新後撰和歌集

Shin Gosen wakashū

作者複数 Various

新後撰和歌集卷第二十
賀歌

1565

後鳥羽院御製

百首の歌よませ給ひける中に

龜の尾の岩根を落つるしら玉の數かぎりなき千代の行末
1566

常磐井入道前太政大臣

弘長元年百首の歌奉りける時、山

君がすむ龜のを山の瀧つせは千代を心にさぞまかすらむ
1567

後京極攝政前太政大臣

建仁二年鳥羽殿にて池上松風といふ事をはじめて講ぜられけるに

つかへこし深きながれの池水に猶千代までと松風ぞ吹く
1568

大納言通方

西園寺入道前太政大臣のもとへ松の生ひ立ちける石をつかはすとて

千年まで木高き陰のたねしあれば岩にぞ見ゆる松の行末
1569

西園寺入道前太政大臣

返し

岩の上に豫て植ゑける種しあれば千年の松も例とぞ見る
1570

西行法師

題志らず

君が世のためしに何を思はまし變らぬ松の色なかりせば
1571

基俊

鶴老爭齡といふ事をよみ侍りける

松のはな十かへり咲ける君が代に何を爭ふ鶴のよはひぞ
1572

大藏卿行宗

子日の心を

二葉なる子日の小松ゆく末に花さくまでは君ぞ見るべき
1573

院御製

春日野の子日の松に契置かむ神に引れて千世ふべき身は
1574

土御門院御製

春の野の初子の松の若葉よりさしそふ千代の陰は見え鳬
1575

右近大將道平

題志らず

春日山めぐみも志るき松が枝にさこそさかえめ北の藤浪
1576

惟明親王

千五百番歌合に

朝夕に千とせの數ぞ聞えける松と竹とにかよふあらしは
1577

後京極攝政前太政大臣

建仁三年和歌所にて釋阿に九十の賀給はせける時の屏風の歌に

この頃は秋つ島人ときをえて君がひかりの月を見るかな
1578

前大納言雅言

白河殿の七百首の歌に、磯月

鹽の山さしでの磯の秋の月八千代すむべき影ぞ見えける
1579

法皇御製

祝の心をよませ給ひける

三笠山いのる心のくもらねば月日と共に千世やめぐらむ
1580

前中納言定家

建保六年八月中殿にて池月久明といふ事を講ぜられ侍りけるに

いく千世ぞ袖ふる山のみづがきも及ばぬ池にすめる月影
1581

西園寺入道前太政大臣

千々の秋さやけき月のかげまでも畏き御代にすめる池水
1582

前太政大臣

弘安元年八月に月與秋久といへる心を

君が爲曇らぬ影にすむ月のさやかに千世の秋ぞ知らるゝ
1583

前大納言經任

千とせとも限らぬ御代の例とや秋を契りて月もすむらむ
1584

法皇御製

弘安三年九月十三夜人々に十首の歌めされしついでに、月前祝

諸共におなじ雲居にすむ月のなれて千とせの秋ぞ久しき
1585

院御製

おなじ心をよませ給うける

幾千世もかくこそは見めすむ月の影もくもらぬ秋の行末
1586

皇太后宮大夫俊成女

千五百番歌合に

咲きにけり君が見るべきゆく末は遠里小野の秋はぎの花
1587

正三位家衡

名所の歌奉りける時

久しかれなびく稻葉の末までもとはたの面の世々の秋風
1588

後一條入道前關白左大臣

題志らず

菊の露積りて淵となるまでに老いせぬ花を君のみぞ見む
1589

後京極攝政前太政大臣

文治六年女御入内の屏風に

君が代に匂ふ山路の白菊はいくたび露のぬれてほすらむ
1590

西園寺入道前太政大臣

前中納言定家歳の暮にはじめて京極の家に移りけるに遣しける

新しき春を近しとさきぐさの三葉四葉に兼ねて志らるゝ
1591

前中納言定家

返し

頼む哉春と君としまぢかくば三葉四葉の千世のとなりを
1592

藤原景綱

平時範が常磐の山莊にて、寄花祝と云ふ事をよみける

うつろはで萬代匂へ山ざくら花もときはの宿の志るしに
1593

入道前太政大臣

弘安元年百首の歌奉りし時

水上も末もはるけし大井河君すむやどの絶えぬながれは
1594

太上天皇

寄鶴祝言といふ事を

芦鶴の雲居に通ふ聲のうちにかねても志るし千世の行末
1595

法皇御製

弘安元年百首の歌めされしついでに

草香江の入江のたづも諸聲に千世に八千代と空に鳴くなり
1596

寂蓮法師

千五百番歌合に

浪の上に藥求めし人もあらばはこやの山に道志るべせよ
1597

遊義門院

法皇六十ぢにみたせ給ひけるに壽命經供養せられけるついでに銀の杖奉らるとて

つく杖に六十ぢこえ行く今年より千年の坂の末ぞ久しき
1598

照念院入道前關白太政大臣

弘安八年三月從一位貞子九十の賀給はせける時よみ侍りける

年へぬる老木の花も此春のみゆきに逢ひて千世や重ねむ
1599

前關白左大臣

九十ぢにふるかひありて君が爲けふのみゆきも萬代の春
1600

太上天皇

東二條院七十ぢにみたせ給ひける時よみ給ひける

百年に君が七十ぢ逢ひにあひて共に八千世の春や待つ覽
1601

院御製

祝ひそむる今日をや千代の始とて契る齡の末ぞはるけき
1602

入道前太政大臣

從一位貞子九十の賀給はせける時よみ侍りける

代々の跡に猶立越ゆる老の波よりけむ年は今日の爲かも
1603

津守經國

後鳥羽院の御時八十島のまつりによみ侍りける

天の下のどけかるべし難波がた田蓑の島に御祓志つれば
1604

前中納言家光

嘉禎元年大甞會の悠紀の神樂の歌、石戸山

神代より祈るまことの志るしには岩戸の山の榊をぞとる
1605

民部卿經光

寛元四年悠紀の風俗の歌、三神山

玉椿かはらぬ色を八千代とも三神の山ぞときはなるべき
1606

前中納言兼仲

正安三年悠紀の風俗の神樂の歌、三神山

榊とる三神の山にゆふかけて祈るひつぎの猶やさかえむ

新後撰和歌集終

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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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