新後撰和歌集 (Shin Gosen wakashū) — 新後撰和歌集卷第十七 雜歌上 作者複数 (Various) 1303 Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1303 しんごせんわかしゅう Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 しんごせんわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新後撰和歌集 › 新後撰和歌集卷第十七 雜歌上 Furigana ふりがな Vertical 縦書き
新後撰和歌集 Shin Gosen wakashū
作者複数 Various
新後撰和歌集卷第十七 雜歌上
1212
前中納言定家
千五百番歌合に
いくとせのかざし折りけむ古の三輪の檜原のこけの通路
1213
從二位家隆
幾代とも志られぬものは白雲のうへよりおつる布引の瀧
1214
寂蓮法師
野中の清水を見て
汲む人は又いにしへになりぬとも野中の清水思ひ忘るな
1215
土御門入道内大臣
弘安元年百首の歌奉りしとき
ありし世をこふる泪の露ぞ置く今も嵯峨野の道のさゝ原
1216
如願法師
住の江にてよめる
住吉の松ふく風もかはらねば岸うつ浪やむかしなるらむ
1217
權中納言公雄
題志らず
いかにして思ふ方には通ふらむ風に志たがふあまの釣舟
1218
前内大臣實
くれぬとて我がすむ方に歸るなりあしやの沖の蜑の釣舟
1219
今上御製
海邊夕と云ふ事を
蜑のすむ里の知べやこれならむくるれば見ゆる漁火の影
1220
讀人志らず
題志らず
風吹けば波こすいその岩ね松いく志ほ染むる緑なるらむ
1221
後嵯峨院御製
白川殿の七百首の歌に、子日松
子日とてけふ引初むる小松原木高きまでをみる由もがな
1222
前大僧正良覺
春の歌の中に
影茂き園生の竹のそのまゝにこぞ降りつみし雪ぞ殘れる
1223
月花門院
雪の山つくられて侍りける雪を睦月の二十日頃に萬里小路右大臣申して侍りけるに
消え殘る雪につけてや我宿を花よりさきに人のとふらむ
1224
院大納言典侍
梅の花につけて藤原爲道朝臣の許に遣しける
色香をも志る人みよと咲く梅の花の心にまかせてぞ祈る
1225
藤原爲道朝臣
返し
色香をも志る人ならぬ我爲に折るかひなしと花や思はむ
1226
平時高
題志らず
心ある人はとひこでわが袖に梅が香をしき春のゆふかぜ
1227
平義政
春の歌の中に
明けぬとてたが名は立たじ歸る鴈夜深き空を何急ぐらむ
1228
前大僧正禪助
迷はじなこしざの空は霞むとも歸りなれたる春の雁がね
1229
津守國助
志賀の蜑の釣する袖はみえわかで霞む浪路に歸る雁がね
1230
前大僧正源惠
行くさきも跡も霞のなか空に志ばしは見えて歸る雁がね
1231
入道前太政大臣
院に三十首の歌奉りし時、庭春雨
世を捨つる身のかくれがの故郷におとさへ忍ぶ庭の春雨
1232
正三位經朝
題志らず
我ばかり待つとはいはじ山櫻花もうき身を厭ひもぞする
1233
平時直
雲とだにさだかにはみずやま櫻とほき梢や猶かすむらむ
1234
前參議能清
中務卿宗尊親王の家の歌合に、閑居花
ありとだに人に知られぬ宿なれば花咲きぬ共誰か問來む
1235
院御製
三十首の歌めされしついでに、見花
哀れ今は身をいたづらの詠めして我世ふり行く花の下陰
1236
二品法親王覺助
雨のふりける朝人のもとに花を遣すとて
思ひやれ老いて慰む花だにも萎るゝけさの雨のつらさを
1237
藤原爲綱朝臣
花の歌の中に
咲く花の盛を見ても山陰にふりはてぬべき身を歎くかな
1238
藤原宗泰
ながめつゝ我身もふりぬ山櫻よそぢあまりの春を重ねて
1239
源師光
正治の百首の歌に
年毎に花は咲けども人志れぬ我身ひとつに春なかりけり
1240
權律師玄覺
題志らず
いたづらに散りなば惜しき花故に我爲ならず人を待つ哉
1241
平親世
山里にすみ侍りける頃花ちりて後にまうでくべきよし申して侍りける人の返事に
散りはてゝ後は何せむ山里の花みよとてぞ人は待たれし
1242
道供法師
花の盛に山寺にまかりてよめる
つらしとて背く憂世の外までも花も我身を猶さそひける
1243
源光行
題志らず
命をもをしむ心やなからまし花にこの世を思ひおかずば
1244
津守國平
櫻花ちらずばやがて三吉野の山やいとはぬ栖かならまし
1245
前大僧正公澄
いく春も我立つ杣に庵しめて山のかひある花をこそ見め
1246
前大僧正源惠
院みこの宮と申しける時御持僧に加はりて程なく位につかせ給ひて後天台座主になりて内裏にて春の頃七佛藥師の法をおこなひ侍りける時思ひつゞけ侍りける
春の宮に仕へしまゝの年をへて今は雲居の月をみるかな
1247
良助法親王
正安三年の春櫻の枝につけて内裏へ奏し侍りける
九重に色を重ねて匂ふらし花もときしる御代にあひつゝ
1248
今上御製
御返し
今ぞみるきみが心もをりをえて春のときしる花の一えだ
1249
前大僧正公豪
弘安三年三月日吉の社にはじめて御幸侍りける時天台座主にてよみ侍りける
年ごとの御幸を契る春なれば色をそへてや花も咲くらむ
1250
源兼朝
春の歌の中に
哀とて花見しことを數ふればこゝらの年の春ぞへにける
1251
漸空上人
花の頃まうできて侍りける人のもとに遣しける
今よりの心通はゞ思出でよかならず花のをりならずとも
1252
西園寺入道前太政大臣
道助法親王の家に八重櫻あるよし聞きて申し遣しける
勅ならで又ほり移す宿もがなためしにゆるせ八重の櫻木
1253
入道二品親王道助
返し
櫻花をりしる人の宿に植ゑて幾かへりとも春ぞかぎらぬ
1254
源淑氏
題志らず
咲けば且ちるも絶間の見えぬ哉花より外の色しなければ
1255
前左兵衞督範藤
咲く花の心づからの色をだに見はてぬほどに春風ぞ吹く
1256
澄覺法親王
此春も又ちる花をさきだてゝ惜しからぬ身の猶殘りつゝ
1257
辨内侍
長らへていけらば後の春とだに契らぬ先に花ぞ散りぬる
1258
祝部國長
人とはぬ宿の櫻のいかにして風につらくはしられそめ劔
1259
僧正範兼
咲なばと花に頼めし人はこでとふにつらさの春風ぞ吹く
1260
平時村朝臣
雨はるゝ雲のかへしのやま風に雫ながらや花の散るらむ
1261
平貞時朝臣
水上や花の木かげをながれけむ櫻をさそふ春のかはなみ
1262
中臣祐春
散り易き花の心をしればこそ嵐もあだにさそひそめけめ
1263
法印雲雅
散りぬればふくも梢の寂しさに風もや花を思ひいづらむ
1264
源時清
中務卿宗尊親王の家の歌合に
涙にぞ又宿しつる春の月うきはかはらぬもとの身にして
1265
前關白太政大臣
春の歌の中に
廻り逢ふ春は五十ぢの老が世にことわり過ぎて霞む月哉
1266
法印能海
春の頃月蝕を祈りて思ひつゞけ侍りける
霞むだに心づくしの春の月曇れといのる夜半もありけり
1267
源兼氏朝臣
山階入道左大臣の家の十首の歌に、田家水
苗代の春のかど田にせく水の道あるかたに身をや任せむ
1268
平宣時朝臣
題志らず
うき事もいふにぞつらき山吹は心ありける花のいろかな
1269
前關白太政大臣
忘れめや春日の野べに黒木もてつくれる宿の軒の藤なみ
1270
前大僧正行尊
春日山木高きみねの藤の花すゑ葉も春に逢はざらめやは
1271
中原師尚朝臣
諸共に花見むと契りて後久しく音づれざりける人のもとに三月つごもりに遣しける
花見むと契りし人を待つ程にあやなく春の暮れにける哉
1272
藤原景房朝臣
三月に閏月ありける年よめる
散り殘るのちの彌生の八重櫻かさなる春の花とこそ見れ
1273
天台座主道玄
同じきつごもりの日よみ侍りける
なれて猶あかぬ名殘の悲しきはかさなる春の別なりけり
1274
賀茂經久
述懷の心を
神やまにその名をかけよ二葉ぐさ三の位のあとを尋ねて
1275
惟宗忠景
祖父忠久検 非違使にて祭主たりける事を思ひて賀茂の社によみて奉りける
かけて祈る志るしあらせよ葵草かさなる跡は神も忘れじ
1276
大江貞重
題志らず
待つ事を習ひになして郭公なくべき頃もつれなかりけり
1277
讀人志らず
侘び人の心にならへ郭公うきにぞやすくねはなかれける
1278
權大僧都覺守
あり明の月にも鳴かず郭公つれなき程のかぎり知らせて
1279
平時遠
みじか夜もなほ寐覺して郭公はつ音も老の後にこそ聞け
1280
賀茂遠久
年をへて我神山のほとゝぎす同じ初音をいまも聞くかな
1281
西行法師
無言の行し侍りける頃郭公を聞きて
時鳥人にかたらぬ折にしも初音きくこそかひなかりけれ
1282
平時藤
羇中郭公
鳴く方にまづあこがれて郭公こゆる山路の末もいそがず
1283
光俊朝臣
夏の歌の中に
いつまでか哀と聞かむ時鳥思へばたれもねこそなかるれ
1284
雅成親王
色ふかき泪をかりてほとゝぎすわが衣手の杜に鳴くなり
1285
中務卿宗尊親王
菖蒲を
いつまでかあやめ計の長きねを泪も志らぬ袖にかけゝむ
1286
中原師宗
前中納言俊定のもとへ代々つかはしける橘を遣すとて
今もまた五月まちけるたちばなに昔忘れぬ程は志らなむ
1287
前中納言俊定
返し
家の風かはらずともに傳へ來てむかしの跡に匂ふたち花
1288
觀意法師
題志らず
水まさる淀の川瀬をさす棹の末もおよばぬ五月雨のころ
1289
大江茂重
かきくらし漂ふ雲の行く方も見えずなりぬる五月雨の頃
1290
源季茂
風わたる葦の末葉に置く露のたまらず見えてとぶ螢かな
1291
平親清女妹
螢をつゝみて姉のもとに遣すとて
戀しさの身より餘れる思をば夜半の螢によそへてもみよ
1292
平親清女
返し
我は又ひるも思のきえばこそ夜半の螢に身をもたゝへめ
1293
前參議忠定
蝉をよみ侍りける
思ふ事空しきからに空蝉の木隱れはつる身こそつらけれ
1294
津守國助
夕顏を
いとゞ又ひかりやそはむ白露に月まち出づる夕がほの花
1295
藤原朝宗
題志らず
風の音はまだ吹變へぬ草のはの露にぞ秋の色は見えける
1296
空人法師
なれぬればつらき心もあるやとて七夕つめの稀に逢ふ覽
1297
式乾門院御匣
忘られぬむかしの秋を思ひねの夢をばのこせ庭の松かぜ
1298
雅成親王
寄風述懷といへる心を
露の身のおき所こそなかりけれ野にも山にも秋風ぞ吹く
1299
前權僧正通海
秋の歌の中に
むすび置く露も雫もあだし野の蓬がもとをはらふ秋かぜ
1300
前大納言爲家
弘長元年百首の歌奉りける時、露
よな/\の泪しなくばこけ衣秋おく露のほどは見てまし
1301
前僧正公朝
題志らず
わが袖のたぐひとみるも悲しきはおいて露けき森の下草
1302
前左衛門督基顯
今は世にたれかは我を招くべきなさけありける花簿かな
1303
惟宗忠景
人ぞうきもとの心は變れどもふる枝の萩は今も咲くなり
1304
權中納言公雄
なにゝわが老の泪のかゝるらむ古枝の萩も露ぞこぼるゝ
1305
前大僧正實承
年をへてもろくなり行く泪かないつか かぎりの秋の夕暮
1306
藤原秀長
關の戸をさゝでも道やへだつらむ逢坂山のあきの夕ぎり
1307
入道二品親王性助
弘安元年百首の歌奉りし時
雨はるゝ高嶺は空にあらはれて山本のぼる富士の河ぎり
1308
法印定意
秋の歌の中に
すみなれし月はむかしの秋風に古郷さむき庭のあさぢふ
1309
後九條内大臣
我ながらいつを泪の絶間とて身の程志らず月を見るらむ
1310
入道前關白左大臣
いかなれば眺むる袖の志ぐるらむ雲も懸らぬ山の端の月
1311
遊義門院
なさけとや泪のかゝる袖にしも長き夜すがら月宿るらむ
1312
光俊朝臣
思ふことげになぐさむる月ならば苔の袂は秋やほさまし
1313
源季廣
身のうさの忘るゝ月の影ならば秋の心はなぐさみなまし
1314
津守國平
秋をへてなれ行く月のます鏡つもれば老の影を見るかな
1315
法印良守
長らへて今幾とせか月を見む今年も秋はなかば過ぐなり
1316
常磐井入道前太政大臣
定かなる夢か現かなゝそぢの秋を待ちえて見つる月かげ
1317
辨内侍
月の夜むかしを思ひ出でゝうちにさぶらひける人のもとに遣しける
忘れずよ思ひや出づる雲居にてともに見しよの秋の月影
1318
後嵯峨院御製
文永五年九月十三夜、白河殿の五首の歌合に、河水澄月
我のみや影もかはらむ飛鳥川ふちせも同じ月はすめども
1319
讀人志らず
題志らず
大方の名こそ吹飯の浦ならめかたぶかですめ秋の夜の月
1320
入道二品親王性助
入る迄も月見むとてぞ住みそめし名におふ秋の西の山里
1321
靜仁法親王
つれなくもめぐり逢ひぬる命かなむそぢの秋の有明の月
1322
順徳院御製
秋の日の山のは遠くなるまゝに麓の松のかげぞすくなき
1323
典侍光子
都人おもひおこせよ苔ふかき松のとぼその秋のあはれを
1324
信實朝臣
聞かざりし嵐のかぜも身にそひぬ今はすみかの秋の山里
1325
平頼泰
里擣衣を
秋ふかくなりゆくまゝに衣うつ音羽の里や夜寒なるらむ
1326
入道二品親王性助
秋の歌の中に
我庵は嵐のまゝに住みなして露も時雨ももらぬまぞなき
1327
後嵯峨院御製
文永五年九月十三夜、白河殿の五首の歌合に、暮山紅葉
かねてより袖も志ぐれてすみ染の夕色ます山のもみぢば
1328
權中納言公雄
題志らず
夜をのこす老の涙のわが袖に猶ほしがたく降る時雨かな
1329
前權僧正教範
年をへてふりぬる身とは志る物を何故袖の又志ぐるらむ
1330
大江宗秀
よそに見し高嶺の雲のいつのまに此里かけて時雨きぬ覽
1331
藤原爲道朝臣
神無月の頃歌合のまけわざせさせ給ひけるとき法皇御幸し侍りけるに紅葉の舟につけらるべき歌とて仕うまつりける
紅葉ばのあけのそぼ舟こぎよせよこゝを泊と君も見る迄
1332
寂惠法師
冬の歌の中に
吹立つる木の葉の下もこのはにて風だにわけぬ庭の通路
1333
藤原親範
冬川の氷のひまを行く水のまたよどむこそ木の葉なり けれ
1334
前大僧正忠源
薄氷あやふき身とは思へどもふみ見て世をも渡りける哉
1335
前大納言爲世
百首の歌奉りし時、千鳥
和歌の浦や色をかさねて濱千鳥七たび同じ跡をつけぬる
1336
院御製
三十首の歌めされしついでに、浦千鳥
我世には集めぬわかの浦千鳥むなしき名をや跡に殘さむ
1337
入道前太政大臣
浦千鳥なにはの事の立居にも老の波にはねぞなかれける
1338
前僧正公朝
中務卿宗尊親王の家の歌合に、千鳥
哀れにも老の寐覺の友千鳥わがよ更けぬる月に鳴くなり
1339
從三位頼政
いまだ殿上ゆるされざりける時雪の降り侍りける日清凉殿にさしおかせ侍りける
いかなれば雲の上にはちり乍ら庭にのみふる雪を見る覽
1340
讀人志らず
返し
心ざし深くも庭につもりなばなどか雲居の雪もみざらむ
1341
權中納言公雄
前中納言定家はやう住み侍りける所に前大納言爲家わづらふこと侍りける時雪のあしたに申し遣しける
消えもせで年をかさねよ今も世にふりて殘れる宿の白雪
1342
前大納言爲家
返し
消えのこる跡とて人に問はるゝも猶たのみなき庭の白雪
1343
按察使實泰
野外雪を
過ぎ來つる跡に任せむ春日野のおどろの道は雪深くとも
1344
如願法師
山家雪といふ事をよめる
春はまづとはれし物を山深み雪ふりにける身社つらけれ
1345
光俊朝臣
題志らず
今更に何とか雪のうづむらむ我身世にふる道は絶えにき
1346
法眼慶融
降り積る雪につけても我身世に埋もれてのみつもる年哉
1347
藤原信顯朝臣
冬さむみあらしになびく炭がまの烟にまじる嶺のうき雲
1348
小督
中務卿宗尊親王の家の百首の歌に
あすしらぬ世のはかなさを思ふにも惜かるまじき年の暮かは
1349
土御門入道内大臣
弘安三年百首の歌奉りし時
何と又暮行く年を急ぐらむ春に逢ふべき身ともしらぬに
1350
藤原爲相朝臣
百首の歌奉りし時、歳暮
我身世に憂もはてある年ならば近づく春も急がれやせむ
1351
讀人志らず
題志らず
程もなくいそぢの年もこゆるぎの急ぎなれたる年の暮哉