新勅撰和歌集 (Shin Chokusen wakashū) — 新勅撰和歌集卷第十五 戀歌五 作者複数 (Various) 13th Century Shin Chokusen wakashū 新勅撰和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 13th century 13世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1232 しんちょくせんわかしゅう Shin Chokusen wakashū 新勅撰和歌集 しんちょくせんわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新勅撰和歌集 Shin Chokusen wakashū
作者複数 Various
新勅撰和歌集卷第十五 戀歌五
944
業平朝臣
みちの國に罷りて女に遣しける
忍ぶ山しのびてかよふ道もがな人の心のおくも見るべく
945
謙徳公
頭中將に侍りける時忍ぶ草の紅葉したるを文の中に入れて女の許に遣しける
戀しきを人にはいはでしのぶ草忍ぶに餘る色を見よかし
946
讀人志らず
返し
いはで思ふ程にあまらば忍草いとゞひさしの露や滋らむ
947
題志らず
君みずて程の古屋のひさしには逢事なしの草ぞ生ひける
948
いへばえに深く悲しき笛竹の夜聲はたれと問ふ人もがな
949
六の緒のよりめ毎にぞ香は匂ふ引く少女子の袖や觸つる
950
玉緒をあわ緒によりて結べれば絶ての後もあはむとぞ思ふ
951
逢事は玉の緒ばかり思ほえてつらき心の長くもあるかな
952
人はいさ思ひやす覽玉かづら面影にのみいとゞ見えつゝ
953
ながからぬ命の程に忘るゝはいかにみじかき心なるらむ
954
光孝天皇御製
月のうちの桂の枝をおもふとや涙の時雨ふるこゝちする
955
湯原王
めには見て手には取られぬ月の内の桂の如き妹をいかにせむ
956
貫之
來ぬ人を月になさばやうば玉の夜毎に我は影をだにみむ
957
和泉式部
さもあらばあれ雲居乍も山の端に出で入る宵の月をだに見ば
958
赤染衞門
頼めつゝこぬ夜はふ共久方の月をば人の待つといへかし
959
太宰大貳高遠
思ひやる心も空になりにけりひとり有明の月をながめて
960
道信朝臣
物思ふに月みること はたへねども詠めてのみも明しつる哉
961
讀人志らず
頼めたりける女に遣はしける
逢事をたのめぬとだに久方の月をながめぬ宵はなかりき
962
相摸
返し
詠めつゝ月に頼むる逢事を雲居にてのみ過ぎぬべきかな
963
堀河院中宮上總
法性寺入道前關白内大臣に侍りける時家に歌合し侍りけるによめる
こひ渡る君が雲居の月ならば及ばぬ身にも影はみてまし
964
皇太后宮大夫俊成
月前戀といへる心をよみ侍りける
戀しさの詠むる空にみちぬれば月も心のうちにこそすめ
965
二條院讃岐
千五百番歌合に
更けに鳬是や頼めし夜半ならむ月をのみ社待べかりけれ
966
嘉陽門院越前
建保六年内裏の歌合に
あだ人を待つ夜更けゆく山の端に空だのめせぬ有明の月
967
正三位家隆
題志らず
あま小舟はつかの月の山の端にいざよふ迄も見えぬ君哉
968
殷富門院大輔
待つ人は誰と寐まちの月影を傾ぶくまでにわれ眺むらむ
969
權大納言家良
長らへて又やは見むと待宵を思ひもしらで更くる月かな
970
藤原隆信朝臣
後京極攝政の家の歌合に待戀をよめる
來ぬ人を何に喞たむ山の端の月は待出て小夜更けにけり
971
正三位家隆
建暦二年廿首の歌奉りける戀の歌
池にすむおし明がたの空のつき袖の氷になく/\ぞみる
972
大藏卿有家
旅戀といふ心をよみ侍りける
たび衣かへす夢路はむなしくて月をぞみつる有明のそら
973
式子内親王
百首の歌に
いかにせむ夢路にだにも行きやらぬ空しき床の手枕の袖
974
大納言實家
題志らず
打歎きいかにねし夜と思へども夢にも見えで頃も經に鳬
975
左近中將公衡
思ひねの我のみかよふ夢路にもあひ見てかへる曉ぞなき
976
參議雅經
歎き侘びぬる玉の緒の宵々は思ひもたえぬ夢もはかなし
977
正三位家隆
いかにせむ暫し打ちぬる程もがな一夜計の夢をだにみむ
978
殷富門院大輔
いかにせむ今一度の逢事を夢にだにみて寐覺めずもがな
979
法橋顯昭
つらきをも憂をも夢になしはてゝ逢夜ばかりを現共がな
980
道因法師
夢にさへ逢はずと人のみえつれば眠ろむ程の慰めもなし
981
二條院讃岐
千五百番歌合に
哀れ/\はかなかりける契かな唯うたゝねの春の夜の夢
982
藤原重頼女
戀の歌よみ侍りけるに
契りしもみしも昔のゆめながら現がほにも濡るゝ袖かな
983
按察使兼宗
夏夜戀といふ心をよみ侍りける
夏蟲もあくるたのみのある物をけつかたもなき我思かな
984
權大納言家良
題志らず
鹿の立つ端山の闇に燈す火のあはで幾夜をもえ明すらむ
985
權中納言定家
建保六年内裏の歌合の戀の歌
逢ふ事は忍ぶの衣あはれなどまれなる色に亂れそめけむ
986
從三位範宗
いかにせむ音を鳴く蟲のから衣人もとがめぬそでの涙を
987
從三位顯兼
題志らず
己れ鳴く心がらにや空蝉のはにおく露に身をくだくらむ
988
正三位知家
前關白の家の歌合に山家夕戀といへる心をよみ侍りける
はし鷹の外山の庵の夕暮をかりにもとだに契りやはする
989
藤原信實朝臣
建保三年内裏の歌合に
あづま路の富士の志ば山暫しだにけたぬ思に立つ烟かな
990
大宮入道内大臣
心ならず中たえにける女に遣しける
こと浦の煙のよそに年ふれど猶こりはてぬ海士の藻鹽木
991
後京極攝政前太政大臣
家の歌合に顯戀といへる心をよみ侍りける
そでの浪むねの烟は誰もみよ君がうき名の立つぞ悲しき
992
左近中將公衡
題志らず
夕烟野べにも見えばつひにわが君にかへつる命とをしれ
993
大納言忠教
京極前關白の家の歌合に戀の心を
戀死なば君故とだに知られでや空しき空の雲となりなむ
994
土御門内大臣
題志らず
定めなき風に志たがふ浮雲のあはれ行方も志らぬ戀かな
995
前大僧正慈圓
後京極攝政の家の歌合寄雲戀の心を人にかはりてよみ侍りける
戀死ぬる夜はの烟の雲とならば君が宿にや分きて時雨む
996
正三位家隆
寄木戀
思ひかね眺むれば又夕日さす軒端のをかの松もうらめし
997
按察使兼宗
千五百番歌合に
人ごゝろ木葉ふり志くえにしあれば涙の河も色かはり鳬
998
大炊御門右大臣
百首の歌奉りける時
つく%\と落つる涙の數志らず逢見ぬ夜はの積りぬる哉
999
皇太后宮大夫俊成
いかにせむ天のさか手を打返し恨みても猶飽ずもある哉
1000
待賢門院堀河
疑ひし心のうらのまさしきは問ぬにつけて先ぞ知らるゝ
1001
從三位範宗
題志らず
遙なるほどは雲居の月日のみ思はぬ中に行きめぐりつゝ
1002
菅原資季朝臣
戀の歌あまたよみ侍りけるに
僞の言の葉なくば何をかは忘らるゝ世のかたみともせむ
1003
宮内卿
千五百番歌合に
津の國のみつとないひそ山城のとはぬつらさは身に餘る共
1004
源具親朝臣
後の世を頼むたのみもありなまし契かはらぬ別なりせば
1005
藤原永光
題志らず
後の世といひてぞ人に別れましあす迄とだにしらぬ命を
1006
津守經國
逢事の今いく年の月日へて猶なか/\の身をもうらみむ
1007
賀茂季保
同じ世に猶ありながら逢事の昔がたりになりにけるかな
1008
淨意法師
稀會戀といふ心をよみ侍りける
せきかぬる涙の露の玉のをの絶えぬもつらき契なりけり
1009
下野
右衞門督爲家の百首の歌よませ侍りける戀の歌
かた糸のあはずばさてや絶えなまし契ぞ人の長き玉の緒
1010
從三位範宗
關白左大臣の家の百首の歌遇不逢戀
年を經て逢ふことは猶かた糸のたが心より絶え始めけむ
1011
權中納言定家
戀十首の歌よみ侍りけるとき
誰もこの哀みじかき玉のをに亂れてものを思はずもがな
1012
後京極攝政前太政大臣
百首の歌よみ侍りけるに、遇不逢戀
うつろひし心の花に春暮れて人も木ずゑに秋かぜぞ吹く
1013
前關白
建保六年内裏の歌合に
目の前に風も吹きあへず移り行く心の花も色は見えけり
1014
讀人志らず
中納言定頼心のうちを見せたらばと申して侍りければよめる
仇人の心の内を見せたらばいとゞつらさの數やまさらむ
1015
謙徳公藏人少將に侍りける時臨時の祭の舞人にて雪のいたく降り侍りければ物見ける車の前に打寄りてこれ拂ひてと申しければ
何にてか打ちも拂はむ君こふと涙に袖はくちにしものを
1016
本院侍從
同じ人舞人にて近くたちたる車の前を過ぎ侍りければ
すり衣きたる今日だにゆふ襷かけ離れてもいぬる君かな
1017
天暦御製
雪のふり侍りける夜按察更衣に遣しける
冬の夜の雪と積れる思をばいはねど空に知りや志ぬらむ
1018
更衣正妃
御返し
冬の夜の寐覺に今はおきてみむ積れる雪の數をたのまば
1019
中納言朝忠
女に遣しける
流れての名にこそありけれ渡河逢瀬ありやと頼みける哉
1020
光孝天皇御製
題志らず
山河のはやくも今はおもへども流れてうきは契なりけり
1021
法性寺入道前攝政太政大臣
夜更けて妻戸を叩き侍りけるに明け侍らざりければ旦に遣しける
終夜水鷄よりけになく/\ぞ槇の戸口にたゝき侘びぬる
1022
紫式部
返し
たゞならじと計叩く水鷄故明けてはいかに悔しからまし
1023
相摸
題志らず
我も思ひ君も忍ぶる秋の夜はかたみに風の音ぞ身にしむ
1024
貫之
花ならで花なる物は志かすがにあだなる人の心なりけり