風雅和歌集 (Fūga wakashū) — 風雅和歌集卷第十八 釋教歌 作者複数 (Various) 14th Century Fūga wakashū 風雅和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1347 ふうがわかしゅう Fūga wakashū 風雅和歌集 ふうがわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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風雅和歌集 Fūga wakashū
作者複数 Various
風雅和歌集卷第十八
釋教歌
2030
待兼ねて歎くと告げよ皆人にいつをいつとて急がざる覽
此の歌は、善光寺如來の御歌となむ。
2031
急げ人彌陀の御舟の通ふ世にのり後れなばいつか渡らむ
かの御歌につぎて、聖徳太子のよみ給へるとなむ。
2032
補陀落の海を渡れる物なればみるめも更に惜しからぬ哉
是は長治の頃或る人目志ひたる子を相具して粉河寺に詣でゝ彼の子を膝にすゑて泣く/\祈り申すとて、補陀落の海におふなる物なればこのみるめをばたまへとぞ思ふと思ひ續けてまどろみける夢に、觀音の示し給ひけるとなむ。
2033
西行法師
法花經序品の心を
散りまがふはなの匂ひをさきだてゝ光を法の莚にぞしく
2034
前權少僧都源信
方便品
妙法の唯ひとつのみありければ又二つなし又三つもなし
2035
權僧正永縁
譬喩品の心をよめる
心をば三つの車にかけしかど一つぞ法のためしには引く
2036
慶政上人
不覺不知不驚不怖の心を
驚かでけふも空しく暮れぬなり哀うきみのいりあひの空
2037
前參議經盛
信解品
年經れど行方も知らぬ垂乳根よこはいかにして尋逢ひけむ
2038
前大納言尊氏
五十ぢまで迷ひ來にけるはかなさよ唯假そめの草の庵に
2039
入道二品親王尊圓
伏見院隱れ給ひて後人々一品經書き侍りけるに信解品を書きて奉るとてよめる
我ぞ憂き五十ぢ餘りの年ふとも廻り逢ふべき別ならねば
2040
法成寺入道前關白太政大臣
藥草喩品の心を
法の雨は普く灑ぐ物なれどうるふ草木はおのがしな%\
2041
權大納言行成
くさ%\の草木の種と思ひしを潤ほす雨は一つなりけり
2042
大僧正行尊
草も木も種は一つをいかなれば二葉三葉に芽ぐみ初けむ
2043
藤原爲明朝臣
前大納言爲氏一品經の歌とてすゝめ侍りけるに安樂行品、若入他家不與小女處女寡女等共語といふ文の心をよめる
名にめでゝ迷もぞする女郎花匂ふ宿をばよきて行かなむ
2044
祭主輔親
壽量品の心を
此世にて入りぬと見えし月なれど鷲の山にはすむとこそ聞け
2045
正二位隆教
分別功徳品を
皆人を渡さむと思ふ艫綱のながくもがなや淀のかはふね
2046
院御歌
藥王品、是眞精進、是名眞法供養如來と、いへる心をよませ給ひける
燕なく軒端の夕日かげきえて柳にあをきにはのはるかぜ
2047
赤染衛門
妙音品
ここ にのみありとやは見る孰くにも妙なる聲に法とこそ聞け
2048
平忠度朝臣
普門品、即得淺處の心を
おり立ちて頼むとなれば飛鳥川淵も瀬になる物とこそ聞け
2049
赤染衛門
陀羅尼品
法まもる誓を深く立てつれば末の世迄もあせじとぞ思ふ
2050
前大僧正覺實
般若經、常啼菩薩を
法の爲我が身を變へば小車の浮世にめぐる道や絶えなむ
2051
院御歌
圓覺經、生死、涅槃、猶如昨夢の心を
誰も皆あたら色香をながむらし昨日も同じ花どりのはる
2052
居一切時不起妄念
雁の飛ぶ高嶺の雲のひと靡き月入りかゝる山の端のまつ
2053
夢窓國師
擧足下足皆是道場 の心を
故里と定むる方の無き時はいづくに行くも家路なりけり
2054
法印實澄
本覺流轉の心をよめる
住みなれし宿をば花にうかれきて歸るさしらぬ春の旅人
2055
前大納言忠良
隨求陀羅尼經の倶縛婆羅門をよみ侍りける
朽ち殘る法のこと のは吹く風ははかなき苔の下までぞゆく
2056
慶政上人
但指無明即是法性といふ事を
すゝめこしゑひの枕の春の夢見し世はやがて現なりけり
2057
院御歌
三諦一誹非三非一の心を
窓の外にしたゝる雨を聞くなべにかべに背ける夜はの燈
2058
寛胤法親王
未得眞覺恒處夢中といふ事をよめる
長き夜の闇の現に迷ふかな夢をゆめとも知らぬこゝろに
2059
法印覺懷
覺むるをも待つ瀬だになからまし長き眠の内と聞かずば
2060
前大僧正覺實
因明論の似現量の心を
村雲の絶間の影はいそげども更くるは遲きあきの夜の月
2061
後宇多院御歌
釋教の御歌の中に
そのまゝに絶え間を志るは誠ある三國傳はる詞なりけり
2062
入道二品親王法守
百首の歌奉りしに、雜の歌
我がうくるみ法は常の言の葉の及ばぬ上に説けるなるべし
2063
院御歌
大梅山の別傳院に御幸侍りける時、僧問雲門、樹凋葉落時如何、雲門云、體露全風と云ふ因縁を頌せさせ給ひけるついでに
立田川もみぢ葉流る三吉野のよしのゝやまに櫻ばな咲く
2064
藤原爲基朝臣
見るやいかに山の木葉は落ちつきて道に當れる虎の斑尾
2065
佛國禪師
題志らず
夜もすがら心の行くへ尋ぬれば昨日の空に飛ぶ鳥のあと
2066
夢窓國師
出づるとも入るとも月を思はねば心にかゝる山の端もなし
2067
院御歌
眉間寳劔と云ふ事を
冴ゆる夜の空高く澄む月よりも置添ふ霜の色はすさまじ
2068
永福門院内侍
一花開五葉結菓自然成の心を
咲き初むるやどの櫻の一本よ春の景色にあきぞしらるゝ
2069
前大僧正慈鎭
厭離穢土の歌五十首よみ侍りける中に
浮世かな吉野の花にはるの風時雨るゝ空にありあけの月
2070
後宇多院御歌
釋教の心をよませ給ひける
心ざし深く汲みてし廣澤のながれは末も絶えじとぞ思ふ
2071
前大僧正慈鎭
昔より鷲の高嶺に澄む月の入らぬに迷ふひとぞかなしき
2072
前大僧正道玄
みな人の心のうちはわしの山高嶺の月のすみかなりけり
2073
院御歌
百首の御歌の中に
世を照す光をいかでかゝげましけなばけぬべき法の燈火
2074
慶政上人
如何不求道安可須待老といふ心を
徒らに老を待つにぞなりぬべき今年もかくて又暮しつゝ
2075
前大僧正慈鎭
雜の歌の中に
さりともな光は殘る世なりけり空ゆく月日法のともしび
2076
前大納言爲家
前大僧正良覺横川にて如法經書きけるに天長の昔まで思ひやらるゝよし申すとて
古への流れの末をうつしてや横川の杉のしるしをもみる
2077
前大僧正良覺
かへし
其のまゝに流の末をうつしても猶古へのあとぞゆかしき
2078
山本入道前太政大臣女
光臺寺にすみ侍りけるに、二月十五日山本入道前太政大臣のもとより櫻のうち枝に鈴をかけて、ありながらきえぬとしめす佛には雪にもまがふ花を手向けよと申して侍りける返事に
在り乍らきえぬと見えて悲しきはけふの手向の花の白雪
2079
示證上人
釋教の歌の中に
沈みこしうき身はいつか浮ぶべき誓の舟の法にあはずば
2080
從二位爲子
觀勝寺にて理趣三昧行ひける道場 に、花籠より紅葉の散りたりければ、よみはべりける
法の庭に散す紅葉は山姫の染むるも深きえとやなるらむ
2081
慶政上人
式乾門院十三年の法事に、法華山寺にて唐本の一切經供養せられける時、空に音樂のきこえければよみ侍りける
法の庭空に樂こそきこゆなれ雲のあなたに花やちるらむ
2082
皇太后宮大夫俊成
極樂六時の讃を歌によみけるに、晨朝を
朝まだきつゆけき花を折る程は玉しく庭に玉ぞちりける
2083
後光明照院前關白左大臣
女人往生願
異浦にくちて捨てたる蜑小舟我が方にひく波もありけり
2084
前參議教長
不淨觀の心をよめる
渡つ海を皆かたぶけて洗ふとも我が身の内を爭で清めむ
2085
法源禪師
雪山成道の心をよみて前大納言爲兼のもとにつかはしける
ふりにける雪の深山は跡もなし誰れ踏分けて道を志る覽
2086
前大納言爲兼
返し
導べする雪の深山のけふに逢ひて舊き哀の色を添へぬる
2087
如空上人
釋教の歌の中に
西を思ふ心も同じ夢なれど長きねぶりはさめぬべきかな
2088
從三位親子
心をばかねて西にぞ送りぬる我が身をさそへ山の端の月
2089
慶政上人
經をひらきて泪をのごひ侍りける時、花を見てよみ侍りける
匂へども知る人もなき櫻花たゞ獨みてあはれとぞおもふ
2090
伏見院御歌
百首の御歌の中に
深く染めし心の匂すて兼ねぬまどひの前の色とみながら
2091
かたのゝ尼
法成寺にまゐりてよみ侍りける
曇なく研ける玉の臺には塵もゐがたきものにぞ有りける
2092
前大僧正慈鎭
釋教の歌の中に
般若臺に納め置てし法花經もゆめとのよりぞ現にはこし