風雅和歌集 (Fūga wakashū) — 風雅和歌集卷第六 秋歌中 作者複数 (Various) 14th Century Fūga wakashū 風雅和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1347 ふうがわかしゅう Fūga wakashū 風雅和歌集 ふうがわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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風雅和歌集 Fūga wakashū
作者複数 Various
風雅和歌集卷第六
秋歌中
516
俊頼朝臣
初雁を詠める
初雁は雲居のよそに過ぎぬれど聲は心に止まるなりけり
517
藤原爲基朝臣
院の五首の歌合に、秋視聽と云ふ事を
色變る柳がうれに風過ぎて秋の日さむみはつかりのこゑ
518
儀子内親王
吹き志をる千種の花は庭に臥して風にみだるゝ初雁の聲
519
前大僧正道玄
雁を
このねぬる朝風寒み初雁の鳴く空見ればこさめ降りつゝ
520
後西園寺入道前太政大臣
題志らず
村雲によこぎる雁の數みえて朝日に消ゆるみねのあき霧
521
伏見院御歌
百首の御歌の中に
朝ぼらけ霧の晴れ間の絶え%\に幾列過ぎぬ天つ雁がね
522
從三位爲信
伏見院に三十首の歌奉りける時、霧中雁を
霧薄き秋の日影の山の端にほの%\見ゆるかりの一つら
523
後伏見院中納言典侍
秋の歌に
夕日影寂しく見ゆる山もとの田面にくだるかりの一つら
524
覺譽法親王
百首の歌奉りし時
夕霧のむら/\晴るゝ山際に日影をわたるかりの一つら
525
大納言公重
しをれ來て都も同じあき霧につばさや干さぬ天つ雁がね
526
皇太后宮大夫俊成
和歌所にて暮山遠雁と云ふ事を講ぜられけるに
小倉山ふもとの寺の入相にあらぬ音ながらまがふ雁がね
527
從二位家隆
晴れ染むる遠の外山の夕霧に嵐をわくるはつかりのこゑ
528
伏見院御歌
秋の御歌の中に
打ちむれてあまとぶ雁のつばさまで夕に向ふ色ぞ悲しき
529
院御歌
百首の御歌に
雲遠き夕日の跡の山際に行くとも見えぬかりのひとつら
530
關白右大臣
雲間もる入日の影に數見えてとほぢの空を渡るかりがね
531
徽安門院
秋の歌とて
雁の鳴くとほぢの山は夕日にて軒ばしぐるゝ秋の村くも
532
前大納言爲兼
夕日移る柳の末の秋風にそなたのかりのこゑもさびしき
533
大江宗秀
秋風にうす霧晴るゝ山の端をこえてちかづく雁の一つら
534
永福門院内侍
雁の鳴く夕の空のうす雲にまだ影見えぬつきぞほのめく
535
二品法親王尊胤
秋風の高きみ空は雲晴れてつきのあたりに雁のひとつら
536
伏見院御歌
雁を
連れてとぶ數多の翅横切りて月の下行く夜半のかりがね
537
式子内親王
正治二年後鳥羽院に奉りける百首の歌の中に
萩の上に雁の涙の置く露はこほりにけりな月にむすびて
538
徽安門院一條
百首の歌奉りしに
窓白き寐覺の月の入りがたにこゑもさやかに渡る雁がね
539
賀茂保憲女
秋の歌の中に
秋の夜のねざめの程を雁がねの空にしればや鳴渡るらむ
540
和泉式部
雁がねの聞ゆるなべに見渡せば四方の梢も色づきにけり
541
讀人志らず
題志らず
雲の上に鳴つる雁の寒きなべに木々の下葉は移ろはむかも
542
穂積皇子
今朝の朝げ雁がね聞きつ春日山紅葉にけらしわが心痛し
543
貫之
朝霧の覺束なきに秋の田の穗に出でゝ雁ぞ鳴き渡りける
544
前大納言爲家
春日の社に奉りける百首の歌の中に
色かはる梢を見ればさほ山の朝霧がくれかりは來にけり
545
後伏見院御歌
霧中雁を
天つ雁霧のあなたに聲はして門田のすゑぞ霜にあけゆく
546
永福門院
月前虫と云ふ事を
きり%\す聲はいづくぞ草もなき白洲の庭の秋の夜の月
547
藤原定成朝臣
きり%\す月をやしたふ庭遠くかたぶく方の影に鳴く也
548
前左大臣
夜虫を
宵の間は稀に聞きつる虫の音も更けてぞ志げき蓬生の庭
549
章義門院
題志らず
分きてなど夜しも増る憂へにて明くるを際に虫の鳴く覽
550
接心院内大臣
野邊の色もかれのみ増る淺茅生に殘るともなき松虫の聲
551
權大納言公蔭
百首の歌奉りし時
蛬おのが鳴く音もたえ%\にかべのひま洩る月ぞ悲しき
552
後京極攝政前太政大臣
秋の歌とて
虫の音は楢の落葉に埋もれて霧のまがきに村さめの降る
553
從二位兼行
蛬なく夜をさむみ置くつゆに淺茅が上ぞいろかれてゆく
554
前大納言爲兼
伏見院の御時、六帖の題にて人々歌詠ませさせ給ひけるに、秋雨を
庭のむしは鳴きとまりぬる雨の夜のかべに音する蛬かな
555
今出川前右大臣
文保三年後宇多院に奉りける百首の歌の中に
夜さむなる枕の下のきり%\す哀に聲のなほのこりける
556
西行法師
題志らず
何となく物悲しくぞ見えわたる鳥羽田の面の秋の夕ぐれ
557
後鳥羽院御歌
建仁元年、百首の御歌の中に
露しげき鳥羽田の面の秋風に玉ゆらやどる宵のいなづま
558
大納言公重
秋の歌に
秋の田のまだはつかなるほの上を遙かに見する宵の稻妻
559
權大納言公蔭
院に三十首の歌召されし、時秋山を
夕日さす外山の梢あきさびて麓の小田もいろづきにけり
560
前内大臣
百首の歌奉りし時
小山田の露のおくてのいなむしろ月をかたしく床の獨寐
561
前大納言經房
題志らず
何となく山田のいほの悲しきに秋風寒みうづら鳴くなり
562
式子内親王
正治の百首の歌に
うちはらひ小田の淺茅にかる草の茂みが末に鶉たつなり
563
藤原爲秀朝臣
稻妻を
稻づまの暫しもとめぬ光にも草葉のつゆの數は見えけり
564
從三位實名
秋の雨の晴れ行く跡の雲間より志ばしほのめく宵の稻妻
565
前大納言爲家
夕やみに見えぬ雲間も顯はれて時々てらす宵のいなづま
566
伏見院御歌
秋の御歌に
にほひ志らみ月の近づく山の端の光に弱るいなづまの影
567
徽安門院
月をまつ暗き籬の花のうへに露をあらはす宵のいなづま
568
後伏見院御歌
待月と云ふ事を
聲たつる軒の松風庭のむし夕ぐれかけてつきやもよほす
569
太上天皇
百首の歌の中に
草むらの虫の聲より暮れそめて眞砂の上ぞ月になりぬる
570
院一條
秋の歌に
草がくれ虫鳴きそめて夕ぎりの晴間の軒に月ぞ見えゆく
571
伏見院新宰相
影うすき月見えそめて庭の面の草に虫鳴く宿のゆふぐれ
572
祝子内親王
吹分くる竹のあなたに月みえて籬は暗きあきかぜのおと
573
前大納言經顯
立並ぶ松の木の間に見えそめて山のはつかに月ぞ仄めく
574
關白右大臣
百首の歌奉りし時、秋の歌に
いましはや待たるゝ月ぞ匂ふらし村雲白き山の端のそら
575
徽安門院
題志らず
隈もなく閨のおくまでさし入りぬ向ひの山をのぼる月影
576
前太宰大貳俊兼
月のぼる夕の山に雲晴れてみどりの空をはらふあきかぜ
577
院御歌
百首の御歌に
暮もあへず今さしのぼる山の端の月のこなたの松の一本
578
[1]A 1 子内親王
月の歌の中に
山の端を出でぬと見ゆる後までも麓の里は月ぞまたるゝ
579
前大納言尊氏
程もなく松より上になりにけり木のまもりつる夕暮の月
580
藤原定宗朝臣
出づるより雲もかゝらぬ山の端を靜にのぼる秋の夜の月
581
伏見院御歌
八月十五夜伏見に御幸ありて人々に月の歌詠ませさせ給ひけるついでに
軒近き松原山のあきかぜに夕ぐれきよくつきいでにけり
582
前中納言定家
秋の歌とて
月影を葎の門にさし添へて秋こそきたれとふひとはなし
583
前關白左大臣
月の歌に
さ夜更けて人は志づまる槇の戸に獨さし入る月ぞ寂しき
584
前參議家親
伏見院萬葉の言葉にて人々に歌よませさせ給ひける時、秋のもゝ夜と云ふ事を
ながしてふ秋の百夜を重ねても詠めあくべき月の影かは
585
從二位隆博
月を
心こそあくがれやすく成にけれ詠めうかるゝ月の導べに
586
清輔朝臣
ひたすらに厭ひも果てじ村雲の晴間ぞ月は照り増りける
587
後鳥羽院御歌
正治二年百首の歌召されける時
薄雲のたゞよふ空の月影はさやけきよりもあはれなり けり
588
從二位爲子
題志らず
月影の澄みのぼる跡の山際にたゞ一なびき雲ののこれる
589
後久我前太政大臣
千五百番歌合に
秋はたゞ荻の葉過ぐる風の音に夜深くいづる山の端の月
590
權大納言實尹
月前萩を詠める
眞萩原夜ふかく月にみがゝれておき添ふ露の數ぞ隱れぬ
591
前大納言實明女
月前露を
打ちそよぎ竹の葉登る露ならで月更くる夜の又音もなし
592
藤原爲基朝臣
月を詠み侍りける
月の行く晴間の空はみどりにてむら/\白き秋のうき雲
593
平宗宣朝臣
絶々の雲間に傳ふかげにこそ行くとも見ゆれ秋の夜の月
594
永福門院
題志らず
村雲に隱れあらはれ行く月の晴れも曇りも秋ぞかなしき
595
吹き志をる風に志ぐるゝ呉竹のふしながら見る庭の月影
596
前大納言爲兼
月の歌とて
月の色も秋にそめなす風の夜の哀うけとるまつの音かな
597
永福門院内侍
松風も空にひゞきて更くる夜の梢にたかき深山べのつき
598
崇徳院御歌
みし人に物の哀を知らすればつきやこのよの鏡なるらむ
599
選子内親王
月のくまなき夜詠み侍りける
心澄む秋の月だになかりせばなにをうき世の慰めにせむ
600
民部卿爲定
百首の歌奉りし時、秋の歌
秋を經て涙落ち添ふ袖の月いつを晴間と見る夜半もなし
601
院御歌
見月と云ふ事を
我が心澄める計りに更け果てゝ月を忘れてむかふ夜の月
602
前大納言忠良
同じ心を
雲晴れてすめばすみけりみる人の心やつきの心なるらむ
603
二品法親王覺助
文保三年、百首の歌に
我袖の露も涙もあまりあるあきのうれへは月のみぞとふ
604
西行法師
月を詠める
深き山に澄みける月をみざりせば思出もなき我身ならまし
605
前大僧正道玄
心こそやゝ澄み増れ世の中を遁れて月は見るべかりけり
606
崇徳院御歌
山家月を
山里は月も心やとまるらむみやこにすぎて澄み増るかな
607
西行法師
月の歌とて
何處とて哀ならずはなけれ共荒れたる宿ぞ月はさやけき
608
庵にもる月の影こそ寂しけれ山田はひたの音ばかりして
609
藤原爲秀朝臣
霧はるゝ遠の山もとあらはれて月かげみがく宇治の川波
610
前中納言定資
秋の歌に
影ははや遠きうらわにさきだちて磯山出づる秋の夜の月
611
皇太后宮大夫俊成
月前旅を
清見潟波をかたしく旅ごろも又やはかゝる月を來て見む
612
後鳥羽院御歌
海邊月明といふ事を
清見潟ふじの烟や消えぬらむ月かげみがくみほのうら波
613
平忠度朝臣
遍昭寺にて人々月見侍りけるに
あれにける宿とて月は變らねどむかしの影は猶ぞ床しき
614
前大納言爲氏
寳治の百首の歌に、山月を
常磐山かはる梢は見えねども月こそ秋のいろにいでけれ
1 [1] A kanji in place of A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 6487. (Tetsuji Morohashi, ed., Dai Kan-Wa jiten (Tokyo: Taishukan Shoten, 1966-68).