新後拾遺和歌集

Shin Goshūi wakashū

作者複数 Various

新後拾遺和歌集卷第十八
釋教歌

1471

皇太后宮大夫俊成

花嚴經の高山頓説の心を

朝日さす高嶺の雲は匂へども麓の人は知らずぞ有りける
1472

中務卿宗尊親王

同じ心を詠める

いづくにも春は來ぬれど朝日さす高嶺よりこそ雪は消ゆらめ
1473

入道贈一品親王尊圓

方便品、唯有一乘法無二亦無三と云ふ心を

春は唯花をぞ思ふ二つ無く三つ無き物はこゝろなりけり
1474

源空上人

釋教の歌とて詠みける

我れは唯佛に何時かあふひ草心のつまにかけぬ間ぞ無き
1475

後嵯峨院御製

法華經序品、以是知今佛欲説法花經

法の花今も古枝に咲きぬとはもと見し人や思ひ出づらむ
1476

寂然法師

妙音品

隈もなき月の光にさそはれて鷲の深山をさして來にけり
1477

成尋法師母

夜ふけて月の入るを見てよめる

山の端に出で入る月も廻りては心の内に住むとこそ聞け
1478

法眼源承

寶塔品

苔の庭を玉の砌に敷きかへてひかりを分つ峯のつきかげ
1479

讀人志らず

題志らず

今ぞ知る誠の道に雲晴れて西をたのめばありあけのつき
1480

慶政上人

梵網經、名聞強健努力脩善の心を

我れ斯くて山の端近く成る儘に過ぎし月日の數ぞ悲しき
1481

前大僧正頼仲

化城喩品の心を

浮かれたる我身よ如何で故郷に旅と思はで住み定むべき
1482

讀人志らず

題志らず

身を分けし教しなくば垂乳根の浮き世の闇を猶や歎かむ
1483

津守國夏

唯識論を

とも斯も心こそなせ同じくば我とさとりを爭で知らまし
1484

覺深法師

題志らず

皆人のこゝろの月の晴れやらで迷ふ後瀬の山の端のくも
1485

頓阿法師

心經の不増不滅を

變らじな空しき空の夕月夜又ありあけにうつり行くとも
1486

夢窓國師

釋教の歌とて

雲よりも高き所に出でゝ見よ志ばしも月に隔てやは有る
1487

後京極攝政前太政大臣

舍利講

願はくは心の月をあらはして鷲のみ山にあとをてらさむ
1488

信生法師

觀無量壽經の徳益分を

隔てこし世々の浮雲今日消えて昔まだ見ぬ月を見るかな
1489

示證上人

想於西方を

入る月の名殘を添へて志たふかな峰より西の雲のをち方
1490

權律師幸圓

華嚴經の心を詠み侍りける

うへもなく頼む日吉の影なれば高き峯とやまづ照すらむ
1491

入道二品親王尊道

百日入堂の爲に比叡山の無動寺に登りて詠み侍りける

閼伽むすぶ跡をば殘せながらなる山の下水苔ふかくとも
1492

前大僧正道玄

題志らず

誰れに又問はゞ答へむ我が山の法の流れの深きこゝろを
1493

願蓮法師

濁ある水にも月は宿るぞと思へばやがて澄むこゝろかな
1494

賢珠上人

濁る世の人の心をそのまゝに捨てぬ誓ひを頼むばかりぞ
1495

讀人志らず

人なみに法の流れを傳へても水のこゝろやなほ濁るらむ
1496

前大納言爲家

觀經釋文、釋迦此方發遺彌陀即彼國來迎

船よばふ聲にむかふる渡し守浮世の岸に誰れかとまらむ
1497

前大納言基良

囑累品、今以付囑汝等の心を戀に寄せて詠み侍りける

忍べとて書きおく浦の藻鹽草長らへてだに形見ともなれ
1498

法眼源承

涌出品、父少而子老

年經れど松のみどりは變らぬに霜をいたゞくかけの下草
1499

寂然法師

十戒授くるを聞きて詠める

先の世の報と聞けど身の憂さに思ひこるべき心地こそせね
1500

入道贈一品親王尊圓

囑累品、令一切衆生普得聞知を

みな人のうき世の夢もさむばかり遥に響けあかつきの鐘
1501

權中納言爲重

前大納言爲定の十三年の佛事に一品經すゝめ侍りしに、五百弟子品の心を

夢よ待つよはの衣のうらなれば現に知らぬ玉も見てまし
1502

重阿上人

題志らず

心をぞ猶磨くべき墨染のころものうらのたまは見ずとも
1503

赤染衛門

涅槃經説くを聞きて

今はとて説きける法の悲しきは今日別れぬる心地こそすれ
1504

如月法師

題志らず

法の道入るべき門は變れども遂には同じさとりとぞ聞く
1505

花園院御製

此方何足厭一聚虚空塵

厭ふとも惜むともなり假初の浮世に宿る我が身と思へば
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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