金葉和歌集 (Kin'yō wakashū) — 金葉和歌集卷第二 夏歌 作者複数 (Various) 1124 Kin'yō wakashū 金葉和歌集 Various 作者複数 Heian Period 中古 12th century 12世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1124 きんようわかしゅう Kin'yō wakashū 金葉和歌集 きんようわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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金葉和歌集 Kin'yō wakashū
作者複数 Various
金葉和歌集卷第二 夏歌
99
源師賢朝臣
卯月のついたちの日ころもがへの心をよめる
我のみぞいそぎたゝれぬ夏衣ひとへに春を惜む身なれば
100
藤原盛房
二條關白の家にて人々殘花の心をよませ侍りけるによめる
夏山の青葉まじりのおそ櫻はつ花よりもめづ らしきかな
101
院御製
應徳元年四月三條の内裏にて庭樹結葉といへる事をよませ給ひける
おしなべて梢青葉になりぬれば松の緑もわかれざりけり
102
大納言經信
玉柏庭も葉びろになりにけりこやゆふしでゝ神まつる頃
103
春官大夫公實
鳥羽殿にて人々歌つかうまつりけるに卯のはなの心をよめる
雪の色をうばひてさけるうの花に小野の里びと冬籠すな
104
大藏卿匡房
卯花連垣といへる事をよめる
何れをかわきてをらまし山里の垣根つゞきに咲ける卯花
105
江侍從
卯花をよめる
雪としも紛ひもはてず卯花は暮るれば月の影かとも見ゆ
106
攝政左大臣
卯花のさかぬ垣根はなけれども名に流れたる玉川のさと
107
中納言實行
卯花たがかき根ぞといへる心をよめる
神山の麓にさけるうの花はたがしめゆひし垣根なるらむ
108
大納言經信
卯花をよめる
賤の女が芦火たく屋も卯花の咲きしかゝれば窶れざり鳬
109
源盛清
卯花を音無河の浪かとてねたくもをらで過ぎにけるかな
110
大中臣定長
卯花の青葉も見えず咲きぬれば雪と花のみ變るなりけり
111
修理大夫顯季
鳥羽殿の歌合に郭公をよめる
み山いでゝまだ里なれぬ郭公うはの空なる音をやなく覽
112
藤原節信
尋郭公といへる事をよめる
けふも又尋ねくらしつ時鳥いかできくべき初音なるらむ
113
攝政左大臣
郭公の歌十首人々によませ侍りける頃に
郭公すがたは水に宿れども聲はうつらぬ物にぞありける
114
源雅光
時鳥なきつとかたる人づての言の葉さへぞ嬉しかりける
115
[1] 1 橋成元
郭公尋ねける日は聞かで二日ばかりありてなきけるを聞きてよめる
郭公おとはの山のふもとまで尋ねし聲をこよひきくかな
116
左京大夫經忠
長實卿の家の歌合に郭公の心をよめる
年毎にきくとはすれど時鳥聲はふりせぬ物にぞありける
117
内大臣
郭公まつ心を
戀すてふなき名やたゝむ郭公まつにねぬ夜の數し積れば
118
藤原顯輔朝臣
時鳥をよめる
時鳥あかですぎぬる聲によりあとなき空に眺めつるかな
119
藤原孝善
承暦二年内裏の歌合に郭公を人にかはりてよめる
郭公こゝろも空にあくがれてよがれがちなるみ山べの里
120
權僧正永縁
子規をよめる
聞く度にめづらしければ時鳥いつも初音の心地こそすれ
121
源俊頼朝臣
人々十首の歌よみけるに郭公を
待兼ねて
[2] 尋ねざりせは 2 郭公たれとか山のかひに鳴かまし
122
中納言實行
いなり山尋ねやみまし子規まつにしるしのなきと思へば
123
中納言公成
郭公驚夢といへる事をよめる
驚かすこゑなかりせば郭公まだ現には聞かずやあらまし
124
院御製
待郭公と云る事をよませ給へる
郭公まつにかゝりてあかすかな藤の花とや人はみるらむ
125
後二條關白家筑前
俊忠卿の家の歌合にほとゝぎすをよめる
まつ人の宿をばしらで郭公をちの山べをなきてすぐらむ
126
中納言女王母
子規ほのめく聲をいづかたときゝまどはしつ明ぼのゝ空
127
前齋院六條
郭公をよめる
宿近くしばしかたらへ時鳥まつ夜の數のつもるしるしに
128
中納言雅定
郭公稀になく夜は山びこのこたふるさへぞ嬉しかりける
129
康資王母
宇治前太政大臣の家の歌合に郭公をよめる
山ちかくうらこぐ舟は郭公なく渡りこそとまりなりけれ
130
中原高眞
匡房卿美作守にて下りける道にて郭公なきけるをきゝてよめる
きゝもあへずこぎぞ別るゝ子規わが心なる舟出ならねば
131
藤原成通朝臣
郭公をよめる
子規一聲なきてあけぬればあやなくよるの恨めしきかな
132
皇后宮式部
月前時鳥といへる事をよめる
郭公雲のたえまにいる月の影ほのかにもなきわたるかな
133
源定信
曉聞郭公といへる事をよめる
わぎもこに逢坂山の郭公あくればかへるそらになくなり
134
讀人志らず
尋郭公といふことをよめる
子規尋ぬるだにもあるものをまつ人いかで聲をきくらむ
135
大納言經信
雨中郭公といへる事をよめる
時鳥雲路にまどふ聲すなりをやみだにせよ五月雨のそら
136
内大臣
五月五日實能卿のもとに藥玉つかはすとて
菖蒲草妬くも君がとはぬかなけふは心にかゝれと思ふに
137
大納言經信
永承六年殿上にて根合にあやめをよめる
萬代に變らぬ物はさみだれの雫にかをるあやめなりけり
138
藤原孝善
郁芳門院の根合にあやめをよめる
菖蒲草ひく手もたゆく長きねの爭で淺香の沼に生ひけむ
139
春宮大夫公實
承暦二年内裏の歌合にあやめを
玉江にや今日の菖蒲を引きつ覽磨ける宿の妻とみゆるは
140
權僧正永縁母
宮づかへしけるむすめのもとに五月五日くすだま遣はすとて
菖蒲草我身の憂を引更へてなべてならぬに生ひも出なむ
141
春宮大夫公實
百首の中にあやめをよめる
菖蒲草淀野に生ふるものなればね乍人は引くにやある覽
142
左近府生秦兼久
五月五日家にあやめふくをみてよめる
同じくば調へてふけ菖蒲草さみだれたらばもりも社すれ
143
第三宮
むかし中の院にすませ給ひける頃はみえざりけるあやめを人の中の院のと申しけるを見てよませ給ひける
淺ましや見し古里の菖蒲草わがしらぬまに生ひにける哉
144
參議師頼
百首の歌の中にさみだれをよめる
五月雨に沼の岩がき水こえて眞菰かるべき方もしられず
145
藤原定通
五月雨の心をよめる
五月雨は日數へにけり東屋のかやが軒端の下朽つるまで
146
源通時朝臣
承暦二年内裏の歌合に五月雨の心をよめる
五月雨に玉江の水やまさるらむ芦の下葉の隱れゆくかな
147
藤原顯仲朝臣
權中納言俊忠卿の家の歌合にさみだれの心をよめる
五月雨に水まさるらし澤田川槇のつぎ橋浮きぬばかりに
148
左兵衛督實能
五月雨の心をよめる
五月雨はを田の水口手もかけで水の心にまかせてぞみる
149
三宮
五月雨に入江の橋のうきぬればおろす筏の心地こそすれ
150
神祇伯顯仲
攝政左大臣の家にて夏月の心をよめる
夏の夜の庭にふりしく白雪は月のいるこそきゆる也けれ
151
藤原顯綱朝臣
權中納言俊忠卿の家の歌合に水鷄の心をよめる
里毎に叩く水
の音すなりこゝろのとまる宿やなからむ
152
源雅光
攝政左大臣の家にて水 の心をよめる
終夜はかなく叩く水
かなさせるともなき柴のかりやを
153
修理大夫顯季
實行卿の家の歌合に夏風の心をよめる
なつ衣すそ野の草をふく風に思ひもあへず鹿やなくらむ
154
源俊頼朝臣
水風暮凉といへる事をよめる
風吹けば蓮の浮葉に玉こえて凉しくなりぬひぐらしの聲
155
源仲正
ともしの心をよめる
澤水に火串の影の映れるをふたともしとや鹿はみるらむ
156
神祇伯顯仲
鹿たゝぬは山の裾に昭射して幾夜かひなき夜を明すらむ
157
中納言俊忠
家の歌合に盧橘をよめる
さ月やみはな橘のありかをば風のつてにぞ空に知りける
158
春宮大夫公實
百首の歌の中に盧橘をよめる
宿ごとにはな橘ぞ匂ひける一木がすゑをかぜはふけども
159
源俊頼朝臣
二條關白の家にて雨後野草といへる事をよめる
この里も夕立志けり淺茅生に露のすがらぬ草のはもなし
160
中納言雅定
實行卿の家の歌合に鵜川の心をよめる
大井川いくせ鵜舟の過ぎぬらむほのかになりぬ篝火の影
161
源親房
夏月をよめる
玉櫛笥ふた上山の木の間よりいづれば明くる夏の夜の月
162
攝政左大臣
六月廿日ごろに秋の節になる日人のもとに遣はしける
六月のてる日の影はさしながら風のみ秋の景色なるかな
163
藤原基俊
公實卿の家にて對水待月といへるこゝろをよめる
夏の夜の月まつ程のてすさびに岩もる清水幾むすびしつ
164
[3] 3 中納宮顯隆
秋隔一夜といへる事をよめる
御そぎする汀に風の凉しきは一夜をこめて秋やきぬらむ
1 [1] Shinpen kokka Taikan (Tokyo: Kadokawa Shoten, 1983, vol. 1; hereafter cited as SKT) reads 橘成元.