新後拾遺和歌集

Shin Goshūi wakashū

作者複数 Various

新後拾遺和歌集卷第十三
戀歌三

1086

寶篋院贈左大臣

待戀の心を詠み侍りける

僞に又やなりぬと思ふより待つにつけても濡るゝ袖かな
1087

後光嚴院御製

應安六年三月十八日三首の歌講ぜられしついでに契待戀と云ふことを詠ませ給うける

僞の有る世を知らぬ身になして障るや喞つ言の葉にせむ
1088

後岡屋前關白左大臣

貞和二年百首の歌奉りけるに

誠ぞと思ひ定めぬ夕暮のなほざりならずなど待たるらむ
1089

前大納言爲兼

弘安の百首の歌に

さりともと心ひとつに頼めども言ひし儘なる夕暮も無し
1090

花園院御製

貞和二年百首の歌召されし次でに

頼めしも忘れむと思ふ今日の日をくるとな告げそ入相の鐘
1091

前内大臣實

應安六年三月[8]廿音8の歌講ぜられし時、待戀を

契しも頼むとまではなきなかに何と待たるゝ夕なるらむ
1092

源頼春朝臣

戀の歌の中に

僞の有る世も知らず待てとのみ言ひし夜毎の頼まるゝ哉
1093

民部卿爲藤

文保三年百首の歌奉りけるに

僞は待つとばかりのちぎりにて心に頼むゆふぐれぞ無き
1094

從二位業子

題志らず

憂きは身になれぬる後も僞をたのむや負くる心なるらむ
1095

大江冬時

僞にならふうき身は中々に契らぬくれやたのみたるらむ
1096

法印覺爲

僞を頼むだにこそはかなきを契らぬ暮のなどまたるらむ
1097

源和義朝臣

僞と思ひながらも契りしや夕ぐれごとのたのみなるらむ
1098

平英時

さりともと思ふ心やよわるらむ今は待たれぬ夕ぐれの空
1099

從二位長衡

さのみよも來ぬ僞はかさねじと心に待たぬ夕ぐれぞなき
1100

順徳院御製

鳥の音の曉よりもつらかりきおとせぬ人の夕ぐれのそら
1101

從一位宣子

如何にせむ障らば明日の頼だに知らぬ契の宵のむらさめ
1102

後光嚴院御製

延文の百首の歌召されけるついでに、寄蛛戀を

小蟹の蛛のふるまひ兼てより志るしも見えば猶や頼まむ
1103

權大納言爲遠

かねて憂き心盡しとなりにけり頼をかくるさゝがにの絲
1104

源氏頼

題志らず

徒らに待つは苦しき僞をかねてより知るゆふぐれもがな
1105

惟宗行冬

更けぬとも暫し恨みじなほざりに頼めし人の契ならねば
1106

祝部成光

權大納言爲遠の家にて人々三首の歌詠み侍りけるに、待戀を

更くるまで猶待たれしは僞にならばぬさきの心なりけり
1107

宗仲法師

題志らず

僞の數添ふなかは契りてもたのみならはぬ夕ぐれのそら
1108

津守國夏

獨寐のよはをも如何で明さまし訪はれぬ暮は思ひ絶ゆ共
1109

曉勝法師

歸るさのよその恨を待ち明す身の類ひとはいかゞ思はむ
1110

藤原俊頼朝臣

待つ人の來ぬ夜の數に較ぶれば枕のちりも積らざりけり
1111

津守國貴

現にてこぬ憂さよりも逢ふと見る夢は幾夜も待つべかり鳬
1112

前大納言俊定

僞のつらさにかへて詠むれば月ぞ來ぬ夜の數は知るらむ
1113

大炊御門右大臣

ともすれば雲間隱れに待たれつゝ空頼めするよはの月哉
1114

監命婦

男の人の國に罷りて、歸り來むと云ひける程も過ぎにければ詠みて遣しける

人を待つ門は暗くぞなりにける頼めし月のうちに見えねば
1115

從三位頼政

深夜戀と云ふ事を

見よかしな廿日餘りの月だにも今迄人に待たれやはする
1116

源氏清

題志らず

逢はざりしつらさを喞つ言の葉に今だに濡るゝ新枕かな
1117

藤原宗遠

戀の歌に

なみだのみ片敷く袖の新枕いくとせ濡れて今宵干すらむ
1118

多々良義弘朝臣

逢ふ夜だに猶干しやらぬ我袖や恨みなれにし涙なるらむ
1119

法印淨辨

初逢戀の心を

自づから逢ふ夜はかはる心かな涙や戀のひまを知るらむ
1120

前關白近衞

延文の百首の歌奉りける時、寄關戀

戀路には迷ふとばかり思ひしに越えける物を逢坂のせき
1121

前大納言爲定

文保三年、百首の歌に

戀ひ死なばかひなからまし存へて逢ふを限りも命なり鳬
1122

内大臣

題志らず

逢ふ夜こそ思ひ知りぬれ我ながら慕ひ來にける心長さを
1123

大納言師賢

正中二年百首の歌奉りけるに

其儘にやがて命もたえぬべしげに身にかふる逢瀬なりせば
1124

能譽法師

逢戀をよめる

ならはねば身にこそ夢と辿るとも是は現と言ふ人もがな
1125

法印長舜

百首の歌の中に、同じ心を

今宵かくかはし初めつる手枕に今は涙のかゝらずもがな
1126

延喜御製

題志らず

夢路より惑初めぬと侘びつるに導べ有りとは今ぞ知りぬる
1127

爲冬朝臣

思ひ出づる雲間の月の面影は又何時までのわすれ形見ぞ
1128

權中納言爲重

急別戀と云ふ事を詠める

轉てなど憂き身知らるゝ別路を急がぬ先に慕はざりけむ
1129

左大臣

永徳元年六月十二日三十首の歌講ぜられし時、惜別戀

夜を籠めて急ぐ別の憂きなかに頼めぬ末を何ちぎるらむ
1130

藤原爲尹朝臣

百首の歌奉りし時、別戀

我が心慰めとてや別路にかはらじとのみちぎり置くらむ
1131

等持院贈左大臣

貞和二年百首の歌奉りけるに

鳥の音は鳴くとも未夜深きになど憂き人の急ぐなるらむ
1132

源詮信

題志らず

せめてたゞ聞きも盡さば別路の八聲の鳥をさのみ恨みじ
1133

後野宮前内大臣

よしさらば又とも言はじ別路のつらさに堪へむ命ならねば
1134

太上天皇

永和四年八月十五夜三首の歌講ぜられしついでに、月前別戀

つらき名のたぐひまでやは喞つべき別れし袖の有明の月
1135

權中納言資教

百首の歌奉りし時、別戀

憂きまゝにさのみかこたじ衣々の形見はのちも有明の月
1136

源頼元

同じ心を

形見ぞと言はぬばかりの別れ路に殘るもつらき有明の月
1137

前大納言爲氏

月前別戀の心を

忘るなよ又逢ふまでの契とも知らぬ形見のありあけの月
1138

源基時朝臣

戀の歌の中に

今よりやつらき形見となりもせむ我が衣々の袖のつき影
1139

正三位知家

建保二年内裏に百首の歌奉りけるに

曉の別れは何時もから衣濡れてぞかへるそでのうらなみ
1140

前中納言基成

題志らず

死ぬばかり人は別れを思はでや又逢ふ事を契り置くらむ
1141

崇賢門院

百首の歌奉りし時

我のみや干さで忍ばむ衣々の袖に殘さぬひとのなみだを
1142

祝部成豐

道芝の露と消えなば衣々の別れやながきわかれならまし
1143

後鳥羽院宮内卿

千五百番歌合に

明くるだに惜まぬ物を暮ればとは心の外の空だのめかな
1144

兵部卿元良親王

かく定めなうあくがれ給ひけれどいと心ありてをかしくおはする宮と聞きて大夫の御息所の御腹の女八宮にあはせ給ひて、あしたに

程もなく歸るあしたのから衣心まどひにいかゞきつらむ
1145

光明峯寺入道前攝政左大臣

百首の歌の中に、後朝戀

暮るゝ間を待つべき身とも頼まれず歸りし道の心惑ひに
1146

讀人志らず

年頃つれなかりける女にからうじてあひそめける其の夜程なく明けぬれば詠める

つらかりし君が心は忘られて明けぬる空の恨めしきかな
1147

二條院御製

後朝戀を詠ませ給ひける

ひとり寐も習はぬ身には非ねども妹が歸れる床の寂しさ
1148

皇太后宮大夫俊成

爲忠朝臣の家に百首の歌詠ませ侍りける時、後朝隱戀

飽かなくに起きつるだにも有る物を行方も知らぬ道芝の露
1149

本院侍從

元良親王の、くや/\と待つ夕暮といまはとて歸るあしたといづれ増れりと云ふ歌を數多の人の許に遣はして返事を見けるに

夕暮は頼む心になぐさめつ歸るあしたはけぬべきものを
1150

源季廣

後朝戀の心を

逢ふまでを限と思ひし涙こそ歸る今朝さへ先だちにけれ
1151

從二位家隆

歸るさの今朝の別をすぐしてぞ命ありとも身を頼むべき
1152

侍從爲敦

百首の歌奉りし時

志ばし猶待たれぬ夢ぞ覺めやらぬ現とも無き今朝の別に
1153

法印定爲

文保の百首の歌に

別れつる身には心の有らばこそ夢現ともひとにかたらめ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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