新拾遺和歌集

Shin Shūi wakashū

作者複数 Various

新拾遺和歌集卷第十六
神祇歌

1381

榊葉の枝にやどかるます鏡くもりあらせでかへる道かな

此の歌は暦應四年春日の神木都におはしましける時、託宣の御歌となむ。

1382

後の世の苦しき事を思へかしあはれ此世は夢と知らずや

靜妙法師延暦寺の執當解却せられて後、日吉の地主權現にまうでゝ終夜祈請しけるに夢のうちに、寳殿のうちより詠ませせさ給ひけるとなむ。

1383

たのめつゝこぬ年月を重ぬれば朽ちせぬ契いかゞ頼まむ

法印澄憲建久元年日吉の大宮の千僧供養の導師の賞を仁和寺の海惠にゆづりて律師になり侍りにけり。かの海惠、律師になりなば日吉へ參るべき由申しながら年月を送り侍りけるに示し給ひけるとなむ。

1384

荒れ果つる我宿とはぬ恨をば隱れてこそは人に知られめ

これは熱田の社荒れて侍りけるころ、託宣の御歌となむ。

1385

紅にぬれつゝ今日や匂ふらむ木の葉移りて落つる時雨は

亭子院奈良におまし/\ける時、立田山にて詠ませ給ひける北野の御歌となむ。

1386

阿保經覽

延喜六年日本紀の竟宴の歌、思兼神

思兼たばかり事をせざりせば天の岩戸はひらけざらまし
1387

從二位家隆

神祇の歌の中に

見ぬ世まで心ぞすめる神風や御裳すそ川のあかつきの聲
1388

源兼氏朝臣

太神宮の歌合に

神代よりいくとせふりぬ鈴鹿川やそ瀬の浪の秋の夜の月
1389

達智門院

寄月神祇と云ふ事を

曇なき君が八千世を照すらし神路のやまに出づる月かげ
1390

冷泉

花園院御位おりさせ給はむとての頃、内侍所へ行幸ありし御供に參りて詠める

あはれとや神のかゞみも照し見る今はと思ふ君が名殘を
1391

大江廣秀

題志らず

曇なき八咫の鏡やいは戸あけし天てる神の御影なるらむ
1392

正三位成國

古に神の御かげのうつりしや今も曇らぬかゞみなるらむ
1393

源智行

天地のひらけしよりや千早ぶる神の御國と云ひ始めけむ
1394

讀人志らず

天地の昔を問へばあし原やなほそのかみの代々ぞ久しき
1395

荒木田延季

神祇の歌の中に

神もさぞあかず見るらむ櫻散るしめの宮守あさ清めすな
1396

津守國夏

散る時や榊の枝にかゝるらむ神のいがきの花のしら木綿
1397

賀茂脩久

榊葉に咲きそふはなの白木綿は神も心にかけて見るらむ
1398

前大納言爲家

法印昭清すゝめ侍りける石清水の社の三十首の歌に、寄水祝

神がきやかげものどかに石清水すまむ千年の末ぞ久しき
1399

伏見院御製

三十首の歌めしけるついでに、社頭祝を

石清水流れの末をうけつぎて絶えずぞすまむ萬代までに
1400

前中納言有光

神祇

のぼるべき跡をぞ厭ふをとこ山うづもれ果つる嶺の白雪
1401

龜山院御製

弘安元年百首の歌めしけるついでに

いは清水神の心にまかせてや我が行く末を定め置きけむ
1402

按察使顯朝

題志らず

跡垂れて幾世經ぬらむ箱崎の志るしの松も神さびにけり
1403

惟宗光吉朝臣

石清水神代の月やにごりなき人のこゝろの底にすむらむ
1404

關白前左大臣

貞和二年百首の歌奉りける時

長閑なる春のまつりの花しづめ風をさまれと猶祈るらし
1405

後醍醐院御製

元弘三年、立后の屏風に石清水臨時祭

こゝのへの櫻かざして今日はまた神につかふる雲の上人
1406

前中納言親光

題志らず

三代の跡に流れをうけて石清水すめるを時と猶ぞ仕ふる
1407

法印幸清

石清水古き流れの跡はあれど我が身一つの瀬に淀むかな
1408

賀茂遠久

天のした御代をさまれと守るらし雲を分けてし神の誓に
1409

賀茂經久

千早ぶる賀茂の瑞垣君が世を久しかれとぞ祈り初めてし
1410

法印源深

後の世も此の世も神にまかするや愚なる身の頼なるらむ
1411

從三位教久

年經ぬる我が神山の榊葉に幾重みしめを引きかさねけむ
1412

平行氏

寄月神祇を

瑞垣の久しき世よりすむ月の神さびまさる影やそふらむ
1413

源和義

等持院贈左大臣詠ませ侍りける賀茂の社の七首の歌に、神祇

いかばかり神も嬉しとみたらしや底まですめる君が心を
1414

從三位氏久

社頭祝

萬代と君を祈りてふる袖はかげみたらしに神やうくらむ
1415

藤原長能

神祇を

三笠山麓をめぐる佐保川のさして祈りし身をたのむかな
1416

中臣祐殖

春日野の松も我身も老いに鳬二葉よりこそ仕へそめしか
1417

前大納言經顯

貞和の百首の歌奉りし時

ことわりのたがはぬ道を春日山神の心と聞くもたのもし
1418

三條入道前内大臣

春日の社に籠りて大將の事祈り申すとて思ひつゞけ侍りける

三笠山さすがにいかゞ捨てはてむ重なる家の藤の末葉を

此の後程なく右大將になりて侍りけるとなむ。

1419

祝部成繁

題志らず

くもりなくてらす日吉の神垣に又ひかりそふ秋の夜の月
1420

法印成繁

跡たるゝ神世を問へば大比叡や小比叡の杉にかゝる白雲
1421

祝部行親

あひにあひて守る日吉の數々に七つの道の國さかゆらし
1422

法印延全

神代よりかはらぬ松も年ふりてみゆき久しき志賀の唐崎
1423

祝部成豐

おのづから仕へぬひまも心こそ猶をこたらぬ七の神がき
1424

前大納言爲世

神祇の歌の中に

たのもしな祈るにつけて曇なき日吉のかげに道ぞ迷はぬ
1425

讀人志らず

神垣や塵にまじはる光こそあまねく照すちかひなりけり
1426

藤原雅朝朝臣

世のなかしづかならず侍りし頃熊野へ詠みて奉りける

さりともとねても覺めても頼む哉愚なる身を神に任せて
1427

僧正良瑜

代々の跡にかはらず三山の檢校に補し侍る事を思ひて

仕へつゝ思ひしよりも三熊野のかみの惠ぞ身に餘りぬる
1428

祝部行氏

神祇

神垣に御代治まれと祈るこそ君に仕ふるまことなりけれ
1429

讀人志らず

白山にまうでゝ詠み侍りける

千早ぶる雪の白山わきて猶ふかきたのみは神ぞ知るらむ
1430

後西園寺入道前太政大臣

嘉元の百首の歌奉りける時、神祇を

和歌の浦に玉拾ふべきみことのり道を守らば神もうくらむ
1431

津守國道

前大納言爲世玉津島の社にて歌合し侍りける時

例なき光を添ふるたまつ島代々にもこえて神やうくらむ
1432

皇太后宮大夫俊成

承安二年廣田の社の歌合を判じける奥に書きつけ侍りける

敷島や道は違へずと思へども人こそわかね神は知るらむ
1433

伏見院御製

題志らず

神や知る世の爲とてぞ身をも思ふ身の爲にして世をば祈らず
1434

前大納言爲家

道のべの松の下葉に引く志めはみわ据ゑ祭る印なるらし
1435

從三位常昌

君が代をいのる心の誠をばいつはりなしと神はうくらむ
1436

内大臣

社頭祝

明らけきあら人神に驗あらば曇らぬ御代をさぞ守るらむ
1437

三條入道前太政大臣

題志らず

哀とやあら人神のみづはさす老木の松のとし經ぬる身を
1438

源直氏

權大納言義詮北野の社に奉りける歌に、社頭祝

我が君の千世の爲とや宮居して一夜の松も年を經ぬらむ
1439

伊勢大輔

住吉にまうでゝ詠める

ながらへむ世にもわすれじ住吉の岸に浪たつ松の秋かぜ
1440

權大納言隆季

後白河院の御時、八十島の祭に、住吉にまかりて詠み侍りける

住の江に八十島かけてくる人や松を常磐の友と見るらむ
1441

前中納言定家

西行法師すゝめ侍りける百首の歌に

憂きことも慰む道のしるべにや世を住吉と天くだりけむ
1442

平政村朝臣

題志らず

住吉の松にまじれる玉垣のあけもみどりも年は經にけり
1443

前大納言爲家

西園寺入道前太政大臣住居の社に、三十首の歌詠みて奉りけるに

いく世にか神の宮居のなりぬらむふりて久しき住吉の松
1444

前中納言爲相

神祇

あらましの心のうちの手向ぐさまつと知らずや住吉の神
1445

法印雲禪

敷島のみちをば道とまもらなむ世に住吉の神ならばかみ
1446

津守國平

住吉の社の歌合、社頭祝

君が爲玉手のきしにやはらぐる光の末は千世もくもらじ
1447

小辨

神樂を

吹きたつる庭火の前の笛の音を心すみてや神も聞くらむ
1448

中務

小夜更けて霜は置くとも山人の折れる榊は色もかはらじ
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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