新後撰和歌集

Shin Gosen wakashū

作者複数 Various

新後撰和歌集卷第十五
戀歌五

1119

皇太后宮大夫俊成

建仁元年三月歌合に、遇不逢戀

初瀬川又みむとこそたのめしか思ふもつらし二もとの杉
1120

尊治親王

おなじ心を

人ははやいひし契もかはる世に昔ながらの身社つらけれ
1121

權大納言公顯

心こそ昔にもあらずかはるとも契りしことを忘れずもがな
1122

前内大臣實

百首の歌奉りし時、忘戀

はかなくぞ忘れはてじと頼みける昔のまゝの心ならひに
1123

讀人志らず

題志らず

忘れじといひし計りの言の葉やつらきが中の情なるらむ
1124

遊義門院權大納言

百首の歌奉りし時、忘戀

言の葉にそへても今はかへさばや忘らるゝ身に殘る面影
1125

今上御製

絶戀の心を

僞りの言の葉だにもなき時ぞげにたえはつる契とはしる
1126

信實朝臣

建保三年内裏の歌合に

なほざりにひとたび契る僞りもながき恨の夕ぐれのそら
1127

新院御製

題志らず

待ちなれし契はよその夕暮にひとりかなしき入あひの鐘
1128

前大納言爲氏

弘長元年百首の歌奉りける時、忘戀

よそにだに思ひもいでじはし鷹の野守の鏡影もみえねば
1129

兵部卿隆親

建長三年九月十三夜十首の歌合に、寄月恨戀

忘らるゝ我身を秋のつらさとて月さへかはる影ぞ悲しき
1130

安嘉門院甲斐

戀の歌の中に

たのめこし人の心はかはれども我やわするゝ山のはの月
1131

左近中將冬基

とはずなる人のかたみと慰めむかはらでやどれ袖の月影
1132

正親町院右京大夫

いとひしも今はよそなる曉をかはらぬねにや鳥は鳴く覽
1133

從三位源親子

身の上の別をしらぬあかつきも猶鳥のねにぬるゝ袖かな
1134

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

忘れずよあかぬ名殘に立別れみしをかぎりのよこ雲の空
1135

近衛關白左大臣

文永二年九月十三夜五首の歌合に、絶戀

きぬ%\の曉ばかりうき物といひしも今はむかしなりけり
1136

權中納言家定

題志らず

つらかりし曉ごとの別れだに身になき物と今はなりぬる
1137

權大納言公顯

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

さても其のありし計を限とも志らで別れし我やはかなき
1138

藤原宗秀

戀の歌の中に

面影のうき身にそはぬ中ならば我もや人を忘れはてまし
1139

前中納言俊光

忘らるゝ習有りとは知り乍らやがてと迄は思はざりしを
1140

藤原爲綱朝臣

なほざりに思出でゝもいつまでかとはるゝ程の契なる覽
1141

藤原爲藤朝臣

百首の歌奉りし時、忘戀

うきながら驚かさばや今更におもひはつべき契ならねば
1142

藤原長經

題志らず

又はよも思も出てじ花ずゝき枯にし中はほのめかずとも
1143

讀人志らず

よひ/\に通ひし道ぞ絶えにける憂身を中の關守に志て
1144

津守國助

石見潟我身のよそにこす浪のさのみやとはに懸て戀べき
1145

衣笠内大臣

白浪のかけても人に契りきや異浦にのみみるめかれとは
1146

前中納言爲兼

弘安元年百首の歌奉りし時

忘れ行く人の契はかりごもの思はぬかたになに亂れけむ
1147

賀茂久宗

寄草戀を

そのかみに立歸てや祈らまし又もあふひの名を頼みつゝ
1148

平親清女

かけて猶たのむかひなし葵草今はよそなるその名計りに
1149

京極

花のあだなるよし申し侍りける人の返事に人にかはりて

あだなりと花の名だてにいひなして移ろふ人の心をぞみる
1150

入道前太政大臣

久しく音づれざりける人の許に花のずゞを櫻の枝につけてつかはすとて

めぐりあふ月日を空に數へても花にぞかゝる命ながさば
1151

民部卿資宣女

返し

廻りあふ浮身に春は變れども花にはかゝる色も見えけり
1152

土御門院御製

遇不逢戀の心をよませ給ひける

つき草の花の心やうつるらむ昨日にもにぬ袖のいろかな
1153

前僧正公朝

寄夢戀を

月草の花ずり衣かへす夜はうつろふ人ぞゆめに見えける
1154

前中納言定家

建保二年内大臣の家の百首の歌に、名所戀

かた見社あたの大野の萩の露移ろふ色はいふかひもなし
1155

行念法師

題志らず

うつり行く心の色の秋ぞともいさ志らすげのまのゝ萩原
1156

從二位家隆

後京極攝政の家の六百番歌合に

秋風になびく淺ぢの色よりもかはるはひとの心なりけり
1157

皇太后宮大夫俊成女

千五百番歌合に

いろかはる心の秋の時しもあれ身にしむくれの荻の上風
1158

宰相典侍

里に侍りける時紅葉をたまはせたりける御返事に

中々に思ひもいれぬ身の秋を紅葉よなにの色にみすらむ
1159

藤原實秀

戀の歌の中に

うき身にはいかに契て言の葉の時雨もあへず色かはる覽
1160

法師頼舜

契りおきし心木の葉にあらねども秋風ふけば色變りけり
1161

權少僧都房嚴

むすばずよ霜おき迷ふ冬草のかるゝを人の契りなれとは
1162

藤原經清朝臣

是も又世の習ひぞと思はずば變るつらさに生存へもせじ
1163

行蓮法師

かはらじと契りしまゝの中ならば命の後や人にわかれむ
1164

源俊平

寳治の百首の歌奉りし時、寄衣戀

悔しきにぬるゝ袂のさよ衣思ひかへすもかひなかりけり
1165

權中納言家定

題志らず

今はたゞなれて過にし月日さへ思出でゝは悔しかりけり
1166

侍從實遠

年月のつもればとても戀しさのなど忘られぬ心なるらむ
1167

讀人志らず

今ぞしるわすられざりし年月は何のつらさに物思ひけむ
1168

内大臣

あはぬまを恨みし頃の戀しきはいかになりぬる中の契ぞ
1169

二條院讃岐

今はさは何に命をかけよとて夢にも人のみえずなるらむ
1170

前關白太政大臣

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

思ひねの心のうちをしるべにて昔のまゝにみる夢もがな
Japanese Text Initiative
Electronic Text Center | University of Virginia Library
PO Box 400148 | Charlottesville VA 22904-4148
434.243.8800 | fax: 434.924.1431
Etext Home | Library Home | Search the Library Web
Contact Us:UVA Library Feedback
Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
© 2025 The Rector and Visitors of the University of Virginia