源氏物語

Genji monogatari

紫式部 Murasaki Shikibu

光る源氏17歳夏の物語

出典
校訂

光る源氏17歳夏の物語

 寝られたまはぬままには、「我は、かく人に憎まれてもならはぬを、今宵なむ、初めて憂しと世を思ひ知りぬれば、恥づかしくて、ながらふまじうこそ、思ひなりぬれ」などのたまへば、涙をさへこぼして臥したり。いとらうたしと思す。手さぐりの、細く小さきほど、髪のいと長からざりしけはひの、さまかよひたるも、思ひなしにやあはれなり。あながちにかかづらひたどり寄らむも、人悪ろかるべく、まめやかにめざましと思し明かしつつ、例のやうにものたまひまつはさず。夜深う出でたまへば、この子は、いといとほしく、さうざうしと思ふ。
女も、並々ならずかたはらいたしと思ふに、御消息も82絶えてなし。思し懲りにけると思ふにも、やがてつれなくて止みたまひなましかば憂からまし、しひていとほしき御ふるまひの絶えざらむもうたてあるべし、よきほどに、かくて閉ぢめてむ、と思ふものから、ただならず、ながめがちなり。
君は、心づきなしと思しながら、かくてはえ止むまじう御心にかかり、人悪ろく思ほしわびて、小君に、「いとつらうも、うれたうもおぼゆるに、しひて思ひ返せど、心にしも従はず苦しきを。さりぬべきをり見て、対面83すべくたばかれ」とのたまひわたれば、わづらはしけれど、かかる方にても、のたまひまつはすは、うれしうおぼえけり。
 幼き心地に、いかならむ折と待ちわたるに、紀伊守国に下りなどして、女どちのどやかなる夕闇の道たどたどしげなる84紛れに、わが車にて率てたてまつる。
この子も幼きを、いかならむと思せど、さのみもえ思しのどむまじければ、さりげなき姿にて、門など鎖さぬ先にと、急ぎおはす。
人見ぬ方より引き入れて、下ろしたてまつる。童なれば、宿直人などもことに見入れ追従せず、心やすし。
東の妻戸に、立てたてまつりて、我は南の隅の間より、格子叩きののしりて入りぬ。御達、
「あらはなり」と言ふなり。
「なぞ、かう暑きに、この格子は下ろされたる」と問へば、
「昼より、西の御方の渡らせたまひて、碁打たせたまふ」と言ふ。
さて向かひゐたらむを見ばや、と思ひて、やをら歩み出でて、簾のはさまに入りたまひぬ。
この入りつる格子はまだ鎖さねば、隙見ゆるに、寄りて西ざまに見通したまへば、この際に立てたる屏風、端の方おし畳まれたるに、紛るべき几帳なども、暑ければにや、うち掛けて、いとよく見入れらる。
 灯近うともしたり。母屋の中柱に側める人やわが心かくると、まづ目とどめたまへば、濃き綾の単襲なめり。何にかあらむ表に着て、頭つき細やかに小さき人の、ものげなき姿ぞしたる。顔などは、さし向かひたらむ人などにも、わざと見ゆまじうもてなしたり。手つき痩せ痩せにて、いたうひき隠しためり。
今一人は、東向きにて、残るところなく見ゆ。白き羅の単襲、二藍の小袿だつもの、ないがしろに着なして、紅の腰ひき結へる際まで胸あらはに、ばうぞくなるもてなしなり。いと白うをかしげに、つぶつぶと肥えて、そぞろかなる人の、頭つき額つきものあざやかに、まみ口つき、いと愛敬づき、はなやかなる容貌なり。髪はいとふさやかにて、長くはあらねど、下り端、肩のほどきよげに、すべていとねぢけたるところなく、をかしげなる人と見えたり。
むべこそ、親の世になくは思ふらめと、をかしく見たまふ。心地ぞ、なほ静かなる気を添へばやと、ふと見ゆる。かどなきにはあるまじ、碁打ち果てて、結さすわたり、心とげに見えて、きはぎはとさうどけば、奥の人はいと静かにのどとめて、
「待ちたまへや。そこは持にこそあらめ。このわたりの劫をこそ」など言へど、
「いで、このたびは負けにけり。隅のところ、いでいで」と指をかがめて、「十、二十85、三十、四十」などかぞふる86さま、伊予の湯桁もたどたどしかるまじう87見ゆ。すこし品おくれたり。
たとしへなく口おほひて、さやかにも見せねど、目をしつけたまへれば、おのづから側目も88見ゆ。目すこし腫れたる心地して、鼻などもあざやかなるところなうねびれて、にほはしきところも見えず。言ひ立つれば、悪ろきによれる容貌をいといたうもてつけて、このまされる人よりは心あらむと、目とどめつべきさましたり。
にぎははしう愛敬づきをかしげなるを、いよいよほこりかにうちとけて、笑ひなどそぼるれば、にほひ多く見えて、さる方にいとをかしき人ざまなり。あはつけしとは思しながら、まめならぬ御心は、これもえ思し放つまじかりけり。
見たまふかぎりの人は、うちとけたる世なく、ひきつくろひ側めたるうはべをのみこそ見たまへ、かくうちとけたる人のありさまかいま見などは、まだしたまはざりつることなれば、何心もなうさやかなるはいとほしながら、久しう見たまは89まほしきに、小君出で来る心地すれば、やをら出でたまひぬ。
渡殿の戸口に寄りゐたまへり。いとかたじけなしと思ひて、
「例ならぬ人はべりて、え近うも寄りはべらず」
「さて、今宵もや帰してむとする。いとあさましう、からうこそあべけれ」とのたまへば、
「などてか。あなたに帰りはべりなば、たばかりはべりなむ」と聞こゆ。
さもなびかしつべき気色にこそはあらめ。童なれど、ものの心ばへ、人の気色見つべくしづまれるをと、思すなりけり。
碁打ち果てつるにやあらむ、うちそよめく心地して、人々あかるるけはひなどすなり。
「若君はいづくにおはしますならむ。この御格子は鎖してむ」とて、鳴らすなり。
「静まりぬなり。入りて、さらば、たばかれ」とのたまふ。
この子も、いもうとの御心はたわむところなくまめだちたれば、言ひあはせむ方なくて、人少なならむ折に入れたてまつらむと思ふなりけり。
「紀伊守のいもうともこなたにあるか。我にかいま見せさせよ」とのたまへど、
「いかでか、さははべらむ。格子には几帳添へてはべり」と聞こゆ。
「さかし、されどもと、をかしく思せど、見つとは知らせじ、いとほし」と思して、夜更くることの心もとなさをのたまふ。
こたみは妻戸を叩きて入る。皆人々静まり寝にけり。
「この障子口に、まろは寝たらむ。風吹きとほせ」とて、畳広げて臥す。御達、東の廂にいとあまた寝たるべし。戸放ちつる童90もそなたに入りて臥しぬれば、とばかり空寝して、灯明かき方に屏風を広げて、影ほのかなるに、やをら入れたてまつる。
いかにぞ、をこがましきこともこそ、と思すに、いとつつましけれど、導くままに、母屋の几帳の帷子引き上げて、いとやをら入りたまふとすれど、皆静まれる夜の、御衣のけはひやはらかなるしも、いとしるかりけり。
 女は、さこそ忘れたまふをうれしきに思ひなせど、あやしく夢のやうなることを、心に離るる折なきころにて、心とけたる寝だに寝られずなむ、昼はながめ、夜は寝覚めがちなれば、春ならぬ木の芽も、いとなく嘆かしきに、碁打ちつる君、「今宵は、こなたに」と、今めかしくうち語らひて、寝にけり。
若き人は、何心なくいとようまどろみたるべし。かかるけはひの、いと香ばしくうち匂ふに、顔をもたげたるに、単衣うち掛けたる几帳の隙間に、暗けれど、うち身じろき寄るけはひ、いとしるし。あさましくおぼえて、ともかくも思ひ分かれず、やをら起き出でて、生絹なる単衣を一つ着て、すべり出でにけり。
君は入りたまひて、ただひとり臥したるを心やすく思す。床の下に二人ばかりぞ臥したる。衣を押しやりて寄りたまへるに、ありしけはひよりは、ものものしくおぼゆれど、思ほしうも寄らずかし。いぎたなきさまなどぞ、あやしく変はりて、やうやう見あらはしたまひて、あさましく心やましけれど、人違へとたどりて見えむも、をこがましく、あやしと思ふべし、本意の人を尋ね寄らむも、かばかり逃るる心あめれば、かひなう、をこにこそ思はめと思す。かのをかしかりつる灯影ならば、いかがはせむに思しなるも、悪ろき御心浅さなめりかし。
やうやう目覚めて、いとおぼえずあさましきに、あきれたる気色にて、何の心深くいとほしき用意もなし。世の中をまだ思ひ知らぬほどよりは、さればみたる方にて、あえかにも思ひまどはず。我とも知らせじと思ほせど、いかにしてかかかることぞと、後に思ひめぐらさむも、わがためには事にもあらねど、あのつらき人の、あながちに名をつつむも、さすがにいとほしければ、たびたびの御方違へにことつけたまひしさまを、いとよう言ひなしたまふ。たどらむ人は心得つべけれど、まだいと若き心地に、さこそさし過ぎたるやうなれど、えしも思ひ分かず。
憎しとはなけれど、御心とまるべきゆゑもなき心地して、なほかのうれたき人の心をいみじく思す。「いづくにはひ紛れて、かたくなしと思ひゐたらむ。かく執念き人はありがたきものを」と思すしも、あやにくに、紛れがたう思ひ出でられたまふ。この人の、なま心なく、若やかなるけはひもあはれなれば、さすがに情け情けしく契りおかせたまふ。
「人知りたることよりも、かやうなるは、あはれも添ふこととなむ、昔人も言ひける。あひ思ひたまへよ。つつむことなきにしもあらねば、身ながら心にもえまかすまじくなむありける。また、さるべき人々も許されじかしと、かねて胸いたくなむ。忘れで待ちたまへよ」など、なほなほしく語らひたまふ。
「人の思ひはべらむことの恥づかしきになむ、え聞こえさすまじき」とうらもなく言ふ。
「なべて、人に知らせばこそあらめ、この小さき上人に伝へて聞こえむ。気色なくもてなしたまへ」
など言ひおきて、かの脱ぎすべしたると見ゆる薄衣を取りて出でたまひぬ。
小君近う臥したるを起こしたまへば、うしろめたう思ひつつ寝ければ、ふとおどろきぬ。戸をやをら押し開くるに、老いたる御達の声にて、
「あれは誰そ」
とおどろおどろしく問ふ。わづらはしくて、
「まろぞ」と答ふ。
「夜中に、こは、なぞと歩かせたまふ」
とさかしがりて、外ざまへ来。いと憎くて、
「あらず。ここもとへ出づるぞ」
とて、君を押し出でたてまつるに、暁近き月、隈なくさし出でて、ふと人の影見えければ、
「またおはするは誰そ」と問ふ。
「民部のおもとなめり。けしうはあらぬおもとのたけだちかな」
と言ふ。たけ高き人の常に笑はるるを言ふなりけり。老人、これを連ねて歩きけると思ひて、
「今、ただ今立ちならびたまひなむ」
と言ふ言ふ、我もこの戸より出でて来。わびしけれど、えはた押しかへさで、渡殿の口にかい添ひて隠れ立ちたまへれば、このおもとさし寄りて、
「おもとは、今宵は、上にやさぶらひたまひつる。一昨日より腹を病みて、いとわりなければ、下にはべりつるを、人少ななりとて召ししかば、昨夜参う上りしかど、なほえ堪ふ91まじくなむ」と、憂ふ。答へも聞かで、「あな腹々。今聞こえむ」
とて過ぎぬるに、からうじて出でたまふ。なほかかる歩きは軽々しくあやふかり92けりと、いよいよ思し懲りぬべし。
 小君、御車の後にて、二条院におはしましぬ。ありさまのたまひて、「幼かりけり」とあはめたまひて、かの人の心を爪弾きをしつつ恨みたまふ。いとほしうて、ものもえ聞こえず。
「いと深う憎みたまふべかめれば、身も憂く思ひ果てぬ。などか、よそにても、なつかしき答へばかりはしたまふまじき。伊予介に劣りける身こそ」
など、心づきなしと思ひてのたまふ。ありつる小袿を、さすがに、御衣の下に引き入れて、大殿籠れり。小君を御前に臥せて、よろづに恨み、かつは、語らひたまふ。
「あこは、らうたけれど、つらきゆかりにこそ、え思ひ果つまじけれ」
とまめやかにのたまふを、いとわびしと思ひたり。
しばしうち休みたまへど、寝られたまはず。御硯急ぎ召して、さしはへたる御文にはあらで、畳紙に手習のやうに書きすさびたまふ。
「空蝉の身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな」
と書きたまへるを、懐に引き入れて持たり。かの人もいかに思ふらむと、いとほしけれど、かたがた思ほしかへして、御ことつけもなし。かの薄衣は、小袿のいとなつかしき人香に染めるを、身近くならして見ゐたまへり。
小君、かしこに行きたれば、姉君待ちつけて、いみじくのたまふ。
「あさましかりしに。とかう紛らはしても、人の思ひけむことさりどころなきに、いとなむわりなき。いとかう心幼きを、かつはいかに思ほすらむ」
とて、恥づかしめたまふ。左右に苦しう思へど、かの御手習取り出でたり。さすがに、取りて見たまふ。かのもぬけを、いかに、伊勢をの海人のしほなれてや93、など思ふもただならず、いとよろづに乱れて。
西の君も、もの恥づかしき心地してわたりたまひにけり。また知る人もなきことなれば、人知れずうちながめてゐたり。小君の渡り歩くにつけても、胸のみ塞がれど、御消息もなし。あさましと思ひ得る方もなくて、されたる心に、ものあはれなるべし。
つれなき人も、さこそしづむれ、いとあさはかにもあらぬ御気色を、ありしながらのわが身ならばと、取り返すものならねど94、忍びがたければ、この御畳紙の片つ方に、
「空蝉の羽に置く露の木隠れて
忍び忍びに濡るる袖かな」

 お寝みになれないままには、「わたしは、このように人に憎まれたことはないのに、今晩、初めて辛いと男女の仲を分かったので、恥ずかしくて、生きて行けないような気持ちになってしまった」などとおっしゃると、涙まで流して臥している。とてもかわいいとお思いになる。手探りに、細く小柄な体つきや、髪のたいして長くはなかった様子が、似通っているのも、気のせいか愛しい。むやみにしつこく探し求めるのも、体裁悪いだろうし、本当に癪に障るとお思いになりながら夜を明かして、いつものようにもおっしゃらない。夜の深いうちにお帰りになるので、この子は、たいそう気の毒でつまらないと思う。
女も、大変に気がとがめると思うと、お手紙もまったくない。お懲りになったのだと思うにつけても、このまま冷めておやめになってしまったら嫌な思いであろうし、強引に困ったお振る舞いが絶えないのも嫌なことであろう、適当なところで、こうしてきりをつけたい、と思うものの、平静ではなく、物思いがちである。
君は、ひどいとお思いになる一方で、このままではやめられなくお心にかかり、体裁悪くお困りになって、小君に、「とても、辛く情けなくも思われるので、無理に忘れようとするが、思いどおりにならず苦しいのだよ。適当な機会を見つけて、逢えるように手立てせよ」とおっしゃり続けるので、やっかいに思うが、このような事柄でも、お命じになって使ってくださることは、嬉しく思われるのであった。
 子供心に、どのような機会にと待ち続けていると、紀伊守が任国へ下ったりして、女たちがくつろいでいる夕闇の道がはっきりしないのに紛れて、自分の車で、お連れ申し上げる。
この子も子供なので、どうだろうかとご心配になるが、そう悠長にも構えていらっしゃれなかったので、目立たない服装で、門などに鍵がかけられる前にと、急いでいらっしゃる。
人目のない方から引き入れて、お下ろし申し上げる。子供なので、宿直人なども特別に気をつかって機嫌をとらず、安心である。
東の妻戸に、お立たせ申し上げて、自分は南の隅の間から、格子を叩いて声を上げて入った。御達は、
「丸見えです」と言っているようだ。
「どうして、こう暑いのに、この格子を下ろしているの」と尋ねると、
「昼から、西の御方がお渡りあそばして、碁をお打ちあそばしていらっしゃいます」と言う。
そうして向かい合っているのを見たい、と思って、静かに歩を進めて、御簾の間にお入りになった。
先程入った格子はまだ閉めてないので、隙間が見えるので、近寄って西の方を見通しなさると、こちら側の際に立ててある屏風は、端の方が畳まれているので、目隠しのはずの几帳なども、暑いからであろうか、掛けてあって、とてもよく覗き見ることができる。
 灯火が近くに燈してある。母屋の中柱に横向きになっている人が自分の思いを寄せている人かと、まっさきに目をお留めになると、濃い綾の単重襲のようである。何であろうか、上に着て、頭の恰好は小さく小柄な人で、見栄えのしない姿をしている。顔などは、向かい合っている人などにも、特に見えないように気をつけている。手つきも痩せ痩せした感じで、ひどく袖の中に引き込めているようだ。
もう一人は、東向きなので、すっかり見える。白い羅の単重襲に、二藍の小袿のようなものを、しどけなく引っ掛けて、紅の腰紐を結んでいる際まで胸を露にして、嗜みのない恰好である。とても色白で美しく、まるまると太って、すらっと背の高い人で、頭の恰好や額の具合は、くっきりとしていて、目もと口もとが、とても愛嬌があり、はなやかな容貌である。髪はたいしてふさふさとして長くはないが、垂れ具合や、肩のところがまことにすっきりとして、どこをとっても悪いところなく、美しい女だ、と見えた。
なるほど、親がこの上なくかわいがることであろうと、興味をもって御覧になる。心づかいに、もう少し落ち着いた感じを加えたいものだと、ふと思われる。才覚がないわけではないらしい。碁を打ち終えて、結を押すあたりは、機敏に見えて、陽気に騷ぎ立てると、奥の人は、とても静かに落ち着いて、
「お待ちなさいよ。そこは、持でありましょう。このあたりの、劫を」などと言うが、
「いいえ、今度は負けてしまいました。隅の所、どれどれ」と指を折って、「十、二十、三十、四十」などと数える様子は、伊予の湯桁もすらすらと数えられそうに見える。少し下品な感じがする。
極端に口を覆って、はっきりとも見せないが、目を凝らしていらっしゃると、自然と横顔も見える。目が少し腫れぼったい感じがして、鼻筋などもすっきり通ってなく老けた感じで、はなやかなところも見えない。言い立てて行くと、悪いことばかりになる容貌を、とてもよく取り繕って、この美しさで勝る人よりは嗜みがあろうと、目が引かれるような態度をしている。
朗らかで愛嬌があって美しいのを、ますます得意満面にうちとけて、笑い声などを上げてはしゃいでいるので、はなやかさが多く見えて、そうした方面ではとても美しい人である。軽率であるとはお思いになるが、お堅くないお心には、この女も捨てておけないのであった。
ご存じの女性は、くつろいでいる時がなく、取り繕って横を向いたよそゆきの態度ばかりを御覧になるが、このようにうちとけた女の様子の垣間見などは、まだなさらなかったことなので、気づかずにすっかり見られているのは気の毒だが、しばらく御覧になりたいのだが、小君が出て来そう気がするので、そっとお出になった。
渡殿の戸口に寄り掛かっていらっしゃっる。とても恐れ多いと思って、
「珍しくお客がおりまして、近くにまいれません」
「それでは、今宵も、帰そうとするのか。まったくあきれて、ひどいではないか」とおっしゃると、
「いいえ決して。あちらに帰りましたら、手立てを致しましょう」と申し上げる。
そのように何とかできそうな様子なのであろう。子供であるが、物事の事情や、人の気持ちを読み取れるよう落ち着いているから、とお思いになるのであった。
碁を打ち終えたのであろうか、衣ずれの音のする感じがして、女房たちが各部屋に下がって行く様子などがするようである。
「若君はどこにいらっしゃるのでしょうか。この御格子は閉めましょう」と言って、音が聞こえる。
「静かになったようだ。入って、それでは、手引きをせよ」とおっしゃる。
この子も、姉のお気持ちを曲げそうになく堅物でいるので、話をつけるすべもなく、人目の少ない時に、お入れ申し上げようと思うのであった。
「紀伊守の妹も、ここにいるのか。わたしに、垣間見させよ」とおっしゃるが、
「どうして、そのようなことができましょうか。格子には几帳が添え立ててあります」と申し上げる。
「もっともだ、しかしそれでもと、興味深くお思いになるが、見てしまったとは言うまい、気の毒だ」とお思いになって、夜の更けて行くことの遅いことをおっしゃる。
今度は、妻戸を叩いて入って行く。女房たちは皆寝静まっていた。
「この障子の口に、僕は寝よう。風よ吹いておくれ」と言って、畳を広げて横になる。女房たちは、東廂に大勢寝ているのだろう。妻戸を開けた女童もそちらに入って寝てしまったので、しばらく空寝をして、灯火の明るい方に屏風を広げて、うす暗くなったので、静かにお入れ申し上げる。
どうなることか、愚かしいことがあってはならない、とご心配になると、とても気後れするが、手引するのに従って、母屋の几帳の帷子を引き上げて、たいそう静かにお入りになろうとするが、皆寝静まっている夜の、お召物の衣ずれの様子は、柔らかであるが、かえってはっきりとわかるのであった。
 女は、あれきりお忘れなのを嬉しいと思おうとはするが、不思議な夢のような出来事を、心から忘れられないころなので、ぐっすりと眠ることさえできず、昼間は物思いに耽り、夜は寝覚めがちなので、春ではないが、「木の芽」ならぬ「この目」も、休まる時とてなく、物思いがちなのに、碁を打っていた君が、「今夜は、こちらに」と言って、今の子らしくおしゃべりして、寝てしまった。
若い女は、無心にとてもよく眠っているのであろう。このような感じが、とても香り高く匂って来るので、顔を上げると、単重を打ち掛けてある几帳の隙間に、暗いけれども、にじり寄って来る様子が、はっきりとわかる。あきれた気持ちで、何とも分別もつかず、そっと起き出して、生絹の単重を一枚着て、そっと抜け出した。
君はお入りになって、ただ一人で寝ているのを安心にお思いになる。床の下の方に二人ほど寝ている。衣を押しやってお寄り添いになると、先夜の様子よりは、大柄な感じに思われるが、お気づきなさらない。目を覚まさない様子などが、妙に違って、だんだんとおわかりになって、意外なことに癪に思うが、人違いをまごまごして見せるのも愚かしく、変だと思うだろう、目当ての女を探し求めるのも、これほど避ける気持ちがあるようなので、甲斐なく、間抜けなと思うだろう、とお思いになる。あの美しかった灯影の女ならば、何ということはないとお思いになるのも、けしからぬご思慮の浅薄さと言えよう。
だんだんと目が覚めて、まことに思いもよらぬあまりのことに、あきれた様子で、特にこれといった思慮あるいじらしい心づかいもない。男女の仲をまだ知らないわりには、ませたところがある方で、消え入るばかりに思い乱れるでもない。自分だとは知らせまいとお思いになるが、どうしてこういうことになったのかと、後から考えるだろうことも、自分にとってはどうということはないが、あの薄情な女が、強情に世間体を名を憚っているのも、やはり気の毒なので、度々の方違えにかこつけてお出でになったことを、うまくとりつくろってお話になる。よく気のつく女ならば察しがつくであろうが、まだ経験の浅い分別では、あれほどおませに見えたようでもそこまでは見抜けない。
憎くはないが、お心惹かれるようなところもない気がして、やはりあのいまいましい女の気持ちを、恨めしいとお思いになる。「どこにはい隠れて、愚か者だと思っているのだろう。このように強情な女はめったにいないものを」とお思いになるのも、困ったことに、気持ちを紛らすこともできず思い出さずにじゃいらっしゃれない。この女の、何も気づかず、初々しい感じもいじらしいので、それでも愛情濃やかに将来をお約束させなさる。
「世間に認められた仲よりも、このような仲こそ、愛情も勝るものと、昔の人も言っていました。あなたも同様に愛してくださいよ。世間を憚る事情がないわけでもないので、わが身ながらも思うにまかすことができないのです。また、あなたのご両親も許されないだろうと、今から胸が痛みます。忘れないで待っていて下さいよ」などと、いかにもありきたりにお話なさる。
「他の人に知られることが恥ずかしくて、お手紙を差し上げることができません」と無邪気に言う。
「誰彼となく、他人に言っては困りますが、この小さい殿上童に託して差し上げましょう。何げなく振る舞っていて下さい」
などと言い置いて、あの脱ぎ捨てて行ったと見える薄衣を取ってお出になった。
小君が近くに寝ていたのをお起こしになると、不安に思いながら寝ていたので、すぐに目を覚ました。妻戸を静かに押し開けると、年老いた女房の声で、
「あれは誰ですか」
と仰々しく尋ねる。厄介に思って、
「僕です」と答える。
「夜中に、これはまた、どうしてとお歩きなさいますか」
と世話焼き顔で、外へ出て来る。とても腹立たしく、
「違います。ここに出るだけです」
と言って、君をお出し申し上げると、暁方に近い月の光が明るく照っているので、ふと、人影が見えたので、
「もう一人いらっしゃるのは、誰ですか」と尋ねる。
「民部のおもとのようですね。けっこうな背丈ですこと」
と言う。背丈の高い人がいつも笑われることを言うのであった。老女房は、その人を連れていたのだと思って、
「今そのうちに、同じくらいの背丈におなりになるでしょう」
と言い言い、自分もこの妻戸から出て来る。困ったが、押し返すこともできず、渡殿の戸口に身を寄せて隠れて立っていらっしゃると、この老女房が近寄って、
「おもとは、今夜は、上に詰めていらっしゃったのですか。一昨日からお腹の具合が悪くて、我慢できませんでしたので、下におりていましたが、人少なであると、お召しがあったので、昨夜参上しましたが、やはり、我慢できないようなので」と苦しがる。返事も聞かないで、「ああ、お腹が、お腹が。また後で」
と言って通り過ぎて行ったので、ようやくのことでお出になる。やはりこうした忍び歩きは軽率で危ないものだと、ますますお懲りになられたことであろう。
 小君を、お車の後ろに乗せて、二条院にお着きになった。出来事をおっしゃって、「愚かであった」と軽蔑なさって、あの女の気持ちを爪弾きしながらお恨みなさる。気の毒で、何とも申し上げられない。
「とてもひどく嫌っておいでのようなので、わが身が嫌になってしまった。どうして、逢って下さらないまでも、親しい返事ぐらいはして下さらないのだろうか。伊予介に及ばないわが身だ」
などと、気にくわないと思っておっしゃる。先程の小袿を、そうは言うものの、お召物の下に引き入れて、お寝みになった。小君をお側に寝かせて、いろいろと恨み言をいい、かつまた、優しくお話なさる。
「おまえは、かわいいけれど、つれない女の弟だと思うと、いつまでもかわいがってやれるともわからない」
と真面目におっしゃるので、とても辛いと思った。
しばらくの間、横になっていられたが、お眠りになれない。御硯を急に用意させて、わざわざのお手紙ではなく、畳紙に手習いのように思うままに書き連ねなさる。
「蝉が殻を脱ぐように、衣を脱ぎ捨てて逃げ去っていったあなたですが
やはり人柄が懐かしく思われます」
とお書きになったのを、懐に入れて持って行く。あの女もどう思っているだろうかと、気の毒に思うが、いろいろとお思い返しなさって、お言づけもない。あの薄衣は、小袿のとても懐かしい人香が染み込んでいるので、いつもお側近くに置いて見ていらっしゃった。
小君は、あちらに行ったところ、姉君が待ち構えていて、厳しくお叱りになる。
「とんでもないことであったのに。何とか人目はごまかしても、人の疑いはどうすることもできないので、ほんとうに困ったこと。まことにこのように幼く浅はかな考えを、また、どうお思いなさっていようか」
と言って、お叱りになる。どちらから言っても辛く思うが、あのお手紙を取り出した。そうは言ったものの、手に取って御覧になる。あの脱ぎ捨てた小袿を、どのように、「伊勢をの海人」のように汗臭くはなかったろうか、と思うのも気が気でなく、いろいろと思い乱れて。
西の君も、何とはなく恥ずかしい気持ちがしてお帰りになった。他に知っている人もない事なので、一人物思いに耽っていた。小君が行き来するにつけても、胸ばかりが締めつけられるが、お手紙もない。あまりのことだと気づくすべもなくて、陽気な性格ながら、何となく悲しい思いをしているようである。
薄情な女も、そのように落ち着いてはいるが、通り一遍とも思えないご様子を、結婚する前のわが身であったらと、昔に返れるものではないが、堪えることができないので、この懐紙の片端の方に、
「空蝉の羽に置く露が木に隠れて見えないように
わたしもひそかに、涙で袖を濡らしております」

Tale of Hikaru-Genji's Konoe-Chujo era in the summer at the age of 17 [1-1Genji cannot forget Utsusemi]
Ne rare tamaha nu mama ni ha, "Ware ha, kaku hito ni nikuma re te mo naraha nu wo, koyohi nam, hazime te usi to yo wo omohi-siri nure ba, hadukasiku te, nagarahu maziu koso, omohi nari nure." nado notamahe ba, namida wo sahe kobosi te husi tari. Ito rautasi to obosu. Tesaguri no, hosoku tihisaki hodo, kami no ito nagakara zari si kehahi no, sama kayohi taru mo, omohi-nasi ni ya ahare nari. Anagati ni kakadurahi tadori yora m mo, hito waro karu beku, mameyaka ni mezamasi to obosi akasi tutu, rei no yau ni mo notamahi matuhasa zu. Yo-bukau ide tamahe ba, kono Ko ha, ito itohosiku, sau-zausi to omohu.
Womna mo, nami-nami nara zu kataharaitasi to omohu ni, ohom-seusoko mo taye te nasi. Obosi kori ni keru to omohu ni mo, yagate turenaku te yami tamahi na masika ba ukara masi, sihite itohosiki ohom-hurumahi no taye zara m mo utate aru besi, yoki hodo ni, kaku te todime te m, to omohu mono-kara, tada nara zu, nagame-gati nari.
Kimi ha, kokoro-dukinasi to obosi nagara, kaku te ha e yamu maziu mi-kokoro ni kakari, hito-waroku omohosi wabi te, Ko-Gimi ni, "Ito turau mo, uretau mo oboyuru ni, sihite omohi kahese do, kokoro ni si mo sitagaha zu kurusiki wo! Sa'ri nu beki wori mi te, taimen su beku tabakare!" to notamahi watare ba, wadurahasikere do, kakaru kata ni te mo, notamahi matuhasu ha, uresiu oboye keri.

[1-2Genji goes to Kii-no-Kami's villa again]
Wosanaki kokoti ni, ika nara m wori to mati wataru ni, Kii-no-Kami kuni ni kudari nado si te, womna-doti nodoyaka naru yuhu-yami no miti tado-tadosige naru magire ni, waga kuruma ni te wi te tatematuru.
Kono Ko mo wosanaki wo, ika nara m to obose do, sa nomi mo e obosi nodomu mazi kere ba, sarigenaki sugata ni te, kado nado sasa nu saki ni to, isogi ohasu.
Hito mi nu kata yori hiki-ire te, orosi tatematuru. Waraha nare ba, tonowi-bito nado mo koto ni mi-ire tuisyou se zu, kokoro yasusi.
Himgasi no tumado ni, tate tatematuri te, ware ha minami no sumi no ma yori, kausi tataki nonosiri te iri nu. Go-tati,
"Araha nari." to ihu nari.
"Nazo, kau atuki ni, kono kausi ha orosa re taru?" to tohe ba,
"Hiru yori, Nisi no ohom-Kata no watara se tamahi te, go uta se tamahu." to ihu.
Sate mukahi wi tara m wo mi baya, to omohi te, yawora ayumi ide te, sudare no hasama ni iri tamahi nu.
Kono iri turu kausi ha mada sasa ne ba, hima miyuru ni, yori te nisi-zama ni mi-tohosi tamahe ba, kono kiha ni tate taru byaubu, hasi no kata osi-tatama re taru ni, magiru beki kityau nado mo, atukere ba ni ya, uti-kake te, ito yoku mi ire raru.

[1-3Utsusemi and Ki-no-kami's sister play Igo]
Hi tikau tomosi tari. Moya no naka-basira ni sobame ru hito ya waga kokoro kakuru to, madu me todome tamahe ba, koki aya no hitohe-gasane na'meri. Nani ni ka ara m uhe ni ki te, kasira-tuki hosoyaka ni tihisaki hito no, monogenaki sugata zo si taru. Kaho nado ha, sasi-mukahi tara m hito nado ni mo, wazato miyu maziu motenasi tari. Te-tuki yase-yase ni te, itau hiki-kakusi ta'meri.
Ima hitori ha, himgasi-muki ni te, nokoru tokoro naku miyu. Siroki usu-mono no hitohe-gasane, huta-awi no ko-utiki-datu mono, naigasiro ni ki-nasi te, kurenawi no kosi hiki-yuhe ru kiha made mune araha ni, bauzoku naru motenasi nari. Ito sirou wokasi-ge ni, tubu-tubu to koye te, sozoroka naru hito no, kasira-tuki hitahi-tuki mono-azayaka ni, mami kuti-tuki, ito aigyau-duki, hanayaka naru katati nari. Kami ha ito husayaka ni te, nagaku ha ara ne do, sagariba, kata no hodo kiyo-ge ni, subete ito nedike taru tokoro naku, wokasi-ge naru hito to miye tari.
Mube koso, oya no yo ni naku ha omohu rame to, wokasiku mi tamahu. Kokoti zo, naho siduka naru ke wo sohe baya to, huto miyuru. Kado naki ni ha aru mazi, go uti-hate te, keti sasu watari, kokoro-toge ni miye te, kiha-giha to saudoke ba, oku no hito ha ito siduka ni nodome te,
"Mati tamahe ya! Soko ha di ni koso a'rame. Kono watari no kohu wo koso." nado ihe do,
"Ide, kono tabi ha make ni keri. Sumi no tokoro, ide ide." to oyobi wo kagame te, "Towo, hata, mi-so, yo-so." nado kazohuru sama, Iyo no yu-geta mo tado-tadosikaru maziu miyu. Sukosi sina okure tari.
Tatosihe naku kuti ohohi te, sayaka ni mo mise ne do, me wo si tuke tamahe re ba, onodukara sobame mo miyu. Me sukosi hare taru kokoti si te, hana nado mo azayaka naru tokoro nau nebire te, nihohasiki tokoro mo miye zu. Ihi tature ba, waroki ni yore ru katati wo ito itau mote-tuke te, kono masare ru hito yori ha kokoro ara m to, me todome tu beki sama si tari.
Nigihahasiu aigyau-duki wokasi-ge naru wo, iyo-iyo hokorika ni uti-toke te, warahi nado soborure ba, nihohi ohoku miye te, saru kata ni ito wokasiki hito-zama nari. Ahatukesi to ha obosi nagara, mame nara nu mi-kokoro ha, kore mo e obosi hanatu mazikari keri.
Mi tamahu kagiri no hito ha, uti-toke taru yo naku, hiki tukurohi sobame taru uhabe wo nomi koso mi tamahe, kaku uti-toke taru hito no arisama kaima-mi nado ha, mada si tamaha zari turu koto nare ba, nani gokoro mo nau sayaka naru ha itohosi nagara, hisasiu mi tamaha mahosiki ni, Ko-Gimi ide kuru kokoti sure ba, yawora ide tamahi nu.
Wata-dono no to-guti ni yori wi tamahe ri. Ito katazikenasi to omohi te,
"Rei nara nu hito haberi te, e tikau mo yori habera zu."
"Sate, koyohi mo ya kahesi te m to suru. Ito asamasiu, karau koso a'bekere!" to notamahe ba,
"Nado te ka! Anata ni kaheri haberi na ba, tabakari haberi na m." to kikoyu.
Samo nabikasi tu beki kesiki ni koso ha ara me. Waraha nare do, mono no kokoro-bahe, hito no kesiki mi tu beku sidumare ru wo to, obosu nari keri.
Go uti hate turu ni ya ara m, uti soyo-meku kokoti si te, hito-bito akaruru kehahi nado su nari.
"Waka-Gimi ha iduku ni ohasimasu ram? Kono mi-kausi ha sasi te m." tote, nara su nari.
"Sidumari nu nari. Iri te, sara ba, tabakare!" to notamahu.
Kono Ko mo, imouto no mi-kokoro ha tawamu tokoro naku mame-dati tare ba, ihi ahase m kata naku te, hito-zukuna nara m wori ni ire tatematura m to omohu nari keri.
"Kii-no-Kami no imouto mo konata ni aru ka? Ware ni kaima-mi se sase yo!" to notamahe do,
"Ikade ka, sa ha habera m. Kausi ni ha kityau sohe te haberi." to kikoyu.
"Sakasi, sa're domo to, wokasiku obose do, mi tu to ha sirase zi, itohosi" to obosi te, yo hukuru koto no kokoro-motonasa wo notamahu.
Kotami ha tuma-do wo tataki te iru. Mina hito-bito sidumari ne ni keri.
"Kono sauzi-guti ni, maro ha ne tara m. Kaze huki-tohose." tote, tatami hiroge te husu. Go-tati, himgasi no hisasi ni ito amata ne taru besi. To hanati turu warahabe mo sonata ni iri te husi nure ba, tobakari sora-ne si te, hi akaki kata ni byaubu wo hiroge te, kage honoka naru ni, yawora ire tatematuru.
Ika ni zo, wokogamasiki koto mo koso, to obosu ni, ito tutumasikere do, mitibiku mama ni, moya no kityau no katabira hiki-age te, ito yawora iri tamahu to sure do, mina sidumare ru yo no, ohom-zo no kehahi yawaraka naru si mo, ito sirukari keri.

[1-4Utsusemi flees, and Genji meets another]
Womna ha, sa koso wasure tamahu wo uresiki ni omohi nase do, ayasiku yume no yau naru koto wo, kokoro ni hanaruru wori naki koro ni te, kokoro toke taru i dani ne rare zu nam, hiru ha nagame, yoru ha nezame-gati nare ba, haru nara nu ko-no-me mo, itonaku nagekasiki ni, go uti turu Kimi, "Koyohi ha, konata ni." to, imamekasiku uti-katarahi te, ne ni keri.
Wakaki-hito ha, nani-gokoro naku ito you madoromi taru besi. Kakaru kehahi no, ito kaubasiku uti-nihohu ni, kaho wo motage taru ni, hitohe uti kake taru kityau no suki-ma ni, kurakere do, uti miziroki-yoru kehahi, ito sirusi. Asamasiku oboye te, to-mo kaku-mo omohi wakare zu, yawora oki-ide te, suzusi naru hitohe wo hito-tu ki te, suberi-ide ni keri.
Kimi ha iri tamahi te, tada hitori husi taru wo kokoro-yasuku obosu. Yuka no simo ni, hutari bakari zo husi taru. Kinu wo osi-yari te yori tamahe ru ni, ari si kehahi yori ha, mono-monosiku oboyure do, omohosiu mo yora zu kasi. Igitanaki sama nado zo, ayasiku kahari te, yau-yau mi arahasi tamahi te, asamasiku kokoro-yamasikere do, hito-tagahe to tadori te miye m mo, wokogamasiku, ayasi to omohu besi, ho'i no hito wo tadune yora m mo, kabakari nogaruru kokoro a'mere ba, kahi-nau, woko ni koso omoha me to obosu. Kano wokasikari turu ho-kage nara ba, ikaga ha se m ni obosi naru mo, waroki mi-kokoro asa-sa na'meri kasi.
Yau-yau me same te, ito oboye zu asamasiki ni, akire taru kesiki ni te, nani no kokoro hukaku itohosiki youi mo nasi. Yononaka wo mada omohi sira nu hodo yori ha, sare-bami taru kata ni te, ayeka ni mo omohi madoha zu. Ware to mo sirase zi to omohose do, ika ni si te kakaru koto zo to, noti ni omohi-megurasa m mo, waga tame ni ha koto ni mo ara ne do, ano turaki hito no, anagati ni na wo tutumu mo, sasuga ni itohosikere ba, tabi-tabi no ohom-kata-tagahe ni koto-tuke tamahi si sama wo, ito you ihi-nasi tamahu. Tadora m hito ha kokoro e tu bekere do, mada ito wakaki kokoti ni, sa koso sasi sugi taru yau nare do, e si mo omohi waka zu.
Nikusi to ha nakere do, mi-kokoro tomaru beki yuwe mo naki kokoti si te, naho kano uretaki hito no kokoro wo, imiziku obosu. "Iduku ni hahi-magire te, katakunasi to omohi wi ta'ram. Kaku sihune-ki hito ha arigataki mono wo" to obosu si mo, ayaniku ni, magire gatau omohi-ide rare tamahu. Kono hito no, nama-kokoro naku, wakayaka naru kehahi mo ahare nare ba, sasuga ni nasake-nasakesiku tigiri oka se tamahu.
"Hito siri taru koto yori mo, kayau naru ha, ahare mo sohu koto to nam, mukasi-bito mo ihi keru. Ahi-omohi tamahe yo! Tutumu koto naki ni si mo ara ne ba, mi nagara kokoro ni mo e makasu maziku nam ari keru. Mata, sa'ru beki hito-bito mo yurusa re zi kasi to, kanete mune itaku nam. Wasure de mati tamahe yo!" nado, naho-nahosiku katarahi tamahu.
"Hito no omohi habera m koto no hadukasiki ni nam, e kikoye sasu maziki." to ura mo naku ihu.
"Nabete, hito ni sira se ba koso ara me, kono tihisaki Uhe-bito ni tutahe te kikoye m. Kesiki naku motenasi tamahe!"
nado ihi oki te, kano nugi sube si taru to miyuru usu-goromo wo tori te ide tamahi nu.
Ko-Gimi tikau husi taru wo okosi tamahe ba, usirometau omohi tutu ne kere ba, huto odoroki nu. To wo yawora osi-akuru ni, oyi taru go-tati no kowe ni te,
"Are ha ta so?"
to odoro-odorosiku tohu. Wadurahasiku te,
"Maro zo." to irahu.
"Yonaka ni, ko ha, nazo to arika se tamahu?"
to sakasi-gari te, to-zama he ku. Ito nikuku te,
"Ara zu. Koko moto he iduru zo."
tote, Kimi wo osi-ide tatematuru ni, akatuki tikaki tuki, kuma naku sasi-ide te, huto hito no kage miye kere ba,
"Mata ohasuru ha ta so?" to tohu.
"Minbu-no-Omoto na'meri. Kesiu ha ara nu Omoto no take-dati kana!"
to ihu. Take takaki hito no tune ni waraha ruru wo ihu nari keri. Oyi-bito, kore wo turane te ariki keru to omohi te,
"Ima, tada ima tati-narabi tamahi na m."
to ihu ihu, ware mo kono to yori ide te ku. Wabisikere do, e hata osi-kahesa de, Wata-dono no kuti ni kai-sohi te kakure tati tamahe ba, kono Omoto sasi-yori te,
"Omoto ha, koyohi ha, uhe ni ya saburahi tamahi turu? Wototohi yori hara wo yami te, ito warinakere ba, simo ni haberi turu wo, hito-zukuna nari tote mesi sika ba, yobe mau-nobori sika do, naho e tahu maziku nam." to, urehu. Irahe mo kika de, "Ana! Hara hara! Ima kikoye m."
tote sugi nuru ni, karausite ide tamahu. Naho kakaru ariki ha karo-garosiku ayahukari keri to, iyo-iyo obosi kori nu besi.

[1-5Genji returns bringing her kimono left behind]
Ko-Gimi, mi-kuruma no siri ni te, Nideu-no-Win ni ohasimasi nu. Arisama notamahi te, "Wosanakari keri!" to ahame tamahi te, kano hito no kokoro wo tuma-haziki wo si tutu urami tamahu. Itohosiu te, mono mo kikoye zu.
"Ito hukau nikumi tamahu beka'mere ba, mi mo uku omohi hate nu. Nado ka, yoso ni te mo, natukasiki irahe bakari ha si tamahu maziki? Iyo-no-Suke ni otori keru mi koso."
nado, kokoro-dukinasi to omohi te notamahu. Ari turu ko-utiki wo, sasuga ni, ohom-zo no sita ni hiki-ire te, ohotono-gomore ri. Ko-Gimi wo o-mahe ni huse te, yorodu ni urami, katu ha, katarahi tamahu.
"Ako ha, rautakere do, turaki yukari ni koso, e omohi hatu mazikere!"
to mame-yaka ni notamahu wo, ito wabisi to omohi tari.
Sibasi uti-yasumi tamahe do, ne rare tamaha zu. Ohom-suzuri isogi mesi te, sasi-hahe taru ohom-humi ni ha ara de, tatau-gami ni tenarahi no yau ni kaki susabi tamahu.
"Utusemi no mi wo kahe te keru ko no moto ni
naho hito-gara no natukasiki kana
"
to kaki tamahe ru wo, hutokoro ni hiki-ire te mo'tari. Kano hito mo ikani omohu ram to, itohosikere do, kata-gata omohosi kahesi te, ohom-kototuke mo nasi. Kano usu-goromo ha, ko-utiki no ito natukasiki hito-ga ni sime ru wo, mi-dikaku narasi te mi wi tamahe ri.
Ko-Gimi, kasiko ni iki tare ba, Ane-Gimi mati-tuke te, imiziku notamahu.
"Asamasikari si ni. Tokau magirahasi te mo, hito no omohi kem koto sari-dokoro naki ni, ito nam warinaki. Ito kau kokoro wosanaki wo, katu ha ika ni omohosu ram."
tote, hadukasime tamahu. Hidari migi ni kurusiu omohe do, kano ohom-tenarahi tori-ide tari. Sasuga ni, tori te mi tamahu. Kano monuke wo, ika ni, "Ise wo no ama" no siho nare te ya, nado omohu mo tada nara zu, ito yorodu ni midare te.
Nisi-no-Kimi mo, mono-hadukasiki kokoti si te watari tamahi ni keri. Mata siru hito mo naki koto nare ba, hito sire zu uti-nagame te wi tari. Ko-Gimi no watari ariku ni tuke te mo, mune nomi hutagare do, ohom-seusoko mo nasi. Asamasi to omohi uru kata mo naku te, sare taru kokoro ni, mono ahare naru besi.
Turenaki hito mo, sa koso sidumure, ito asahaka ni mo ara nu mi-kesiki wo, arisi nagara no waga mi nara ba to, tori-kahesu mono nara ne do, sinobi gatakere ba, kono ohom-tatau-gami no kata-tu-kata ni,
"Utusemi no ha ni oku tuyu no ko-gakure te
sinobi sinobi ni nururu sode kana
"

 出典

 校訂
備考--(/) ミセケチ--$ 補入--+ 傍書--= ナゾリ--& 独自異文--* 朱筆--<朱>

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Last Modified: Tuesday, August 31, 2004
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