新拾遺和歌集 (Shin Shūi wakashū) — 新拾遺和歌集卷第十一 戀歌一 作者複数 (Various) 1364 Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1364 しんしゅういわかしゅう Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 しんしゅういわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新拾遺和歌集 Shin Shūi wakashū
作者複数 Various
新拾遺和歌集卷第十一 戀歌一
920
伊勢
題志らず
石清水いはぬ物から木がくれてたぎつ心を人は知らなむ
921
人丸
空に知る人はあらじなしら雪の消えて物思ふ我が心とは
922
笠女郎
中納言家持に遣しける
つくま野に生ふる紫衣に染め未だ着ずして色に出でに鳬
923
圓融院御製
中將のみやす所に給はせける
思ひあまる烟や立ちておのづから心の空の雲となるらむ
924
邦世親王
寄烟戀といふ事を
人知れぬ忍の浦の夕けぶり思ひ立つより身はこがれつゝ
925
中園入道前太政大臣
貞和の百首の歌奉りし時
人知れぬ心ばかりにさそはれて迷ふ戀路はとふ方もなし
926
從三位行能
道助法親王の家の五十首の歌に、寄雲戀
夕暮の空にはかなく行く雲の路なきみちに思ひ立つらむ
927
從二位家隆
光明峯寺入道前攝政の家の百首の歌に、名所戀を
葛城や高間の山にさすしめのよそにのみやは戀ひむと思ひし
928
殷富門院大輔
題志らず
野にも非ず山にも非ぬ戀路にも入るより袖ぞ露けかりける
929
前中納言定家
光明峯寺入道前攝政の家の百首の歌に、名所戀
甲斐が嶺に木の葉吹きしく秋風も心の色をえやは傳ふる
930
前大納言實明女
百首の歌奉りし時、寄風戀
おのづから吹きかふ風の便にも思ふ心をつたへてしがな
931
讀人志らず
題志らず
木の間より影のみ見ゆる月草のうつし心はそめてし物を
932
前大納言經繼
文保の百首の歌奉りける時
月草のはつ花染のしたごろも下にうつるを見る人ぞなき
933
聖尊法親王
欲言出戀
かくとだに岩間にむせぶ谷水の洩さばかよふ心ともがな
934
法印定爲
嘉元の百首の歌奉りける時
谷蔭や岩間をせばみ行く水のわき返るとも知る人ぞなき
935
源氏經朝臣
戀の歌の中に
洩すなよ木の葉にうづむ谷水の底の心はわきかへるとも
936
大藏卿隆博
我が袖にありとやいはむ吉野川絶えず落つなる瀧の水上
937
讀人志らず
あさき瀬ぞ浪は立つらむ吉野川ふかき心を君は知らずや
938
躬恒
延喜十三年亭子院の歌合に、戀をよめる
涙川いかなる水かながるらむなど我が戀をけつ人のなき
939
權中納言實直母
題志らず
よしさらば洩るに任せむ涙川流れの末に逢ふ瀬ありやと
940
前大納言爲氏
弘安元年百首の歌奉りける時
山川のたぎつ心もせきかねつ思ふにあまる袖のなみだに
941
平常顯
題志らず
袖に落つる瀧の白糸打ちはへて苦しき中に結ぼゝれつゝ
942
達智門院兵衛
忍戀の心を
堰きかねて落つる計りぞ今も猶音には立てぬ袖の瀧つ瀬
943
土御門院小宰相
九條前内大臣の家の百首の歌合に
洩すべきひまこそなけれしのぶ山しのびて通ふ谷の下水
944
兼好法師
忍久戀
忍山またことかたに道もがなふりぬる跡は人もこそ知れ
945
平忠度朝臣
互忍戀と云ふ事を
戀ひ死なむ後の世までの思出は忍ぶ心のかよふばかりか
946
前大僧正慈鎭
建仁二年、影供歌合に、忍戀
暫しこそ卯の花がきのほとゝぎすいつか袂は五月雨の空
947
皇太后宮大夫俊成女
人知れず思ひしのぶの山風に時ぞともなき露ぞこぼるゝ
948
西園寺内大臣女
戀の歌の中に
いかにせむ忍ぶもぢずりとにかくに思ひ亂るゝ袖の泪を
949
正三位知家
光明峯寺入道前攝政の家の歌合に、寄衣戀を
唐藍の八しほの衣ふかけれどあらぬ泪のいろぞまがはぬ
950
從二位宣子
文保の百首の歌奉りける時
打ちつけに思ひそめける心かなやがて千しほめ袖の泪は
951
權中納言公雄
嘉元の百首の歌奉りける時、忍戀
せきかへす泪をかねて思ふ哉朽ちなむ袖の果はいかにと
952
贈從三位爲子
せきかへす便だになく悲しきは袖にもしのぶ涙なりけり
953
常元法師
題志らず
遂にさて瀬々に朽ぬる袖ならば洩らぬ涙のかひやなからむ
954
前大納言爲定
正和五年九月十三夜後醍醐院みこの宮と申しける時五首の歌召されけるに、月前忍戀
いかにして泪つゝまむ影やどす月こそ袖の色に出づとも
955
平英時
題志らず
誰ゆゑの涙と人の思ふらむ知らせぬ先に濡るゝたもとを
956
前參議爲嗣
袂こそ涙ほす間もかたからめ心をさへにさのみしぼらじ
957
法印覺爲
寄山戀
夕時雨もる山かげに立ち濡れて移ろふ袖の色やまがへむ
958
常磐井入道前太政大臣
寳治二年百首の歌奉りし時、寄雨戀
こがれ行くよその紅葉にくらべみよ袂にかゝる秋の村雨
959
權大納言義詮
百首の歌奉りし時、寄杜戀
露はまづ色にや出でむ思ふともいはでしのぶの森の下草
960
法眼源承
入道二品親王性助の家の五十首の歌に
知られじなしのぶの杜の下草に置添ふ露は結ぼゝるとも
961
大藏卿隆博
文永七年閏九月、内裏の三首の歌に、寄菊久戀
積りては袖にも淵となりやせむ泪はきくの露ならねども
962
右兵衛督教定
忍久戀を
かくしつゝ年も經にけり言の葉の人傳ならぬ便待つ間に
963
花園院御製
戀雜物と云ふ事を
いとせめて忍ぶる中の玉章はおもふ限を書きもつくさず
964
入道二品親王尊圓
忍通書戀
散すなよしのぶの杜の言の葉に心の奥の見えもこそすれ
965
祭主輔親
始めて女のもとに遣しける
思ひつゝこゝらの年を志のぶ草忍ぶる程に摘みてける哉
966
深養父
題志らず
年を經てちりのみつもる泪かな床打ち拂ふ人しなければ
967
忠房親王
文保の百首の歌に
云出でゝ難面からずば年月を忍び來つるや悔しからまし
968
平行氏
題志らず
人知れぬ涙の玉のおのれのみ思ひくだけて年ぞ經にける
969
權律師則祐
洩さじと何忍ぶらむ數ならぬ身を知らでこそ思初めしか
970
大納言師賢
せきかへす袖の涙のたま葛かけても知らじ色し見えねば
971
等持院贈左大臣
遂に我が心や色にあらはれむ暫しは包むうき名なりとも
972
藤原基任
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、忍戀
かくばかり忍ばざりせば戀しさの一方にのみ物や思はむ
973
後西園寺入道前太政大臣
弘安の百首の歌奉りける時
戀すてふみをの杣人朝夕に立つ名ばかりはやむ時もなし
974
山階入道前左大臣
寳治二年百首の歌奉りける時、寄鳥戀
芦鴨のおりゐる池の水波の立つこと易き我が名なりけり
975
爲道朝臣
寄霞戀といへる事を
如何せむ空に霞の立つ名のみ晴れぬ戀路に迷ひ果てなば
976
[4]C 4 子内親王
戀の歌の中に
せめて猶慰む方もありなまし逢ふにしかふる浮名なり せば
977
藤原長秀
いつしかと我が名は立ちぬ敷妙の枕に誰か知せ初めけむ
978
法眼行經
忍戀の心を
洩さじと抑ふる袖ぞなか/\に人目にあまる泪なりける
979
中宮大夫公宗母
忍遇戀
顯れていつ名に立たむ關守の打ちぬるひまの數も積らば
980
源光明
題志らず
越え侘ぶる逢坂山の關よりもよそに洩る名ぞ苦しかりける
981
平重基
憂き人の心の關となり果てゝ猶越えがたきあふさかの山
982
前大納言爲氏
建長元年、五首の歌に、寄山戀
富士のねや燃えつゝとはに歎きてもならぬ思の果ぞ悲しき
983
常磐井入道前太政大臣
寳治の百首の歌奉りける時、寄烟戀
駿河なる山は富士のね我がごと や絶えぬ烟に結ぼゝるらむ
984
入道二品親王道助
家に五十首の歌よみ侍りけるに、同じ心を
富士のねや絶えぬ烟の行方だに知らぬ思に年の經ぬらむ
985
民部卿爲明
貞和二年百首の歌奉りし時
富士のねのとはに燃ゆれば憂き人や珍しげ無く思ひけつ覽
986
頓阿法師
關白前左大臣の家に題を探りて歌よみ侍りけるに、寄烟戀を
こと浦になびかぬ程ぞ夕けぶり我が下燃えの頼なりける
987
小侍從
男のつらくあたりけるに遣さむとて請ひける人に代りて
靡きける我が身あさまの心からくゆる思に立つけぶり哉
988
前大納言爲定
百首の歌奉りし時、寄烟戀
憂きなかは契あさまの夕烟我が爲燃ゆと見やはとがめむ
989
素暹法師
戀の歌の中に
神代より烟絶えせぬ富士のねは戀や積りて山となるらむ
990
權少僧都寛耀
ほとりぬる枕の塵のつもりてや空しき床の山となるらむ
991
人丸
相思はぬ妹を何せむ鳥羽玉の今宵も夢に見えもこなくに
992
兵部卿元良親王
夢にだに見るべき物を寐覺めつゝ戀ふる心は行く方もなし
993
皇太后宮大夫俊成女
千五百番歌合に
思ひ寢の夢のうき橋とだえして覺むる枕に消ゆる面かげ
994
權中納言公雄
文保の百首の歌奉りける時
現には忘れやはする憂き事の夢こそさむる程なかりけれ
995
權大納言義詮
百首の歌奉りし時、寄橋戀
人はよも心かよはじ宵々の我が思ひ寐のゆめのうきはし
996
前大納言爲定
文保の百首の歌奉りける時
憂き人の心には非で思ひつゝぬればぞ見ゆる夢は頼まじ
997
從三位爲信
寄夢戀
まことなき夢のたゝぢの面かげは誰が僞に通ひ初めけむ
998
前右兵衛督爲教
せめて猶現につらき慰めとぬる夜の夢を待つも果敢なし
999
祝部成景
寐ぬる夜の夢に越えける逢坂や人も許さぬ關路なるらむ
1000
前中納言定家
承久二年土御門院に奉りける三首の歌に、夜長増戀
秋の夜の鳥の初音はつれなくてなく/\見えし夢ぞ短き
1001
後久我太政大臣
建保五年、内裏の歌合に、冬夜戀
消え侘ぶる霜の衣をかへしても見し夜まれなる夢の通路
1002
八條院高倉
長き夜に氷かたしき臥し侘びぬまどろむ程の涙ならねば
1003
正二位隆教
文保三年百首の歌奉りける時
逢はぬ夜のつらさ重なるさ莚にかたしく物は涙なりけり
1004
安嘉門院四條
歳暮戀といふ事を
逢ふ迄と憂きに堪たる月日さへせめて難面く暮るゝ年哉
1005
前大納言爲氏
逢ふ迄と頼みしまゝに年暮れて契も知らず行く月日かな
4 [4] Kanji in place of C is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 24776.