源氏物語

Genji monogatari

紫式部 Murasaki Shikibu

1 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案

2 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心

出典
校訂

1 Tale of Kobai's Kobai considers his daughters marriages

2 Tale of Nio-no-miya Nio-no-miya sets his heart on Miya-no-onkata

 1 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案 [1-1 按察大納言家の家族]
そのころ、按察使大納言と聞こゆるは、故致仕の大臣の二郎なり。亡せたまひにし右衛門督のさしつぎよ。童よりらうらうじう、はなやかなる心ばへものしたまひし人にて、なりのぼりたまふ年月に添へて、まいていと世にあるかひあり、あらまほしうもてなし、御おぼえいとやむごとなかりける。
北の方二人ものしたまひしを、もとよりのは亡くなりたまひて、今ものしたまふは、後の太政大臣の御女、真木柱離れがたくしたまひし君を、式部卿宮にて、故兵部卿親王にあはせたてまつりたまへりしを、親王亡せたまひてのち、忍びつつ通ひたまひしかど、年月経れば、えさしも憚りたまはぬなめり。
御子は、故北の方の御腹に、二人のみぞおはしければ、さうざうしとて、神仏に祈りて、今の御腹にぞ、男君一人まうけたまへる。故宮の御方に、女君一所おはす。隔てわかず、いづれをも同じごと、思ひきこえ交はしたまへるを、おのおの御方の人などは、うるはしうもあらぬ心ばへうちまじり、なまくねくねしきことも出で来る時々あれど、北の方、いと晴れ晴れしく今めきたる人にて、罪なく取りなし、わが御方ざまに苦しかるべきことをも、なだらかに聞きなし、思ひ直したまへば、聞きにくからでめやすかりけり。

 1 紅梅大納言家の物語 娘たちの結婚を思案 [1-1 按察大納言家の家族]
そのころ、按察大納言と申し上げる方は、故致仕の大臣の次男である。お亡くなりになった衛門督のすぐ次の方であるよ。子供の時から利発で、はなやかな性質をお持ちだった人で、ご出世なさるに年月とともに、今まで以上にいかにも羽振りがよく、理想的なお暮らしぶりで、帝の御信望もまことに厚いものであった。
北の方が二人いらっしゃったが、最初の方はお亡くなりになって、今いらっしゃる方は、後太政大臣の姫君で、真木柱を離れがたくなさった姫君を、式部卿宮家の姫として、故兵部卿の親王に御縁づけ申し上げなさったが、親王がお亡くなりになって後、人目を忍んではお通いになったが、年月がたったので、世間に遠慮することもなくなったようである。
お子様は、亡くなった北の方に、二人だけいらっしゃったので、寂しいと思って、神仏に祈って、今の北の方に、男君を一人お儲けになっていた。故宮との間に、女君がお一人いらっしゃる。分け隔てをせず、どちらも同じようにかわいがり申し上げなさっているが、それぞれの御方の女房などは、きれい事には行かない気持ちも交じって、厄介なもめ事も出てくる時があるが、北の方が、とても明朗で現代的な人で、無難にとりなし、ご自分に辛いようなことも、穏やかに聞き入れ、よく解釈し直していらっしゃるので、世間に聞き苦しい事なく無難に過ごしているのであった。

 1 Tale of Kobai's Kobai considers his daughters marriages [1-1 Kobai-dainagon's families]
 Sono-koro, Azeti-no-Dainagon to kikoyuru ha, ko-Tizi-no-Otodo no zirou nari. Use tamahi ni si U-wemon-no-Kami no sasitugi yo. Waraha yori rau-rauziu, hanayaka naru kokoro-bahe monosi tamahi si hito ni te, nari-nobori tamahu tosi-tuki ni sohe te, maite ito yo ni aru kahi ari, aramahosiu motenasi, ohom-oboye ito yamgotonakari keru.
 Kitanokata hutari monosi tamahi si wo, motoyori no ha nakunari tamahi te, ima monosi tamahu ha, noti no Ohoki-otodo no ohom-musume, makibasira hanare gataku si tamahi si Kimi wo, Sikibukyau-no-Miya ni te, ko-Hyaubukyau-no-Miko ni ahase tatematuri tamahe ri si wo, Miko use tamahi te noti, sinobi tutu kayohi tamahi sika do, tosi-tuki hure ba, e sa si mo habakari tamaha nu na'meri.
 Miko ha, ko-Kitanokata no ohom-hara ni, hutari nomi zo ohasikere ba, sau-zausi tote, Kami Hotoke ni inori te, ima no ohom-hara ni zo, Wotoko-Gimi hitori mauke tamahe ru. Ko-Miya no Ohom-Kata ni, Womna-Gimi hito-tokoro ohasu. Hedate waka zu, idure wo mo onazi goto, omohi kikoye kahasi tamahe ru wo, ono-ono ohom-kata no hito nado ha, uruhasiu mo ara nu kokoro-bahe uti-maziri, nama-kune-kunesiki koto mo ide-kuru toki-doki are do, Kitanokata, ito hare-baresiku imameki taru hito ni te, tumi naku torinasi, waga ohom-kata zama ni kurusikaru beki koto wo mo, nadaraka ni kiki-nasi, omohi-nahosi tamahe ba, kiki-nikukara de meyasukari keri.

 [1-2 按察大納言家の三姫君]
君たち、同じほどに、すぎすぎおとなびたまひぬれば、御裳など着せたてまつりたまふ。七間の寝殿、広く大きに造りて、南面に、大納言殿、大君、西に中の君、東に宮の御方と、住ませたてまつりたまへり。
おほかたにうち思ふほどは、父宮のおはせぬ心苦しきやうなれど、こなたかなたの御宝物多くなどして、うちうちの儀式ありさまなど、心にくく気高くなどもてなして、けはひあらまほしくおはす。
例の、かくかしづきたまふ聞こえありて、次々に従ひつつ聞こえたまふ人多く、「内裏、春宮より御けしきあれど、内裏には中宮おはします。いかばかりの人かは、かの御けはひに並びきこえむ。さりとて、思ひ劣り卑下せむもかひなかるべし。春宮には、右大臣殿の女御1986、並ぶ人なげにてさぶらひたまふは、きしろひにくけれど、さのみ言ひてやは。人にまさらむと思ふ女子を、宮仕へに思ひ絶えては、何の本意かはあらむ」と思したちて、参らせたてまつりたまふ。十七、八のほどにて、うつくしう、匂ひ多かる容貌したまへり。
中の君も、うちすがひて、あてになまめかしう、澄みたるさまはまさりて、をかしうおはすめれば、「ただ人にては、あたらしく見せま憂き御さまを、兵部卿宮の、さも思したらば」など思したる。この若君を、内裏にてなど見つけたまふ時は、召しまとはし、戯れ敵にしたまふ。心ばへありて、奥推し量らるる1987まみ額つきなり。
「せうとを見てのみはえやまじと、大納言に申せよ」などのたまひかくるを、「さなむ」と聞こゆれば、うち笑みて、「いとかひあり」と思したり。
「人に劣らむ宮仕ひよりは、この宮にこそは、よろしからむ女子は見せたてまつらまほしけれ。心ゆくにまかせて、かしづきて見たてまつらむに、命延びぬべき宮の御さまなり」
とのたまひながら、まづ、春宮の御ことをいそぎたまひて、「春日の神の御ことわりも、わが世にやもし出で来て、故大臣の、院の女御の御ことを、胸いたく思してやみにし慰めのこともあらなむ」と、心のうちに祈りて、参らせたてまつりたまひつ。いと時めきたまふよし、人びと聞こゆ。
かかる御まじらひの馴れたまはぬほどに、はかばかしき御後見なくてはいかがとて、北の方添ひてさぶらひたまへば、まことに限りもなく思ひかしづき、後見きこえたまふ。

 [1-2 按察大納言家の三姫君]
姫君は、同じ年頃で、次々と大きくおなりになったので、御裳着などお着せ申し上げなさる。七間の寝殿を、広く大きく造って、南面に、大納言殿と大君、西面に中の君、東面に宮の御方と、お住ませ申し上げなさるのであった。
おおかたの想像では、父宮がいらしゃらないお気の毒なようであるが、祖父宮方と父宮方とからの御宝物がたくさんあったりして、内々の儀式や普段の生活など、奥ゆかしく気品のあるお暮らしぶりで、その様子は申し分なくいらっしゃる。
例によって、このように大切になさっているという評判が立って、次々と申し込みなさる方が多く、「帝や、春宮からも御内意はあるが、帝には中宮がいらっしゃる。どれほどの方が、あのお方にご比肩申せよう。そうかといって、及ばないと諦めて卑下するのも、宮仕えする甲斐がないだろう。春宮には、右大臣殿の女御が、並ぶ人がないように伺候していらっしゃるのは、競い合いにくいが、そうとばかり言っていられようか。人よりすぐれているだろうと思う姫君を、宮仕えに出すことを諦めてしまっては、何の望みがあろうか」とご決意なさって、入内させ申し上げなさる。十七、八歳のほどで、かわいらしく、派手やかな器量をしていらっしゃった。
中の君も、引き続いて、上品で優美で、すっきり落ち着いた点では大君に勝って、美しくいらっしゃるようなので、「臣下の人では、惜しく気が進まないご器量なので、兵部卿宮が、そのように望んでくださったら」などとお思いになっていた。この若君を、宮中などで御覧になる時は、お召しまとわせ、遊び相手になさっている。利発であって、将来の期待される目もとや額つきである。
「弟と付き合うだけでは終わりたくないと、大納言に申し上げよ」などとお話しかけになるので、「しかじか」と申し上げると、微笑んで、「まことにその甲斐があった」と思いになっていた。
「人に負けるような宮仕えよりは、この宮にこそ、人並みの姫君は差し上げたいものだ。思いのままにまかせて、お世話申し上げることになったら、寿命もきっと延びる気がする宮のご様子である」
とおっしゃりながら、まず、春宮への御入内の事をお急ぎになって、「春日の神の御神託も、わが世にもしや現れ出て、故大臣が、院の女御の御事を、無念にお思いのまま亡くなってしまったお心を慰めることがあってほしい」と、心中に祈って、入内させなさった。たいそう御寵愛である由を、人びとはお噂申す。
このような後宮生活にお馴れにならないうちは、しっかりしたご後見がなくてはどんなものかと、北の方が付き添っていらっしゃるので、ほんとうにこの上もなく大切に思って、ご後見申し上げなさる。

 [1-2 Three sisters of Kobai's]
 Kimi-tati, onazi hodo ni, sugi-sugi otonabi tamahi nure ba, ohom-mo nado kise tatematuri tamahu. Siti-ken no sinden, hiroku ohoki ni tukuri te, minami-omote ni, Dainagon-dono, Ohoi-Kimi, nisi ni Naka-no-Kimi, himgasi ni Miya-no-Ohomkata to, suma se tatematuri tamahe ri.
 Ohokata ni uti-omohu hodo ha, Titi-Miya no ohase nu kokoro-gurusiki yau nare do, konata kanata no ohom-takara-mono ohoku nado si te, uti-uti no gisiki arisama nado, kokoro-nikuku kedakakaku nado motenasi te, kehahi aramahosiku ohasu.
 Rei no, kaku kasiduki tamahu kikoye ari te, tugi-tugi ni sitagahi tutu kikoye tamahu hito ohoku, "Uti, Touguu yori mi-kesiki are do, Uti ni ha Tiuguu ohasimasu. Ikabakari no hito ka ha, kano ohom-kehahi ni narabi kikoye m. Sari-tote, omohi otori hige se m mo kahi nakaru besi. Touguu ni ha, U-Daizin-dono no Nyougo, narabu hito nage ni te saburahi tamahu ha, kisirohi nikukere do, sa nomi ihi te ya ha. Hito ni masara m to omohu womna-go wo, Miya-dukahe ni omohi taye te ha, nani no ho'i ka ha ara m." to obosi-tati te, mawira se tatematuri tamahu. Zihu-siti, hati no hodo ni te, utukusiu, nihohi ohokaru katati si tamahe ri.
 Naka-no-Kimi mo, uti-sugahi te, ate ni namamekasiu, sumi taru sama ha masari te, wokasiu ohasumere ba, "Tada-udo ni te ha, atarasiku mise ma uki ohom-sama wo, Hyaubukyau-no-Miya no, sa mo obosi tara ba." nado obosi taru. Kono Waka-Gimi wo, Uti ni te nado mituke tamahu toki ha, mesi-matohasi, tahabure-gataki ni si tamahu. Kokoro-bahe ari te, oku osihakara ruru mami hitahi-tuki nari.
 "Seuto wo mi te nomi ha e yama zi to, Dainagon ni mawose yo." nado notamahi kakuru wo, "Sa nam." to kikoyure ba, uti-wemi te, "Ito kahi ari" to obosi tari.
 "Hito ni otora m Miya-dukahi yori ha, kono Miya ni koso ha, yorosikara m womna-go ha mise tatematura mahosikere. Kokoro-yuku ni makase te, kasiduki te mi tatematura m ni, inoti nobi nu beki Miya no ohom-sama nari."
 to notamahi nagara, madu, Touguu no ohom-koto wo isogi tamahi te, "Kasuga-no-Kami no ohom-kotowari mo, waga yo ni ya mosi ide-ki te, ko-Otodo no, Win-no-Nyougo no ohom-koto wo, mune itaku obosi te yami ni si nagusame no koto mo ara nam." to, kokoro no uti ni inori te, mawira se tatematuri tamahi tu. Ito toki-meki tamahu yosi, hito-bito kikoyu.
 Kakaru ohom-mazirahi no nare tamaha nu hodo ni, haka-bakasiki ohom-usiromi naku te ha ikaga tote, Kitanokata sohi te saburahi tamahe ba, makoto ni kagiri mo naku omohi kasiduki, usiromi kikoye tamahu.

 [1-3 宮の御方の魅力]
殿は、つれづれなる心地して、西の御方は、一つに慣らひたまひて、いとさうざうしくながめたまふ。東の姫君も、うとうとしくかたみにもてなしたまはで、夜々は一所に大殿籠もり、よろづの御こと習ひ、はかなき御遊びわざをも、こなたを師のやうに思ひきこえてぞ、誰も習ひ遊びたまひける。
もの恥ぢを世の常ならずしたまひて、母北の方にだに、さやかにはをさをささし向ひたてまつりたまはず、かたはなるまでもてなしたまふものから、心ばへけはひの埋れたるさまならず、愛敬づきたまへること、はた、人よりすぐれたまへり。
かく、内裏参りや何やと、わが方ざまをのみ思ひ急ぐやうなるも、心苦しなど思して、
「さるべからむさまに思し定めてのたまへ。同じこととこそは、仕うまつらめ」
と、母君にも聞こえたまひけれど、
「さらにさやうの世づきたるさま、思ひ立つべきにもあらぬけしきなれば、なかなかならむことは、心苦しかるべし。御宿世にまかせて、世にあらむ限りは見たてまつらむ。後ぞあはれにうしろめたけれど、世を背く方にても、おのづから人笑へに、あはつけきことなくて、過ぐしたまはなむ」
など、うち泣きて、御心ばせの思ふやうなることをぞ聞こえたまふ。
いづれも分かず親がりたまへど、御容貌を見ばやとゆかしう思して、「隠れたまふこそ心憂けれ」と恨みて、「人知れず、見えたまひぬべしや」と、覗きありきたまへど、絶えてかたそばをだに、え見たてまつりたまはず。
「上おはせぬほどは、立ち代はりて参り来べきを、うとうとしく思し分くる御けしきなれば、心憂くこそ」
など聞こえ、御簾の前にゐたまへば、御いらへなど、ほのかに聞こえたまふ。御声けはひなど、あてにをかしう、さま容貌思ひやられて、あはれにおぼゆる人の御ありさまなり。わが御姫君1988たちを、人に劣らじと思ひおごれど、「この君に、えしもまさらずやあらむ。かかればこそ、世の中の広きうちはわづらはしけれ。たぐひあらじと思ふに、まさる方も、おのづからありぬべかめり」など、いとどいぶかしう思ひきこえたまふ。

 [1-3 宮の御方の魅力]
殿は、所在ない心地がして、西の御方は、一緒でいることに馴れていらっしゃたので、とても寂しく物思いに沈んでいらっしゃる。東の姫君も、よそよそしくお互いになさらず、夜々は同じ所にお寝みになり、いろいろなお稽古事を習い、ちょっとしたお遊び事なども、こちらを先生のようにお思い申し上げて、大君も中の君も習ったり遊んだりしていらっしゃった。
人見知りを世間の人以上になさって、母北の方にさえ、ちゃんとお顔をお見せ申し上げることもなさらず、おかしなほど控え目でいらっしゃる一方で、気立てや雰囲気が陰気なところはなく、愛嬌がおありであることは、それは、誰よりも優れていらっしゃった。
このように、春宮への入内や何やかやと、ご自分の姫君のことばかり考えてご準備するのも、お気の毒だとお思いになって、
「適当なご縁談をお考えになっておっしゃってください。同じように、お世話いたしましょう」
と、母君にも申し上げなさったが、
「まったくそのような結婚の事は、考えようともしない様子なので、なまじっかの結婚は、気の毒でしょう。ご運命にまかせて、自分が生きている間はお世話申そう。死後はかわいそうで心配ですが、出家してなりとも、自然と人から笑われ、軽薄なことがなくて、お過ごしになってほしい」
などと、ちょっと泣いて、宮のご性質が立派なことを申し上げなさる。
どの娘も分け隔てなく親らしくなさるが、ご器量を見たいと心動かされて、「お顔をお見せにならないのが辛いことだ」と恨んで、「こっそりと、お見えにならないか」と、覗いて回りなさるが、全然ちらりとさえお見せにならない。
「母上がいらっしゃらない間は、代わってわたしが参りますが、よそよそしく分け隔てなさるご様子なので、辛いことです」
などと申し上げて、御簾の前にお座りになるので、お返事などを、かすかに申し上げなさる。お声、様子など、上品で美しく、容姿や器量が想像されて、立派だと感じられるご様子の人である。ご自分の姫君たちを、誰にも負けないだろうと自慢に思っているが、「この姫君には、とても勝てないだろうか。こうだからこそ、世間付き合いの広い宮中は厄介なのだ。二人といまいと思うのに、それ以上の方も自然といることだろう」などと、ますます気がかりにお思い申し上げになさる。

 [1-3 Miya-no-onkata's talent]
 Tono ha, ture-dure naru kokoti si te, Nisi-no-Ohomkata ha, hitotu ni narahi tamahi te, ito sau-zausiku nagame tamahu. Himgasi-no-Hime-Gimi mo, uto-utosiku katami ni motenasi tamaha de, yoru-yoru ha hito-tokoro ni ohotono-gomori, yorodu no ohom-koto narahi, hakanaki ohom-asobi-waza wo mo, konata wo si no yau ni omohi kikoye te zo, tare mo narahi asobi tamahi keru.
 Mono-hadi wo yo no tune nara zu si tamahi te, Haha-Kitanokata ni dani, sayaka ni ha wosa-wosa sasi-mukahi tatematuri tamaha zu, kataha naru made motenasi tamahu mono kara, kokoro-bahe kehahi no umore taru sama nara zu, aigyau-duki tamahe ru koto, hata, hito yori sugure tamahe ri.
 Kaku, Uti-mawiri ya nani ya to, waga kata zama wo nomi omohi isogu yau naru mo, kokoro-gurusi nado obosi te,
 "Saru bekara m sama ni obosi sadame te notamahe. Onazi koto to koso ha, tukau-matura me."
 to, Haha-Gimi ni mo kikoye tamahi kere do,
 "Sarani sayau no yo-duki taru sama, omohi-tatu beki ni mo ara nu kesiki nare ba, naka-naka nara m koto ha, kokoro-gurusikaru besi. Ohom-sukuse ni makase te, yo ni ara m kagiri ha mi tatematura m. Noti zo ahare ni usirometakere do, yo wo somuku kata ni te mo, onodukara hito-warahe ni, ahatukeki koto naku te, sugusi tamaha nam."
 nado, uti-naki te, mi-kokoro-base no omohu yau naru koto wo zo kikoye tamahu.
 Idure mo waka zu oya-gari tamahe do, ohom-katati wo mi baya to yukasiu obosi te, "Kakure tamahu koso kokoro-ukere." to urami te, "Hito sire zu, miye tamahi nu besi ya." to, nozoki ariki tamahe do, taye te katasoba wo dani, e mi tatematuri tamaha zu.
 "Uhe ohase nu hodo ha, tati-kahari te mawiri ku beki wo, uto-utosiku obosi-wakuru mi-kesiki nare ba, kokoro-uku koso."
 nado kikoye, mi-su no mahe ni wi tamahe ba, ohom-irahe nado, honoka ni kikoye tamahu. Ohom-kowe kehahi nado, ate ni wokasiu, sama katati omohi-yara re te, ahare ni oboyuru hito no mi-arisama nari. Waga ohom-Hime-Gimi-tati wo, hito ni otora zi to omohi ogore do, "Kono Kimi ni, e si mo masara zu ya ara m? Kakare ba koso, yononaka no hiroki uti ha wadurahasikere. Taguhi ara zi to omohu ni, masaru kata mo, onodukara ari nu beka'meri." nado, itodo ibukasiu omohi kikoye tamahu.

 [1-4 按察大納言の音楽談義]
「月ごろ、何となくもの騒がしきほどに、御琴の音をだにうけたまはらで久しうなりはべりにけり。西の方にはべる人は、琵琶を心に入れてはべる、さもまねび取りつべくやおぼえはべらむ。なまかたほにしたるに、聞きにくきものの音がらなり。同じくは、御心とどめて教へさせたまへ。
翁は、とりたてて習ふものはべらざりしかど、そのかみ、盛りなりし世に遊びはべりし力にや、聞き知るばかりのわきまへは、何ごとにもいとつきなうはべらざりしを、うちとけても遊ばさねど、時々うけたまはる御琵琶の音なむ、昔おぼえはべる。
故六条院の御伝へにて、右の大臣なむ、このころ世に残り1989たまへる。源中納言、兵部卿宮、何ごとにも、昔の人に劣るまじう、いと契りことにものしたまふ人びとにて、遊びの方は、取り分きて心とどめたまへるを、手づかひすこしなよびたる撥音などなむ、大臣には及びたまはずと思うたまふるを、この1990御琴の音こそ、いとよくおぼえたまへれ。
琵琶は、押手しづやかなるをよきにするものなるに、柱さすほど、撥音のさま変はりて、なまめかしう聞こえたるなむ1991、女の御ことにて、なかなかをかしかりける。いで、遊ばさむや。御琴参れ」
とのたまふ。女房などは、隠れたてまつるもをさをさなし。いと若き上臈だつが、見えたてまつらじと思ふはしも、心にまかせてゐたれば、「さぶらふ人さへかくもてなすが、やすからぬ」と腹立ちたまふ。

 [1-4 按察大納言の音楽談義]
「ここ幾月、何となくごたごたしていたが、お琴の音さえ聴かせて戴かないで久しくなってしまった。西の方におります人は、琵琶に熱心でございますが、そのように上手に習得できると思っているのでしょうか。中途半端にしたのでは、聞きにくい楽器の音色です。同じことなら、十分に念を入れて教えて上げてください。
老人は、特別に習ったものはございませんでしたが、その昔、盛りだったころに合奏に加わったお蔭でしょうか、演奏の上手下手を聞き分ける程度の区別は、どのような楽器にもひどく不案内ということはございませんでしたが、気を許してお弾きになりませんが、時々お聴きするあなたの琵琶の音色は、昔が思い出されます。
故六条院のご伝授では、右大臣が、今でも世に残っていらっしゃいます。源中納言、兵部卿宮は、どのようなことでも、昔の人に負けないほど、まことに前世からの因縁が格別でいらっしゃる方々で、音楽の方面は、特別に熱心でいらっしゃるので、手さばきの少し弱々しい撥の音などが、大臣には負けていらっしゃると存じておりますが、このお琴の音色は、とてもよく似ていらっしゃいます。
琵琶は、押し手を静かにするのを上手とする都言いますが、柱を据えた時、撥の音の様子が変わって、優美に聞こえるのが、女性のお琴としては、かえって結構なものです。さあ、合奏なさいませんか。お琴を持って参れ」
とおっしゃる。女房などは、お隠れ申している者はほとんどいない。たいそう若い上臈ふうの女房が、姿をお見せ申し上げまいと思っているのは、勝手に奥に座っているので、「お側の女房までがこのように気ままに振る舞うのが、おもしろくない」と腹をお立てになる。

 [1-4 Kobai talks about biwa to Miya-no-onkata]
 "Tuki-goro, nani to naku mono-sawagasiki hodo ni, ohom-koto no ne wo dani uketamahara de hisasiu nari haberi ni keri. Nisi no kata ni haberu hito ha, biha wo kokoro ni ire te haberu, sa mo manebi tori tu beku ya oboye habera m. Nama-kataho ni si taru ni, kiki-nikuki mono no ne-gara nari. Onaziku ha, mi-kokoro todome te wosihe sase tamahe.
 Okina ha, tori-tate te narahu mono habera zari sika do, sono-kami, sakari nari si yo ni asobi haberi si tikara ni ya, kiki-siru bakari no wakimahe ha, nani-goto ni mo ito tuki-nau habera zari si wo, utitoke te mo asoba sa ne do, toki-doki uketamaharu ohom-biha no ne nam, mukasi oboye haberu.
 Ko-Rokudeu-no-Win no ohom-tutahe ni te, Migi-no-Otodo nam, kono-koro yo ni nokori tamahe ru. Gwen-Tiunagon, Hyaubukyau-no-Miya, nani-goto ni mo, mukasi no hito ni otoru maziu, ito tigiri koto ni monosi tamahu hito-bito ni te, asobi no kata ha, tori-waki te kokoro todome tamahe ru wo, te-dukahi sukosi nayobi taru bati-oto nado nam, Otodo ni ha oyobi tamaha zu to omou tamahuru wo, kono ohom-koto no ne koso, ito yoku oboye tamahe re.
 Biha ha, osi-te siduyaka naru wo yoki ni suru mono naru ni, diu sasu hodo, bati-oto no sama kahari te, namamekasiu kikoye taru nam, womna no ohom-koto ni te, naka-naka wokasikari keru. Ide, asoba m ya? Ohom-koto mawire."
 to notamahu. Nyoubau nado ha, kakure tatematuru mo wosa-wosa nasi. Ito wakaki zyaurahu-datu ga, miye tatematura zi to omohu ha si mo, kokoro ni makase te wi tare ba, "Saburahu hito sahe kaku motenasu ga, yasukara nu." to hara-dati tamahu.

 2 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心 [2-1 按察大納言、匂宮に和歌を贈る]
若君、内裏へ参らむと、宿直姿にて参りたまへる、わざとうるはしきみづらよりも、いとをかしく見えて、いみじううつくしと思したり。麗景殿に、御ことづけ聞こえたまふ。
「譲りきこえて、今宵もえ参るまじく、悩ましく、など聞こえよ」とのたまひて、「笛すこし仕うまつれ。ともすれば、御前の御遊びに召し出でらるる、かたはらいたしや。まだいと若き笛を」
とうち笑みて、双調吹かせたまふ。いとをかしう吹いたまへば、
「けしうはあらずなりゆくは、このわたりにて、おのづから物に合はするけなり。なほ、掻き合はせさせたまへ」
と責めきこえたまへば、苦しと思したるけしきながら、爪弾きにいとよく合はせて、ただすこし掻き鳴らいたまふ。皮笛、ふつつかに馴れたる声して、この東のつまに、軒近き紅梅の、いとおもしろく匂ひたるを見たまひて、
「御前の花、心ばへありて見ゆめり。兵部卿宮、内裏におはすなり。一枝折りて参れ。知る人ぞ知る1992」とて、「あはれ、光源氏、といはゆる御盛りの大将などにおはせしころ、童にて、かやうにてまじらひ馴れきこえしこそ、世とともに恋しうはべれ。
この宮たちを、世人も、いとことに思ひきこえ、げに人にめでられむとなりたまへる御ありさまなれど、端が端にもおぼえたまはぬは、なほたぐひあらじと思ひきこえし心のなしにやありけむ。
おほかたにて、思ひ出でたてまつるに、胸あく世なく悲しきを、気近き人の後れたてまつりて、生きめぐらふは、おぼろけの命長さなりかし、とこそおぼえはべれ」
など、聞こえ出でたまひて、ものあはれにすごく思ひめぐらししをれたまふ。
ついでの忍びがたきにや、花折らせて、急ぎ参らせたまふ。
「いかがはせむ。昔の恋しき御形見には、この宮ばかりこそは。仏の隠れたまひけむ御名残には、阿難が光放ちけむを、二度出でたまへるかと疑ふさかしき聖のありけるを、闇に惑ふはるけ所に、聞こえをかさむかし」とて、
「心ありて風の匂はす園の梅に
まづ鴬の訪はずや1993あるべき」
と、紅の紙に若やぎ書きて、この君の懐紙に取りまぜ、押したたみて出だしたてたまふを、幼き心に、いと馴れきこえまほしと思へば、急ぎ参りたまひぬ。

 2 匂兵部卿の物語 宮の御方に執心 [2-1 按察大納言、匂宮に和歌を贈る]
若君は、宮中へ参内しようと、宿直姿で参上なさったが、特別にきちんとした角髪よりも、とても美しく見えて、たいそうかわいいとお思いになっていた。麗景殿に、おことづけを申し上げなさる。
「お任せ申して、今夜も参ることができない、気分が悪いのだ、などと申し上げよ」とおっしゃって、「笛を少しおつとめ申せ。どうかすると、御前の御合奏に召し出されるが、はらはらさせられることだ。まだとても未熟な笛なので」
とほほ笑んで、双調を吹かせなさる。たいそう美しくお吹きになるので、
「まままあになって行くのは、この辺りで、何かの折りに合奏するからであろう。ぜひ、お琴をお弾き合わせ頂きたい」
とお責め申し上げなさるので、辛いとお思いの様子であるが、爪弾きにとてもよく合わせて、ただ少し掻き鳴らしなさる。口笛を、太い音で物馴れた声して吹いて、この東の端に、軒に近い紅梅が、たいそう美しく咲き匂っているのを御覧になって、
「お庭先の梅が、風情あるように見える。兵部卿宮は、宮中にいらっしゃるそうだ。一枝折って差し上げよ。知る人は知っている」と言って、「ああ、光源氏、といわれたお盛りの大将などでいらしたころ、子供で、このようにしてお仕え馴れ申したのが、年とともに恋しいことです。
この宮たちを、世間の人も、たいそう格別にお思い申し上げ、なるほど誰からも誉められるようにおなりになったご様子であるが、まったく問題に思われなさらないのは、やはり絶世の方だとお思い申し上げた気持ちのせいでしょうか。
世間一般の立場から、お思い出し申し上げるのに、胸の晴れる時もなく悲しいので、身近な人に先立たれ申して、生き残っているのは、並々でなく長生きを辛いことであろう、と思われます」
などと、申し上げなさって、しみじみと索漠とした子持ちで回想し沈んでいらっしゃる。
折が折とて堪えることができなかったのか、花を折らせて、急いで参上させなさる。
「しかたない。昔の恋しい形見としては、この宮だけだ。釈迦のお隠れになった後には、阿難が光を放ったというが、再来されたかと疑う賢い聖がいたが、闇に迷う悲しみを払うよすがとして、申し上げてみよう」とおっしゃって、
「考えがあって風が匂わす園の梅に
さっそく鴬が来ないことがありましょうか」
と、紅の紙に若々しく書いて、この君の懐紙にまぜて、押したたんでお出しになるのを、子供心に、とてもお親しくしたいと思うので、急いで参上なさった。

 2 Tale of Nio-no-miya Nio-no-miya sets his heart on Miya-no-onkata [2-1 Kobai composes and gifts waka to Nio-no-miya]
 Waka-Gimi, Uti he mawira m to, tonowi-sugata ni te, mawiri tamahe ru, wazato uruhasiki midura yori mo, ito wokasiku miye te, imiziu utukusi to obosi tari. Reikei-den ni, ohom-kotoduke kikoye tamahu.
 "Yuduri kikoye te, koyohi mo e mawiru maziku, nayamasiku, nado kikoye yo." to notamahi te, "Hue sukosi tukau-mature. Tomo-sure ba, o-mahe no ohom-asobi ni mesi-ide raruru, katahara-itasi ya! Mada ito wakaki hue wo."
 to uti-wemi te, Saudeu huka se tamahu. Ito wokasiu hui tamahe ba,
 "Kesiu ha ara zu nari-yuku ha, kono watari ni te, onodukara mono ni ahasuru ke nari. Naho, kaki-ahase sase tamahe."
 to seme kikoye tamahe ba, kurusi to obosi taru kesiki nagara, tuma-biki ni ito yoku ahase te, tada sukosi kaki-narai tamahu. Kaha-bue, hututuka ni nare taru kowe si te, kono himgasi no tuma ni, noki tikaki koubai no, ito omosiroku nihohi taru wo mi tamahi te,
 "O-mahe no hana, kokoro-bahe ari te miyu meri. Hyaubukyau-no-Miya, Uti ni ohasu nari. Hito-eda wori te mawire. Siru hito zo siru." tote, "Ahare, Hikaru-Gwenzi, to ihayuru ohom-sakari no Daisyau nado ni ohase si koro, waraha ni te, kayau ni te mazirahi nare kikoye si koso, yo to tomoni kohisiu habere.
 Kono Miya-tati wo, yo-hito mo, ito koto ni omohi kikoye, geni hito ni mede rare m to nari tamahe ru mi-arisama nare do, hasi ga hasi ni mo oboye tamaha nu ha, naho taguhi ara zi to omohi kikoye si kokoro no nasi ni ya ari kem.
 Ohokata ni te, omohi-ide tatematuru ni, mune aku yo naku kanasiki wo, kedikaki hito no okure tatematuri te, iki megurahu ha, oboroke no inoti nagasa nari kasi, to koso oboye habere."
 nado, kikoye ide tamahi te, mono ahare ni sugoku omohi-megurasi siwore tamahu.
 Tuide no sinobi gataki ni ya, hana wora se te, isogi mawira se tamahu.
 "Ikaga ha se m. Mukasi no kohisiki ohom-katami ni ha, kono Miya bakari koso ha. Hotoke no kakure tamahi kem ohom-nagori ni ha, Anan ga hikari hanati kem wo, hutatabi ide tamahe ru ka to utagahu sakasiki hiziri no ari keru wo, yami ni madohu haruke-dokoro ni, kikoye wokasa m kasi." tote,
 "Kokoro ari te kaze no nihohasu sono no ume ni
 madu uguhisu no toha zu ya aru beki
"
 to, kurenawi no kami ni wakayagi kaki te, kono Kimi no hutokoro-gami ni tori-maze, osi-tatami te idasi tate tamahu wo, wosanaki kokoro ni, ito nare kikoye mahosi to omohe ba, isogi mawiri tamahi nu.

 [2-2 匂宮、若君と語る]
中宮の上の御局より、御宿直所に出でたまふほどなり。殿上人あまた御送りに参る中に、見つけたまひて、
「昨日は、などいと疾くはまかでにし。いつ参りつるぞ」などのたまふ。
「疾くまかではべりにし悔しさに、まだ内裏におはしますと人の申しつれば、急ぎ参りつるや」
と、幼げなるものから、馴れきこゆ。
「内裏ならで、心やすき所にも、時々は遊べかし。若き人どもの、そこはかとなく集まる所ぞ」
とのたまふ。この君召し放ちて語らひたまへば、人びとは、近うも参らず、まかで散りなどして、しめやかになりぬれば、
「春宮には、暇すこし許されためりな。いとしげう思しまとはすめりしを、時取られて人悪ろかめり」
とのたまへば、
「まつはさせたまひしこそ苦しかりしか。御前にはしも」
と、聞こえさしてゐたれば、
「我をば、人げなしと思ひ離れたるとな。ことわりなり。されどやすからずこそ。古めかしき同じ筋にて、東と聞こゆなるは、あひ思ひたまひてむやと、忍びて語らひきこえよ」
などのたまふついでに、この花をたてまつれば、うち笑みて、
「怨みてのちならましかば」
とて、うちも置かず御覧ず。枝のさま、花房、色も香も世の常ならず。
「園に匂へる紅の、色に取られて、香なむ1994、白き梅には劣れるといふめるを、いとかしこく、とり並べても咲きけるかな」
とて、御心とどめたまふ花なれば、かひありて1995、もてはやしたまふ。

 [2-2 匂宮、若君と語る]
中宮の上の御局から、ご宿直所にお出になるところである。殿上人が大勢お送りに参上する中から、お見つけになって、
「昨日は、どうしてとても早く退出したのだ。いつ参ったのか」などとおっしゃる。
「早く退出いたしましたのが残念で、まだ宮中にいらっしゃると人が申しましたので、急いで参上したのですよ」
と、子供らしいものの、なれなれしく申し上げる。
「宮中でなく、気楽な所でも、時々は遊びなさい。若い人たちが、誰彼となく集まる所だ」
とおっしゃる。この君を一人だけ呼んでお話になるので、他の人びとは、近くには参らず、退出して散って行ったりして、静かになったので、
「春宮におかれては、お暇を少し許されたようだね。とてもひどくお目をかけられてお側離さずにいらっしゃったようだが、寵愛を奪われて体裁が悪いようだね」
とおっしゃるので、
「お側から離してくださらず困ってしまいました。あなた様のお側でしたら」
と、途中まで申し上げて座っているので、
「わたしを、一人前でないと敬遠しているのだな。もっともだ。けれどおもしろくないな。古くさい同じ血筋で、東の御方と申し上げる方は、わたしと思い合ってくださろうかと、こっそりとよく申し上げてくれ」
などとおっしゃる折に、この花を差し上げると、ほほ笑んで、
「こちらから恨み言を言った後からだったら」
とおっしゃって、下にも置かず御覧になる。枝の様子や、花ぶさが、色も香も普通のとは違っている。
「園に咲き匂っている紅梅は、色に負けて、香は、白梅に劣ると言うようだが、とても見事に、色も香も揃って咲いているな」
とおっしゃって、お心をとめていらっしゃる花なので、効があって、ご賞美なさる。

 [2-2 Nio-no-miya talks with Miya-no-onkata's brother]
 Tiuguu no Uhe-no-mitubone yori, ohom-tonowi-dokoro ni ide tamahu hodo nari. Tenzyau-bito amata ohom-okuri ni mawiru naka ni, mituke tamahi te,
 "Kinohu ha, nado ito toku ha makade ni si? Itu mawiri turu zo?" nado notamahu.
 "Toku makade haberi ni si kuyasisa ni, mada Uti ni ohasimasu to hito no mawosi ture ba, isogi mawiri turu ya."
 to, wosanage naru monokara, nare kikoyu.
 "Uti nara de, kokoro-yasuki tokoro ni mo, toki-doki ha asobe kasi. Wakaki hito-domo no, sokohaka-to-naku atumaru tokoro zo."
 to notamahu. Kono Kimi mesi-hanati te katarahi tamahe ba, hito-bito ha, tikau mo mawira zu, makade tiri nado si te, simeyaka ni nari nure ba,
 "Touguu ni ha, itoma sukosi yurusa re ta'meri na. Ito sigeu obosi-matohasu meri si wo, toki tora re te hito-waroka' meri."
 to notamahe ba,
 "Matuhasa se tamahi si koso kurusikari sika. O-mahe ni ha si mo."
 to, kikoye sasi te wi tare ba,
 "Ware wo ba, hito-ge nasi to omohi-hanare taru to na. Kotowari nari. Saredo yasukara zu koso. Hurumekasiki onazi sudi ni te, Himgasi to kikoyu naru ha, ahi-omohi tamahi te m ya to, sinobi te katarahi kikoye yo."
 nado notamahu tuide ni, kono hana wo tatemature ba, uti-wemi te,
 "Urami te noti nara masika ba."
 tote, uti mo oka zu go-ran-zu. Eda no sama, hana-busa, iro mo ka mo yo no tune nara zu.
 "Sono ni nihohe ru kurenawi no, iro ni tora re te, ka nam, siroki ume ni ha otore ru to ihu meru wo, ito kasikoku, tori-narabe te mo saki keru kana!"
 tote, mi-kokoro todome tamahu hana nare ba, kahi ari te, motehayasi tamahu.

 [2-3 匂宮、宮の御方を思う]
「今宵は宿直なめり。やがてこなたにを」
と、召し籠めつれば、春宮にもえ参らず、花も恥づかしく思ひぬべく香ばしくて、気近く臥せたまへるを、若き心地には、たぐひなくうれしくなつかしう思ひきこゆ。
「この花の主人は、など春宮には移ろひたまはざりし」
「知らず。心知らむ人に1996などこそ、聞きはべりしか」
など語りきこゆ。「大納言の御心ばへは、わが方ざまに思ふべかめれ」と聞き合はせたまへど、思ふ心は異に1997しみぬれば、この返りこと、けざやかにものたまひやらず。
翌朝、この君のまかづるに、なほざりなるやうにて、
「花の香に誘はれぬべき身なりせば
風のたよりを過ぐさましやは」
さて、「なほ今は、翁どもにさかしらせさせで1998、忍びやかに」と、返す返すのたまひて、この君も、東のをば、やむごとなく睦ましう思ひましたり。
なかなか異方の姫君は、見えたまひなどして、例の兄弟のさまなれど、童心地に、いと重りかにあらまほしうおはする心ばへを、「かひあるさまにて見たてまつらばや」と思ひありくに、春宮の御方の、いとはなやかにもてなしたまふにつけて、同じこととは思ひながら、いと飽かず口惜しければ、「この宮をだに、気近くて見たてまつらばや」と思ひありくに、うれしき花のついでなり。

 [2-3 匂宮、宮の御方を思う]
「今夜は宿直のようだ。そのままこちらに」
と、呼んだままお離しにならないので、春宮にも参上できず、花も恥ずかしく思うくらい香ばしい匂いで、お側近くに寝かせなさったので、子供心に、またとなく嬉しく慕わしくお思い申し上げる。
「この花の主人は、どうして春宮には行かれなかったのだ」
「存じません。ものの分かる方になどと、聞いておりました」
などとお答え申し上げる。「大納言のお気持ちは、実の娘を考えているようだ」と思い合わせなさるが、思っていらっしゃる心は別のほうなので、このお返事は、はっきりとはおっしゃらない。
翌朝、この君が退出する時に、気のりしない態度で、
「花の香に誘われそうな身であったら
風の便りをそのまま黙っていましょうか」
そうして、「やはり今は、老人たちに出しゃばらせずに、こっそりと」と、繰り返しおっしゃって、この君も、東の御方を、大切に親しく思う気持ちが増した。
かえって他の姫君たちは、お顔をお見せになったりして、普通の姉弟みたいな様子であるが、子供心に、とても重々しく理想的でいらっしゃるご性質を、「お世話しがいのある方と結婚させてあげたいものだ」と日頃思っていたが、春宮の御方が、たいそう華やかなお暮らしでいらっしゃるのにつけて、同じ嬉しいこととは思うものの、とてもたまらなく残念なので、「せめてこの宮だけでも身近に拝見したいものだ」と思ってうろうろしている時に、嬉しい花の便りのきっかけである。

 [2-3 Nio-no-miya loves Miya-no-onkata]
 "Koyohi ha tonowi na'meri. Yagate konata ni wo!"
 to, mesi-kome ture ba, Touguu ni mo e mawira zu, hana mo hadukasiku omohi nu beku kaubasiku te, kedikaku huse tamahe ru wo, wakaki kokoti ni ha, taguhi naku uresiku natukasiu omohi kikoyu.
 "Kono hana no aruzi ha, nado Touguu ni ha uturohi tamaha zari si."
 "Sira zu. Kokoro sira m hito ni nado koso, kiki haberi sika."
 nado katari kikoyu. "Dainagon no mi-kokoro-bahe ha, waga kata zama ni omohu beka'mere." to kiki ahase tamahe do, omohu kokoro ha koto ni simi nure ba, kono kaheri-koto, kezayaka ni mo notamahi-yara zu.
 Tutomete, kono Kimi no makaduru ni, nahozari naru yau ni te,
 "Hana no ka ni sasoha re nu beki mi nari se ba
 kaze no tayori wo sugusa masi ya ha
"
 Sate, "Naho ima ha, okina-domo ni sakasira se sase de, sinobiyaka ni." to, kahesu-gahesu notamahi te, kono Kimi mo, Himgasi no wo ba, yamgotonaku mutumasiu omohi masi tari.
 Naka-naka koto-kata no Hime-Gimi ha, miye tamahi nado si te, rei no harakara no sama nare do, waraha-gokoti ni, ito omorika ni aramahosiu ohasuru kokoro-bahe wo, "Kahi aru sama ni te mi tatematura baya!" to omohi ariku ni, Touguu-no-Ohomkata no, ito hanayaka ni motenasi tamahu ni tuke te, onazi koto ha omohi nagara, ito aka zu kutiwosikere ba, "Kono Miya wo dani, kedikaku te mi tatematura baya." to omohi ariku ni, uresiki hana no tuide nari.

 [2-4 按察大納言と匂宮、和歌を贈答]
これは、昨日の御返りなれば見せたてまつる。
「ねたげにものたまへるかな。あまり好きたる方にすすみたまへるを、許しきこえずと聞きたまひて、右の大臣、われらが見たてまつるには、いとものまめやかに、御心をさめたまふこそをかしけれ。あだ人とせむに、足らひたまへる御さまを、しひてまめだちたまはむも、見所少なくやならまし」
など、しりうごちて、今日も参らせたまふに、また、
「本つ香の匂へる君が袖触れば
花もえならぬ名をや散らさむ
とすきずきしや。あなかしこ」
と、まめやかに聞こえたまへり。まことに言ひなさむと思ふところあるにやと、さすがに御心ときめきしたまひて、
「花の香を匂はす宿に訪めゆかば
色にめづとや人の咎めむ」
など、なほ心とけずいらへたまへるを、心やましと思ひゐたまへり。
北の方まかでたまひて、内裏わたりのことのたまふついでに、
「若君の、一夜、宿直して、まかり出でたりし匂ひの、いとをかしかりしを、人はなほと思ひしを、宮の、いと思ほし寄りて、『兵部卿宮に近づききこえにけり。うべ、我をばすさめたり』と、けしきとり、怨じたまへりしか。ここに、御消息やありし。さも見えざりしを」
とのたまへば、
「さかし。梅の花めでたまふ君なれば、あなたのつまの紅梅、いと盛りに見えしを、ただならで、折りてたてまつれたりしなり。移り香は、げにこそ心ことなれ。晴れまじらひしたまはむ女などは、さはえしめぬかな。
源中納言は、かうざまに好ましうはたき匂はさで、人柄こそ世になけれ。あやしう、前の世の契りいかなりける報いにかと、ゆかしきことにこそあれ。
同じ花の名なれど、梅は生ひ出でけむ根こそあはれなれ。この宮などのめでたまふ、さることぞかし」
など、花によそへても、まづかけきこえたまふ。

 [2-4 按察大納言と匂宮、和歌を贈答]
これは、昨日のお返事なのでお見せ申し上げる。
「憎らしくもおっしゃるなあ。あまりに好色な方面に度が過ぎていらっしゃるのを、お許し申し上げないとお聞きになって、右大臣や、わたしどもが拝見するには、とてもまじめに、お心を抑えていらっしゃるのがおもしろい。好色人というのに、資格十分なご様子を、無理してまじめくさっていらっしゃるのも、見所が少なくなることになろうに」
などと、悪口を言って、今日も参らせなさる折に、また、
「もともとの香りが匂っていらっしゃるあなたが袖を振ると
花も素晴らしい評判を得ることでしょう
と好色がましく、恐縮です」
と、本気にお申し込みになった。本当に結婚させようと考えているところがあるのだろうかと、そうはいってもお心をときめかしなさって、
「花の香を匂わしていらっしゃる宿に訪ねていったら
好色な人だと人が咎めるのではないでしょうか」
など、やはり胸の内を明かさないでお答えなさるので、憎らしいと思っていらっしゃった。
北の方が退出なさって、宮中辺りのことをおっしゃる折に、
「若君が、先夜、宿直をして、退出した時の匂いが、とても素晴らしかったので、人は普通の香と思ったが、東宮が、よくお気づきなさって、『兵部卿宮にお近づき申したのだ。なるほど、わたしを嫌ったわけだ』と、様子を理解して、恨んでいらっしゃった。こちらに、お手紙がありましたか。そのようにも見えませんでしたが」
とおっしゃると、
「その通り。梅の花を賞美なさる君なので、あちらの建物の端の紅梅が、たいそう盛りに見えたのを、放っておけず、折って差し上げたのです。移り香は、なるほど格別です。晴れがましい宮中勤めをなさるような女君などは、あのようには焚きしめられないな。
源中納言は、このように風流に焚きしめて匂わすのではなく、人柄が世に又とない。不思議と、前世の宿縁がどんなであったのかと、知りたいほどだ。
同じ花の名であるが、梅は生え出た根ざしが大したものだ。この宮などが賞美なさるのは、もっもなことだ」
などと、花にかこつけて、まずはお噂申し上げなさる。

 [2-4 Kobai and Nio-no-miya compose and exchange waka]
 Kore ha, kinohu no ohom-kaheri nare ba mise tatematuru.
 "Netage ni mo notamahe ru kana. Amari suki taru kata ni susumi tamahe ru wo, yurusi kikoye zu to kiki tamahi te, Migi-no-Otodo, warera ga mi tatematuru ni ha, ito mono-mameyaka ni, mi-kokoro wosame tamahu koso wokasikere. Ada-bito to se m ni, tarahi tamahe ru ohom-sama wo, sihite mame-dati tamaha m mo, mi-dokoro sukunaku ya nara masi."
 nado, siriu-goti te, kehu mo mawira se tamahu ni, mata,
 "Moto tu ka no nihohe ru kimi ga sode hure ba
 hana mo e nara nu na wo ya tirasa m

 to suki-zukisi ya! Ana kasiko."
 to, mameyaka ni kikoye tamahe ri. Makoto ni ihi-nasa m to omohu tokoro aru ni ya to, sasuga ni mi-kokoro tokimeki si tamahi te,
 "Hana no ka wo nihohasu yado ni tome yuka ba
 iro ni medu to ya hito no togame m
"
 nado, naho kokoro-toke zu irahe tamahe ru wo, kokoro-yamasi to omohi wi tamahe ri.
 Kitanokata makade tamahi te, Uti watari no koto notamahu tuide ni,
 "Waka-Gimi no, hito-yo, tonowi si te, makari-ide tari si nihohi no, ito wokasikari si wo, hito ha naho to omohi si wo, Miya no, ito omohosi yori te, 'Hyaubukyau-no-Miya ni tikaduki kikoye ni keri. Ube, ware wo ba susame tari.' to, kesiki tori, wen-zi tamahe ri sika. Koko ni, ohom-seusoko ya ari si. Sa mo miye zari si wo."
 to notamahe ba,
 "Sakasi. Ume no hana mede tamahu Kimi nare ba, anata no tuma no koubai, ito sakari ni miye si wo, tada-nara de, wori te tatemature tari si nari. Uturi-ga ha, geni koso kokoro-kotonare. Hare mazirahi si tamaha m womna nado ha, sa ha e sime nu kana!
 Gwen-Tiunagon ha, kau zama ni konomasiu ha taki nihohasa de, hitogara koso yo ni nakere. Ayasiu, saki no yo no tigiri ika nari keru mukuyi ni ka to, yukasiki koto ni koso are.
 Onazi hana no na nare do, ume ha ohi-ide kem ne koso ahare nare. Kono Miya nado no mede tamahu, saru koto zo kasi."
 nado, hana ni yosohe te mo, madu kake kikoye tamahu.

 [2-5 匂宮、宮の御方に執心]
宮の御方は、もの思し知るほどにねびまさりたまへれば、何ごとも見知り、聞きとどめたまはぬにはあらねど、「人に見え、世づきたらむありさまは、さらに」と思し離れたり。
世の人も、時に寄る心ありてにや、さし向ひたる御方々には、心を尽くし聞こえわび、今めかしきこと多かれど、こなたは、よろづにつけ、ものしめやかに引き入りたまへるを、宮は、御ふさひの方に聞き伝へたまひて、深う、いかで、と思ほしなりにけり。
若君を、常にまつはし寄せたまひつつ、忍びやかに御文あれど、大納言の君、深く心かけきこえたまひて、「さも思ひたちてのたまふことあらば」と、けしきとり、心まうけしたまふを見るに、いとほしう、
「ひき違へて、かう思ひ寄るべうもあらぬ方にしも、なげの言の葉を尽くしたまふ、かひなげなること」
と、北の方も思しのたまふ。
はかなき御返りなどもなければ、負けじの御心添ひて、思ほしやむべくもあらず。「何かは、人の御ありさま、などかは、さても見たてまつらまほしう、生ひ先遠くなどは見えさせ1999たまふに」など、北の方思ほし寄る時々あれど、いといたう色めきたまひて、通ひたまふ忍び所多く、八の宮の姫君にも、御心ざしの浅からで、いとしげうまうでありきたまふ。頼もしげなき御心の、あだあだしさなども、いとどつつましければ、まめやかには思ほし絶えたるを、かたじけなきばかりに、忍びて、母君ぞ、たまさかにさかしらがり聞こえたまふ。

 [2-5 匂宮、宮の御方に執心]
宮の御方は、物の分別がおつきになるくらいご成人なさっているので、どのようなことでもお分りになり、噂を耳になさっていらっしゃらないではないが、「人と結婚し、普通の生活を送ることは、けっして」と思い離れていた。
世間の男性も、時の権勢に追従する心があってだろうか、本妻の姫君たちには熱心に申し込み、はなやかな事が多いが、こちらの方には、何かにつけて、ひっそりと引き籠もっていらっしゃったのを、宮は、おふさわしい方と伝え聞きなさって、心底、何とかして、とお思いになってしまった。
若君を、いつも側を離さず近づけなさっては、こっそりとお手紙をやるが、大納言の君が、心からお望みになって、「そのようにお考えになってお申し込まれることがあるならば」と、様子を理解して、準備なさっているのを見ると、気の毒になって、
「予想に反して、このように結婚を考えてもいない方に、かりそめにせよ、お手紙をたくさんくださるが、効のなさそうなこと」
と、北の方もお思いになりおっしゃる。
ちょっとしたお返事などもないので、負けてたまるかとのお考えも加わって、お諦めになることもおできになれない。「何の遠慮がいるものか、宮のお人柄に何の不足があろう、そのように結婚させてお世話申し上げたい、将来有望にお見えになるのだから」など、北の方はお思いになることも時々あるが、とてもたいそう好色人でいらして、お通いになる所がたくさんあって、八の宮の姫君にも、お気持ちが並々でなく、たいそう足しげくお通いになっている。頼りがいのないお心で、浮気っぽさなども、ますます躊躇されるので、本気になってはお考えになっていないが、恐れ多いばかりに、こっそりと、母君が時折さし出てお返事申し上げなさる。

 [2-5 Nio-no-miya sets his heart on Miya-no-onkata]
 Miya-no-Ohomkata ha, mono obosi siru hodo ni nebi masari tamahe re ba, nani-goto mo mi-siri, kiki todome tamaha nu ni ha ara ne do, "Hito ni miye, yo-duki tara m arisama ha, sarani." to obosi hanare tari.
 Yo no hito mo, toki ni yoru kokoro ari te ni ya, sasi-mukahi taru ohom-kata-gata ni ha, kokoro wo tukusi kikoye wabi, imamekasiki koto ohokare do, konata ha, yorodu ni tuke, mono simeyaka ni hiki-iri tamahe ru wo, Miya ha, ohom-husahi no kata ni kiki tutahe tamahi te, hukau, ikade, to omohosi nari ni keri.
 Waka-Gimi wo, tune ni matuhasi yose tamahi tutu, sinobiyaka ni ohom-humi are do, Dainagon-no-Kimi, hukaku kokoro kake kikoye tamahi te, "Sa mo omohi tati te notamahu koto ara ba." to, kesiki tori, kokoro-mauke si tamahu wo miru ni, itohosiu,
 "Hiki-tagahe te, kau omohi-yoru beu mo ara nu kata ni si mo, nage no kotonoha wo tukusi tamahu, kahi nage naru koto."
 to, Kitanokata mo obosi notamahu.
 Hakanaki ohom-kaheri nado mo nakere ba, make zi no mi-kokoro sohi te, omohosi yamu beku mo ara zu. "Nani ka ha, hito no mi-arisama, nado ka ha, sate mo mi tatematura mahosiu, ohi-saki tohoku nado ha miye sase tamahu ni." nado, Kitanokata omohosi yoru toki-doki are do, ito itau iro-meki tamahi te, kayohi tamahu sinobi-dokoro ohoku, Hati-no-Miya no Hime-Gimi ni mo, mi-kokorozasi no asakara de, ito sigeu maude ariki tamahu. Tanomosige naki mi-kokoro no, ada-adasisa nado mo, itodo tutumasikere ba, mameyaka ni ha omohosi taye taru wo, katazikenaki bakari ni, sinobi te, Haha-Gimi zo, tamasaka ni sakasira-gari kikoye tamahu.

 出典

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