千載和歌集

Senzai wakashū

作者複数 Various

千載和歌集卷第二十
神祇歌

1253

上東門院

後一條院の御時はじめて春日の社に行幸ありけるに一條院の御時の例をおぼしめしいださせ給うてよませ給うける

三笠山さして來にけり石の上ふるき御幸のあとを尋ねて
1254

大納言經輔

長元八年關白左大臣歌合志侍りけるのち左方の人よろこびに住吉に詣でゝ歌よみ侍りけるに左の頭にてよみ侍りける

すみ吉の浪も心をよせければうべぞ汀にたちまさりける
1255

後二條内大臣

白河法皇熊野へまゐらせ給うける御供にて志ほやの王子の御前にて人々歌よみ侍りけるによみ侍りける

思ふことくみて叶ふる神なれば鹽やに跡をたるゝなりけり
1256

崇徳院御製

百首の歌めしける時神祇の歌とてよませ給うける

道のべのちりにひかりを和げて神も佛のなのるなりけり
1257

藤原清輔朝臣

天の下のどけかれとや榊葉を三笠の山にさしはじめけむ
1258

大納言隆季

中納言家成住よしにまうでゝ歌よみ侍りける時よめる

神代より津もりの浦に宮居して經ぬらむ年の限志らずも
1259

右大臣

大納言辭し申して出で仕へず侍りける時住吉の社の歌合とて人々よみにけるに述懷の歌とてよみ侍りける

數ふれば八年經にけり哀れわが沈みし事は昨日と思ふに

その後神感あるやうに夢想ありて大納言にも還任して侍りけるとなむ。

1260

皇太后宮大夫俊成

おなじ歌合に

徒にふりぬる身をもすみよしの松はさりとも哀志るらむ
1261

右大臣

おなじ歌合に社頭月といへる心をよみ侍りける

ふりにける松物いはゞとひてまし昔もかくや住の江の月
1262

俊惠法師

住吉の松の行合のひまよりも月さえぬれば霜はおきけり
1263

權大納言實國

廣田の社の歌合とて人々歌よみ侍りける時社頭雪といへる心をよみ侍りける

おしなべて雪の白ゆふかけてけりいづれ榊の梢なるらむ
1264

按察使資賢

有馬の湯に忍びて御幸ありける御供に侍りけるに湯の明神をば三輪の明神となむ申し侍ると聞きて物にかき付け侍りける

珍しき御幸を三輪の神ならば驗あり馬のいでゆなるべし
1265

權中納言經房

熊野にまうでゝ侍りける時發心門の王子にてよみ侍りける

うれしくも神の誓を志るべにて心をおこす門に入りぬる
1266

僧都範玄

三輪の社にて霞をよめる

杉がえを霞こむれど三輪の山神の志るしは隱れざりけり
1267

平實重

藏人にならぬことを歎きて年來賀茂の社にまうで侍りけるを二千三百度にもあまりける時貴舟の社にまうでゝ柱にかきつけゝる

今までになど沈むらむきぶね川かばかり早き神を頼むに

かくて後なむ程なく藏人になり侍りにける。近衛院の御時なり。

1268

賀茂政平

片岡のはふりにて侍りけるをおなじ社の禰宜にわたらむと申しける比よみてかきつけ侍りける

さりともと頼みぞかくる木綿襷わがかた岡の神と思へば

その後なむ禰宜にまかりなりにける。

1269

式子内親王

百首の歌の中に神祇の歌とてよみ給ひける

さりともとたのむ心は神さびて久しくなりぬかもの瑞垣
1270

賀茂重保

賀茂の社の歌合とて人々すゝめてよみ侍りける時述懷の歌によめる

君をいのる願を空にみて給へわけいかづちの神ならば神
1271

皇太后宮大夫俊成

おなじき社の後番の歌合の時月の歌とてよめる

きぶね川玉ちる瀬々のいはなみに氷をくだく秋の夜の月
1272

法印慈圓

述懷の歌の中によみ侍りける

わが憑む日吉の影は奥山の柴の戸までもさゝざらめやは
1273

法橋性憲

日吉の大宮の本地を思ひてよみ侍りける

いつとなくわしのたかねに澄む月の光を宿す志がの唐崎
1274

中原師尚

日吉の社に御幸侍りける時、雨のふり侍りける其時になりてはれにければよみ侍りける

御幸する高嶺の方に雲はれて空に日吉の志るしをぞ見る
1275

圓位法師

高野の山を住みうかれて後、伊勢國二見浦の山寺に侍りけるに太神宮の御山をば神路山と申す大日如來の御垂跡を思ひてよみ侍りける

深くいりて神路の奥を尋ぬれば又うへもなき峯のまつ風
1276

大中臣爲定朝臣

治承四年遷都の時伊勢太神宮に歸りまゐりて君の御祈念し申し侍りてよみ侍りける

月讀の神してさらば朝雲のかゝる浮世も晴れざらめやは

そののち世の中なほり侍りけるとなむ。

1277

能蓮法師

石清水の社に歌合とて人々よみ侍りける時社頭月といへる心をよめる

岩清水きよき流れの絶えせねば宿る月さへ隈なかりけり
1278

藤原義忠朝臣

長元九年後朱雀院の御時大甞會の主基方の神あそびの歌、丹波國神なび山をよめる

常盤なる神なび山の榊葉をさしてぞ祈る[1]よろづよのた14
1279

藤原經衡

治暦四年後三條院の御時大甞會の主基方の神樂の歌いはや山をよめる

動きなく千代をぞ祈るいはや山とる榊葉の色變へず志て
1280

前中納言匡房

寛治元年堀川院の御時大甞會の悠紀方の神あそびの歌、諸神の郷をよめる

いにしへの神の御代よりもろ神の祈る祝は君が世のため
1281

宮内卿永範

久壽二年院の御時、大甞會の悠紀方の神樂の歌、近江國木綿園をよめる

神うくる豊のあかりにゆふ園の日影葛ぞはえまさりける
1282

嘉應元年高倉院の御時大甞會の悠紀方の神あそびの歌、近江國守山をよめる

すべらぎを八百萬代の神も皆常磐にまもる山の名ぞこれ
1283

權中納言兼光

壽永元年大甞會の主基方の歌よみて奉りける時神樂歌丹波國神なび山をよめる

三嶋木綿かたに取懸け神なびの山の榊をかざしにぞする
1284

藤原季經朝臣

元暦元年今上の御時大甞會の悠紀方の歌奉りける神遊の歌、近江國諸神の郷をよめる

諸神の心にいまぞかなふらし君をや千代と祈るまことは
1285

藤原光範朝臣

おなじ大甞會の主基方の歌よみたてまつりける神樂の歌、丹後國千年山をよめる

ちとせ山神の代させる榊葉の榮えまさるは君がためとか
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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