新拾遺和歌集 (Shin Shūi wakashū) — 新拾遺和歌集卷第五 秋歌下 作者複数 (Various) 1364 Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 Various 作者複数 Kamakura-Muromachi-Azuchi-Momoyama Period 中世 14th century 14世紀 Poetry 韻文 Japanese 日本語 Text 本文 1364 しんしゅういわかしゅう Shin Shūi wakashū 新拾遺和歌集 しんしゅういわかしゅう Various 作者複数 さくしゃふくすう
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新拾遺和歌集 › 新拾遺和歌集卷第五 秋歌下 Furigana ふりがな Vertical 縦書き
新拾遺和歌集 Shin Shūi wakashū
作者複数 Various
新拾遺和歌集卷第五 秋歌下
413
後嵯峨院御製
題志らず
神代より幾よろづ代になりぬらむ思へば久し秋の夜の月
414
俊惠法師
澄み昇る心やそらに立ち添ひて今夜の月の影となるらむ
415
爲道朝臣
伏見院に月の十五首の歌奉りける時
吹き拂ふ嵐のまゝに顯はれて木の間さだめぬ月の影かな
416
伏見院御製
卅首の歌召しけるついでに
秋風の閨すさまじく吹くなべに更けて身にしむ床の月影
417
前中納言定家
建仁二年、石清水の歌合に、月照海邊
荒れにけり潮汲む海士の苫びさし雫も袖も月やどるまで
418
太宰大貳重家
秋の歌の中に
諸共に波の上にもやどるかな月も明石やとまりなるらむ
419
前參議家親
見慣ても五十ぢになりぬ夜はの月分きて忍ばむ秋は無けれど
420
源頼康
入道二品親王覺譽の家の五十首の歌に
見るまゝに思ひも晴るゝ月影や心を照すかゞみなるらむ
421
前大納言爲家
家の十五首の歌に、月
天の原光さし添ふかさゝぎのかゞみと見ゆる秋の夜の月
422
中務卿宗尊親王
題志らず
更け行けば月影寒しかさゝぎの夜渡る橋に霜や冴ゆらむ
423
前中納言實任
文保三年百首の歌奉りける時
いにしへの眞澄の鏡世々かけて神路の山に照すつきかげ
424
中納言爲藤
正和五年九月十三夜、後醍醐院みこの宮と申しける時五首の歌講ぜられけるに、月前松風
足曳の山の端たかく澄む月に松吹く風のおとぞ更け行く
425
鎌倉右大臣
秋の歌の中に
天の原ふりさけ見れば月清み秋の夜いたく更けにける哉
426
藤原爲業
難波潟芦間を分けて漕ぐ舟のおとさへ澄める秋の夜の月
427
從二位家隆
春日野に朝居る雲の跡もなく暮るれば澄める秋の夜の月
428
前參議定宗
入道二品親王覺譽の家の五十首の歌に
名に高き秋のなかばの中空に雲もおよばず澄める月かな
429
二條太皇太后宮攝津
水上秋月と云ふ事を
池水に映れる影ものどかにて秋の夜すがらすめる月かな
430
前大納言爲氏
建長元年九月十三夜鳥羽殿にて水郷月といへる事を仕うまつりける
高瀬さす淀のわたりの深き夜にかはかぜ寒き秋の月かげ
431
源有長朝臣
題志らず
白妙の富士の高嶺に月冴えてこほりを敷けるうき島が原
432
後京極攝政前太政大臣
建仁三年、仙洞の十首の歌合に、河月似氷といふ事を
是もまた神代は聞かず龍田川月のこほりに水くゝるとは
433
法印淨辨
題志らず
杉立てる門田の面の秋風に月かげさむき三輪のやまもと
434
安嘉門院四條
露ながら洩りくる月を片しきて鳥羽田の庵に幾夜寐ぬ覽
435
法眼行經
入道二品親王覺譽の家の五十首の歌に
いかばかり光添ふらむ月影の夜な/\磨く露のしらたま
436
道濟
題志らず
誰れ住みて哀知るらむ常磐山おくの岩屋のありあけの月
437
清原深養父
草ふかく寂しからむと住む宿の有明の月に誰を待たまし
438
眞昭法師
前大納言頼經の家にて月の十首の歌詠み侍りけるに
月影のさびしくも有るか高圓の尾上の宮のありあけの空
439
清輔朝臣
法性寺入道前關白太政大臣月の歌あまた人々に詠ませけるに詠める
終夜我れを誘ひて月かげの果はゆくへも知らで入りぬる
440
讀人志らず
海邊月を
とまるべき方をも志らず漕ぎ出でゝ月を限の秋のふな人
441
前大納言爲世
難波に月見に罷りて五首の歌詠み侍りけるに、海上曉月といふ事を
浪の上に映れる月は在りながら伊駒の山の峯ぞ明け行く
442
中納言爲藤
難波潟いり潮近くかたぶきて月より寄する沖つしらなみ
443
法皇御製
題志らず
秋風の夜床を寒み寢ねがてにひとりし在れば月傾ぶきぬ
444
後鳥羽院御製
春日の社の歌合に曉月と云ふ事を詠ませ給うける
足引の山の木枯吹くからにくもる時なきありあけのつき
445
寂蓮法師
題志らず
野邊は皆思ひしよりもうら枯れて雲間にほそき有明の月
446
大藏卿有家
建長三年、内裏の秋の十五首の歌合に、秋雨
日ぐらしの鳴く夕暮の浮雲に村雨そゝぐもりのしたぐさ
447
正三位知家
建保四年、内裏の歌合に
蜩の鳴く山かげは暮れぬらむ夕日かゝれる嶺のしらくも
448
後鳥羽院御製
秋の御歌の中に
秋風や潮瀬の波に立ちぬらむ芦の葉そよぐゆふぐれの空
449
後京極攝政前太政大臣
正治の百首の歌奉りける時
亂れ芦の穗むけの風の片よりに秋をぞ寄する眞野の浦浪
450
御製
鹿を
男鹿鳴く岡邊のわさ田穗に出でゝ忍びもあへず妻や戀ふ覽
451
後嵯峨院御製
建長二年鳥羽殿にて野外鹿と云ふ事を詠ませ給うける
秋の野の尾花が本に鳴く鹿も今は穗に出でゝ妻を戀ふらし
452
法印定爲
嘉元の内裏の卅首の歌に
結び置く野原の露の初尾花我がたまくらと鹿や鳴くらむ
453
左兵衛督直義
秋の歌の中に
月影の入る野の薄打ちなびきあかつき露に鹿ぞ鳴くなる
454
前大納言經繼
後醍醐院いまだみこの宮と申しける時、五首の歌講ぜられけるに、月前聞鹿
高砂の尾上の月に鳴く鹿の聲澄みのぼるありあけのそら
455
權大納言義詮
百首の歌奉りし時、鹿
妻戀の涙や落ちて小男鹿の朝立つ小野のつゆと置くらむ
456
西行法師
同じ心を
かねてより心ぞいとゞ澄みのぼる月待つ峯の小男鹿の聲
457
中納言爲藤
元亨三年九月十三夜後宇多院に三首の歌講ぜられけるに、月前鹿
小倉山秋は今宵と小男鹿の妻とふみねに澄めるつきかげ
458
前大納言爲氏
建長二年八月十五夜鳥羽殿にて曉鹿といへる事を仕うまつりける
つれなさのためしは知るや小男鹿の妻とふ山の有明の空
459
常磐井入道前太政大臣
弘長元年百首の歌奉りける時、鹿
男鹿鳴く外山のすその柞原いろに出でゝや妻を戀ふらむ
460
左近大將師良
題志らず
鹿の音ぞ空に聞ゆる夕霧のへだつる方やをのへなるらむ
461
權中納言通俊
承保二年九月、殿上の歌合に、朝霧
山里は霧立ち籠めて人も無し朝立つ鹿のこゑばかりして
462
源家清
題志らず
さらでだに寐覺悲しき秋風に夜しもなどか鹿の鳴くらむ
463
西園寺内大臣
山里の鹿の鳴く音ぞ長き夜の寐覺の友と聞きなれにける
464
小野小町
妻戀ふる小男鹿の音に小夜更て身の類をも有りと知ぬる
465
入道二品親王尊圓
高砂の松を友ともなぐさまでなほ妻ごひに鹿ぞなくなる
466
増基法師
高砂や松の木ずゑに吹く風の身にしむ時ぞ鹿もなきける
467
康資王母
四條太皇太后宮の歌合に、鹿を
色に出でゝ秋しも鹿のなくなるは花の折とや妻は頼めし
468
藤原雅家朝臣
野鹿と云へる事を
名にめでゝ妻や戀ふらむ女郎女 多かる野邊の小男鹿の聲
469
從二位家隆
小男鹿の夜はの草ぶし明けぬれど歸る山なき武藏野の原
470
清輔朝臣
前參議經盛の家の歌合に
鹿の音の吹き來る方に聞ゆるは嵐や己がたちどなるらむ
471
從三位爲理
二品法親王覺助の家の五十首の歌に、夜鹿
夜を寒み妻や戀ふらむあしびきの山下風に鹿ぞなくなる
472
前大納言爲氏
弘安元年百首の歌奉りける時
夕日さす田のもの稻葉打ち靡きやまもと遠く秋風ぞふく
473
花園院御製
百首の御歌の中に
夕日さす田のもの稻葉末遠みなびきも果てずよわる秋風
474
中園入道前太政大臣
百首の歌奉りし時、秋田
白鳥の鳥羽田の穗波ふきたてゝもる庵さむき秋のやま風
475
權中納言公雄
文保三年百首の歌奉りける時
明け渡る山もと遠く霧晴れて田のもあらはに秋風ぞふく
476
上西門院兵衛
久安の百首の歌に
きり%\す壁のなかにぞ聲すなる蓬が杣に風やさむけき
477
大藏卿隆博
永仁元年八月十五夜後宇多院に十首の歌召しけるに、秋虫を
秋を經てなるゝ枕の蟋蟀知るや五十ぢのなみだ添ふとは
478
順徳院御製
題志らず
淺茅生や床は草葉の蟋蟀なく音もかるゝ野べのはつしも
479
前參議爲實
虫の音は淺茅が露にうらがれて夜さむに殘る有明のつき
480
前大納言爲世
聞けば早うらがれにけり淺茅原虫の音までも霜や置く覽
481
後光明照院前關白左大臣
文保の百首の歌奉りける時
秋深き淺茅が庭の霜の上に枯れても虫のこゑぞのこれる
482
中納言爲藤
夜を寒み枯れ行く小野の草蔭によわりも果てぬ虫の聲哉
483
讀人志らず
月前虫といふ事を詠める
長月の在明のかげに聞ゆなり夜を經てよわる松虫のこゑ
484
彈正尹邦省親王
家の五十首の歌に
分きてなほ哀に堪へぬ時ぞとや夕は虫のねにも立つらむ
485
花山院御製
寛和元年八月十日殿上に出でさせ給うて歌合せさせ給うけるに
秋來れば虫もや物を思ふらむこゑも惜まずなき明すかな
486
信明朝臣
題志らず
待つ人にいかに告げまし雲の上に仄かに消ゆる初雁の聲
487
延喜御製
秋風もふき立ちにけり今よりは來る雁がねの音をこそ待て
488
中納言家持
霧分けて雁は來にけり隙もなく時雨は今や野邊を染む覽
489
後九條前内大臣
雁なきて寒きあしたや山城のいは田の小野も色變るらむ
490
藤原雅冬朝臣
百首の歌奉りし時、雁
今よりの秋の寐覺よいかならむ初雁がねもなきて來に鳬
491
僧正行意
名所の百首の歌奉りける時
水莖の岡の葛葉を吹く風にころも雁がねさむくなくなり
492
伏見院御製
題志らず
雁がねは雲居がくれになきて來ぬ萩の下葉のつゆ寒き頃
493
相摸
故里を雲居になしてかりねが のなか空にのみなき渡る哉
494
寂蓮法師
後鳥羽院に五十首の歌奉りける時
なき渡る雲居の雁もこゝろ知れこぬ人たのむ秋風のころ
495
紀友則
題志らず
初雁のなき渡りぬる雲間より名殘おほくて明くる月かげ
496
坂上是則
幾千里ある道なれや秋ごとに雲居を旅とかりのなくらむ
497
平政村朝臣
つらかりし春の別は忘られて哀とぞ聞くはつかりのこゑ
498
平義政
天の河とわたる雁やたなばたの別れしなかにかよふ玉章
499
西行法師
入夜聞雁といへる事を詠める
鳥羽に書く玉章のこゝちして雁なき渡るゆふやみのそら
500
從三位親子
伏見院の三十首の歌に
晴やらぬ朝げの空の霧の内につらこそ見えね渡る雁がね
501
御製
百首の歌召されし時、雁
隔つとは見えで間遠く聞ゆなり霧の上行く初かりのこゑ
502
後西園寺入道前太政大臣
性助法親王の家の五十首の歌に
夕されば雲に亂れて飛ぶかりのゆくへ定めず秋風ぞふく
503
躬恒
題志らず
秋風に山飛び越えて來る雁の羽むけに消ゆる嶺のしら雲
504
前參議實名
百首の歌奉りし時、雁
小山田のをしね雁がねほにあげてなく聲聞けば秋更けに鳬
505
從三位爲信
秋田を詠める
雁なきて夜寒になれば初霜のおくての稻葉色づきにけり
506
中納言爲藤
正和五年九月十三夜、後醍醐院みこの宮と申しける時五首の歌に、月前擣衣
秋深き月の夜さむにをりはへて霜よりさきと擣つ衣かな
507
權中納言具行
里人の砧のおともいそぐまで月や夜さむの霜と見ゆらむ
508
後醍醐院御製
元弘三年九月十三夜、三首の歌召しけるついでに同じ心を
聞き侘びぬ葉月長月長き夜の月の夜さむにころも擣つ聲
509
中園入道前太政大臣
貞和二年百首の歌奉りける時
長月の月も夜さむの寢ねがてに起き居て誰れか衣擣つ覽
510
前大納言爲定
元弘三年九月十三夜、内裏の三首の歌に、月前擣衣といふ事を
あくがれて月見る程の心にも夜寒わすれず擣つころも哉
511
從二位行忠
入道二品親王覺譽の家の五十首の歌に
夜もすがらあきの心をなぐさめて月に擣つなり麻のさ衣
512
權少僧都經賢
鳥の音の聞ゆるまでに里人の寢ぬ夜もしるく擣つ衣かな
513
正三位經朝
寳治二年百首の歌奉りける時、聞擣衣といふ事を
誰が爲に麻のさ衣うち侘びて寐られぬよはを重ね來ぬ覽
514
芬陀利花院前關白内大臣
文保の百首の歌奉りける時
津の國の芦ふくこやの夜を寒み隙こそ無けれ衣擣つこゑ
515
後三條前内大臣
貞和二年百首の歌奉りけるに
小夜衣誰が寢覺より擣ちそめて千里の夢をおどろかす覽
516
前參議爲秀
題志らず
立ち籠むる霧の籬の夕月夜うつれば見ゆる露のしたぐさ
517
前大納言爲家
寳治の百首の歌奉りける時、重陽宴を
諸人の今日九重に匂ふてふ菊にみがけるつゆのことの葉
518
關白前左大臣
百首の歌奉りし時、菊
長月の豐のあかりは名のみして今は昔にきくのさかづき
519
堀河中宮
黒戸の前に菊を植ゑられたりけるを
咲きぬればよそにこそ見れ菊の花天つ雲居の星に紛へて
520
貫之
延喜十八年、女四のみこの屏風に
何れをか花とは分かむ長日の有明の月にまがふしらぎく
521
大炊御門右大臣
崇徳院の御時菊送多秋と云ふ事を仕うまつりける
幾返り千とせの秋に逢ひぬらむ色もかはらぬ白菊のはな
522
法眼行濟
入道二品親王性助の家に菊を植ゑさせける時詠める
移し植ゑば千代まで匂へ菊の花君が老いせぬ秋を重ねて
523
土御門右大臣
長暦二年九月、歌合に
匂こそ紛れざりけれ初霜のあしたの原のしらぎくのはな
524
讀人志らず
寛平の御時菊合に紫野の菊を詠める
名にし負へば花さへ匂ふ紫の一もと菊に置けるはつしも
525
人丸
題志らず
天雲のよそに雁がね聞きしよりはだれ霜降り寒し此夜は
526
故里の初もみぢ葉を手折もて今日ぞ我がくる見ぬ人の爲
527
讀人志らず
時待ちて送る時雨のあまそゝぎ淺香の山は移ろひぬらむ
528
洞院攝政左大臣
家の百首の歌に
初時雨まだ降らなくに片岡のはじの立枝は色づきにけり
529
從二位爲子
嘉元の百首の歌奉りける時
秋山はしぐれぬさきの下紅葉かつ%\露や染め始むらむ
530
大藏卿長綱
題志らず
よそに見し雲やしぐれて染めつらむ紅葉して鳬葛城の山
531
崇徳院御製
百首の歌召しける時詠ませ給うける
いり日さす豐旗雲に分きかねつ高間の山の峯のもみぢ葉
532
二品法親王覺助
弘安元年百首の歌奉りける時
夕日影さすや高嶺のもみぢ葉は空も千しほの色ぞ移ろふ
533
前關白左大臣近衛
百首の歌奉りし時、紅葉
花ならば移ろふ色や惜しからむ千入を急ぐ秋のもみぢ葉
534
彈正尹邦省親王
龜山殿の千首の歌に、同じ心を
いつの間に千入染む覽昨日よりしぐると見えし峯の紅葉は
535
前大納言爲家
題志らず
敷島や大和にはあらぬ紅の色の千しほに染むるもみぢ葉
536
權僧正果守
足引の山の紅葉やぬしなくて晒せる秋のにしきなるらむ
537
正三位成國
いつの間に賤機山の初時雨そめて紅葉のにしき織るらむ
538
藤原清正
しぐるれば色まさりけり奥山の紅葉の錦濡れば濡れなむ
539
人丸
紅のやしほの雨はふり來らし龍田の山のいろづく見れば
540
清輔朝臣
小倉山木々の紅葉のくれなゐは峯の嵐のおろすなりけり
541
大納言公實
承保三年大井河に行幸の日詠める
水の綾を唐紅に織りかけて今日の行幸に逢へるもみぢ葉
542
大納言齋信
小一條院大井河におはしましける時、紅葉浮水と云ふ事を
秋深くなり行くときは大井河なみの花さへ紅葉しにけり
543
大中臣頼基朝臣
紅葉を
水庭に影のみ見ゆるもみぢ葉は秋の形見に波やをるらむ
544
萬秋門院
秋の歌の中に
山姫の心のまゝに染めなさば紅葉にのこる松やなからむ
545
信生法師
高嶺より紅葉ふきおろす山風やふもとの松の時雨なる覽
546
今出川院近衛
變らじな常磐の杜の村時雨よそのもみぢに秋は見ゆとも
547
僧正良瑜
兼ねてより移ろふ秋の色もなほしぐれて増る神南備の森
548
中納言定頼
紅葉送秋といふ事を
降り積る紅葉の色を見る時ぞ暮れ行く秋は先知られける
549
前大納言公任
秋の暮つ方白河に罷りて詠み侍りける
都出でゝ何に來つらむ山里のもみぢ葉見れば秋暮にけり
550
讀人志らず
陽成院の御時、歌合に
年毎にとまらぬ秋と知りながら惜む心のこりずも有る哉
551
刑部卿範兼
殘秋の心を
明日も猶暮れ行く秋は有る物ををしむ心を今日盡しつる
552
内大臣
百首の歌奉りし時、九月盡
暮れ果つる秋の形見と明日や見む袖に涙のつゆを殘して
553
平經正朝臣
福原に侍りける頃人々長月の晦日の日わたに罷りて海邊九月盡の心を詠み侍りけるに
いり日さす方を詠めてわたの原波路の秋を送る今日かな
554
大納言通具
千五百番歌合に
弱り行く虫の音にさへ秋暮れて月も有明になりにける哉
555
後醍醐院御製
いまだみこの宮と申しける時十首の歌召しけるついでに暮秋霜といふ事を詠ませ給うける
行く秋の末野の草はうら枯れて霜に殘れるありあけの月
556
從二位家隆
題志らず
有明の仄かに見えし月だにも送らぬ空にかへるあきかな
2 [2] Kanji in place of A is not available in the JIS code table. The kanji is Morohashi's kanji number 21117.