新拾遺和歌集 (Shin Shūi wakashū) — 新拾遺和歌集卷第二 春歌下 作者複数 (Various) 1364 Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1364 しんしゅういわかしゅう Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 しんしゅういわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新拾遺和歌集 › 新拾遺和歌集卷第二 春歌下 Furigana ふりがな Vertical 縦書き
新拾遺和歌集 Shin Shūi wakashū
作者複数 Various
新拾遺和歌集卷第二 春歌下
94
光明峯寺入道前攝政左大臣
花の歌の中に
山風の霞のころも吹きかへしうらめづらしき花の色かな
95
前中納言定家
後京極攝政の家の花の五十首の歌に
霞立つみねのさくらの朝ぼらけくれなゐくゝる天の川波
96
中宮大夫公宗
題志らず
朝日影うつろふ峯の山ざくら空さへにほふ花のいろかな
97
前大納言爲定
文保の百首の歌奉りける時
見るまゝに猶雲深しさくら咲く外山の春のあけぼのゝ空
98
二條院讃岐
春の歌とて詠める
日に添へて立ちぞ重なる三吉野のよしのゝ山の花の白雲
99
權大納言義詮
百首の歌奉りし時、花
分け行けば花に限もなかりけり雲を重ぬるみよしのゝ山
100
前參議爲秀
同じ心を
櫻花いま盛りなりひさかたの雲に雲添ふかづらきのやま
101
前大僧正慈勝
咲き殘す絶間もあらば山ざくら重ねてかゝれ峯のしら雲
102
前參議爲實
三吉野のたかまの櫻咲きぬらし空よりかゝる嶺のしら雲
103
前關白左大臣九條
百首の歌奉りし時
嵐吹く遠山ざくら匂はずば志らでやなほも雲にまがへむ
104
前大納言實教
花間鶯といふ事を
雲に入る面影つらし花の枝に鳴きて木傳ふ春のうぐひす
105
壬生忠見
題志らず
をり侘びて歸らむ物か葛城の山のさくらは雲居なりとも
106
入道二品親王性助
弘安元年百首の歌奉りける時
春雨の日數ふる野のさくらがりぬれてぞ歸る花染のそで
107
彈正尹邦省親王
花透霞といへる事を
山姫のかすみの袖やうすからしへだても果てぬ花の白雲
108
後鳥羽院御製
春の御歌の中に
をはつ瀬や霞にまがふ花の色を伏見の暮に誰れ詠むらむ
109
入道二品親王法守
百首の歌奉りし時、花
身の憂さも詠むるからに忘られて春の心ぞ花にのどけき
110
前大納言爲家
文永二年白河殿にて人々題を探りて七百首の歌仕うまつりけるとき、挿頭花と云ふ事を
今日も又大宮人のさくら花のどけき春のかざしにぞ挿す
111
大納言經信
題志らず
百敷や御垣が原のさくらばな春し絶えずば匂はざらめや
112
伏見院御製
なれて見し雲居の花も世々ふりて面影かすむ九重のはる
113
後宇多院御製
正安三年二月廿七日日吉の社に御幸ありて次の日志賀の山の櫻につけて内へ奉らせ給うける
君ゆゑとけふこそ見つれ志賀の山かひある春に匂ふ櫻を
114
後二條院御製
御かへし
志賀の山風をさまれる春に逢ひて君が御幸を花も待けり
115
永福門院
暦應二年の春花に付けて西園寺より奉らせ給うける
咲き散るも知る人も無き宿の花いつの春まで御幸待ちけむ
116
花園院御製
御返し
世々をへて御幸ふりにし宿の花かはらぬ色も昔戀ふらし
117
前大納言爲兼
弘安元年百首の歌奉りける時
荒れ果てし志賀の故郷來て見れば春こそ花の都なりけれ
118
前大納言爲氏
寳治元年十首の歌合に、山花
三吉野の花は昔の春ながらなどふるさとの山となりけむ
119
後一條前關白左大臣
花の歌の中に
故里の吉野の櫻咲きにけりいく代の春のかたみなるらむ
120
光明峯寺入道前攝政左大臣
家の八重櫻を内裏へ召されけるにそへて奉りける
花の色の昔に還る春なればこれを見るにも物思ひも無し
121
法性寺入道前關白太政大臣
鳥羽院、位おりさせ給うて後、白河に御幸ありて花御覽じける日よみ侍りける
常よりも珍らしきかな白河の花もてはやすはるの御幸は
122
中園入道前太政大臣
百首の歌奉りし時、花
そこと無き花のところも春ふかみ空に知られて匂ふ春風
123
如願法師
同じ心を
身に換へて思ふも苦し櫻花咲かぬ深山にやどもとめてむ
124
藤原光俊朝臣
寳治元年、百首の歌に、見花
尋ねてぞ花をも見まし木の本を住みかともせぬ我身なり せば
125
後宇多院宰相典侍
題志らず
咲くを待ち散るを惜むに日數經て盛すくなき花の頃かな
126
法皇御製
卅首の歌詠ませ給うける中に
暮れ果てゝ色も分かれぬ花の上に仄かに月の影ぞ移ろふ
127
權中納言公雄
文保の百首の歌奉りける時
櫻咲く高嶺をかけて出でにけり花のかゞみの春の夜の月
128
前大納言爲家
弘長元年百首のうた奉りけるに、春月
飽かず見る花の匂も深き夜の雲居にかすむはるの月かげ
129
後伏見院御製
朝花といふ事をよませ給うける
飽かずみる山櫻戸のあけぼのに猶あまりある有明のかげ
130
前大納言經繼
嘉元の百首の歌奉りける時、花
あたら夜の在明の月に人は來で宿のさくらに春風ぞ吹く
131
中納言爲藤
龍田山木綿附鳥のおのが音を夜ふかき花の色に待つかな
132
中務
早う住み侍りける家の櫻を箱の蓋に入れて人の許に遣すとて
年を經てをりける人も訪はなくに春をすごさぬ花を見る哉
133
源道濟
雲林院の櫻を折りて式部が許へ遣はすとてよめる
又見せむ人し無ければ櫻花いま一えだを折らずなりぬる
134
後徳大寺左大臣
齋院の女房の許より本院の櫻を折りて、之は見るやと申し遣したりけるに
一枝の匂ひは飽かず神垣や花の木ずゑを行きてながめむ
135
讀人志らず
返し
一枝を飽かず思はゞ櫻花こずゑにのこるほどをすぐすな
136
藤原隆信朝臣
花の盛りに櫻のちひさき枝に結びつけて寂蓮が許に遣しける
來て見よと更にも言はじ山櫻殘りゆかしき程にやは非ぬ
137
寂蓮法師
返し
心をばまづ先だてつ山櫻たづね行く間も目がれすなとて
138
民部卿爲明
前大納言爲世人々いざなひて法性寺に花見に罷りて十首の歌よみ侍りける中に
家苞に折りつる花もいたづらにかへさ忘るゝ山ざくら哉
139
花山院御製
折花といふ事を
山守もいかゞいふらむいたづらに風にまかする峰の櫻を
140
土御門院小宰相
三十首の歌よみ侍りけるに、花
咲けば且移ろふ色をあだなり と見てこそ花に風は吹くらめ
141
前關白左大臣近衛
百首の歌奉りし時、同じ心を
散る花の心も知らで春風のさそふをよそに恨みけるかな
142
御製
春の御歌の中に
吹く風の枝を鳴らさぬ春だにも何をかごと に花の散るらむ
143
後照念院關白太政大臣
文保の百首の歌奉りける時
花の香を誘はざりせば吹く風をつらしとのみや思果てまし
144
永福門院内侍
題志らず
吹くとしもよそには見えで脆く散る花に知らるゝ庭の春風
145
前大納言爲世
山櫻うつろふいろの花の香にかすみの袖もにほふ春かぜ
146
源重之
吉野山ふもとの櫻散りぬらし立ちものぼらで消ゆる白雲
147
前内大臣
明け渡る外山の木ずゑほの見えて花に別るゝ峯の横ぐも
148
忠房親王
文保の百首の歌奉りける時
春の夜は明け行く鐘のひゞきまで花に霞める小初瀬の山
149
後久我太政大臣
朝落花を
今朝は又暮ればと頼むかげもなし櫻にくもる四方の山風
150
俊頼朝臣
落花留客といへる事を
立ち歸る心ぞつらき櫻花散るをば見じとおもひしものを
151
六條内大臣
文保の百首の歌奉りける時
おのづから散るは習ひの花になほ恨をそへて春風ぞ吹く
152
藤原基任
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、落花
いざ櫻散るをつらさに言ひなさで梢のほかの盛とも見む
153
伏見院新宰相
永仁二年三月内裏の三首の歌に、山路落花を
梢より散りかふ花をさきだてゝ風の下行く志賀の山みち
154
讀人志らず
堀河院の御時中宮の御方にてかたを分ちて花を折りに遣して御前に立て並べて歌詠ませ給うけるに詠める
底清み流れ絶えせぬ水のおもに花の匂をうつしてぞ見る
155
院御製
春の御歌の中に
流れてはいづくに春のとまるらむ花散りかゝる山川の水
156
前參議教長
河上落花と云ふ事を
吉野川老の白波ながるめり吹きにけらしな山おろしの風
157
法性寺入道前關白太政大臣
堀河院の御時、鳥羽院に行幸の日、池上花といへる心をよみ侍りける
池水に花の錦をうつしては浪のあやをやたちかさぬらむ
158
後二條院御製
折花といふ事をよませ給うける
悔しくぞ移ろふ花を手折りつる綾なく袖の雪と降りけり
159
按察使實繼
百首の歌奉りし時、花
散りつもる花の白雪あともなし盛までとや人も訪ひけむ
160
前大納言爲世
永仁二年三月、内裏の三首の歌に、山路落花といへる事を
雪と降る花にしをりも埋もれて又踏み迷ふ春のやまみち
161
法皇御製
卅首の御歌の中に
吹き亂る花の白雪かきくれてあらしに迷ふ春のやまみち
162
前僧正道性
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、落花
又さそふ木の下風にかつ消えてふるとしも無き花の白雪
163
後嵯峨院御製
文保二年白河殿にて人々題を探りて七百首の歌仕うまつりけるついでに、曉花
是も又在明のかげと見ゆるかな吉野の山の花のしらゆき
164
贈左大臣長實
寛治七年三月十日白河院北山の花御覽じにおはしましたりける日、處々尋花といへる心をよませ給うけるに
尋ねつゝ今日見ざりせば櫻花散りに鳬とやよそに聞かまし
165
人丸
題志らず
春霞たなびく山のさくら花早く見てまし散り過ぎにけり
166
前花大納言 經繼
嘉元の百首の歌奉りける時、
飛鳥風あすも吹なばたをやめの挿頭の櫻散りか過ぎなむ
167
源仲正
白河院の北面にて花未忘といへる事を仰事にて仕うまつりけるに
飽かざりし心に春やとまるらむなほ面影の去らぬ花かな
168
藤原清輔朝臣
久安六年崇徳院に百首の歌奉りける時
年を經て我身はあらずなり行けど花の姿は變らざりけり
169
中務卿具平親王
六條の家の今は野のやうになりにたるに櫻のいと面白く咲きたりけるを源爲善朝臣折りてもて來たりければよめる
いたづらに咲きて散りぬる櫻花昔の春のしるしなりけり
170
冷泉前太政大臣
寳治の百首の歌奉りけるとき、落花
山高みさこそ嵐はさそふともあまりなるまで散る櫻かな
171
壬生忠岑
紀貫之曲水の宴し侍りける時月入花灘暗と云ふ事を
散紛ふ花は衣にかゝれどもみなせをぞ思ふ月の入る間は
172
凡河内躬恒
燈懸水澄明
みな底の影も浮べば篝火のあまたに見ゆる春のよひかな
173
常磐井入道前太政大臣
弘長元年百首の歌奉りける時、山吹
散らぬ間に行きてを見ばや古への色は變らじ井出の山吹
174
津守國冬
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、同じ心を
幾春に井出の下帶めぐり合ひて咲く山吹の花を見つらむ
175
關白前左大臣
百首の歌奉りし時
吉野川岸うつ浪のたかければ咲ける山吹散らまくも惜し
176
源順
水邊山吹と云ふ事を
河風はいかに吹くとも山吹の散行く水を堰きやとめまし
177
皇太后宮大夫俊成
二品法親王守覺の家の五十首の歌に
影うつす井出の玉川底清み八重に八重添ふやまぶきの花
178
藤原長能
恒徳公の家の歌合に
底清き井手の河邊に影見えて今さかりなるやまぶきの花
179
藤原季綱
大井に住み侍りけるころ、花面白くなりなば必御覽ぜむとみかど仰事有りけるをおぼし忘れておはしまさゞりければ奏し侍りける
散りぬれば悔しき物を大井川きしの山吹いまさかりなり
180
左兵衛督基氏
山吹をよめる
流れ行く河瀬の水に影見えて散らぬも浮ぶやまぶきの花
181
入道二品親王覺譽
山吹の花のかゞみとなる水に春の日數もうつるとぞ見る
182
西園寺入道前太政大臣
二品法親王道助の家の五十首の歌に、河山吹
散り果つる山吹のせに行くはるの花に棹さす宇治の河長
183
道濟
藤花を
山高み松にかゝれる藤の花そらより落つる波かとぞ見る
184
貫之
三條右大臣の家の屏風に、松に咲ける藤を
藤の花あだに散りなば常磐なる松に懸れるかひや無からむ
185
前大納言實教
文保二年八月常磐井仙洞に行幸の時人々題を探りて歌仕うまつりけるに、暮春
何故になほしたふらむ花鳥の跡なきのちの春のわかれぢ
186
宜秋門院丹後
後京極攝政の家の百首の歌に
花故に飽かぬわかれは習ひけむ思ひしらずも歸る春かな
187
頓阿法師
山家暮春と云へる事を
移り行く月日も知らぬ山里は花をかぎりに春ぞ暮れぬる
188
中納言爲藤
文保の百首の歌奉りける時
花も散り鳥も殘らず物毎にまたあらたまる春のくれかな
189
入道二品親王尊圓
題志らず
初瀬山尾上の花は散り果てゝ入相のかねに春ぞ暮れぬる
190
等持院贈左大臣
百首の歌奉りし時、暮春
花は皆散り果てにけり今いくか日數ばかりの春を慕はむ
191
前大納言爲定
文保の百首の歌奉りける時
すがの根の長々し日もいつのまに積りて易く春は暮るらむ
192
前大納言爲世
嘉元の百首の歌奉りける時、暮春
惜むとて暮るゝ日數の留まらば猶いかばかり春を慕はむ