新拾遺和歌集

Shin Shūi wakashū

作者複数 Various

新拾遺和歌集卷第八
離別歌

736

衣笠前内大臣

遠きさかひに赴きける人に

立ち歸り何と名殘ををしむらむ心は人にわかれやはする
737

中務卿宗尊親王

藤原光俊朝書吾妻よりのぼりける時

三年迄なれしさへこそうかりけれせめて別の惜しき餘に
738

藤原隆信朝臣

吾妻へ行く人に申し遣はしける

東路の野原篠原分け行かば戀ひむなみだを思ひおこせよ
739

藤原仲實朝臣

堀河院の御時、百首の歌に、別を

とまるべき道にも非ぬ別路は慕ふこゝろや關となるらむ
740

京極前關白太政大臣家肥後

別れ路はせきも留めぬ涙かな行き逢ふ坂の名をば頼めど
741

大納言成通

題志らず

暮るゝ間も定なき世と知り乍歸來む日を待つぞはかなき
742

聖武天皇御製

大原櫻井、遠江の任に侍りける時、其の初雁のたよりにもと奏し侍りける御返しに

おほの浦のそのなか濱に寄る波のゆたにぞ君を思ふ此頃
743

中納言家持

越中守にて侍りけるが少納言になりて上り侍りける時國の司餞し待りけるに詠める

いはせ野の秋萩しのぎ駒なべて小鷹狩をもせでや別れむ
744

權中納言兼輔

藤原治方遠江になりて下り侍りけるに餞し侍らむとて待ち侍りけれど詣でこざりければ詠みて遣しける

來ぬ人を待つ秋風の寐覺には我れさへあやな旅心地する
745

成尋法師母

成尋法師唐土に渡りける時詠み侍りける

唐土へ行く人よりもとゞまりてからき思は我れぞ勝れる
746

權僧正道我

遠き國へ罷る人秋は必歸るべき由申しければ

限ある命なりせば廻りあはむ秋ともせめて契り置かまし
747

前大納言爲世

人々を誘ひて難波に月見に罷りて曉上りけるに前中納言實任など潮湯浴みて彼の所に侍りけるが名殘を慕ひける時頓阿、波の上の月を殘して難波江の芦分小舟漕ぎや別れむと申しければ返しに

漕ぎ出づる芦分小舟などか又名殘をとめて障りだにせぬ
748

前大納言實教

波の上の月殘らずば難波江の芦わけ小舟なほやさはらむ
749

大僧正行尊

大峰のふきこしと云ふ宿にとまりあひたりける山伏先だちて立ちければ

又いつと逢見む事を定めてか露のうき身を置きて行く覽
750

土御門院御製

與君後會知何日といふ事を

頼め置く明日の命も知らなくにはかなき物は契なりけり
751

前大僧正實伊

別の心を

頼まずよこれはある世の別とも又逢ふまでの命知らねば
752

前大納言爲家

目に見えぬ心ばかりは後れねど獨や山を今日は越ゆらむ
753

俊惠法師

道因法師みちの國にまかりくだりける時別惜みて人々歌詠み侍りけるに

是を見よ戀しかるべき行く末をかねて思ふにぬるゝ袂ぞ
754

藤原經尹

都うつりの比、後徳大寺左大臣、太皇太后宮に參りて女房の中にて夜もすがら月を見て物語などして曉歸りける時小侍從送りて出で侍りけるにともにありて申しける

物かはと君が言ひけむ鳥の音の今朝しもなどか悲しかる覽
755

源頼康

參議爲忠美濃國より都に上り侍りし時詠める

故里に立ち歸るとも行く人のこゝろはとめよ不破の關守
756

藤原基世

題志らず

哀れ又今年も暮れぬ老が身のおとろへ増る鄙のわかれに
757

前大納言爲世

藤原景綱吾妻に下り侍りし時鏡の宿へ遣はし侍りける

言の葉になげくとは見よ鏡山慕ふこゝろに影は無くとも
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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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