新後撰和歌集

Shin Gosen wakashū

作者複数 Various

新後撰和歌集卷第十
神祇歌

714

太上天皇

百首の歌めされし序でに、神祇

千早ぶる七代五代の神世より我があし原に跡をたれにき
715

二品法親王覺助

題志らず

神もしれつきすむ夜半の五十鈴河ながれて清き底の心を
716

讀人志らず

神路山引くしめ繩の一すぢに頼む契りは此の世のみかは
717

荒木田延成

榊もてやつの石つぼふみならし君をぞいのるうぢの宮人
718

大中臣定忠朝臣

卷もくの珠城の御代に跡垂れて宮居ふりぬる五十鈴河上
719

度會行忠

くもりなきあまてる神のます鏡昔を今にうつしてしがな
720

讀人志らず

君が代を祈ればまもる神路山深き誓ひといふもかしこし
721

後嵯峨院御製

寳治の百首の歌めしける次でに、寄社祝

石清水きよき心にすむときく神のちかひは猶もたのもし
722

院御製

神祇の心を

石清水にごらじとおもふ我が心人こそしらね神はうく覽
723

天台座主道玄

千早ぶるその神山の中におつる御手洗河の音のさやけさ
724

前大僧正禪助

すみそめし昔を神も忘れずば猶みたらしの末もにごらじ
725

後鳥羽院御製

百首の歌よませ給ひける時、神祇

千早振神や知るらむもろかづら一方ならずかくる頼みを
726

太上天皇

同じ心を

名もしるし色をも變へぬ松の尾の神の誓は末の世のため
727

前參議雅經

前中納言定家祖父中納言俊忠春日の社行幸の賞にて従三位に叙して侍りける朝申し遣しける

神もまた君がためとや春日山ふるきみゆきの跡殘しけむ
728

前中納言定家

返し

埋れしおどろの道を尋ねてぞふるき御幸の跡もとひける
729

前太政大臣

神祇の歌の中に

過ぎゆけど忘れぬものを春日野のおどろに餘る露の惠は
730

藤原道經

中納言家成の家の歌合に、祝

三笠山おひそふ松を君が代の千世のためしと神や見る覽
731

永福門院

題志らず

天のしたをさまりぬらし三笠山あまねくあふぐ神の惠に
732

後一條入道前關白左大臣

誰れか又あはれを懸けむゆふ襷頼む春日の誓ひならでは
733

民部卿資宣

春日の社に詣でゝよみ侍りける

祈りても知らぬ我身の行く末を哀れいかにと神は見る覽
734

前右兵衛督教定

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に

小鹽山知らぬ神代はとほけれど松吹く風に昔しをぞきく
735

中務卿宗尊親王

神祇の心を

住吉の浦わの松のわかみどり久しかれとや神もうゑけむ
736

前右兵衛督爲教

從二位行家住吉の社にて歌合し侍りけるに

神がきや松の緑にかげ添へて頼むにさける花のしらゆふ
737

皇太后宮大夫俊成

久安の百首の歌に

いくかへり波の白ゆふかけつらむ神さびにけり住吉の松
738

前大納言經任

題志らず

住吉の浦の松が枝としを經て神さびまさるかぜの音かな
739

法眼慶融

前大納言爲氏住吉の社にて歌合し侍りける時、社頭松を

代々絶えぬ道につけても住吉の松をぞ仰ぐ頼むかげとは
740

津守棟國

題志らず

身をかくすかげとぞ頼む神垣におひそふ松のしげき惠を
741

皇太后宮大夫俊成

住吉の社によみて奉りける百首の歌の中に

和歌の浦のみちをばすてぬ神なれば哀をかけよ住吉の浪
742

津守國助

神祇の歌の中に

敷嶋の道まもりける神をしもわが神垣とおもふうれしさ
743

權大納言實國

廣田の社の歌合に、述懷

天くだる神の惠みのしるしあらば星の位に猶のぼりなむ
744

皇太后宮大夫俊成

久安の百首の歌に

思ふ事三輪の社に祈り見む杉はたづぬるしるしのみかは
745

前大納言爲氏

題志らず

さゞ波や神代の松のそのまゝに昔ながらのうら風ぞふく
746

祝部成茂

寳治の百首の歌奉りける時、浦船

辛崎やきよき浦わに漕ぎ歸る神の御船のあとをしぞ思ふ
747

天台座主道玄

題志らず

曇なき世を照さむとちかひてや日吉の宮の跡をたれけむ
748

祝部成茂

あひにあひて日吉の空ぞさやかなる七つの星の照す光に
749

前大僧正慈鎭

日吉の社によみて奉りける歌の中に

暫しだに晴るゝ心やなからまし日吉の蔭の照さゞりせば
750

法眼源承

題志らず

くもりなき神の三室のかげそへてむかふ鏡の山の端の月
751

祝部國長

榊葉や六十ぢ餘りの秋の霜置き重ねても世をいのるかな
752

祝部成賢

神垣にわが老らくのゆふかけて猶さしそふるみねの榊ば
753

前大僧正慈鎭

日吉の社に百首の歌よみて奉りけるに皇太后宮大夫俊成われもよみて奉るべき由申しながらさも侍らざりければ遣しける

いかでかは君も匂ひを添へざらむ神にたむくる百種の花
754

皇太后宮大夫俊成

返し

手向くべき心計りは有り乍ら花にならべむ言の葉ぞなき
755

祝部忠長

神祇の歌の中に

手向け置く露の言葉の數々に神も哀れやかけてみるらむ
756

前大僧正公澄

日吉の社にまうでゝよみ侍りける

祈る事神より外にもらさねば人にしられずぬるゝ袖かな
757

前大納言爲家

人々すゝめて玉津島の社にて歌合し侍りけるに、社頭述懷を

跡たれしもとのちかひを忘れずば昔にかへれ和歌の浦波
758

前大納言爲氏

神だにも我道まもれみしめ繩世の人ごとは引くによるとも
759

祝部行氏

題志らず

年をへて祈る心をしきしまの道ある御代に神もあらはせ
760

鎌倉右大臣

端籬の久しき世よりゆふだすきかけし心は神ぞしるらむ
761

太上天皇

千はやぶる神も光をやはらげてくもらず照せ秋の夜の月
762

前中納言定家

千五百番歌合に

さ根掘じて榊にかけし鏡こそ君がときはの蔭は見えけれ
763

野宮左大臣

榊葉に霜の志らゆふかけてけり神なび山のあけぼのゝ空
764

鴨祐世

神祇を

色かへぬ三室の榊年を經て同じときはに世をいのるかな
765

祝部成久

神垣に思ふ心をゆふしでのなびくばかりにいかで祈らむ
766

平時村朝臣

跡たれて神は幾代をまもるらむおほ宮柱いまも朽ちせず
767

皇太后宮大夫俊成

賀茂重保社頭にて歌合し侍りけるに、述懷の心を

立歸り捨てゝし身にも祈るかな子を思ふ道は神も知る覽
768

法皇御製

弘安元年百首の歌めされし次でに

すべらぎの神の御言をうけきつるいや繼々に世を思ふ哉
769

後鳥羽院御製

熊野に參らせ給ひける時よませ給ひける

世をてらす影と思へば熊野山こゝろの空にすめる月かな
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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