新後撰和歌集 (Shin Gosen wakashū) — 新後撰和歌集卷第十一 戀歌一 作者複数 (Various) 1303 Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1303 しんごせんわかしゅう Shin Gosen wakashū 新後撰和歌集 しんごせんわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新後撰和歌集 Shin Gosen wakashū
作者複数 Various
新後撰和歌集卷第十一 戀歌一
770
入道前太政大臣
弘安元年百首の歌奉りし時
人志れず思ひ入野の花ずゝきみだれそめける袖の露かな
771
前大納言爲氏
弘長元年百首の歌奉りし時、初戀
入りそむる繁き小笹の露ならでまづ袖ぬらす我が泪かな
772
隆信朝臣
後法性寺入道前關白の家の百首の歌に同じ心を
さも社はまだ見ぬ戀の道ならめ思ひたつより迷ひぬる哉
773
左近中將具氏
題志らず
つらからばいかにせむとか行末の心も知らず思ひそむらむ
774
前大納言爲家
志られじな霞にこめて陽炎の小野の若草志たにもゆとも
775
正三位知家
志るやいかにいはたの小野の篠薄思ふ心は穗に出でず共
776
藤原重綱
知られじな露かゝるとも下荻のほに出すべき思ならねば
777
藤原爲綱朝臣
仄なる難波の芦火いかなればたき初むるより身を焦す覽
778
鷹司院按察
寄烟忍戀の心を
胸にみつ思ひはあれど富士の嶺の烟ならねば知る人もなし
779
式子内親王
戀の歌の中に
知るらめや葛城山に居る雲の立ち居にかゝる我が心とは
780
隆信朝臣
後法性寺入道前關白の家の百首の歌に、忍戀
哀れとも誰れかは戀を慰めむ身より外には知る人もなし
781
鴨長明
題志らず
うき身には絶えぬ歎に面慣れて物や思ふと問ふ人もなし
782
大炊御門内大臣
戀侘びて歎かば色に出でぬべし身にも知られぬ心共がな
783
從二位兼行
かひなしや知られぬ中に長らへて心ひとつの頼み計りは
784
後嵯峨院大納言典侍
人知れず思ふ心の苦しさを色に出でゝや志らせそめまし
785
平政村朝臣
泪こそ志のばゝよそに見えず共おさふる袖を人や咎めむ
786
院大納言典侍
堰き返しおさふる袖に年ふりて人目に志らぬ泪ともがな
787
前中納言匡房
下にのみ岩間の水のむせ歸りもらさぬ先に袖ぞぬれける
788
大藏卿有家
後京極攝政の家の六百番歌合に
名に立てる音羽の瀧も音にのみ聞くより袖はぬるゝ物かは
789
前中納言定家
名所の百首の歌奉りける時
春霞かすみの浦を行く舟のよそにもみえぬ人をこひつゝ
790
僧正行意
おのづからかけても袖に知すなよいはせの杜の秋のしら露
791
土御門院御製
忍戀の心を
我が戀はいはせの森の下草の亂れてのみも過ぐる比かな
792
前關白太政大臣
知られじなさても忍ぶの杜の露もりて泪の袖に見えずば
793
祝部成茂
下にこそ忍ぶの露の亂るとも袖の外にはいかゞもらさむ
794
常磐井入道前太政大臣
寳治の百首の歌奉りける時、寄衣戀
色見えぬこれや忍ぶのすり衣思ひみだるゝ袖の志らつゆ
795
後嵯峨院御製
題志らず
心のみかぎり知られぬみだれにて幾年月を忍ぶもぢずり
796
前大納言爲家
陸奥の亂れて摺れる狩衣名をだに立つるひとに志られじ
797
前大納言資季
建長三年九月十三夜十首の歌合に、寄烟忍戀
富士の嶺のけたぬ烟も立たばたて身の思だに人し知らずば
798
後九條内大臣
浦かぜにたくもの烟なびくとも志らるな人に心よわさを
799
前右兵衛督爲教
海士のたく浦の志ほ屋の夕烟思ひきゆとも人に志らるな
800
大藏卿有家
千五百番歌合に
かはら屋の烟は下にむせぶ共思ひありとは人に志らせじ
801
從三位藤原宣子
戀の歌の中に
我れのみとくゆる烟の下燃を人はやすくや思ひけつらむ
802
入道前太政大臣
院に三十首の歌奉りしとき、不逢戀
物思ふあだ名はたゝじ夕烟なびかぬ中にこひは志ぬとも
803
讀人志らず
題志らず
いかにせむ忍ぶにたへぬ命にて後の浮名の世にも殘らば
804
大藏卿有家
後京極攝政の家の六百番歌合に
忍びつゝ此世つきなば思ふ事苔の下にやともに朽ちなむ
805
祝部成良
戀の歌とて
いかにせむ袖に人目をもる山の露も時雨も色にいでなば
806
今出河院近衛
思はねど人もこそしれ烏羽玉の夢にも今宵みつと語らじ
807
少將内侍
寳治百首の歌奉りける時、寄橋戀
烏羽玉の夢の浮橋あはれなど人目をよきて戀ひ渡るらむ
808
内大臣
尚侍藤原現子朝臣の家の歌合に、忍戀
よしさらば泪許さむ知るとても人にいふべき枕ならねば
809
院御製
題志らず
見せばやなくだけて思ふ泪ともよも志ら玉のかゝる袂を
810
西園寺入道前太政大臣
人知れず思ひのいろの下ぞめに志ぼる泪の袖をみせばや
811
法皇御製
くれなゐの泪の色もまがふやと秋は時雨に袖やかさまし
812
皇太后宮大夫俊成
住吉の社によみて奉りし百首の歌の中に
秋の野の萩の志げみにふす鹿のふかくも人に忍ぶ頃かな
813
太上天皇
忍戀の心をよませ給うける
此頃は野邊のを鹿の音に立てゝなかぬ計といかで志せらむ
814
前大納言爲家
寄繪戀と云ふ事を
音たてぬ物から人に知らせばやゑにかく瀧のわき返る共
815
前大納言爲氏
弘安元年百首の歌奉りし時
洩さばや山もとかけてせく池のいひ出でがたき心あり共
816
山階入道左大臣
寳治の百首の歌奉りし時、寄湊戀
堰きかねぬ物思ふ袖のみなと川今は包まぬ名をや流さむ
817
津守國助女
戀の歌の中に
埋木のさてや朽ちなむ名取川顯れぬべき瀬々は過ぎにき
818
讀人志らず
隱沼の入江におふるあしのねの下の亂れは苦しかりけり
819
澄覺法親王
水草ゐる板井の清水徒らにいはぬを汲みて志る人はなし
820
平重村
いかにせむ心のうちの志がらみに餘りてかゝる袖の泪を
821
衣笠内大臣
我ながらいかに心のなりぬらむ人めも知らずぬるゝ袖哉
822
藤原爲藤朝臣
内裏に百首の歌奉りし時、忍戀
おのづから洩さば猶もいかならむせくだに袖に餘る泪を
823
津守國冬
尚侍藤原現子朝臣の家の歌合に、同じ心を
堰きかぬる泪はあらじもろ共に忍ぶはおなじ心なりとも
824
讀人志らず
題志らず
忍ぶるは思ふ中だに苦しきをつらきに添へてせく泪かな
825
前大納言澄房
正治の百首の歌に
人知れぬ心にたつる錦木のくちぬるいろや袖にみゆらむ
826
後嵯峨院御製
寳治元年十首の歌合に、忍久戀
強面きも言はねば社と思はずば年月いかで長らへもせむ
827
兵部卿有教
我ならぬ志のぶの山の松の葉も年へて色にいづる物かは
828
素暹法師
題志らず
夏山の茂みが志たにはふ葛のいつ顯れてうらみだにせむ
829
前關白太政大臣
色に出でゝ後も幾世かつらからむ忍ぶ計に年ぞ經にける
830
讀人志らず
言はで思ふ心のうちのあらましに身を慰めて猶や忍ばむ
831
右近大將道平
人知れず思ふとだにもいはぬまの心の内を爭でみせまし
832
後嵯峨院御製
忍ぶるもためしあらじと苦しきを顯れば又いかゞ歎かむ
833
法橋顯昭
後京極攝政の家の六百番歌合に
憂身とてさのみはいかゞ包むべき言はで悔しき事も社あれ
834
太宰權帥爲經
戀の歌の中に
つらしともいひて心や慰むと忍ばでだにも人を戀ひばや
835
尚侍藤原現子朝臣
百首の歌奉りしとき、忍戀
我ればかり浮名なればと忍ぶとも心かよはぬ人や洩さむ
836
右近大將通忠
寳治元年十首のうたあはせに、忍久戀
年を經る泪なりともおのづから洩さば袖の隙もあらまし
837
紀淑文
題志らず
よしさらば袖の泪はもらばもれ誰故とだに人の知らずば
838
祝部成久
包むとも我れとはいはぬ思をも泪やよその人に知らせむ
839
右大臣
堰きかねて泪は袖にあまるとも我が心とはいかゞ洩さむ
840
奬子内親王
堰かでたゞあらまし物を中々につゝめば餘る我が泪かな
841
宜秋門院丹後
千五百番歌合に
今日こそは袖にも洩せいつのまにやがて泪の色にみゆ覽
842
賀茂久世
戀の歌の中に
洩さじと思ふ心もいさや川堰くに堰かるゝ浮名ならねば
844
平爲時
身の爲の思とならば消えもせで我がうき名のみたつ烟哉
845
大藏卿隆博
弘安元年百首の歌奉りし時
下燃えの烟の末よ空にのみ立つ名なれとは思はざりしを
846
權中納言師時
堀川院の御時艷書の歌を人々にめして女房のもとに遣して返歌をめしける時によみ侍りける
忍ぶれど物思ふ人はうき雲の空に聲する名をのみぞたつ
847
郁芳門院安藝
返し
戀すともいかでか空に名はたてじ忍ぶる程は袖に包まで
848
藤原爲道朝臣
依涙顯戀といふ事を
いかにして泪と共にもりぬらむ袖の中なる浮名ならぬに
849
平[5]A 5 時
題志らず
戀すとも人は知らじなから衣そでにあまらぬ泪なりせば
850
中臣祐茂
言はで唯思ひし迄のあらましは憂身ながらも慰みぞせし
851
讀人志らず
くやしくぞつらき心を顯はさで忍びて末を頼まざりける
852
順徳院御製
名所の百首の歌めされし次でに
仄にもしらせてけりな東なる霞のうらのあまのいさり火
853
靜仁法親王
弘安元年百首の歌奉りし時
蘆の屋のこやの蜑人潮たれて袖ほす隙もなき身なりけり
854
前中納言爲兼
いか樣に身を盡してか難波江に深き思のしるしみすべき
855
源親長朝臣
題志らず
蜑のすむ浦の玉藻を假初に見しばかりにもぬるゝ袖かな
856
光俊朝臣
村雲に風ふく夜半の月かげのはやくもみてし人ぞ戀しき
857
參議雅經
建保四年内裏の十首の歌合に
秋の田のわさぼのかづら露かけて結ぶ契は假にだになし
5 [5] The kanji in place of A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's Dai Kan-Wa jiten kanji number 1721. Tetsuji Morohashi, ed., Dai Kan-Wa jiten (Tokyo: Taishukan Shoten, 1966-68).