詞花和歌集 (Shika wakashū) — 詞花和歌集卷第三 秋 作者複数 (Various) 1151 Shika wakashū 詞花和歌集 Various 作者複数 Heian Period 中古 12th century 12世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1151 しかわかしゅう Shika wakashū 詞花和歌集 しかわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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詞花和歌集 Shika wakashū
作者複数 Various
詞花和歌集卷第三 秋
80
曾禰好忠
題志ちず
山城の鳥羽田の面を見渡せばほのかにけさぞ秋風はふく
81
僧都清胤
津の國にすみ侍りけるころ大江爲基が任はてゝのぼり侍りければいひつかはしける
君すまばとはましものを津の國の生田の杜の秋のはつ風
82
橘元任
七月七日式部大輔資業がもとにてよめる
萩の葉にすがく糸をも小蟹は棚機にとや今朝は引くらむ
83
花山院御製
御ぐしおろさせ給ひて後七月七日よませたまひける
棚機に衣もぬぎてかすべきにゆゝしとや見む墨ぞめの袖
84
藤原顯綱朝臣
承暦二年内裏の歌合によめる
棚機に心はかすと思はねどくれゆく空はうれしかりけり
85
加賀左衛門
題志らず
いかなればとだえそめけむ天のがはあふせに渡す鵲の橋
86
左京大夫顯輔
新院のおほせごとにて百首の歌奉りけるによめる
あまの川よこぎる雲や棚機のそらだきものゝ烟なるらむ
87
大中臣能宣朝臣
寛和二年内裏の歌合によめる
おぼつかな變りや志にし天の川年に一たび渡る瀬なれば
88
修理大夫顯季
七夕をよめる
天の川たま橋急ぎわたさなむ淺瀬辿るも夜の更けゆくに
89
良暹法師
橘としつなのふし見の山庄にて七夕後朝のこゝろをよめる
逢夜とは誰かは志らぬ棚機の明くる空をも包まざらなむ
90
藤原顯綱朝臣
棚機のまちつる程のくるしさとあかぬ別と何れまされる
91
視部成仲
題志らず
天の川歸らぬ水を棚機はうらやましとや今朝はみるらむ
92
源順
三條太政大臣の家にて八月十五夜に水上月といふことをよめる
水清み宿れる月の影さへや千代まで君とすまむとすらむ
93
右大臣
題志らず
いかなれば同じ空なる月影の秋しもことに照り増るらむ
94
左衛門督家成
家に歌合し侍りけるによめる
春夏に空やは變る秋の夜の月しもいかで照りまさるらむ
95
三條院御製
月を御覽じてよませ給ひける
秋に又逢はむあはじも志らぬ身は今宵計の月をだにみむ
96
天臺座主明快
題志らず
ありしにもあらずなりゆく世中に變らぬ物は秋の夜の月
97
藤原重基
關白前太政大臣の家にてよめる
秋の夜の月の光のもる山は木の下かげもさやけかりけり
98
良暹法師
ひえの山の念佛にのぼりて月をみてよめる
天つ風雲ふきはらふ高嶺にているまで見つる秋の夜の月
99
源頼綱朝臣
京極前太政大臣の家の歌合によめる
秋の夜の月に心の隙ぞなきいづるをまつといるを惜むと
100
藤原朝隆朝臣
關白前太政大臣の家にて八月十五夜の心をよめる
ひくこまに影を並べて逢坂の關路よりこそ月はいでけれ
101
隆縁法師
左衛門督家成が家に歌合志りけるによめる
秋の夜のつゆもくもらぬ月をみておき所なきわが心かな
102
大江嘉言
月を待つこゝろをよめる
秋のよの月まちかねて思ひやる心いくたび山をこゆらむ
103
藤原忠兼
月浮山水といふ心をよめる
秋山の清水はくまじにごりなば宿れる月の曇りもぞする
104
花山院御製
寛和二年内裏の歌合によませ給ひける
秋の夜の月に心のあくがれて雲居にものを思ふころかな
105
源道濟
題志らず
ひとりゐて詠むる宿の荻の葉に風こそわたれあきの夕暮
106
大江嘉言
荻の葉にそゝや秋風吹きぬなりこぼれや志ぬる露の白玉
107
和泉式部
秋ふくはいかなる色の風なれば身にしむばかり哀なる覽
108
曾禰好忠
み吉野のきさ山蔭にたてる松いく秋風にそなれきぬらむ
109
藤原顯綱朝臣
荻の葉に露吹き結ぶ木枯のおとぞ夜寒になりまさるなる
110
源兼昌
霧をよめる
夕霧にこずゑも見えず初瀬山入あひの鐘の音ばかりして
111
赤染衛門
法輪へまうでけるにさが野の花おもしろくさきて侍りければ見てよめる
秋の野の花見る程の心をば行くとやいはむ止るとやいはむ
112
禖子内親王
賀茂のいつきときこえて侍りける時本院のすいがきにあさがほの花咲きかゝりて侍りけるをよめる
神垣に懸かるとならば朝顏もゆふかくる迄匂はざらめや
113
隆源法師
堀河院の御時百首の歌奉りけるによめる
主やたれきる人なしに藤袴見れば野毎にほころびにけり
114
周防内侍
白河院、鳥羽殿にて前栽あはせせさせ給ひけるによめる
朝な/\露重げなる萩がえに心をさへもかけて見るかな
115
敦輔王
荻の葉に言問ふ人もなき物を來る秋毎にそよとこたふる
116
曾禰好忠
題志らず
秋の野の草むらごとにおく露はよるなく虫の涙なるべし
117
永源法師
八重葎しげれる宿は終夜むしの音聞くぞとりどころなる
118
和泉式部
鳴く虫の一つ聲にも聞えぬはこゝろ/\にものや悲しき
119
橘爲仲朝臣
みちの國の任はてゝのぼり侍りけるに尾張國鳴海野に鈴虫の鳴きはべりけるをよめる
古里にかはらざりけり鈴虫のなるみの野邊の夕暮のこゑ
120
橘正通朝臣
天禄三年女四の宮の歌合によめる
秋かぜに露をなみだとおく虫の思ふ心をたれにとはまし
121
大藏卿匡房
駒迎をよめる
逢坂の杉間の月のなかりせばいくきの駒と爭でしらまし
122
出羽辨
永承五年一の宮の歌合によめる
きく人のなどか安からぬ鹿の音は我妻を社こひて鳴くらめ
123
藤原伊家
題志らず
秋萩を草のまくらに結ぶ夜はちかくも鹿の聲をきくかな
124
新院御製
九月十三夜に月照菊花といふ事をよませ給ひける
秋ふかみ花には菊の關なれば下葉に月も漏りあかしけり
125
源雅光
關白前太政大臣の家にてよめる
霜がるゝはじめと見ずば白菊の移ろふ色を歎かざらまし
126
道命法師
題志らず
今年又咲くべき花のあらば社移ろふ菊にめがれをもせめ
127
曾禰好忠
草枯の冬まで見よと露霜のおきて殘せるしらぎくのはな
128
堀河右大臣
宇治前太政大臣白河にて見行客といふ事をよめる
關こゆる人にとはゞや陸奥の安達のまゆみ紅葉しにきや
129
橘能元
武藏國より上り侍りけるに三河國二むら山の紅葉を見てよめる
いくらとも見えぬ紅葉の錦哉たれ二むらの山といひけむ
130
大藏卿匡房
寛治元年太皇太后宮の歌合によめる
夕されば何か急がむもみぢ葉の下てる山は夜も越えなむ
131
曾禰好忠
題志らず
山里は往來の道も見えぬまで秋の木の葉に埋もれにけり
132
道命法師
春より法輪寺に籠りて侍りける秋大井河に紅葉のひまなく流れけるをみてよめる
春雨のあやおりかけし水の面に秋はもみぢの錦をぞしく
133
源俊頼朝臣
雨後落葉といふ事をよめる
名殘なく時雨の空は晴れぬれどまたふる物は木の葉也鳬
134
平兼盛
月の明き夜紅葉の散るをみてよめる
荒果てゝ月もとまらぬ我宿に秋の木の葉を風ぞふきける
135
藤原惟成
一條攝政の障子に網代に紅葉のひまなくよりたるかたかきたる所によめる
秋深み紅葉おちしく網代木は氷魚のよるさへ赤くみえ鳬
136
大中臣能宣朝臣
初霜をよめる
初霜も置にけらしな今朝見れば野邊の淺茅も色付きに鳬
137
前大納言公任
雨中九月盡といふ事をよめる
何方へ秋のゆくらむわが宿に今宵ばかりはあま宿りせよ