新拾遺和歌集

Shin Shūi wakashū

作者複数 Various

新拾遺和歌集卷第十五
戀歌五

1319

小町

戀の歌の中に

よそにして見ずはありとも人心わすれ形見に猶や忍ばむ
1320

西宮前左大臣

人やりにあらぬものから恨むるは身の理も思ひ知らずや
1321

深養父

物思へばいも寐られぬを怪しくも忘るゝ事を夢に見る哉
1322

一條太政大臣女

見しや夢我身やあらぬ契しに變るつらさぞ覺むる方なき
1323

讀人志らず

夢ならで又もむすばぬ契かな解けし一夜のなかの下ひも
1324

後西園寺入道前太政大臣

伏見院に奉りける三十首の歌に

須磨の蜑の汐なれ衣なれきてぞ間遠になるも恨なりける
1325

前大納言爲世

元弘三年九月十三夜内裏にて人々題を探りて歌つかうまつりけるに、恨戀を

果は又蜑の住むてふ里と云へば導べだになき見を恨つゝ
1326

正三位知家

光明峯寺入道前攝政の家の戀の十首の歌合に、寄網戀

置く網の引く手許多に袖ぬれて偖も恨みぬ波の間ぞなき
1327

只皈法師

題志らず

こと方に引く人なくば栲繩の間遠にくるもよしや恨みじ
1328

鎌倉右大臣

かれ果てむ後忍べとや夏草の深くは人のたのめ置きけむ
1329

源氏兼

ともしする夏野の鹿の音に立てぬ思もかくや苦しかる覽
1330

安嘉門院四條

靡くともほには出でじとしの薄忍びし中は霜がれにけり
1331

左兵衛督基氏

尋ぬべきしるしも今は跡絶えぬ雪のふる野の鵙の草ぐき
1332

前中納言定家

洞院攝政左大臣の家の百首の歌に、怨戀と云ふ事を

己のみ天のさか手をうつたへに降りしく木葉跡だにもなし
1333

御製

百首の歌めされしついでに、寄弓戀

今ぞ憂きかはる契のしらま弓なびきそめてし心よわさは
1334

中園入道前太政大臣

我に引く契なりともたのまれじ安達のまゆみあだし心は
1335

後堀河院民部卿典侍

光明峯寺入道前攝政の家の十首の歌合に同じ心を

人はいさあだちの眞弓おし返し心の末をいかゞたのまむ
1336

前大納言實教

文保の百首の歌奉りける時

猶いかに戀死なぬ身のつらからむ後の世契る人も有せば
1337

後深草院辨内侍

戀の歌の中に

戀死なばやすかりぬべき命さへ逢ふを限に年ぞ經にける
1338

後醍醐院少將内侍

文保の百首の歌に

變らじと思へばこそは契るらめ我かね言にいかゞ恨みむ
1339

讀人志らず

題志らず

いかばかり猶憂からまし僞のなき世にかはる契なりせば
1340

前中納言公修

契經年戀を

僞にかはるも知らで幾とせか契りしまゝの身を頼むらむ
1341

等持院贈左大臣

貞和の百首の歌奉りし時

言の葉の通はずなればいつはりと恨みし頃を又忍ぶかな
1342

空曉法師

題志らず

恨むべき人目のひまも幾度か數ならぬ身に過しきつらむ
1343

信實朝臣

文永二年四月後嵯峨院に奉りける三十首の歌の中に、恨戀

云へばげに我身のみこそうかりけれつらき人には言の葉もなし
1344

侍從爲親

龜山殿の千首の歌に

暫し唯云はでやみましつらさをも憂きをも知らぬ身とはなる共
1345

二品法親王寛尊

戀の心を

何と唯恨むるかひもなき中に言の葉をのみ盡しきぬらむ
1346

藤原長秀

ことの葉の移ろふだにも憂きなかに今は梢の秋風ぞ吹く
1347

藤原良尹朝臣

はゝそ原うつろふ色をつらしとも誰にいはたの杜の下露
1348

前關白左大臣近衛

言の葉のさきだつ袖の涙にぞ堪へぬ恨のほどは知るらむ
1349

前大納言經繼

正和五年九月十三夜後醍醐院みこの宮と申しける時五首のうためされけるに、月前恨戀

面影は我身にそへるつらさにて恨みぬ月に濡るゝ袖かな
1350

前大納言爲定

見ても猶もの思へとや憂き人の我が面影を月に添へけむ
1351

前中納言實前

澄む月の泪にくもる影までも思へば人のつらさなりけり
1352

中納言爲藤

人をこそ恨みはつとも面影の忘れぬ月をえやはいとはむ
1353

後京極前關白太政大臣家肥後

戀の歌とてよみ侍りける

恨みわびたへぬ泪にそぼちつゝ色變りゆく袖を見せばや
1354

修理大夫顯季

恨人戀の心を

言の葉を頼まざりせば厭ふ共人をつらしと思はざらまし
1355

今出河院近衛

題志らず

恨みても猶慕ふかな戀しさのつらさにまくる習なければ
1356

法皇御製

貞和の百首の歌めしけるついでに、戀の御歌とて詠ませ給うける

さてもまた怪しきまでの契かな恨みばかりを思出にして
1357

中園入道前太政大臣

あり果てぬならひはさぞと慰めて變る契を歎かずもがな
1358

前大納言公蔭

戀の歌の中に

かつしたふ心よわさは中々に恨みて何のかひかあるべき
1359

山階入道前左大臣

數ならぬ身の理になぐさめて憂きを恨みぬ程ぞ經にける
1360

源公信

變らじと契りし末を頼みける我がはかなさぞ今は悔しき
1361

前大納言爲世

文永七年八月十五夜、内裏の五首の歌に、恨戀

最ど猶憂きにつけてぞ思ふにも云ふにも餘る人のつらさは
1362

平親清女

戀の歌の中に

憂き事もいくよかあらむ吉野川よしや人をも今は恨みじ
1363

陽徳門院中將

我が袖に泪のたきぞ落ちまさる人のうき瀬を水上にして
1364

前大僧正禪助

寄枕戀

よしさらば泪に朽ちね中々にかたみもつらしつげのを枕
1365

後深草院少將内侍

題志らず

いつはりのなくて過ぎにし昔だに人の契を頼みやはせし
1366

伏見院御製

うかるべき身を知る上の戀しさは何にか暫し思ひ沈めむ
1367

二品法親王覺助

深山木のしたはふ葛の下紅葉うらむる色を知る人ぞなき
1368

藤原基隆

中務卿宗尊親王の家の百首の歌に、戀

知らせばや竹の籬にはふ葛の下に恨むるふしのしげさを
1369

平親清女妹

寄葛戀

秋かぜに玉まく葛のした露やうらみに堪へぬ涙なるらむ
1370

道智法師

今ぞ知る眞葛が原に吹く風のうらみも戀にかへる物とは
1371

覺空上人

題志らず

いかにせむ鴫の羽根掻かき絶えてとはれぬ數の積る恨を
1372

藤原忠兼

稀にだに逢ふ夜もあらば恨みまし枕の塵の積るつらさを
1373

前大納言爲家

白河殿の七百首の歌に、寄鬘戀

玉かづらいかに寐し夜の手枕につらき契のかけ離れけむ
1374

權大納言義詮

百首の歌奉りし時、寄衣戀

おのづから見しも契のかり衣恨むるかひや遂になからむ
1375

鷹司院帥

題志らず

今は唯恨むるまでは見えずともつらさを爭で思ひ知せむ
1376

和泉式部

恨めしき人の音せざりければ

そのかみはいかに知りてか恨けむ憂きこそ長き命なりけれ
1377

源師光

文遣しける女の後には返事もせず侍りければ

つらかりし言の葉をなど恨けむ其をだにこそ聞かず成ぬれ
1378

讀人志らず

戀の歌の中に

つらしとて恨みは果てじまれにだに人の契のあらむ限は
1379

中務卿全仁親王

つらしとも恨みし程はさても猶人の名殘のある世なりけり
1380

後嵯峨院御製

忘れじの言の葉なくば中々にとはぬ月日を恨みざらまし
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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