新拾遺和歌集 (Shin Shūi wakashū) — 新拾遺和歌集卷第二十 雜歌下 作者複数 (Various) 1364 Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1364 しんしゅういわかしゅう Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 しんしゅういわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新拾遺和歌集 Shin Shūi wakashū
作者複数 Various
新拾遺和歌集卷第二十 雜歌下
1879
赤人
短歌
富士の山を望みて詠める
あめつちの 別れし日より かみさびて 高くかしこき するがなる 富士の高嶺と あまのはら ふりさけみれば わたる日の 影もかくろひ てるつきの 光も見えず 志らくもの い去り憚り ときじくぞ 雪は降りける かたりつぎ 云繼ぎゆかむ 富士の高嶺は
1880
讀人志らず
香具山をよめる長うた
あまくだる あまの香具山 かすみたち 春にいたれば まつかぜに 池なみたちて さくらばな このくれ茂み おきべには 鴎よばひて へつかたに あぢむら騷ぎ もゝしきの 大みやびとの 立ち出でゝ あそぶ舟には かぢさをも なくて寂しく 漕ぐ人なしに
1881
大納言經信
源政長朝臣の家にて人々長歌よみけるに、初冬述懷といへる心を詠める
あらたまの 年くれゆきて ちはやぶる かみな月にも なりぬれば 露より志もを 結び置きて 野山のけしき ことなれば なさけ多かる ひと%\の とほぢの里に まとゐして うれへ忘るゝ ことなれや 竹の葉をこそ かたぶくれ 心をすます われなれや 桐のいとにも たづさはる 身にしむ事は にはの面に 草木をたのみ なくむしの 絶々にのみ なりまさる 雲路にまよひ 行くかりも きえみきえずみ 見えわたり 時雨し降れば もみぢ葉も 洗ふにしきと あやまたれ 霧しはるれば つきかげも 澄める鏡に ことならず 言葉にたえず しきしまに 住みける君も もみぢ葉の たつ田の河に ながるゝを 渡らでこそは をしみけれ 然のみならず からくにゝ 渡りしひとも つきかげの 春日のやまに いでしをば 忘れでこそは ながめけれ かゝるふる事 おぼゆれど 我が身に積る たきゞにて 言葉のつゆも もりがたし 心きえたる はひなれや 思ひのことも うごかれず 志らぬ翁に なりゆけば むつぶる誰も なきまゝに 人をよはひの くさもかれ 我が錦木も くちはてゝ 事ぞともなき 身のうへを あはれあさ夕 何なげくらむ
1882
花山院御製
題志らず
千はやぶる 神の御代より 木綿だすき 萬代かけて いひいだす 千々の言の葉 なかりせば 天つそらなる 志らくもの 知らずも空に たゞよひて 花にまがひし いろ/\は 木々の紅葉と うつろひて よるの錦に ことならず 物思ふやとの ことぐさを 何によそへて なぐさめむ これを思へば いにしへの さかしき人も なには江に いひ傳へたる ふることは 長柄のはしの ながらへて 人をわたさむ かまへをも たくみいでけむ ひだだくみ よろこぼしくは おもへども くれ竹のよの すゑの世に 絶えなむ事は さゝがにの いと恨めしき はまちどり 空しきあとを かりがねの かき連ねたる たまづさは こゝろの如く あらねども 常なきわざと こりにしを 後の世までの くるしみを 思ひも知らず なりぬべみ 露のなさけの なかりせば 人のちぎりも いかゞせむ 谷のうもれ木 朽ちはてゝ 鳥のこゑせぬ おくやまの 深きこゝろも なくやあらまし
1883
左京大夫顯輔
久安の百首の歌奉りける長歌
憂き身には 世のふること も たのまれず いづれか孰れ おぼつかな こと わりなれや まきもくの 檜はらの山の そまびとの うき節志げみ まがり木と 厭ひすてたる 身なれども 心にもあらず たちまじり 悲しきまゝに かりがねの 隙なく鳴けど あはれてふ 言の葉をだに きかせねば なくも行かむも かはらぬを 唯身のとがに なしはてゝ 此世のことを おもひすて 後の世をだにと おもひつゝ うき世の中を 立出づれど 子を思ふ道に まよひつゝ 行くべき方も おぼえねば あまの川なみ たちかへり 空をあふぎて ありあけの 難面き名をも 流しつるかな
1884
反歌
身を知らで云ふはかひなき事なれど頼めば人を思ふ計ぞ
1885
衣笠前内大臣
旋頭歌
述懷の心を
はかなくて世を徒に經し程に我が身は早く六十ぢも近くなりにけるかな
1886
信實朝臣
墨染のそでの千しほにまどはるゝ我が身もて心のはなのいろやなにぞも
1887
源有長朝臣
題志らず
悟ある人の世にふるつみなれやわたつ海に積らで消ゆるなみのうへの雪
1888
俊頼朝臣
折句歌
藤原仲實朝臣の許にうしをかりに遣はしける時萩の枝につけて
恨むとは知らでや鹿のしきりには萩のはひえを柵にする
1889
藤原仲實朝臣
返し
恨めしと鹿をないひそ萩が枝も苅藻にしつゝ過すとぞ見る
1890
前大僧正慈鎭
ひえのみやを
人ごとにえてうれしきは法の花みよの佛のやどの物とて
1891
讀人志らず
春の暮に友だちの許へ、などや久しく訪はぬと云ふ事を折句のくつかぶりに置きて
なほ散れと山風通ひさそふらし雲は殘れど花ぞとまらぬ
1892
後鳥羽院御製
千五百番歌合を折句にて判ぜさせ給うけるに、同じほど
岡のべのならの落葉に時雨降りほの%\出づる遠山の月
1893
俊頼朝臣
さつきやみと云ふ事を
笹の葉の露は暫しも消殘るやよやはかなき身を如何にせむ
1894
重之
物名
但馬の國の出石の宮と云ふ社にて、なのりそと云ふ草を
千早ぶるいづしの宮の神の駒人な乘りそや崇りもぞする
1895
貫之
苅萱
秋の野を分けつゝ行けば花も皆散かゝるかや袖にしむ覽
1896
前中納言定家
さしぐし、日かげ
神山に幾代經ぬらむ榊葉の久しく志めをゆひかけてけり
1897
左近中將具氏
くり、しひ、もちひ
繰り返し祈る心を強ひてなほ神はもちひよもりのしめ繩
1898
讀人志らず
くつ、したうづ、まり
行く月もかげ更けにけりかぢ枕下うつ波の夜のとまりに
1899
志やう、ふえ、ひちりき、こと、びは
うしやうし花匂ふえだに風通ひ散來て人のこと とひはせず
1900
從三位頼政
二條院の御時、ひだりまきのふちふち、桐火桶をこめて、河に寄せて歌奉るべきよし仰ありければみづからの名を添へて詠みはべりける
水ひたりまきの淵々落たぎり氷魚けさ如何に寄り増る覽
1901
從三位頼政
正治の百首の歌奉りけるに鳥の五首の中に、はやぶさ
恨みかね絶えにし床は昔はや臥さずなりにきよはのさ莚
1902
しらふの鷹
山里は秋をまつかぜ琴志らぶ野田苅る賤は千世歌ふなり
1903
入道二品親王性助
やくしぼとけを
須磨の浦蜑の苫屋の明くるより燒く鹽とけさ立つ烟かな
1904
中務卿宗尊親王
誹諧
山鶯を
寂しくて人くともなき山ざとにいつはりしける鶯のこゑ
1905
大江千里
題志らず
玉柳みどりの枝のよわければうぐひすとむる力だになし
1906
俊惠法師
よしさらば導べにもせむ今日ばかり花もてむかへ春の山風
1907
忠見
秋毎に刈り來る稻は積みつれど老いにける身ぞ置所なき
1908
藤原仲文
雪の降りける朝院の御粥のおろし給はせて歌詠めと仰せられければ
白雪の降れる旦の白粥はいとよくにたる物にぞありける
1909
藤原實方朝臣
めのとの弓のふくろをとり出でゝ果物を取り入れておこせたりければ
おし張りて弓の袋と知る/\や思はぬ山の物を入るらむ
1910
清輔朝臣
法性寺入道前關白の家に男女房物語してはべりける程に、たき物を包みて出されたりければ爭ひ取りて見るにあらぬ物にて侍りけるたまの日參りたりけるに、昨日のたき物の爭こそをかしくと女房申しける返事に詠める
玉垂のみすのうちより出でしかば空だき物と誰も知にき
1911
光俊朝臣
旅泊を詠める
夕凪にほづゝしめ繩繰りさげて泊りけずらひ寄する舟人
1912
從二位行家
題志らず
我戀は目さへいつかは近江なる安きいをだにぬるよしぞなき
1913
後西園寺入道前太政大臣
入道二品親王性助の家の五十首の歌に
風荒き山田の庵の菰すだれ時雨をかけて洩る木の葉かな
1914
正三位知家
わらびを
今日の日は暮るゝ外山のかぎ蕨明けば又見む折過ぎぬまに
1915
讀人志らず
曉水鷄を聞きて
明くる間をなほたゝくこそ夏の夜の心短き水鷄なりけれ
1916
夜松にて觀音をつくり奉りけるを
ゆふかけし神の北野の一夜松今はほとけの御祓なりけり
1917
從二位行家
冬の歌の中に
たきつ河に亂れし玉のをだえして水の糸すぢ氷しにけり
1918
西行法師
柳隨風と云ふ事を
見渡せば佐保の河原にくりかけて風によらるゝ青柳の糸
1919
前大納言爲家
寳治の百首の歌奉りけるに
つらかきな山の杣木の我ながら打つすみ繩に引かぬ心は
1920
權中納言公雄
文保三年百首の歌奉りける時
大井川かへらぬ水の鵜飼舟つかふと思ひし御代ぞ戀しき
新拾遺和歌集終