散りぬとてなどて櫻を恨み劔散らずは見まし今日の庭かは
236
從三位親子
春の歌とて
菫咲くみちの志ばふに花散りて遠かたかすむ野邊の夕暮
237
永福門院内侍
散り殘る花落ちすさぶ夕暮の山の端薄きはるさめのそら
238
前中納言清雅
閑庭落花を
つく%\と雨ふる郷のにはたづみ散りて波よる花の泡沫
239
藤原爲顯
題志らず
吹きよする風にまかせて池水の汀にあまる花の志らなみ
240
院御歌
百首の御歌の中に
梢より落ち來る花ものどかにて霞におもきいりあひの聲
241
前大納言公任
三井寺へまかりけるかへさに白川わたりにもとすみ侍りける所へよりたりけるに花の皆散りにければ
故郷の花はまたでぞ散りにける春より先に歸ると思へば
242
皇太后宮大夫俊成
花留客と云ふ事を
尋ね來る人は都をわするれどねにかへり行く山ざくら哉
243
太宰大貳重家
花の歌の中に
根に歸る花とは聞けど見る人の心の内にとまるなりけり
244
前參議爲實
散る花は浮草ながらかたよりて池のみさびに蛙鳴くなり
245
永福門院
瀧つ瀬や岩もとしろくよる花は流るとすれど又かへるなり
246
從三位頼政
水上落花と云ふ事を
芳野川岩瀬の波による花やあをねが峰に消ゆるしらくも
247
法橋顯昭
題志らず
駒とめて過ぎぞやられぬ清見潟ちりしく花や波の關もり
248
後伏見院御歌
雨中花を
雨しぼるやよひの山の木がくれに殘るともなき花の色哉
249
大納言經信
山花末落と云ふ事を
うらみじな山の端かげの櫻花遲く咲けども遲く散りけり
250
道因法師
花の一枝散り殘れるを人のそれ折りてと云ひければ詠める
風だにも誘ひも果てぬ一枝のはなをば如何折りて歸らむ
251
前中納言定家
題志らず
おもだかや下葉に交る燕子花はな踏み分けてあさる白鷺
252
院御歌
百首の御歌に
やぶし分かぬ春とや汝も花の咲く其名も知らぬ山の下草
253
安嘉門院四條
苗代を
山川をなはしろ水にまかすれば田面にうきて花ぞ流るゝ
254
儀子内親王
櫻散る山した水をせき分けて花に流るゝ小田のなはしろ
255
九條左大臣女
春の田のあぜの細道たえまおほみ水せきわくる苗代の頃
256
太上天皇
百首の歌の中に
みなそこの蛙のこゑも物ふりて木深き池の春のくれがた
257
後鳥羽院御歌
建保四年百首の御歌に
せきかくる小田のはなしろ水澄てあぜこす浪に蛙鳴く也
258
西行法師
春の歌の中に
ますげおふるあら田に水を任すれば嬉し顏にも鳴く蛙哉
259
殷富門院大輔
みがくれてすだく蛙の聲ながら任せてけりな小田の苗代
260
前大僧正慈鎭
蛙鳴苗代と云ふ事をよめる
春の田の苗代みづを任すればすだく蛙のこゑぞながるゝ
261
伏見院御歌
題志らず
小夜ふかく月はかすみて水落つる木陰の池に蛙鳴くなり
262
中務
山吹の花のさかりは蛙なく井手にや春も立ちとまるらむ
263
皇太后宮大夫俊成
太神宮へ奉りける百首の歌に、山吹を
昔たれうゑはじめたる山ぶきの名を流しけむ井手の玉水
264
後鳥羽院御歌
春の御歌の中に
芳野川櫻流れし岩間よりうつればかはるやまぶきのいろ
265
大納言公重
百首の歌奉りし時
末おもる花は宛がら水にふして河瀬に咲ける井手の山吹
266
順徳院御歌
百首の御歌に
河のせに秋をや殘すもみぢ葉のうすき色なる山ぶきの花
267
壬生忠見
屏風に井手の山吹むら/\みゆる家の川の岸にも所々山ぶきあり、をとこまがきによりてせをそこ云ひたる所
折りてだに行べき物を餘所にのみ見てや歸らむ井手の山吹
268
藤原元眞
朱雀院の御屏風の繪に池のほとりに山吹櫻さけり。女簾をあげて見てたてり。
我宿の八重山吹は散りぬべし花のさかりを人の見にこぬ
269
讀人志らず
題志らず
鶯の來鳴く山吹うたかたも君が手触れずはな散らめやも
270
藤原興風
亭子院の歌合に
吹く風に止りもあへず散る時はやへ山吹の花もかひなし
271
後鳥羽院御歌
春の御歌の中に
山吹の花の露添ふ玉川のながれてはやきはるのくれかな
272
前大僧正慈鎭
日吉の社に奉りける百首の歌に
春深き野寺立ち籠むる夕霞つゝみのこせる鐘のおとかな
273
伏見院御歌
暮春の心を
霞渡るとほつ山べの春の暮なにのもよほす哀れともなき
274
前大納言公任
三條關白籠りゐて侍りける頃家の藤の咲きはじめたるを見てよみ侍りける
年毎に春をも知らぬ宿なれど花咲きそむる藤もありけり
275
前大僧正覺圓
朝藤と云ふ事を
むらさきの藤咲くころの朝曇つねより花の色ぞまされる
276
俊頼朝臣
題志らず
吹く風にふちこの浦を見渡せば波は梢の物にぞありける
277
兵部卿成實
藤の花思へばつらき色なれや咲くと見し間に春ぞ暮ぬる
278
永福門院
春の御歌の中に
散りうける山の岩根の藤つゝじ色に流るゝたに川のみづ
279
前大納言實明女
百首の歌奉りし時
躑躅咲く片山蔭の春の暮それとはなしにとまるながめを
280
前大僧正慈鎭
樵路躑躅といふ事を
山人のつま木にさせる岩躑躅心ありてや手折りくしつる
281
後伏見院御歌
題志らず
何となく見るにも春ぞ慕はしき芝生に交る花のいろ/\
282
前大納言爲兼
暮春浦と云ふ事を
春の名殘ながむる浦の夕なぎに漕ぎ別れ行く船も恨めし
283
太上天皇
百首の歌の中に
此頃の藤山吹の花ざかりわかるゝはるもおもひおくらむ
284
進子内親王
春もはやあらしの末に吹きよせて岩根の苔に花ぞ殘れる
285
藤原教兼朝臣
春の歌の中に
花の後も春のなさけは殘りけり有明かすむ志のゝめの空
286
殷富門院大輔
春の暮によめる
身にかへて何歎くらむ大かたは今年のみやは春に別るゝ
287
藤原長能
行きて見む深山がくれの遲櫻あかず暮れぬる春の形見に
288
俊頼朝臣
三月晦日人々歌よみけるに
留らむ事こそ春の難からめ行くへをだにも知せましかば
289
皇太后宮大夫俊成
彌生のつごもりに、花はみな四方の嵐に誘はれてひとりや春の今日は行くらむと法印靜賢申して侍りけるに
惜しと思ふ人の心し後れねばひとりしもやは春の歸らむ
290
貫之
三月盡の心を
來む年も來べき春とは知り乍ら今日の暮るゝは惜くぞ有ける