新後撰和歌集 (Shin Gosen wakashū) — 新後撰和歌集卷第九 釋教歌 作者複数 (Various) 1303 Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1303 しんごせんわかしゅう Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 しんごせんわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
Titles ›
新後撰和歌集 › 新後撰和歌集卷第九 釋教歌 Furigana ふりがな Vertical 縦書き
新後撰和歌集 Shin Gosen wakashū
作者複数 Various
新後撰和歌集卷第九 釋教歌
608
皇太后宮大夫俊成
法華經方便品、其知惠門難解難入の心を
入り難く悟り難しと聞く門をひらけば花の御法なりけり
609
前大納言經任
譬喩品
子を思ふ親の教のなかりせば假のやどりに迷ひ果てまし
610
了然上人
今得無漏無上大果
尋ねつる雲より高き山越えて又上も無きはなを見るかな
611
後嵯峨院御製
授記品
更け行けば出づべき月と聞くからに兼て心の闇ぞ晴ぬる
612
法印公紹
結びおく世々の契も深草のつゆのかごとにぬるゝ袖かな
613
圓世法師
化城喩品
假そめの宿とも知らで尋ねこし迷ぞ道のしるべなりける
614
前大僧正道寳
五百弟子品
下にすむもとの心を知らぬかな野中の清水み草ゐぬれば
615
法印乘雅
以無價寳珠繋着内衣裏
などか我れ衣の裏のたまさかに法にあひても悟らざり劔
616
前大僧正行尊
衣手に包みし玉のあらはれてうらなく人に見ゆる今日哉
617
前大僧正公澄
須臾聞之即得究竟
一聲を聞き初めてこそ郭公鳴くに夜ふかき夢はさめけり
618
皇太后宮大夫俊成
寂寞無人聲讀誦此經典
問ふ人の跡なき柴のいほりにもさしくる月の光をぞ待つ
619
源有長朝臣
乃至以身而作床座
仙人の苔の蓆に身を代へていかに千年をしきしのぶらむ
620
光俊朝臣
不信是經則爲大失
頼まれぬ心ぞ見ゆる來ては又空しき空にかへるかりがね
621
法印源爲
不輕品
草の庵柴のあみ戸の住まひまでわかぬは月の光なりけり
622
俊頼朝臣
神力品
大空を御法の風や拂ふらむ雲がくれにしつきを見るかな
623
前大納言忠良
於我滅度後應受持此經
あらざらむ後の世かけし契こそ頼むにつけて嬉かりけれ
624
八條院高倉
是人於佛道決定無有疑
契り置く其行く末の頼みあらば此世を憂しと何か歎かむ
625
寂蓮法師
囑累品
忘るなといひても袖やしをれ劔跡留むべき此世ならねば
626
従三位光成
若爲大水所漂稱其名號則得淺處
行く水の深き流れに沈みても淺瀬ありとぞなほ頼むべき
627
源兼氏朝臣
觀普賢經、見諸障外事
春の夜の霞や空に晴れぬらむ朧げならぬつきのさやけさ
628
中務卿宗尊親王
同じ經の心を
露霜の消えてぞ色は増りける朝日に向ふみねのもみぢ葉
629
安喜門院大貳
題志らず
世々を經てたへなる法の花ならば開けむ時の契たがふな
630
前大僧正忠源
天台の法門御尋にあづかる事代々になりぬる事を思ひてよみ侍りける
習ひこし妙なる法の花故に君にとはるゝ身とぞなりぬる
631
前大僧正聖忠
釋教の心を
鷲の山後のはるこそ待たれけれ心の花のいろをたのみて
632
太上天皇
鷲の嶺やとせの秋の月きよみその光こそこゝろにはすめ
633
後京極攝政前太政大臣
家に花の五十首の歌よみ侍りけるに
鷲の山御法の庭に散る花を吉野のみねのあらしにぞ見る
634
皇太后宮大夫俊成
久安の百首の歌に
常にすむ鷲の高嶺の月だにも思ひ知れとぞ雲がくれける
635
西音法師
二月十五日の夜湛空上人に申し遣しける
二月の半の空の夜はの月入りにしあとのやみぞかなしき
636
湛空上人
返し
闇路をば彌陀の御法にまかせつゝ春の半の月は入りにき
637
天台座主道玄
文永七年冬の比内裏にて寒の御祈の爲に如法佛眼の法修じ侍りける時雪の降りて侍りければ承元の昔の跡を思ひて奏させ侍りける
九重に降りしく雪はいにしへの法の莚にあとや見ゆらむ
638
法皇御製
御返し
いにしへの跡を知らせて降る雪の頼む心は深くなりぬる
639
前大僧正公什
正安二年法皇に灌頂授け奉りて後わが山に其跡稀なる事を思ひてよみ侍りける
思ひきや我が立つ杣のかひ有て稀なる跡を殘すべしとは
640
前中納言爲房
大日經を
品々にかはる心のいろもみなはてはひとつの誓なりけり
641
前僧正公朝
理趣經、慾無戯論性故瞋無戯論性
愚かなる心に種はなかりけり四方の草木のあるに任せて
642
法印覺源
父母所生身即證大覺位の心を
誰れ故に此度かゝる身を受けて又あり難き法にあふらむ
643
讀人志らず
成自然覺不由他悟
我れとたゞ行きてこそ見め法の道人の教を知べとはせじ
644
前大僧正隆辨
蜜嚴世界
迷ひしもひとつ國ぞと悟るかな誠の道のおくぞゆかしき
645
前大僧正公什
傳法の序でに思ひつゞけ侍りける
教へ置く法の道芝ふみ見れば露もあだなる言の葉ぞなき
646
權少僧都道順
一流の事を思ひてよみ侍りける
夏草のことしげき世に迷ひてもなほ末頼むをのゝふる道
647
二品法親王覺助
弘安元年百首の歌奉りし時
身を去らぬ心の月に雲晴れていつか誠のかげも見るべき
648
太上天皇
百首の歌召されし序でに、釋教
まどかなる八月のつきの大空に光となれる四方のあき霧
649
後一條入道前關白左大臣
題志らず
迷ふべき闇路を近く思ふにも見捨て難きはよはの月かげ
650
後京極攝政前太政大臣
長き夜の更け行く月を詠めても近づく闇を知る人ぞなき
651
中院入道右大臣
月あかゝりける夜西行法師詣で來て侍りけるに、出家の志あるよし物語して歸りける後、其夜の名殘多かりし由など申し送るとて
終夜月を詠めてちぎり置きしそのむつ言に闇は晴れにき
652
西行法師
返し
すむと見えし心の月し顯れば此世も闇の晴れざらめやは
653
小侍從
心月輪の心を
潔く月は心にすむものと知るこそやみのはるゝなりけれ
654
前大僧正行尊
暗き夜の迷の雲の晴れぬれば靜かにすめる月をみるかな
655
見佛上人
蓮生法師松島へ詣でゝ法門などだんじて歸り侍りけるに遣しける
長き夜の闇路に迷ふ身なり ともねぶりさめなば君を尋ねむ
656
蓮生法師
返し
闇路には迷ひも果てじ在明のつきまつ島の人のしるべに
657
皇太后宮大夫俊成
美福門院に極樂六時の讃を繪に書かせら[2]ね 2 て書くべき歌つかうまつりけるに七重寳樹の風には一實相の理をしらべむ
影清き七重のうゑ木うつり來て瑠璃の扉も花かとぞ見る
658
權少僧都俊譽
無量壽經四十八願の心をよみ侍りけるに、聞名具徳願
吉野川花の岩波名に立てゝよる瀬を春のとまりとぞ聞く
659
中原師光朝臣
具足諸相願
三十あまり二の姿たへなればいづれも同じ花のおもかげ
660
祝部成賢
觸光柔軟
身を去らぬ日吉の影を光にて此世よりこそ闇は晴れぬれ
661
源邦長朝臣
觀無量壽經、正坐西向諦觀於日といふ事を
西にのみ向ひの岡の夕附日外にこゝろのうつりやはする
662
蓮生法師
水想觀
水すめばいつも氷はむすびけり心や冬のはじめなるらむ
663
大江頼重
光明遍照十方世界の心を
草の原ひかり待ちとる露にこそ月も分きては影宿しけれ
664
大藏卿隆博
釋教の歌の中に
立ち歸り又ぞ沈まむ世に踰ゆる元の誓のなからましかば
665
常磐井入道前太政大臣
是心是佛の心を
今更に佛の道を何とかはもとのこゝろのほかにもとめむ
666
後嵯峨院御製
下輩觀をよませ給ひける
愚かなる涙の露のいかでなほ消えてはちすの玉となる覽
667
耆闍會
言ひ置きし我が言の葉のかはらぬに人の誠は顯れにけり
668
天台座主道玄
阿彌陀經、歡喜信受の心を
嬉しさをさながら袖に包むかな仰ぐ御空の月をやどして
669
壽證法師
三輩一向專念無量壽佛
三吉野のみつわけ山の瀧つ瀬も末は一つの流れなりけり
670
權少僧都房嚴
一切善惡凡夫得生者
秋深くしぐるゝ西の山風にみなさそはれて行く木の葉哉
671
禪空上人
釋教の心を
一方に頼みをかくる白糸のくるしきすぢに亂れずもがな
672
式子内親王
阿彌陀を
露の身に結べる罪は重くとも洩らさじ物を花のうてなに
673
住慣れし跡を忍ぶる嬉さに洩さず過ぐる身とは知らずや
此の歌は禪林寺の住僧の夢に律師永觀の歌とて見えける。
674
蓮生法師
人の許より西へ行く道を忍べよと申して侍りければ
思ひ立つ心計りを知べにて我れとは行かぬ道とこそ聞け
675
順空上人
同じさまに申しける人に
爰にやり彼處によばふ道はあれど我心より迷ふとを知れ
676
基俊
題志らず
澄みのぼる月の光をしるべにて西へもいそぐわが心かな
677
法眼能信
往生禮讃に、必有事礙不及向西方、但作向西想亦得といふ事を
夕暮の高嶺を出づる月影も入るべきかたを忘れやはする
678
唯教法師
彌勒を
めぐりあふ我が身ならずばいかゞせむ其曉の月は出づ共
679
後京極攝政前太政大臣
天王寺に詣でゝよみ侍りける
西を思ふ心ありてぞ津の國の難波方りは見るべかりける
680
郁芳門院安藝
同じ寺にて所々の名を人々歌によみ侍りけるに、龜井
稀に説く御法の跡を來て見れば浮木にあへる龜井なり鳬
681
大炊御門右大臣
久安の百首の歌に、釋教
世の中を厭ふ餘りに鳥のねも聞えぬ山のふもとにぞ住む
682
前大僧正守譽
合會有別離の心を
稀にだに逢へば別の悲しきに知らでや鹿
[3]の 3 妻を戀ふらむ
683
鷹司院帥
釋教の歌の中に
色も香も空しき物と教へずば有るをあるとや思果てまし
684
法印定圓
金剛般若經の不應取法不應取非法
吉野山分きて見るべき色もなし雲もさくらも春風ぞ吹く
685
普光園入道前關白左大臣
我於阿耨多羅三藐三菩提乃至無有小法
夢の内に求めし法の一ことも誠なきこそうつゝなりけれ
686
皇太后宮大夫俊成女
最 勝王經吉祥天女品の心を
誓あれば空行く月の都人そでにみつなるひかりをぞみる
687
前太政大臣
圓覺經、始知衆生本來成佛生非涅槃猶如昨夢といふ心を
覺めやらぬ浮世の他の悟ぞと見しは昨日の夢にぞ有ける
688
法印圓勇
欲知過去因見其現在果を
數ならず生れける身の理に前の世までのつらさをぞ知る
689
參議雅經
衆生無邊誓願度
行くへなき身を宇治川の橋柱立てゝしものを人渡せとは
690
前大僧正忠源
以觀觀昏即昏而朗
村雲にかくるゝ月は程も無くやがてさやけき光をぞ見る
691
了然上人
大日經三々昧那品現般涅槃成就衆生
迷はじな入りぬと見ゆる月も猶同じ空行く影と知りなば
692
寂然法師
弘决秋九月從慈始入天台といふ心を
長月の有明の月ともろともに入りける峰を思ひこそやれ
693
僧正範憲
迷悟一如の心を
さとるべき道とて更に道もなし迷ふ心もまよひならねば
694
心海上人
一念不生
草の葉にむすばぬさきの白露は何を便りにおき始めけむ
695
基俊
堀河院に百首の歌奉りける時
浮世には消なば消えね蓮葉に宿らば露の身ともなりなむ
696
今出川院近衛
煩惱即菩提の心を
思ひきや袖に包みしほたるをも衣のうらにかくる玉とは
697
見性法師
題志らず
言のはもおよばぬ法の誠をば心よりこそつたへそめしか
698
惟宗忠景
五戒の歌の中に、不妄語戒
僞の心あらじとおもふこそたもてる法のまことなりけれ
699
花山院内大臣
釋教の心を
むつの道迷ふと思う
[4]心そ 4 たちかへりては知るべ
なり けれ
700
前大納言教良
いかにせむ法の舟出も知らぬ身は苦しき海に又や沈まむ
701
圓空上人
身を思ふ人社げには無りけれうかるべき世の後を知らねば
702
前大僧正慈鎭
厭離穢土の心を
皆人のさらぬ別を思ふこそ浮世をいとふかぎりなりけれ
703
僧正道潤
題志らず
行く末は迷ふ習としりながら道をもとめぬ人ぞはかなき
704
慈道法親王
悟りとてほかに求むる心こそ迷ひそめけむ始めなるらめ
705
前内大臣實
百首の歌奉りしとき、釋教
しばしこそ人の心に濁るともすまでやむべき法の水かは
706
前太政大臣
同じ心を
ほかになき御法の水の清ければ我心をばくみてしるべき
707
權中納言公雄
同じくば流れを分くる法の水の其の水上を爭でくまゝし
708
前大僧正公澄
叡山の谷々にならひかへ侍る法門の事申しける人の返事に
法の水一つ流をむすびてもこゝろ%\にすゑぞなりゆく
709
權少僧都良信
唯識論の由此有諸趣及涅槃證得の心を
氷りしも同じ心の水なればまたうちとくる春にあふかな
710
法印實聽
如清水珠能清濁の心を
すみそめし元の心の清ければ濁りもはてぬ玉の井のみづ
711
權少僧都實壽
題志らず
終夜窓のともし火かゝげてもふみみる道になほまよふ哉
712
平親清女妹
ぼにの頃佛の御前にさぶらひて思ひつゞけ侍りける
しるべせよ暗き暗路にまよふとも今宵かゝぐる法の燈火
713
澄覺法親王
釋教の歌とて
古への跡ふみ見むとかゝげても心にくらき法のともしび
3 [3] A character here in our copy-text was illegible. SKT reads の.