新後撰和歌集

Shin Gosen wakashū

作者複数 Various

新後撰和歌集卷第十四
戀歌四

1056

衣笠内大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、遇不逢戀

いかにせむ岩間をつたふ山水の淺き契りは末もとほらず
1057

院大納言典侍

弘安元年百首の歌奉りしとき

くやしくぞ結びそめけるその儘にさて山の井の淺き契を
1058

信實朝臣

前大納言爲家の家の百首の歌に

稀ならむことをや兼て契り置きし絶えても頼む心長さは
1059

僧正實瑜

題志らず

七夕のあふ夜稀なる契だにさすがに年をへだてやはする
1060

讀人志らず

逢事を又はいつとも言はざりし別よりこそ變りそめけれ
1061

我れさらば人より先に忘なむ變らむ後のつらさをもみで
1062

從三位忠兼

逢見ても又いか樣に歎けとて變るつらさの有る世なる覽
1063

花山院入道右大臣

寳治元年十首の歌合に、遇不逢戀

徒らに明けぬくれぬと玉匣二たびあはぬ身こそつらけれ
1064

前太政大臣

同じ心を

うき身には契りし儘に頼むべき人の誠もなき世なりけり
1065

權大納言公顯

百首のうたたてまつりしとき、忘戀

儚くも人の心をまだ知らでとはるべき身と思ひけるかな
1066

後嵯峨院御製

白河殿の七百首の歌に、寄莚戀

いつまでかしき忍ぶべきそのまゝに我塵はらふ床のさ莚
1067

權中納言公雄女

題志らず

變らじと言ひしはいつの契にてこがるゝ床に月をみる覽
1068

今出河院近衛

くもるべき我泪ともしらでこそ月をかたみと契置きけめ
1069

前大納言基良

さても又いかなる夜半の月影にうき面影をさそひそめ劔
1070

前中納言定家

千五百番の歌合に

思出でよたが衣々のあかつきもわが又忍ぶ月ぞみゆらむ
1071

嘉陽門院越前

いかにせむ慰むやとてながむれば別れし夜半の有明の空
1072

太宰權帥爲經

寳治元年五首の歌に、月前戀

思ひ出でゝ月もつらさのまさるかな見しや別の有明の空
1073

源親長朝臣

戀の歌の中に

つれなくぞなほ面影の殘りける又も見ざりし有明のつき
1074

遊義門院大藏卿

うきながら扨も身にそふ面影の忘れぬのみや形見なる覽
1075

法眼行濟

忘れずよしばしといひし歸るさの袖のわかれに殘る面影
1076

源家清女

なれし夜の床はかはらぬ思ひねに又みる夢の面影ぞなき
1077

從三位藤原宣子

うつゝとてかたる計の契りかはあだなる夢のまゝの繼橋
1078

前大納言爲家

洞院攝政の家の百首の歌に、遇不逢戀

忘れねよ夢ぞと言ひしかねごとをなどその儘に頼まざり劔
1079

津守國助

題志らず

さらに又あふを限りと歎くかな見しは昔の夢になしつゝ
1080

丹波經長朝臣

ねぬに見し夢はいかなる契ぞと我れだに人を驚かさばや
1081

法印聖勝

逢ひ見しは一夜のゆめの草枕むすぶもかりの契なりけり
1082

權大僧都珎覺

かりそめの夢より後は草枕またもむすばぬ契りなりけり
1083

從二位家隆

後京極攝政の家の六百番歌合に

いかで猶よはの衣をかへしても重ねし程の夢をだにみむ
1084

左大臣

戀の歌の中に

さめぬればもとのつらさの現にて中々なりや思ひねの夢
1085

中原師尚

思ひねの夢のうちにもなぐさまでさむる現は猶ぞ悲しき
1086

從一位[7]A7子

その儘に又もとはれぬ現こそさても夢かと思ひなさるれ
1087

太上天皇

百首の歌めされしついでに、遇不逢戀

朽ちねたゞおなじ泪の袖の色を又もみすべき契ならねば
1088

從二位行家

弘長元年百首の歌奉りける時、おなじ心を

思ひ川あふせのいかにかはりてか又は泪のふちとなる覽
1089

惟宗忠宗

題志らず

浪こゆる袖の湊のうき枕うきてぞひとりねはなかれける
1090

高階宗成朝臣

つれなさは有りしに歸るつらさにて又も重ねぬ袖の浦浪
1091

觀意法師

逢事はよそになるをの沖つ浪浮てみるめの寄べだになし
1092

昭訓門院大納言

内裏の五首の歌合に、欲絶恨戀

ふみ見ても恨ぞふかきはま千鳥稀に成行く跡のつらさは
1093

前參議長成女

戀の歌の中に

いかにせむ雲居の雁のつてにだに見えず成行く人の玉章
1094

權少僧都澄舜

假にだにこぬ人待つとさのみやは秋のわさ田の寢がてにせむ
1095

源兼康朝臣

顯絶戀といふ事を

たえぬるか相坂山のさねかづらしられぬ程を何なげき劔
1096

大江政國女

題志らず

跡たゆる道のさゝ原いつ迄か夜をへだゝても人をまち劔
1097

前大僧正良覺

百首の歌奉りし時、遇不逢戀

逢見てし後瀬の山ののちもなど通はぬ道の苦しかるらむ
1098

從三位藤原宣子

戀の歌の中に

そへてやる心や君になれぬらむ遠ざかる身は隔てはつ共
1099

法眼源承

岩橋の契りは夜半の昔にて絶えまを遠く戀ひわたるかな
1100

藤原基任

ながめても昔にかはる心かな人のとふべき夕べならねば
1101

前大僧正守譽

今はとて思絶えてもあられねば待たぬ夕も袖はぬれけり
1102

源親教朝臣

思ひ出でば又自ら訪はるやとさすがにたえぬ契をぞまつ
1103

前大納言實教

絶後逢戀を

其儘に思ひもこりばいかゞせむうきを知らぬぞ契なりける
1104

讀人志らず

題志らず

もろ共に忘れじとのみ契りしは我身一つのまことなりけり
1105

前中納言爲兼

我をだに忘るなとこそ契りしかいつよりかはる心なる覽
1106

遊義門院權大納言

内裏の五首の歌合に、欲絶恨戀

思ひわび今一たびは恨みばや心のまゝにわすれもぞする
1107

藤原爲景朝臣

あやにくに恨みば猶やつらからむ變りそめぬる人の心は
1108

平時春

戀の歌の中に

あはぬ夜のつもるつらさは敷妙の枕の塵ぞ先志らせける
1109

賀茂重員

よな/\の枕の塵によそへても志らせやせまし積る恨を
1110

宜秋門院丹後

よそ乍ら強面かりしは中々に憂身の程も志られやはせし
1111

遊義門院

いかにせむつらき限りをみても又猶慕はるゝ心よわさを
1112

讀人志らず

うとくなる契を人にかこちてもうきは我身に猶殘りけり
1113

憂きながら猶こそ頼め強面さのさて果てざりし心習ひに
1114

同じ世にいけるをうしと思ふ身の心に似ぬは命なりけり
1115

平行氏

先だゝぬ身は同じ世に生存へてかはるをみるもうき命哉
1116

典侍親子朝臣

中務卿宗尊親王の家の百首のうたに

いかにせむ今將同じ世中に有りとは人に志られずもがな
1117

衣笠内大臣

題志らず

ながらへていける命の強面さを聞かる計の人づてもがな
1118

式子内親王

こひ/\てそなたに靡く烟あらばいひし契の果と眺めよ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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