新拾遺和歌集 (Shin Shūi wakashū) — 新拾遺和歌集卷第三 夏歌 作者複数 (Various) 1364 Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1364 しんしゅういわかしゅう Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 しんしゅういわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新拾遺和歌集 Shin Shūi wakashū
作者複数 Various
新拾遺和歌集卷第三 夏歌
193
後九條前内大臣
更衣の心を
宮人の袖つき衣けふ更へて夏來にけらしたかまとのやま
194
等持院贈左大臣
家に五首の歌よみ侍りけるに、同じ心を
昨日にも空は變らで諸人のころものいろに夏は來にけり
195
院御製
首夏をよませ給うける
今日もなほ霞む外山の朝ぼらけきのふの春の面影ぞ立つ
196
進子内親王
百首の歌の中に
夏衣立ちかへてしも忘れぬは別れし春のはなぞめのそで
197
從二位家隆
二品法親王守覺の家の五十首の歌に
夏衣春におくれて咲く花の香をだに匂へおなじかたみに
198
法皇御製
題志らず
鶯の忘れがたみにこゑはあれど花はあとなき夏木立かな
199
讀人志らず
花咲かぬ梢と見しは吉野山春におくるゝさくらなりけり
200
從二位爲子
夏淺き青葉のやまの朝ぼらけ花にかをりし春ぞわすれぬ
201
中納言爲藤
文保の百首の歌奉りける時
青葉のみ茂りにけりな片岡の木末は花のかげと見しまに
202
衣笠前内大臣
夏の歌の中に
別れての後忍べとや行く春の日數に花の咲きあまるらむ
203
後京極院
嘉暦四年御着帶の後祭の日朝がれひの御几帳に葵のかゝりたりけるを御覽じてよませ給ひける
我が袖に神はゆるさぬあふひ草心のほかにかけて見る哉
204
兵衛
上西門院いつきと聞え給ける時待賢門院かんたちめに渡らせ給ひたりけるに御供にさぶらひて齋院の女房のなかに葵につけて遣しける
諸葛かゝる例はあらじかし今日二葉なる千代を添ふれば
205
崇徳院安藝
返し
二葉なる千とせを添ふるもろ葛しめの内には例にぞ引く
206
後宇多院宰相典侍
祭の使つとめ侍りし事を思ひ出でゝよみ侍りける
忘れずよ祈る深山のあふひ草かけし昔はとほざかれども
207
入道親王尊道
百首の歌奉りし時、郭公
時鳥鳴くべき頃もあやにくに待てばや忍ぶ初音なるらむ
208
民部卿爲明
貞和二年百首の歌奉りし時
なべて世に待たるゝ頃の時鳥さぞ忍び音は洩し侘ぶらむ
209
照慶門院一條
題志らず
忍びねと思ふものから郭公聞きては人にまづかたるかな
210
左京大夫顯輔
久安六年崇徳院に百首の歌奉りける時
人傳と言はぬばかりぞ郭公聞くともなくて過ぎぬなる哉
211
關白前左大臣
百首の歌奉りし時、郭公
さだかなる人づてよりは郭公たどるばかりの一聲もがな
212
三條入道左大臣
夏の歌の中に
待ち兼ねて梢更けにける轉寐の夢路に通ふほとゝぎす哉
213
從二位行家
寳治の百首の歌に、待郭公
やよや鳴け有明の空の郭公こゑ惜むべきつきのかげかは
214
前參議爲嗣
題志らず
明くる夜の月影慕ふほとゝぎす聲さへ雲のいづくなる覽
215
貫之
延喜十四年十二月、女一宮の屏風の歌に
月をだに飽かず思ひて寐ぬものを時鳥さへ鳴き渡るかな
216
讀人志らず
菅家萬葉集の歌
人知れぬ思ひや繁き時鳥なつの夜をしも鳴きあかすらむ
217
後西園寺入道前太政大臣
文保の百首の歌奉りける時
つれなさのたぐひならじと有明の月にしも鳴く時鳥かな
218
順徳院御製
承久元年十首の歌合に曉時鳥といふ事を詠ませ給うける
曉とおもはでしもや時鳥まだなかぞらのつきに鳴くらむ
219
後深草院少將内侍
題志らず
山の端の月に鳴く夜の郭公待たれしよりもいこそ寐られね
220
法印淨辨
建武二年内裏にて人々題を探りて千首の歌詠みける時、夏動物と云へる題を給はりて仕うまつりける
時鳥鳴きて過ぎ行く山の端に今ひとこゑと月ぞのこれる
221
前大納言公蔭
百首の歌奉りし時、郭公
郭公待つ宵過ぎて山の端にいざよふ月のかげに鳴くなり
222
安喜門院大貳
夏の歌の中に
曉のおもひを添へて時鳥などいひ知らぬそらに鳴くらむ
223
後鳥羽院御製
さのみやは心有るべき時鳥寐覺のそらにひとこゑもがな
224
前右兵衛督爲教
法印覺源すゝめ侍りける日吉の社の歌合に
聞くまゝに仄かになりぬ時鳥雲のよそにや遠ざかるらむ
225
前大納言忠季
題志らず
時鳥仄かに名のるひとこゑの飽かで別るゝ嶺のよこぐも
226
源仲綱
後法性寺入道前關白右大臣の時の百首の歌に
村雲のたなびく空の霍公絶え%\にこそこゑもきこゆれ
227
藤原道信朝臣
或る所の歌合に人に代りて
小夜更て寐覺めて聞けば時鳥鳴くなる聲やいづこなる覽
228
前中納言有光
百首の歌奉りし時、郭公
橋姫の待つ夜更けてや子規眞木のをやまに初音鳴くらむ
229
前中納言定家
建仁元年、鳥羽殿の歌合に、山曉時鳥
時鳥やまのしづくに立ち濡れて待つとは知るや曉のこゑ
230
光明峯寺入道前攝政の家の百首の歌に、杜郭公を
津の國の生田の杜の時鳥おのれ住まずばあきぞ訪はまし
231
源信明朝臣
題志らず
時鳥來鳴くを聞けば大荒木の森こそ夏のやどりなるらし
232
大江頼重
よしさらば心つくさで時鳥おのが五月のころや待たまし
233
法印定爲
嘉元の内裡の卅首の歌召しける時
暫しだに語らばゞこそ時鳥こゝろづくしの程もうらみめ
234
花園院御製
百首の御歌の中に
宮古人さこそ待つとも時鳥おなじ深山のともなわすれそ
235
御製
百首の歌召されしついでに、時鳥
飽かず猶暫し語らへ郭公いかに待たれしはつ音とか知る
236
大納言延光
應和二年五月四日庚申の夜内裏の歌合に、待郭公
打ち忍び事語らはむ時鳥明日をあやめの音には立つとも
237
祝部成久
題志らず
あやめ草五月の今日の郭公袖には懸けぬ音をや添ふらむ
238
前關白左大臣
時鳥おのが五月の時しらば菖蒲刈りふくやどになかなむ
239
從三位氏久
澤邊早苗といふ事を
押しなべて茂る野澤の夏草にしめ引き分けて早苗取るなり
240
平宣時朝臣
題志らず
今日も又浦風荒れて湊田につりせぬ海士や早苗取るらむ
241
津守國冬
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、早苗
里遠き山田の早苗歸るさを急がで取るやいそぐなるらむ
242
彈正尹邦省親王
同じ心を
五月雨の晴るゝを隙と小山田にこの夕暮や早苗取るらむ
243
藤原雅朝朝臣
元弘三年、立后の屏風に
大荒木の杜のうき田の五月雨に袖干しあへず早苗取るなり
244
後二條院御製
題志らず
山陰や田子の小笠を吹く風もすゞしき暮に早苗取るなり
245
赤人
風に散る花立花を袖に受けて君がためにと思ひけるかな
246
前大納言俊定
嘉元の百首の歌奉りける時、廬橘
誰が袖の名殘をとめて立花のむかし變らぬ香に匂ふらむ
247
徳大寺前内大臣
百首の歌奉りし 時、おなじ心を
袖觸れて御階に近く立花のにほひも今はむかしなりけり
248
按察使實繼
忍ぶるも遠からぬ身の昔かな花たち花のちかきまもりは
249
法皇御製
卅首の御歌の中に
心にはちかき守りの橘の立ちなれし世ぞとほざかり行く
250
前中納言定家
光明峯寺入道前攝政の家の百首の歌に、故郷橘
橘の袖の香ばかりむかしにてうつりにけりな古き宮古は
251
土御門院御製
題志らず
吹く風に昔をのみや忍ぶらむくにのみやこに殘るたち花
252
式乾門院御匣
いつまでか我れも忍ばむ立花の下吹く風に殘るむかしを
253
前中納言雅孝
嘉元の百首の歌奉りける時、廬橘
村雨の名殘のつゆやこぼるらむ風に玉散る軒のたちばな
254
從三位爲信
題志らず
置く露もむかしの袖の名殘かは志のぶ草生ふる軒の立花
255
平氏村
時鳥誰れに昔をしのべとてさのみ老曾のもりに鳴くらむ
256
左兵衛督直義
斯く計りつれなき物を郭公鳴くや五月と誰れかいひけむ
257
常磐井入道前太政大臣
建保四年、百首の歌に
浮雲の嶺立ち迷ふ村雨にさそはれ出づるやまほとゝぎす
258
後鳥羽院宮内卿
雨中時鳥といふ事を
月影は思ひ絶えたる五月雨の雲より出づるほとゝぎす哉
259
法印定圓
題志らず
五月雨のふる江の村の苫屋形軒までかゝる田子のうら波
260
河内
堀河院の御時百首の歌に、五月雨
五月雨は入江の眞菰刈りにこし渡りも見えず成にける哉
261
權大納言義詮
百首の歌奉りし時、同じ心を
今日見れば川浪高し三吉野のむつたの淀のさみだれの頃
262
藤原信實朝臣
河五月雨を
五月雨に八十氏川を見渡せば網代やいづこ瀬々の埋れ木
263
後照念院關白太政大臣
嘉元の百首の歌奉りける時、五月雨
雲くらき眞木のを山の五月雨に八十氏川は水まさるらし
264
藤原基任
橋五月雨といふこと を
五月雨のふるの高橋高しともみかさ増りて見えぬ頃かな
265
前大納言爲定
文保三年百首の歌奉りける時
名取川瀬々の埋木浮き沈みあらはれて行く五月雨のころ
266
權中納言具行
河五月雨を詠める
晴れやらで降る梅雨に飛鳥川淵は瀬になる隙やなからむ
267
一條内大臣
嘉元の百首の歌奉りけるとき、五月雨
淵は瀬にかはる習ひも飛鳥川聞えぬ御代の五月雨のころ
268
右大臣
百首の歌奉りし時、同じ心を
五月雨の雲のとだえの夕日影さすが晴間と見ゆる空かな
269
衣笠前内大臣
弘長元年百首の歌奉りける時
さしも草さしも隙なき五月雨に伊吹の嶽の猶や燃ゆらむ
270
前大僧正慈鎭
正治二年百首の歌奉りけるに
五月雨にふじのなる澤水越えておとや烟に立ち勝るらむ
271
祝部行氏
題志らず
時志らぬ山郭公さつきまで雪にや富士の音ををしむらむ
272
前大納言爲氏
寳治元年、十首の歌合に、五月時鳥
あやにくに初音待たれし郭公五月はおのが時と鳴くなり
273
神祇伯顯仲
平忠盛朝臣久しく音づれ侍らざりければうるふ五月の晦日の頃に申し遣しける
あやにくに聞くべき月は重なれど山郭公おとづれもせず
274
崇徳院御製
百首の歌召しける時
五月山弓末振り立て燈す火に鹿やはかなく目を合すらむ
275
前中納言基成
題志らず
照射するさつをの眞弓遙々と歸る山路のすゑぞ明け行く
276
中納言爲藤
文保三年百首の歌奉りける時
照射すと入りにし山の深ければ明けても歸る路や辿らむ
277
左兵衛督基氏
照射の歌とて詠める
照射する露わけごろも立ち濡れて今宵も明す宮城野の原
278
前大納言爲世
元弘三年、立后の屏風に、螢
暮るゝより露と亂れて夏草の茂みにしげく飛ぶほたる哉
279
藤原盛徳
題志らず
石ばしる瀧の白糸よる/\は玉貫き散らし飛ぶほたる哉
280
權中納言公雄
二品親王覺助の家の五十首の歌に、澤螢
飛ぶ螢思ひは富士となる澤に映る影こそ燃えは燃ゆらめ
281
道命法師
大井川の篝火を見て
久堅の月の桂のちかければ星とぞ見ゆる瀬々のかゞり火
282
前大納言實教
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、鵜河
夜河たつ鵜舟の篝さしもなど待たるゝ月の影いとふらむ
283
中宮大夫公宗母
文保三年百首の歌奉りける時
大井川瀬々の鵜舟の數々に浮きてぞ燃ゆるかゞり火の影
284
後宇多院御製
元亨三年八月大覺寺殿に行幸有りて人々題を探りて歌仕うまつりけるついでに鵜河を詠ませ給うける
鵜飼舟浮きて篝の見え行くや立つ河霧の絶え間なるらむ
285
伊勢
撫子の咲けるを人の許へやるとて
獨のみぬる床夏の露けさはなみだにさへや色を添ふらむ
286
式子内親王
題志らず
我れのみは哀とも言はじ誰れも見よ夕露かゝる大和撫子
287
皇太后宮大夫俊成
野邊に置くおなじ露とも見えぬかな蓮の浮葉に宿る白玉
288
後久我太政大臣
建保四年四月、五首の歌に
水上は夕立すらしやまがはの岩根にあまる瀧のしらなみ
289
後醍醐院御製
夏の御歌の中に
葛城や高間の山にゐる雲のよそにもしるきゆふだちの空
290
伏見院御製
名所の卅首の御歌の中に、信太杜
夕立の名殘久しきしづくかな信太の杜の千枝のしたつゆ
291
題志らず
一方に木々の木の葉を吹き返し夕立おくる風ぞすゞしき
292
前大納言爲兼
伏見院の卅首の歌に
なる神の音ほのかなる夕立のくもる方より風ぞはげしき
293
入道二品親王覺譽
野納涼といへる事を
雲かゝる夕日は空にかげろふの小野の淺茅生風ぞ凉しき
294
後伏見院御製
三首の歌合に、夏夜
草深き籬のつゆを月に見て秋のこゝろぞかねておぼゆる
295
等持院贈左大臣
百首の歌奉りし時、納凉
呉竹の代を經て秋やちかゝらむ葉分の風の音のすゞしき
296
前權僧正雲雅
元弘三年、立后の屏風に、同じ心を
夏ごろも立ち寄る袖の凉しさに掬ばでかへる山の井の水
297
後二條院御製
夏月を詠ませ給うける
月の行く波の柵かけとめよあまの河原のみじか夜のそら
298
前大納言爲世
嘉元の百首の歌奉りける時、同じ心を
待ち出でゝしばし凉しく見る月の光にやがて明くる短夜
299
在原業平朝臣
題志らず
夏の夜は月こそ飽かね山の端のあなたの里に住むべかり鳬
300
前大納言爲家
白河殿の七百首の歌に、夏月似秋
明け易き夜の間ならずば月影を秋の空とや思ひ果てまし
301
前大納言實躬
題志らず
明け易き習ひだに憂き短夜の月には雲のかゝらずもがな
302
藤原爲綱朝臣
徒らに更くるは易き老が世も思ひ知らるゝ夏の夜のつき
303
讀人志らず
寛平の御時、きさいの宮の歌合の歌
琴の音にひゞき通へる松風を調べてもなく蝉のこゑかな
304
俊惠法師
題志らず
山彦もこたへぞあへぬ夕附日さすや岡邊の蝉のもろごゑ
305
和泉式部
今日は又しのにをりはへ禊してあさの露散るせみの羽衣
306
藤原行輔朝臣
百首の歌奉りし時、夏祓
よるせなき身をこそ喞て思ふ事なほ大幣に夏はらへして
307
進子内親王
大幣やあさの木綿しで打ち靡きみそぎ凉しき賀茂の川風
308
前内大臣實
浪かくる袂もすゞし吉野川みそぎにやがて秋や來ぬらむ
309
後西園寺入道前太政大臣
文保の百首の歌の中に
今日しはや歸るさ凉し御祓川ゆふ波かけて秋や立つらむ
1 [1] Kanji in place of A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 21117. Tetsuji Morohashi, ed., Dai Kan-Wa jiten (Tokyo: Taishukan Shoten, 1966-68).