續千載和歌集

Shoku Senzai wakashū

作者複数 Various

續千載和歌集卷第十三
戀歌三

1287

順徳院御製

題志らず

僞のなき世なりともいかゞせむ契らでとはぬ夕暮のそら
1288

龜山院御製

さりともと猶頼まるゝ夕暮を契りしまゝにとふ人もがな
1289

前大納言爲世

嘉元元年卅首の歌奉りし時、待戀

たのみける心と人のしるばかり僞をだに待つときかれむ
1290

太政大臣

戀の歌の中に

まこともやその兼言に混るらむ僞ばかりある世ならねば
1291

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

人心昨日にかはるいつはりにしらずや末の世々のかね言
1292

前大納言師重

題志らず

契れども猶僞とうたがひしこゝろの末ぞまことなりける
1293

權少僧都能信

頼めばぞ變るもつらきかねてよりなど僞と思はざりけむ
1294

法印行源

僞と思ひながらも言の葉にかゝるは露のいのちなりけり
1295

平貞時朝臣

契りしもなほ頼まれず僞と思ひ初めにしこゝろならひに
1296

平宣時朝臣

待ちよわる心やあると秋風の身にさむからぬ夕暮もがな
1297

權律師圓世

我がための音づれとだに思はゞや人待つよひの荻の上風
1298

入道前太政大臣

弘安の百首の歌奉りける時

色にいでゝいはぬ計りぞ小鹽山まつとは風の便にもきけ
1299

前大納言爲世

たのめ置くたが誠より夕暮のまたるゝ物に思ひそめけむ
1300

法印宗圓

前大納言爲世よませ侍りし春日の社の卅首の歌の中に

さのみやはわが僞に爲果てむつらくばまたぬ心ともがな
1301

右大辨隆長

題志らず

頼めてもこぬ人を待つ夕ぐれに心をつくすいりあひの鐘
1302

前大納言經長女

僞と思ひもはてばいかゞせむまつをたのみの夕ぐれの空
1303

法眼源承

我が戀のけぶりとだにも志らせばやこぬ夕暮の空の浮雲
1304

津守國冬

嘉元の百首の歌奉りし時、待戀

此暮のつらき報もみせてましまたるゝ程の我身なりせば
1305

爲道朝臣

永仁二年八月十五夜十首の歌講ぜられし時、月前契戀といへる心を

いかにせむ月の知べは頼めども契りし夜はと思出でずば
1306

津守國助

永仁元年八月十五夜龜山院に十首の歌めされける時、秋戀

僞のまことにならむ夕べまであはれ幾夜の月かみるべき
1307

宰相典侍

題志らず

知せばや頼むる宵のまつの戸に更け行く月の心づくしを
1308

大江政國女

今こむと契りし程も更けにけり今宵もさてや山の端の月
1309

三善春衡朝臣

待ちかねて泪かわかぬ我が袖に宿るもつらくふくる月哉
1310

前中納言資名

とはれつるいつの習のあり顔に今宵ふけぬと又歎くらむ
1311

贈從三位爲子

後二條院位におましましける時人々に召されし卅首の歌の中に待つ夜ふくる戀といふことを

自ら思ひも出でばとふばかり更けぬる夜はと爭で知せむ
1312

前太宰大貳俊兼

戀の歌の中に

暫しだに更けぬになして慰めむまつ夜の鐘の聲な聞かせそ
1313

藤原景綱

つく%\と獨詠めて更けにけり槇の戸さゝぬ十六夜の月
1314

平宣時朝臣

待侘ぶる心盡しの程をだにみせばや夜はの月ぞふけゆく
1315

前大僧正實超

味氣なく待つ宵過ぐる月影をふけぬになして猶頼むかな
1316

前大僧正仁澄

月のみぞおなじ枕にやどりける今夜も人は空だのめして
1317

後二條院御製

頼めずばねなまし月とながめてもうき僞にふくる空かな
1318

伏見院御製

せめて唯僞とだに思はゞや頼めてふくるよはのつらさを
1319

今上御製

君まつといく夜の霜をかさぬらむ閨へもいらぬ同じ袂に
1320

前大納言爲世

嘉元の百首の歌奉りし時、不逢戀

算へてもいつ迄獨またれけむ百夜も過ぬ志ぢのはしがき
1321

修理大夫隆康

題志らず

君こずば誰とかさねむ唐衣つまふく風に夜はふけにけり
1322

中納言家持

山吹を折て人のおこせたりければ

逢ふ事を今夜/\とたのめずば中々春のゆめはみてまし
1323

右近大將道綱母

終夜人を待ちわびて

志らせばやつがはぬ春の浮蓴いかなる瀬々に亂れゆく覽
1324

中宮

題志らず

頼めつゝ待つ夜空しきうたゝねを志らでや鳥の驚かす覽
1325

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

今宵こそつらさ乍らに明けぬ共待ち鳬とだに爭で知せむ
1326

秋田もる賤が假ほの稻むしろいなてふ夜はぞ床は露けき
1327

紀淑氏朝臣

題志らず

思ひかねゆきてはかへる道芝の露をかさぬる袖の上かな
1328

土御門院小宰相

寳治の百首の歌奉りける時、寄雨戀

思ひきや泪に志ぼる袖に猶身を志る雨をそへむものとは
1329

後二條院御製

戀の歌とてよませ給うける

限あれば今ぞ重ぬるせき返しなみだに朽ちし夜半の衣手
1330

昭訓門院權大納言

斯るべき契も志らず昨日までよそにも人を思ひけるかな
1331

藤原泰宗

諸共にうちとけられぬ新枕かはせる夜半も苦しかりけり
1332

讀人志らず

忘るなよ結ぶ一夜のにひまくら夢ばかりなる契なりとも
1333

爲道朝臣

忍逢戀といふ事をよみ侍りける

今夜さへ同じ人目をいとふ哉あふにまぎるゝ泪ならねば
1334

入道前太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、忍逢戀

形見とも後にこそみめ忍びつゝ逢ふ夜の月に雲隱れせよ
1335

前大納言爲世

初逢戀

つれなきにすてし命も惜まれてあふに變るは心なりけり
1336

光俊朝臣

弘長二年龜山殿の十首の歌に、稀逢戀

此儘にうき身にさめぬ夢ならば現にかへて又やなげかむ
1337

大江頼重

戀の歌の中に

いかにせむ現も夢とたどられて逢ふにも迷ふ我が心かな
1338

法印良兼

假初の今夜ばかりの夢ならで又みるまでの契りともがな
1339

前大僧正實超

人はよもさむる名殘も惜しからじ心通はぬ夢のちぎりは
1340

權大納言兼季

忍びつゝたゞ時のまにあふ程の心まよひぞ夢にかはらぬ
1341

源光忠朝臣

ふけてとふ只等閑のつらさこそ來ぬには増る恨なりけれ
1342

左京大夫實任

今夜だに思ひ志らるゝ身の程を今より後といかゞ契らむ
1343

三善康衡朝臣

慰むるそのかねごともよしや今忍ばれぬべき別ならねば
1344

光俊朝臣

衣々にならばいかにと思ふより夜深く落つる我が泪かな
1345

源具行朝臣

題を探りて詩歌を合せられ侍りし時、別戀を

鳥の音の憂にもせめてなさじとやあくるをまたぬ別なる覽
1346

從三位親子

題志らず

中々にむなしきよりもうき物をふけて逢ふ夜の鳥の聲々
1347

民部卿實教

さらでだに別をいそぐうき人の心にかなふ鳥のこゑかな
1348

前大納言家雅

うき人の心にいそぐ別路をよそなる鳥の音にかこつかな
1349

法印公惠

恨みじよ明けぬと鳥はつげず共さて止るべき別ならねば
1350

前僧正道性

二品法親王の家の五十首の歌に、別戀

慕ひわび泣くはならひの別路に何とか鳥の音をも喞たむ
1351

少將内侍

百首の歌奉りし時

あけぬとも心あるべき別路をなど鳥の音に喞ち初めけむ
1352

今上御製

別戀を

人はなほながらへぬべき心かと後をちぎるもうき別かな
1353

遊義門院

行くすゑの深き契もよしやたゞかゝる別の今なくもがな
1354

春宮權大夫有忠

あやにくに偖もや人の休らふと惜までみばやつらき別を
1355

寂惠法師

暫しとも人はとゞめぬ別路の我のみつらきあかつきの空
1356

祝部成久

暫しとて猶いかばかり志たはましこれを限の別なりせば
1357

藤原秀長

つらしとや思ひはてまし又こむといひて歸らぬ別なりせば
1358

藤原基祐

後とだにたのめも置かば別路の今のつらさは慰みなまし
1359

讀人志らず

別路の後をばいかに契るともなぐさみぬべきわが心かは
1360

三善貞康

あけぬとも暫しは猶や志たはまし忍ぶる中の別ならずば
1361

藤原宗秀

くもれたゞ後に忍ばむかげもうしわが歸るさの有明の月
1362

藤原宗行

月だにも面影とめよきぬ%\の袖の別を志たふなみだに
1363

大藏卿隆博

弘安の百首の歌奉りける時

別路のうきにたへずばいきて世に又有明の月や見ざらむ
1364

前大納言通顯

題志らず

うき物と又いとふともわかれ路に二たび見ばや有明の月
1365

廣義門院

有明の月さへうしやいかなれば別かなしき空に見ゆらむ
1366

法皇御製

きぬ%\の袖の泪をかたみにて面影とむるありあけの月
1367

題をさぐりて詩歌を合せられ侍りし時、別戀の心をよませ給うける

見るまゝにこれやかぎりと悲しきは別るゝ袖の有明の月
1368

今上御製

曉逢戀といふ事を

こひ/\てあふ夜もやがて別路の泪にくるゝ有明のつき
1369

前關白太政大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、曉別戀

おきわかれ泪くもらぬ月ならば袖に名殘の影はみてまし
1370

前關白左大臣押小路

百首の歌奉りし時

東雲の峰にも雲は別れけりわがきぬ%\の名殘のみかは
1371

後二條院御製

正安四年六月五首の歌合に忍別戀といへる心をよませ給ひける

關守はあかつきばかりうちも寐よ我が通ひ路も忍ぶ別に
1372

内大臣

百首の歌奉りし時

心にもあらでぞいそぐ關守のうちぬる程と思ふわかれは
1373

前左兵衞督教定

戀の歌の中に

心からいくたび袖にかけつらむこりぬ別のしのゝめの露
1374

後嵯峨院御製

寳治の百首の歌めしけるついでに、寄原戀

この寐ぬる朝の原のつゆけさはおき別れつる泪なりけり
1375

左近大將朝光

女の許よりかへりて遣しける

音にのみ聞きしは偖も慰みきなどか今朝しも袖の露けき
1376

入道前太政大臣

百首の歌奉りし時

なみだかと見るにも悲しわぎも子が歸る朝げの道芝の露
1377

賀茂久世

題志らず

とけてぬる花田の帶の一筋に歸る色こそ今朝はつらけれ
1378

參議定經

女のもとにまかりてあしたに遣しける

おき別れ歸る袂のいつのまに今朝さへ頓て露けかるらむ
1379

讀人志らず

返し

思ひやれあだなる夢に結ぼゝれさむる方なき今朝の心を
1380

遊義門院

後朝の戀の心を

鳥の音におき別れつるきぬ%\の泪乾かぬ今朝の床かな
1381

永福門院

別れてもまだ夜は深き鳥の音を獨なごりの床にきくかな
1382

二品法親王覺助

百首の歌奉りし時

今はとて己がきぬ%\立別れ鳥の音おくる志のゝめの道
1383

大藏卿隆博

朝戀を

忘ればやはかなき夢の名殘ゆゑ今朝の枕にのこる面かげ
1384

祭主輔親

人に物いひて後に遣はしける

今日だにも慰めがたき心にはいかですぐしゝ昔なりけむ
1385

素性法師

題志らず

いたづらに立歸りにし志ら波の名殘に袖のひる時ぞなき
1386

光明峰寺入道前攝政左大臣

家に百首の歌よみ侍りける時、戀を

須磨のあまの鹽燒衣おのれのみなれてもかゝる袖の浪哉
1387

前大納言俊光女

戀の歌の中に

いかにせむうき中河の淺き瀬に結ぶ契のさても絶えなば
1388

皇太后宮大夫俊成女

名所の百首の歌奉りける時

思のみます田の池のうきぬなは絶えぬ契ぞ苦しかりける
1389

和泉式部

近き所にかたらふ人ありと聞きける人に遣はしける

天の河同じ渡りにありながら今日も雲居のよそに聞く哉
1390

源兼氏朝臣

稀戀の心を

よしや又さても絶えずば銀河同じ逢瀬にたゝへこそせめ
1391

後近衛關白前右大臣

弘安七年九月九日三首の歌講ぜられける時、寄菊戀といへる心を

うつろはむ人の心もしら菊のかはらぬ色となに頼むらむ
1392

前大納言爲世

頼まじなうつろひぬべき白菊の霜待つほどの契ばかりは
1393

津守國道

題志らず

我にのみ移りはつとも月草のうす花ごゝろいかゞ頼まむ
1394

法印長舜

あだにのみ移ろふ色のつらければ人の心の花はたのまじ
1395

權中納言公雄

はながつみかつ見ても猶頼まれず淺香の沼のあさき心は
1396

前參議能清

弘安の百首の歌奉りける時

ながらへば我が心だにしらぬ身の人の契をえやは頼まむ
1397

藤原宗秀

人の鏡のうらにかきつけゝる

面かげを思ひも出づなます鏡またこと人にこゝろ移らば
1398

藤原利行

題志らず

ひく方はあまたありとも梓弓もとの心のかはらずもがな
1399

藤原宗泰

斯れとは祈らざりしをみしめ繩あらぬ心の誰にひくらむ
1400

讀人志らず

業平朝臣伊勢へ下り侍りける時齋宮に侍りける女房の許より

千早ぶる神の忌垣も越えぬべし大宮人の見まくほしさに
1401

業平朝臣

返し

戀しくばきても見よかし千早振神の諌むる道ならなくに
1402

中納言兼輔

月へだゝりにけりと女のいひおこせたりければ

浮雲に身をしなさねば久方の月へだつとも思はざりけり
1403

土御門院御製

旅戀をよませ給うける

別れてもいく有明をしのぶらむ契りて出でしふる郷の月
1404

左大臣

百首の歌奉りし時

月にしもとふべき物と思はぬをなど見るからに泪そふ覽
1405

今上御製

正和二年九月盡日十首の歌めされしついでに、希待戀

今更に思ひいづるもたのまねば待つともいはじ夕暮の空
1406

後鳥羽院御製

戀の心をよませ給うける

ともねせぬ鴨の上毛の夜の霜おき明しつる袖を見せばや
1407

皇太后宮大夫俊成

百首の歌よみ侍りけるに

難波女の芦のしのやのしの薄一夜のふしも忘れやはする
1408

中臣祐春

二夜隔たる戀といふ事をよめる

昨日けふ芦間の小舟さはりきてあすを逢ふ夜と又契る哉
1409

藤原行朝

題志らず

衣々の別れだにうき鳥の音をこぬ夜の床に聞きや明さむ
1410

法印圓勇

諸共に見しを泪のはれまにてこぬ夜はくもる袖の月かげ
1411

丹波忠守朝臣

見しまゝの袖に泪は晴れやらでこぬ夜もつらき月の影哉
1412

道義法師

おも影も泪にはてはくもりけり月さへ人のちぎり忘れて
1413

藤原基有

ほしわぶるわが袖かたれ夜半の月人は泪の外に見るとも
1414

權中納言爲藤

百首の歌奉りし時

面かげぞいつしか變るます鏡みざりしよりもくもる泪に
1415

權中納言親房

春宮にて逢後増戀といへる事を人々よみ侍りけるに

いとゞ猶逢見て後もかゝれとは誰がならはしの袖の涙ぞ
1416

前大納言爲氏

寳治元年十首の歌合に、遇不逢戀

在しよを戀ふる現はかひなきに夢になさばや又も見ゆやと
1417

前大納言爲世

おなじ心を

歎けども覺めての後にかひなきはまだ見ぬ夢の契なりけり
1418

藤原基任

旅戀を

別れては忘れやすらむ故郷の人のこゝろをみる夢もがな
1419

從三位爲信

嘉元の百首の歌奉りし時、會不逢戀

人心いかなるひまにかよひけむ又はゆるさぬ夜半の關守
1420

權中納言公雄

人はよも人に語らじありし夜の夢を夢とも思ひ出でずば
1421

前攝政左大臣

つらかりし其難面さの儘ならば中々かゝるものは思はじ
1422

前大納言忠良

住吉の社によみて奉りける百首の歌の中に

見るもうしおきて別れし有明の空にかはらで殘る月かげ
1423

和泉式部

長月の有明の頃よみ侍りける

よそにてもおなじ心に有明の月は見るやと誰にとはまし
Japanese Text Initiative
Electronic Text Center | University of Virginia Library
PO Box 400148 | Charlottesville VA 22904-4148
434.243.8800 | fax: 434.924.1431
Etext Home | Library Home | Search the Library Web
Contact Us:UVA Library Feedback
Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
© 2025 The Rector and Visitors of the University of Virginia