新拾遺和歌集

Shin Shūi wakashū

作者複数 Various

新拾遺和歌集卷第七
賀歌

677

元正天皇御製

左大臣の佐保の家にみゆきせさせ給うける時

旗ずゝき尾花さか葺き黒木もてつくれる宿は萬代までに
678

法成寺入道前攝政太政大臣

長元四年九月上東門院住吉の社に詣でさせ給ひける時人々歌詠み侍りけるに

君が代は長柄の橋のはじめより神さびにける住吉のまつ
679

西園寺入道前太政大臣

建久二年八十島の祭に住吉に罷りて詠み侍りける

君が代は八十島かくる波の音に風靜かなり住のえのまつ
680

津守國助

弘安八年住江に御幸ありて行旅述懷といふ事を詠ませられ侍りけるに仕うまつりける

神代より相生の松もけふしこそありて千年のかひも知るらめ
681

權大納言公明

松延齡友といふことをよみ侍りける

常磐なる玉松が枝や幾千代も君がよはひに蔭をならべむ
682

等持院贈左大臣

暦應二年六月、仙洞にて、松影映池と云ふ事を

風通ふ松をうつして池水のなみも千歳のかずによるらし
683

爲道朝臣

弘安八年三月從一位貞子に九十の賀給はせける時詠み侍りける

算へ知る齡を君がためしにて千代の始の春にも有るかな
684

後嵯峨院大納言典侍

龜山院の御時龜山殿に行幸ありて花契遐年と云ふ事を講ぜられけるに

咲く花も今日を行幸のはじめにて猶行く末も萬世や經む
685

中院前内大臣

萬代の君がかざしにをりを得てひかり添へたる山櫻かな
686

法橋顯昭

二品覺性法親王に八重櫻に添へて遣しける

君が經む千歳の秋を重ぬべきためしと見ゆる八重櫻かな
687

二品法親王覺性

返し

千世經べき例と聞けば八重櫻重ねて最ど飽かずも有る哉
688

前中納言定家

元久三年正月高陽院殿にて、庭花春久と云ふ事を

新玉の年の千とせの春の色をかねてみかきの花に見る哉
689

今出川入道前右大臣

元徳二年中殿にて花契萬春と云ふ事を講ぜられしに

君が爲久しかるべき春に逢ひて花もかはらず萬代や經む
690

前參議爲秀

文和五年二月松有佳色と云ふことを仕うまつりける

君のみや千歳の春の花の色に十返り迄になれむとすらむ
691

照光院前關白右大臣

康永三年後の二月仙洞に松遐年友と云ふ事を講ぜられけるに

千歳とも限らぬ君が友なればまつも花咲く春やかさねむ
692

入道前内大臣

色變へぬ藐姑射の山の峯の松君をぞ千世の友と見るらむ
693

前大納言經顯

ひさに經む友とや君に契るらむ十返りの松の花の咲く迄
694

前大納言公蔭

松が枝も八百萬代の色に添ふ千とせも飽かぬ我が君の爲
695

前大納言忠季

行く末を思ふも久し姫小松いまより君が千世をちぎりて
696

前參議實名

貞治二年二月春松久緑と云ふ事を講ぜられけるに

君が經む千歳の春の行く末も松のみどりの色に見ゆらし
697

藤原雅家朝臣

幾千世ぞみどりを添へて相生の松と君との行く末のはる
698

花園院御製

卅首の歌召されしついでに

色變へぬ尾上の松に吹く風は萬代呼ばふ聲にぞ有りける
699

左兵衛督基氏

題志らず

鶴が岡木高き松を吹く風の雲居にひゞくよろづ代のこゑ
700

前大納言俊光

文保の千首の歌奉りし時

君が住む藐姑射の山の玉椿八千世さかえむ末ぞひさしき
701

御製

百首の歌召されし時、祝言

世を治め民を憐むまこと有らば天つ日嗣のすゑも限らじ
702

等持院贈左大臣

四方の海七つの道も我が君の御代ぞ治まる始めなりける
703

後醍醐院御製

正中の百首の歌召されける次でに

四方の海治まりぬらし我が國の大和島根に波しづかなり
704

皇太后宮大夫俊成

建仁三年十一月和歌所にて九十の賀給はりける時仕うまつりける

百歳に近づく人ぞ多からむよろづ代經べき君が御代には
705

正三位經家

和歌の浦に寄る年波を算へ知る御代ぞ嬉しき老らくの爲
706

後鳥羽院宮内卿

同じき時給はせける法眼の袈裟のおき物にすべき歌召されけるに

存らへて今朝や嬉しき老の浪八千代をかけて君に仕へよ
707

建禮門院右京大夫

此の歌を賀せられむとて召されて參りて終夜見侍りてなべてならぬ道の面目いみじく覺えける餘りにつとめて申し遣はしける

君ぞ猶今日よりも又算ふべきこゝの返りの十の行くすゑ
708

皇太后宮大夫俊成

返し

龜山の九返りの千とせをも君が御代にぞ添へゆづるべき
709

式部卿敦賢親王

承保三年大井川に行幸の日詠める

大井川みかさや増る龜山の千世のかげ見る行幸と思へば
710

衣笠前内大臣

建保六年中殿にて池月久明と云ふ事を講ぜられけるに

君が世はのどかに澄める池水に千歳をちぎる秋の月かげ
711

從三位行能

影清き池のかゞみに照る月も曇る時なくよろづ代や經む
712

信實朝臣

明らけき御影になるゝ池水を月にぞみがくよろづ代の秋
713

前中納言定家

建保二年九月、月契千秋と云ふ事を

君が世の月と秋とのあり數におくや草木の四方のしら露
714

權大納言行成

東三條院石山に詣でゝおはしましけるに秋の盡くる日人々浮橋といふ所に罷りて歸りがてにして歌詠み侍りけるに

君が代に千度逢ふべき秋なれどけふの暮をば惜みかねつも
715

前大納言實教

後宇多院紅葉の頃昭慶門院に御幸ありて人々枝に歌をつくべき由仰せられけるに詠める

雨露の惠に染むるもみぢ葉の千しほは君が千代の數かも
716

後宇多院宰相典侍

元弘三年、立后の屏風に

咲き初むる眞垣の菊の露ながら千世を重ねむ秋ぞ久しき
717

三條内大臣

崇徳院位におはしましける時法金剛院に行幸侍りて菊契千秋と云ふ事を詠ませ給ひけるに

君が世の數に重なる物ならば菊は幾重もかぎらざらまし
718

前關白左大臣九條

百首の歌奉りし時、庭竹

紫の庭にみどりの色添へて行くすゑ遠き千代のくれたけ
719

後照念院關白太政大臣

正和五年内裏造營の比竹臺の呉竹を尋ねられけるを奉るとて結び付けゝる

世々を經し御垣の竹の種なれば末も千歳の色ぞ添ふべき
720

内大臣

延文四年庭上鶴と云ふ事をよませられけるに

治れる雲居の庭にきこゆなり心解けたるたづのもろごゑ
721

辨乳母

人の子生ませ侍りけるにうぶぎぬ遣すとて

鶴の子の巣立ち始むる毛衣は千世に八千世を重ねてぞ着む
722

源師光

祝の心を

蓆田に千歳をかねて住む鶴もきみが齡に志かじとぞ思ふ
723

權僧正永縁

十二月晦日に藤原基俊の子法師と云ふが許にもちひ鏡遣すとて云ひ遣しける

としを經て司位を眞澄鏡千代のかげをばきみぞ見るべき
724

基俊

返し

萬世に萬世添へて眞澄鏡きみがみかげにならべてぞ見む
725

權大納言義詮

百首の歌奉りし時、祝言

我が君は人をかゞみと磨くなり心くもらで千世も仕へむ
726

法印定[3]B3

題志らず

和歌の浦に二度玉を磨くこそあきらけき世の印なりけれ
727

入道二品親王法守

貞和の百首の歌奉りし時

天地と共に久しき敷島のみちある御代に逢ふがうれしさ
728

津守國冬

嘉元の百首の歌奉りける時

我が君は斧の柄朽ちし年を經て民の七世の末に逢ふまで
729

源有長朝臣

洞院攝政の家の百首の歌に、祝

君が世は豐芦原の秋つすに滿ち干る潮の盡きじとぞ思ふ
730

藤原經衡

後三條院の御時、大甞會の備中國の歌

はるかにぞ今行く末を思ふべきながをの村のながき例に
731

前中納言匡房

堀川院の御時、大甞會の近江國の歌

みかみ山岩根に生ふる榊葉の葉がへもせずて萬代や經む
732

清輔朝臣

高倉院の御時、大甞會の備中國の歌

曇なき玉田の野べの玉日影かざすや豐のあかりなるらむ>
733

同じき御屏風の歌

遙々とくもりなき世をうたふなり月出が崎の海士の釣舟
734

權中納言時光

今上の御時、大甞會の御屏風に

時を得てちたの村人幾千度取れども盡きぬ早苗なるらむ
735

前大納言爲定

文保の百首の歌奉りける時

敷島の道も今こそ榮えけれよろづ世捨てぬ君がめぐみに
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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