金葉和歌集

Kin'yō wakashū

作者複数 Various

金葉和歌集卷第四
冬歌

274

源師賢朝臣

承暦二年御前にて殿上のをのこども題を探りて歌つかうまつりけるに時雨をとりて

神無月志ぐるゝまゝに暗部山下てるばかり紅葉志にけり
275

修理大夫顯季

從二位藤原親子の家の草子合に志ぐれをよめる

志ぐれつゝかつちる山の紅葉をいかに吹く夜の嵐なる覽
276

權僧正永縁

ならにて人々の百首の歌よみけるに時雨をよめる

山河の水はまさらで志ぐれには紅葉の色ぞ深くなりける
277

源定信

おとにだに袂をぬらす時雨かな槇の板屋のよるの寐覺に
278

攝政家三川

時雨をよめる

神無月時雨の雨のふる儘にいろ/\になるすゞか山かな
279

前中納言資仲

後朱雀院の御時御前にて霧藏紅葉といへる事をよめる

紅葉ちる山は秋霧はれせねば立田の川のながれをぞみる
280

源致親

大井河にまかりてもみぢの心をよめる

大井河もみぢをわくる筏士はさをに錦をかけてこそみれ
281

大納言經信

落葉をよめる

三室山もみぢちるらし旅人の菅の小笠ににしきおりかく
282

前中納言基長

竹風似雨といへるこゝろをよめる

なよ竹の音にも袖を被きつゝぬれぬに社は風と知りぬれ
283

法印光清

十月十日ごろに鹿のなきけるをきゝてよめる

何事にあきはてながらさを鹿の思ひ返して妻をこふらむ
284

源俊頼朝臣

百首の歌のなかに紅葉をよめる

立田川志がらみかけて神なびのみ室の山の紅葉をぞみる
285

皇后宮肥後

あじろをよめる

氷魚のよる川瀬にみゆる網代木はたつ白浪の上にや有覽
286

大納言經信

月照網代といへる事をよめる

月清みせゞの網代によるひをは玉藻にさゆる氷なりけり
287

旅宿冬夜といへる事をよめる

旅ねする夜床さえつゝ明けぬらしと方ぞ鐘の聲聞ゆなる
288

源兼昌

關路千鳥といへる事をよめる

淡路島かよふ千鳥のなく聲にいくよねざめぬ須磨の關守
289

神祇伯顯仲

風早みとしまが崎をこぎゆけば夕なみ千鳥立居なくなり
290

藤原隆經朝臣

氷をよめる

高瀬舟掉のおとにぞ志られぬる芦間の氷ひとへ志にけり
291

内大臣

谷水結氷といへる事をよめる

たにがはのよどみに結ぶ氷こそみる人もなき鏡なりけれ
292

藤原仲實朝臣

百首の歌の中に氷をよめる

志ながどりゐなのふし原風さえてこやの池水氷しにけり
293

神祇伯顯仲

冬月をよめる

冬寒み空にこほれる月影は宿にもるこそとくるなりけれ
294

大納言經信

氷滿池上といへる事をよめる

水鳥のつらゝの枕隙もなしむべさえけらしとふのすが菰
295

大藏卿匡房

深山霰をよめる

箸鷹の志らふに色やまがふらむとかへる山に霰ふるなり
296

大中臣公長朝臣

水邊寒草といへる事をよめる

高嶺には雪ふりぬらしま柴川岸のかげ草たるひ志にけり
297

源頼綱朝臣

宇治前太政大臣の家の歌合に雪をよめる

衣手によごの浦風さへ%\てこだかみ山に雪ふりにけり
298

前齋院尾張

橋上初雪といへる事をよめる

白浪の立渡るかとみゆるかなはま名の橋にふれる志ら雪
299

大納言經信

初雪をよめる

初雪はまきの葉白くふりにけりこや小野山の冬の寂しさ
300

源道濟

雪中鷹狩のこゝろをよめる

ぬれ/\も猶かりゆかむはし鷹の上毛の雪を打拂ひつゝ
301

俊頼朝臣

鷹狩の心をよめる

はし鷹をとりかふ澤に影みれば我身も共にとや返りけり
302

内大臣家越後

理や交野の小野に鳴く雉子さこそはかりの人はつらけれ
303

大藏卿匡房

百首の歌のうちに雪の心をよめる

いかにせむ末の松山なみこさば峯の初雪きえもこそすれ
304

皇后宮攝津

宇治前太政大臣の家の歌合に雪の心をよめる

ふる雪に杉の青葉も埋れて志るしもみえず三輪の山もと
305

中納言女王

岩代の結べる松にふる雪は春もとけずやあらむとすらむ
306

藤原行盛

大甞會の主基方、備中國彌高山をよめる

雪ふればいやたか山の梢にはまだ冬ながら花さきにけり
307

源俊頼朝臣

雪の歌とてよめる

衣手のさえゆくまゝに志もとゆふ葛城山に雪はふりつゝ
308

六條右大臣

雪の御幸におそくまゐりければ志きりにおそきよし御使をたまはりてつかうまつれる

朝ごとの鏡の影に面なれてゆきみむとしも急がれぬかな
309

皇后宮權太夫師時

すみがまをよめる

炭がまにたつ烟さへ小野山は雪げの雲とみゆるなりけり
310

隆源法師

百首の歌の中に雪をよめる

都だに雪ふりぬれば志がらきの槇の杣山あと絶えぬらむ
311

皇后宮肥後

道もなくつもれる雪に跡たえて古里いかに寂しかるらむ
312

藤原兼房朝臣

選子内親王いつきにおはしましける時雪ふりたるに月のあかゝりける夜參りたりけれど女房達ねたりけるにや、月もみざりければ、殿上の御簾にむすびつけゝる歌

掻暮し雨ふる夜はやいかならむ月と雪とはかひなかり鳬
313

源雅光

冬月をよめる

あらち山雪ふり積る高嶺よりさえてもいづる夜はの月哉
314

康資王母

家經の朝臣が桂の山庄のさうじのかべに神樂志たるかた書ける所をよめる

榊葉や立ちまふ袖の追風になびかぬ??はあらじとぞ思ふ
315

皇后宮權大夫師時

神樂をよめる

神なびの三室の山に霜ふればゆふしでかけぬ榊葉ぞなき
316

三宮

氷をよませ給へる

つながねど流れもやらずたかせ舟むすぶ氷のとけぬ限は
317

前齋院六條

水鳥をよめる

中々に霜の上着をかさねてもをしの毛衣さえまさるらむ
318

前齋宮内侍

池水鳥をよめる

浪枕いかにうきねを定むらむこほる益田のいけのをし鳥
319

修理大夫顯季

題志らず

さむしろに思ひこそやれ笹の葉のさゆる霜夜の鴛の獨寐
320

内大臣

依花待春といふこゝろを

何となく年のくるゝは惜けれど花のゆかりに春をまつ哉
321

藤原成通朝臣

としのくれの心をよめる

人志れず暮行く年を惜むまに春いとふ名の立ちぬべき哉
322

藤原永實

霜月の十日ごろに攝政左大臣の家にて冬の題どもをさぐりてよみ侍りけるに年のくれをとりてよめる

數ふるに殘少なき身にしあればせめても惜しき年の暮哉

この歌よみて後としの内に身まかりにけるとぞ。

323

三宮

としの暮の心をよませ給ひける

いかにせむ暮行く年を知べにて身を尋ねつゝ老は來に鳬
324

中原長國

年くれぬと計こそは聞かましか我身の上に積らざりせば
325

中納言國信

何事を待つとはなしに明暮れて今年もけふに成にける哉
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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