新後拾遺和歌集

Shin Goshūi wakashū

作者複数 Various

新後拾遺和歌集卷第十五
戀歌五

1224

素性法師

題志らず

忘れなむ時忍べとぞ空蝉のむなしきからを袖にとゞむる
1225

藤原光俊朝臣

忘られて生けるべしとも知らざりし命ぞ人のつらさなりける
1226

馬内侍

雪の降れるあしたに男の來りてかく習ひて絶えなむはいかゞ思ふべきと云ひければ詠める

忘れなば越路の雪の跡絶えて消ゆる例になりぬばかりぞ
1227

讀人志らず

男のかれ%\になりにける女に變りて詠める

今はたゞ人を忘るゝ心こそ君にならひて知らまほしけれ
1228

太上天皇

戀の御歌の中に

心よりかはる契のすゑなれば驚かしてもかひやなからむ
1229

萬秋門院

嘉元の百首の歌奉りけるに、忘戀

ともすれば有りし習に立ち歸り猶元の身と頼むはかなさ
1230

源頼之朝臣

題志らず

はかなくや人は許さぬ面影を忘らるゝ身に添へて殘さむ
1231

攝政太政大臣

寄書戀

かき絶えて殘るうき身ぞ玉章のふりぬるよりも置所無き
1232

法印定爲

嘉元の百首の歌に、忘戀

形見とて人は殘さぬ身にし有れば今はあだなる頼だに無し
1233

太上天皇

百首の歌召されしついでに同じ心を詠ませたまうける

心にも今は殘らぬ契とやいとひしほどのおもかげもなき
1234

讀人志らず

物云ひわたる男の久しう音せで、忘れずと云ひたりければ詠める

忘れずと云ふにつけてぞ中々に訪はぬ日數の積るとは知る
1235

源義將朝臣

百首の歌奉りける時、忘戀

忘草生ふと聞くより住吉のきしはよそなる中のかよひ路
1236

左衛門督資康

摘みに行く道だに知らず忘草きしなるたねや人に任せむ
1237

入道二品親王覺譽

延文二年百首の歌奉りしに、寄蛛戀

忘てし人は軒端の草の葉にかけても待たず蛛のふるまひ
1238

伏見院御製

寄草戀を

色かはる心の秋の葛かづら恨みをかけてつゆぞこぼるゝ
1239

前中納言匡房

ともすれば靡くさ山の葛かづら恨みよとのみ秋風ぞ吹く
1240

源頼資

題志らず

契り置きし露をかごとの葛かづら來るも遅しと猶や恨みむ
1241

平貞秀

斯ばかり絶えける物を葛かづら來る夜をかけて何恨みけむ
1242

後西園寺入道前太政大臣

弘安元年、百首の歌に

身の憂きに思ひ返せば眞葛原たゞうらみよと秋風ぞ吹く
1243

權大納言教嗣

戀の歌に

知られじなかた山蔭の眞葛原うらむる風は身に寒くとも
1244

祝部成景

秋風のたよりならでは眞葛原恨むとだにも如何で知せむ
1245

從三位忠兼

寄草恨戀

眞葛原露の情もとゞまらず恨みしなかはあきかぜぞ吹く
1246

參議經宣

題志らず

身を秋の末野の原の霜枯に猶吹きやまぬくずのうらかぜ
1247

示空上人

言の葉の枯れにし後は眞葛原恨むる程のなぐさめもなし
1248

兵部卿長綱

海士の住む里の烟の志るべだに我にはよその浦風ぞ吹く
1249

頓阿法師

絶恨戀

蜑の住む里の烟は絶えにしをつらき導べのなに殘るらむ
1250

紀俊長

題志らず

須磨のあまの鹽燒衣恨み侘び猶も間どほに濡るゝ袖かな
1251

前中納言爲明

貞和の百首の歌に

恨のみ深き難波の水脉つくし志るしや孰ら寄る船もなし
1252

前大納言爲氏

弘安の百首の歌に

荒磯に寄り來る浪のさのみやは心砕けて身をもうらみむ
1253

題志らず

我身をぞ喞つ方とは恨みつる人のつらさの云ふに叶はで
1254

藤原秀長

積り行く恨もかひぞ無かりける月日に添へてつらき契は
1255

權中納言爲重

身の程の憂きはよそ迄知らる共恨み止らばかひや無からむ
1256

大藏卿有家

千五百番歌合に

誰も皆憂きをば厭ふことわりを知らずはこそは人も恨みめ
1257

前關白左大臣

百首の歌奉りし時、恨戀

果は又身を憂き物と喞つこそせめて恨のあまりなりけれ
1258

津守國久

戀の歌の中に

ことわりも思ひ知らばと頼むかな恨を後のあらましにして
1259

入道贈一品親王尊圓

貞和二年、百首の歌に

身の憂さを思ひしらずばいかに猶心の儘に恨み果てまし
1260

民部卿爲藤

嘉元の百首の歌に、恨戀

つらしとも心の儘に言ひてまし恨み果つべき中と思はゞ
1261

亭子院御製

戀の御歌の中に

つくるなる橋と知る/\恨むれば思ひながらを云ふにぞ有ける
1262

花園院御製

貞和二年百首の歌召されけるついでに

一筋に思ひ知らぬに爲しやする云はぬ恨も同じつらさを
1263

前大納言善成

百首の歌奉りし時、恨戀を

今はよも言ふにもよらじ等閑のつらさをなどか恨ざりけむ
1264

如法三寶院入道前内大臣

恨身戀と云ふ事を

身の憂さを歎くも猶や立ち歸り人をうらむる心なるらむ
1265

伏見院御製

人を恨みむと云ふ言葉を詠ませ給うける

つらしとて人を恨みむ理のなきにうき身の程ぞ知らるゝ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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