金葉和歌集 (Kin'yō wakashū) — 金葉和歌集卷第三 秋歌 作者複数 (Various) 1124 Kin'yō wakashū 金葉和歌集 Various 作者複数 Heian Period 中古 12th century 12世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1124 きんようわかしゅう Kin'yō wakashū 金葉和歌集 きんようわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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金葉和歌集 Kin'yō wakashū
作者複数 Various
金葉和歌集卷第三 秋歌
165
春宮大夫公實
百首の歌の中に秋立つ心をよめる
とことはにふく夕暮の風なれど秋立つ日社凉しかりけれ
166
太宰大貳長實
野草帶露といへる事をよめる
まくずはふあだの大野の白露を吹きなはらひそ秋の初風
167
皇后宮美濃
待草花といへることをよめる
藤袴はや綻びてにほはなむあきのはつ風ふきたゝずとも
168
土佐内侍
後冷泉院の御時皇后宮の春秋の歌合に七夕の心をよめる
萬代に君ぞみるべき棚機のゆきあひの空を雲のうへにて
169
能因法師
七夕の心をよめる
棚ばたの苔の衣を厭はずば人なみ/\にかしも志てまし
170
橘元任
七月七日父のぶくにて侍りける年よめる
藤衣いみもやすると棚機にかさぬにつけてぬるゝ袖かな
171
前齋宮河内
七夕の心をよめる
こひ/\て今宵ばかりや棚機の枕にちりの積らざるらむ
172
三宮
あまの河別に胸のこがるればかへさの舟は梶もとられず
173
中納言國信
棚機にかせる衣の露けさにあかぬけしきを空に志るかな
174
内大臣
七夕後朝のこゝろをよめる
かぎりありて別るゝ時も棚機の涙の色はかはらざりけり
175
皇后宮權大夫師時
棚機のあかぬわかれの涙にやはなの桂もつゆけかるらむ
176
内大臣家越後
天の河かへさの舟に浪かけてのり煩はゞほどもふばかり
177
源俊頼朝臣
歸るさはあさ瀬も志らじ天の河あかぬ涙に水しまさらば
178
源雅兼朝臣
草花告秋といふ事をよめる
咲初むる旦の原の女郎花秋を志らするつまにぞありける
179
源縁法師
おなじ心をよめる
咲きにけり梔子色の女郎花いはねど志るし秋のけしきは
180
大納言經信
秋のはじめのこゝろをよめる
おのづから秋はきにけり山里の葛はひかゝる槇の伏屋に
181
右兵衛督伊通
田家早秋といへる事をよめる
稻葉ふく風の音せぬ宿ならば何につけてか秋を知らまし
182
藤原行盛
山家秋といへる事をよめる
山深みとふ人もなき宿なれど外面の小田に秋はきにけり
183
大納言經信
師賢の朝臣の梅津の山里に人々まかりて田家秋風といへる事をよめる
夕されば門田のいなば音づれて芦のまろやに秋風ぞふく
184
大江公資朝臣
三日月の心をよめる
山の端にあかで入りぬる夕月夜いつ有明にならむとす覽
185
藤原忠隆
攝政左大臣の家にて夕月夜の心をよませ侍りけるによめる
風ふけば枝やすからぬ木の間より仄めく秋の夕月夜かな
186
大納言經信
後冷泉院の御時殿上の歌合に月の心をよめる
月影のすみわたるかな天の原雲ふき拂ふ夜半のあらしに
187
法橋忠命
月はたびの友といへる事をよめる
草枕このたびねにぞ思ひしる月よりほかの友なかりけり
188
顯仲卿女
志づかに月をみるといへる事をよめる
もろともに草葉の露のおきゐずは獨や見まし秋の夜の月
189
前中納言伊房
翫明月といへる事をよめる
僞になりぞしぬべき月影をこの見るばかり人にかたらば
190
春宮大夫公實
鳥羽殿にて旅宿月といへる事をよめる
我こそはあかしのせとに旅寐せめ同じ水にも宿る月かな
191
院御製
寛治八年八月十五夜鳥羽殿にて池上翫月といへることをよませ給ひける
池水に今宵の月をうつしもて心のまゝにわがものと見る
192
大納言經信
てる月の岩間の水に宿らずば玉ゐる數をいかでしらまし
193
民部卿忠教
明月をよめる
いづくにも今宵の月をみる人の心や同じそらにすむらむ
194
藤原隆經
後冷泉院の御時皇后宮の歌合に駒迎のこゝろをよめる
ひく駒の數より外にみえつるは關の清水の影にぞ有ける
195
源仲正
駒迎の心をよめる
東路をはるかに出づるもち月の駒にこよひや逢坂のせき
196
源親房
八月十五夜の心をよめる
さやけさは思做しかと月影を今宵としらぬ人にとはゞや
197
春宮大夫公實
閏九月のある年八月十五夜によめる
秋は猶のこり多かる年なれど今夜の月の名こそをしけれ
198
前齋院六條
水上月といへる心をよめる
雲のなみかゝらぬさ夜の月影をきよ瀧川に映してぞみる
199
源俊頼朝臣
九月十三夜しづかに月を見るといへる事をよめる
すみのぼる心や空を拂ふらむ雲のちりゐぬあきの夜の月
200
皇后宮肥後
月をよめる
月をみて思ふ心の儘ならば行へもしらずあくがれなまし
201
源師俊朝臣
人のもとにまかりて物申しけるほどに月の入りにければよめる
いかにしてしがらみかけむ天の川流るゝ月や暫し淀むと
202
大納言經信
經長卿の桂の山庄にてしづかに月をみるといへる事をよめる
今宵わが桂の里の月を見ておもひ殘せることのなきかな
203
春宮大夫公實
承暦二年内裏の歌合に月をよめる
曇りなき影を留めば山のはに入るとも月を惜まざらまし
204
皇后宮攝津
宇治前太政大臣の家の歌合に月をよめる
照る月の光さえゆく宿なれば秋の水にもこほりゐにけり
205
源俊頼朝臣
山のはに雲の衣をぬぎ捨てゝひとりも月の立ち昇るかな
206
攝政左大臣
水上月
蘆根はひかつみも茂き沼水にわりなく宿る夜半の月かな
207
一宮紀伊
宇治前太政大臣の家の歌合に月をよめる
鏡山みねより出づる月なれば曇る夜もなき影をこそみれ
208
參議師頼
秋なにはの方にまかりて月のあかゝりければよめる
いにしへの難波の事を思出でゝ高津の宮に月のすむらむ
209
藤原隆經
秋月如晝といへることをよめる
草の上の露微りせばいかにして今宵の月を夜と知らまし
210
源行宗朝臣
翫明月といふ事をよめる
なごりなく夜半の嵐に雲晴れて心のまゝにすめる月かな
211
平師季
八月十五夜に人々歌よみけるによめる
三笠山光をさして出でしよりくもらで明けぬ秋の夜の月
212
讀人志らず
宇治入道前太政大臣の三十講の歌合に月の心をよめる
宿からぞ月の光もまさりけるよの曇りなくすめば也けり
213
藤原忠隆
月をよめる
眺むれば更けゆく儘に雲晴れて空も長閑にすめる月かな
214
權僧正永縁
奈良の花林院の歌合に月をよめる
いかなれば秋は光のまさるらむおなじ三笠の山の端の月
215
藤原顯輔
月の歌とてよめる
みかさ山もりくる月の清ければ神の心もすみやしぬらむ
216
大納言經信
太皇太后宮の扇合に月の心をよめる
三笠山みねより出づる月かげはさほの河瀬の氷なりけり
217
太宰大貳長實
顯季卿の家にて九月十三夜人々月の歌よみけるに
くまもなき鏡とみゆる月かげに心うつらぬ人はあらじな
218
源俊頼朝臣
村雲や月のくまをばのごふらむ晴れゆくたびに照増る哉
219
藤原家經朝臣
月の心をよめる
今よりは心ゆるさじ月影の行くへも志らず人さそひけり
220
三宮
月照古橋といへる心をよませ給へる
と絶して人も通はぬたな橋は月ばかりこそ澄み渡りけれ
221
藤原實光朝臣
水上月をよめる
月影のさすにまかせて行く舟は明石の浦や泊りなるらむ
222
太宰大貳長實
題志らず
さらぬだに玉に紛ひておく露をいとゞ磨ける秋の夜の月
223
藤原家經朝臣
永承四年殿上の歌合に月の心をよめる
よとゝもに曇らぬ雲の上なれば思ふ事なく月をみるかな
224
修理大夫顯季
月前旅宿といへることをよめる
松がねにころもかたしき終夜眺むる月をいもや見るらむ
225
藤原有教母
ひとり月をながめてよめる
眺むればおぼえぬ事もなかりけり月や昔の形見なるらむ
226
權僧正永縁
行路曉月といへる事をよめる
諸共にいづとはなしに有明の月のみおくる山路をぞ行く
227
土御門左大臣
山にむかひて月を待つといへることをよめる
有明の月まつ程のうたゝねは山のはのみぞ夢にみえける
228
中納言顯隆
山家曉月といへる事をよめる
山里の門田の稻のほの%\とあくるも志らず月をみる哉
229
平忠盛朝臣
月のあかゝりけるころ明石にまかりて月をみてのぼりたりけるに都の人々月はいかにと尋ねければよめる
有明の月もあかしの浦風に波ばかりこそよるとみえしか
230
源俊頼朝臣
月前落葉といへる事をよめる
嵐をや葉守の神もたゝるらむ月に紅葉のたむけしてけり
231
前齋院六條
きり%\すをよめる
露繁きのべに傚ひてきり%\す我が手枕の下になくなり
232
顯仲卿女
はたおりといへる虫をよめる
さゝがにのいと引きかくる叢にはたおる虫の聲ぞ聞ゆる
233
讀人志らず
雁をよめる
玉草はかけてきつれど雁がねのうはの空にも聞ゆなる哉
234
春宮大夫公實
歌合に雁を
いもせ山みねの嵐やさむからむ衣かりがね空に鳴くなり
235
三宮大進
鹿をよめる
妻こふる鹿ぞ鳴くなる獨寐のとこの山風身にや志むらむ
236
皇后宮右衛門佐
曉聞鹿といへる事をよめる
思ふこと有明がたの月影にあはれをそふるさをじかの聲
237
内大臣家越後
夜聞鹿聲といふ事をよめる
夜はになく聲に心ぞあくがるゝ我身は鹿の妻ならねども
238
源雅光
攝政左大臣の家にて旅宿鹿といへる事をよめる
さもこそは都戀しき旅ならめ鹿の音にさへぬるゝ袖かな
239
藤原顯仲朝臣
鹿の歌とてよめる
世中をあきはてぬとやさをじかの今は嵐の山に鳴くらむ
240
藤原行家
秋ならで妻よぶ鹿を聞しかな折から聲の身には志むかと
241
皇后宮肥後
野花帶露といへる事をよめる
白露と人はいへども野べみればおく花毎に色ぞかはれる
242
僧正行尊
太皇太后宮の扇合に人にかはりて萩の心をよめる
小萩原匂ふさかりは白露のいろ/\にこそみえ渡りけれ
243
太宰大貳長實
萩をよめる
志らすげの眞野の萩原露ながらをりつる袖ぞ人な咎めそ
244
隆源法師
女郎花をよめる
女郎花さける野べにぞ宿りぬる花の名立に成や志ぬらむ
245
中納言俊忠
顯隆卿の家に歌合し侍りける時をみなへしをよめる
ゆふ露の玉かづらして女郎花野原の風にをれやふすらむ
246
藤原顯輔朝臣
女郎花をよめる
白露や心おくらむ女郎花いろめく野べにひとかよふとて
247
攝政左大臣
女郎花夜のまの風にをれふしてけさ志ら露に心おかるな
248
源忠季
攝政左大臣の家にて歌合し侍りけるに蘭をよめる
佐保川の汀にさける藤袴なみのよりてやかけむとすらむ
249
右兵衞督伊通
藤ばかまをよめる
狩にくる人もきよとや藤ばかま秋の野毎に鹿のたつらむ
250
神祇伯顯仲
さゝがにの糸のとぢめやあだならむ綻びわたる藤袴かな
251
春宮大夫公實
鳥羽殿の前栽合に女郎花のこゝろをよめる
あだし野の露吹きみだる秋風になびきもあへぬ女郎花哉
252
藤原伊家
思野花といへることをよめる
今はしもほにいでぬらむ東路の岩田の小野の志のゝを薄
253
平忠盛朝臣
野花留人といへることをよめる
行く人を招くか野邊のはな薄今宵もこゝに旅寐せよとや
254
源俊頼朝臣
堀河院の御時御前にておの/\題をさぐりて歌つかうまつりけるに薄をとりてつかうまつれる
うづらなく眞野の入江の濱風に尾花なみよる秋の夕ぐれ
255
藤原基光
河霧をよめる
宇治川のかは瀬もみえぬ夕霧にまきの島人舟よばふなり
256
藤原行家
河霧のたちこめつれば高瀬舟わけゆく掉の音のみぞする
257
中納言通俊
郁芳門院の歌合に菊をよめる
盛なる籬の菊を今朝みればまだ空さえぬゆきぞふりける
258
修理大夫顯季
鳥羽殿の前栽合に菊をよめる
千年迄君がつむべき菊なれば露も仇には置かじとぞ思ふ
259
藤原仲實朝臣
攝政左大臣の家にて隣家紅葉といへることをよめる
もずのゐるはじの立枝の薄紅葉たれ我宿の物とみるらむ
260
源師賢朝臣
承暦二年内裏の歌合にもみぢをよめる
箒木の梢やいづこおぼつかなみなその原は紅葉志にけり
261
大納言經信
[1]宇治前太政太臣 4 大井河にまかりたりけるともにまかりて水邊紅葉といへる事をよめる
大井河いはなみたかし筏士よ岸の紅葉にあからめなせそ
262
源俊頼朝臣
太皇太后宮の扇合に人にかはりてもみぢの心をよめる
音羽山もみぢ散るらしあふさかの關の小川に錦おりかく
263
藤原伊家
落葉をよめる
谷川に志がらみかけよ立田姫みねのもみぢに嵐ふくなり
264
修理大夫顯季
大井河の行幸につかうまつれる
大井河ゐせきの音のなかりせば紅葉を志ける渡とやみむ
265
大納言經信
深山紅葉といへる事をよめる
山守よ斧の音高く聞ゆなり峯のもみぢはよきてきらせよ
266
神祇伯顯仲
紅葉をよめる
よそにみる峯のもみぢや散り來ると麓の里は嵐をぞ待つ
267
藤原伊家
大井河の逍遙に水上落葉といへる事をよめる
柞ちる岩間をくゞる鴨どりは己があを羽も紅葉しにけり
268
修理大夫顯季
落葉埋橋といへる事をよめる
小倉山みねの嵐の吹くからに谷のかけ橋もみぢしにけり
269
大中臣公長朝臣
落葉藏水といへる心をよめる
大井河ちるもみぢ葉に埋れてとなせの瀧は音のみぞする
270
太宰大貳長實卿母
落葉隨風といへる事をよめる
色深きみ山がくれのもみぢ葉を嵐の風のたよりにぞみる
271
中原經則
九月盡の心をよめる
あすよりはよもの山邊の秋霧の面影にのみたゝむとす覽
272
源俊頼朝臣
草の葉に儚くきゆる露をしも形見におきて秋の行くらむ
273
春宮大夫公實
九月盡の日大井にまかりてよめる
惜めどもよもの紅葉は散果てゝとなせぞ秋の泊なりける
4 [1] Shinpen kokka Taikan (Tokyo: Kadokawa Shoten, 1983, vol. 1; hereafter cited as SKT) reads 宇治前太政大臣.