續千載和歌集

Shoku Senzai wakashū

作者複数 Various

續千載和歌集卷第九
神祇歌

863

後嵯峨院御製

建長五年、住江に御幸侍りて、行旅述懷と云ふ事を講ぜられ侍りけるに詠ませ給ひける

跡垂れし神世に植ゑば住吉の松も千年を過ぎにけらしも
864

太宰權帥爲經

幾千世と又行くすゑを契るらむ今日待ちえたる住吉の松
865

前右兵衞督爲教

住江や今日の御幸を待つとてぞ神も千年の種は蒔きけむ
866

山本入道前太政大臣

弘安八年住江に御幸侍りて同じ心を講ぜられ侍りけるに

住吉の松の千年もみゆきする今日の爲とや神も植ゑけむ
867

常磐井入道前太政大臣

住吉の神主國平、大宮院に御卷數、奉るとて松の枝に付けり侍りけるを見て女房に代りて

千年とも祈るしるしの言の葉をむすびや付くる住吉の松
868

權中納言爲藤

住吉の社を繪にあらはして神祇祝と云へる心を人々詠み侍りける時

住吉の松も花咲く御代に逢ひてとかへりまもれ敷島の道
869

津守經國

本社にさぶらひて雨を祈るとて詠める

さらぬだに淺澤小野の忘水忘れ果てゝもいくか經ぬらむ
870

皇太后宮大夫俊成

江上月を

思ひ出でよ神代も見きや天の原空もひとつに住の江の月
871

讀人志らず

題志らず

宮居せし神代思へば片そぎの行合ひの霜は年舊りにけり
872

津守國道

契有りてつかふる神の御しめ繩猶代々かけて身を頼む哉
873

前大納言爲家

玉津島に詣でゝ詠み侍りける

みがき置くあとを思はゞ玉津島今もあつむる光をもませ
874

前大納言爲氏

源兼氏朝臣すゝめ侍りける玉津島の社の十五首の歌に

敷島や大和ことの葉我が世まで享けゝる神の末も頼もし
875

前關白太政大臣家讃岐

題志らず

和歌の浦や藻に埋もれし玉も今光を添へて神ぞ見るらし
876

津守國助

和歌の浦に立てし誓の宮柱いく世もまもれしきしまの道
877

入道前太政大臣の家の十五首の歌に、述懷

一筋に憂きをもいかに歎かまし神に任せぬ我身なりせば
878

前大納言爲氏

春日の社に奉りける歌の中に

埋れ木の身は徒に舊りぬとも神だに春のめぐみあらはせ
879

前僧正實聰

前關白太政大臣、春日の社に詣で侍りけるに、山階寺の別當にて代々の跡に變らず執り行ひて思ひつゞけ侍りける

三笠山老木も今は花咲きて代々にかはらず春に逢ひぬる
880

前參議雅孝

題志らず

三笠山春のめぐみのあまねくば藤の末葉も猶やさかえむ
881

一條内大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、山

照せなほ山はみかさの朝日影あふぐ心もくもりやはする
882

前中納言定家

西行法師、人々すゝめて百首の歌詠ませ侍りけるに

なか/\に指しても言はじ三笠山思ふ心は神ぞ知るらむ
883

常磐井入道前太政大臣

水無月の頃春日の社に籠りて法樂し侍りける歌の中に

春日山深くたのみし夏草の茂きめぐみぞ身にあまりぬる
884

後二條院御製

神祇の心を詠ませ給ひける

人よりは哀れとおもへ春日山しかもたのみをかくる年月
885

前中納言定資

のぼるべき跡をば捨てし春日山今一さかは神にまかせむ
886

中臣祐茂

題志らず

かすが山あまつ兒屋根の眞澄鏡映りし影の月を見るかな
887

前僧正實聰

榊葉に志ら木綿かけてつもりけり三笠の杜の今朝の初雪
888

後京極攝政太政大臣

頼もしな佐保の河瀬の神さびて汀の千鳥八千代とぞ鳴く
889

中臣祐春

若宮の神主になりて後詠める

世々かけて神に仕ふる名取川かゝる瀬迄と身をぞ祈りし
890

狛秀房

題志らず

二葉より神をぞ頼むをしほ山我もあひおひの松の行く末
891

權大僧都公順

わづらふ事ありて久しく熊野に詣で侍らざりける頃詠み侍りける

思ひやる袖も濡れけり岩田河わたりなれにし瀬々の白浪
892

前大僧正禅助

題志らず

今もなほ哀れをかけよみくま野や昔のあとは神も忘れじ
893

法皇御製

稻荷山祈る驗のかひもあらば杉の葉簪しいつか逢ひ見む
894

權大納言經繼

二品法親王の家の五十首の歌に、杉雪

冬されば三輪の杉むら神さびて梢にかゝる雪のしら木綿
895

入道前太政大臣

弘安の百首の歌奉りける時

雪降れば三輪のすぎ村木綿懸けて冬こそ神の印見えけれ
896

從二位家隆

光明峰寺入道前攝政内大臣に侍りける時、家に百首の歌詠み侍りけるに

千早ぶる神の御室の眞澄鏡懸けていく世の影を變ふらむ
897

法性寺入道前關白太政大臣

題志らず

神がきや御室のやまの郭公ときはかきはの聲と聞かばや
898

祐子内親王家紀伊

御あれの日音づれて侍りける人の返事に

もろかづらかた/\懸くる心をば哀とも見し賀茂の瑞垣
899

從三位氏久

虫屋を作りて前大納言資季の許へ送り遣すとて

君のみや千とせも飽かず聞き舊りむ我が神山の松虫の聲
900

前大納言資季

返し

幾千世か鳴きて經ぬらむ千はやぶるその神山の松虫の聲
901

權僧正桓守

神祇を

曇なき君が御世にぞ千はやぶる神も日吉の影を添ふらむ
902

前大僧正仁澄

君守る神も日吉の影添へてくもらぬ御世をさぞ照すらむ
903

前大僧正慈鎭

日吉の社に詠みて奉りける百首の歌に

さりともと照す日吉を頼むかな曇らずと思ふ心ばかりに
904

法眼兼譽

神恩の深き事を思ひて詠める

淺からぬ惠に知りぬのちの世の闇も日吉の照すべしとは
905

天台座主慈勝

拜堂の後、社頭にて詠み侍りける

忘れじなおもひしまゝに見る月の契ありける七の神がき
906

前大納言爲世

百首の歌奉りし時

道まもる七の社のめぐみこそ我が七十ぢの身に餘りけれ
907

祝部行氏

題志らず

いにしへに神のみ舟を引きかけし梢や今のからさきの松
908

法眼慶宗

みな人のたのみを懸けて神垣に祈ればなびく松の白木綿
909

後近衛關白前右大臣

大方の世をしづかにと祈るこそ神の惠にまづかなふらめ
910

前關白左大臣押小路

百首の歌奉りし時

天地の開けそめける神代より絶えぬ日つぎの末ぞ久しき
911

法皇御製

寄國祝と云へる心を詠ませ給うける

かたぶかぬ速日の峰に天降るあめのみまごの國ぞ我が國
912

百首の歌めされしついでに

我が國に内外の宮とあらはれて傳へし法を今まもるらむ
913

前右大臣

嘉元の百首の歌奉りし時、河

濁なきかみの心をあらはして御裳濯河やながれそめけむ
914

伏見院御製

河月と云へる心を

五十鈴川絶えぬ流れの底きよみ神代かはらず澄める月影
915

惠助法親王

澄む月の影を映して五十鈴川濁らぬ世にもかへる浪かな
916

法印最信

太神宮に詣でゝ詠み侍りける

五十鈴川とほきむかしの神代まで心にうかぶ夜半の月影
917

度曾行忠

題志らず

すべらぎの天のみおやのみことのり傳へて祈る豐の宮人
918

荒木田氏忠

神路山かげのこ草は萠えにけり末葉も洩れぬはるの惠に
919

法眼源承

伊勢の國に知る所侍りけるを人に妨げらるゝ由うたへ申し侍りけるが、未だ事行かず侍りけるに、民部卿資宣の許へ申し遣しける

伊勢の海や今も天照る神風に道ある浪のよるべをぞ待つ
920

大江貞重

題志らず

祈りこし志るしあらせよ石清水神も我身を思ひ捨てずば
921

前大納言師重

石清水臨時時祭を

九重の今日のかざしの櫻ばな神もむかしの春はわすれじ
922

後二條院御製

神祇の心を

世の爲もあふぐとを知れ男山むかしは神の國ならずやは
923

法皇御製

百首の歌めされし次でに

世を思ふ我がすゑまもれ石清水きよき心のながれ久しく
924

前大納言爲世

嘉元元年伏見院の三十首の歌奉りし時、夜神樂

更けぬるか眞弓つき弓押し返し謠ふ神樂のもとすゑの聲
925

前中納言定家

文治六年女御入内の屏風に、内侍所の御神樂の儀式のある所

空冴えてまだ霜ふかき明けがたにあか星うたふ雲の上人
926

前中納言匡房

天仁元年鳥羽院の御時大甞曾の悠紀方の神樂の歌、音高山を詠める

よばふなるおとたか山の榊葉の色にかはらぬ君が御世哉
927

左京大夫顯輔

康治元年近衞院の御時大甞曾の悠紀方の神樂の歌、三上山を詠める

千早振三上の山の榊葉を香をかぐはしみとめてこそ取れ
928

前大納言俊光

延慶二年新院の御時、大甞曾の悠紀方の神樂の歌、石戸山を詠める

久方の天の岩戸の山の端にとこやみ晴れて出づる月かな
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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